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2010年07月08日

Averbakh『Chess Endings Essential Knowledge』レビュー

 先月頭から始めて昨日で完訳したので紹介しておこう。こういうパターンは初めてかもしれないが、翻訳は最高の精読という意味で書評に最適だ。しかし、翻訳を出す本の原書を紹介 する必要があるのだろうか。

 本書の存在は約四半世紀前から知っていた。最初の個人出版は予算の関係(と様子見)でページの少ない本を探していたら、p.108という最適な本書を見 つけた。内容的にもamazonのレビュー通り、最小にして実戦的に は十分な内容が盛り込まれている。表記は代数式に改定されている。

目次

英訳者序文
著者より
序文
駒の特性

1 無防備なキングのメイト
 クイーンによるメイト
 ルークによるメイト
 2つのビショップによるメイト
 ビショップとナイトによるメイト
 2つのナイトによるメイト

2 ピース対ピース
 クイーン対ルーク
 クイーン対マイナーピース
 ルーク対ナイト
 ルーク対ビショップ

3 ピース対ポーン
 クイーン対ポーン
 ルーク対ポーン
 マイナーピース対ポーン

4 ポーンの昇格
 キング+ポーン対キング
 キング+マイナーピース+ポーン対キング
 ナイト+ポーン対ナイト
 ビショップ+ポーン対ビショップ
 ビショップ+ポーン対ナイト
 ナイト+ポーン対ビショップ
 ルーク+ポーン対ルーク
 クイーン+ポーン対クイーン

5 実戦的終盤戦
 ポーンの終盤
 ナイトの終盤
 ビショップの終盤
  同じ色のマスにあるビショップ同士
  違う色のマスにあるビショップ同士
 ビショップ対ナイトの終盤
 ルークの終盤
 クイーンの終盤

 無防備キングを最小戦力でメイトする次はたいていポーンの終盤が来るものだが、本書はピース対ピース。先にダイナミックなピースに慣れる狙いだ。辛気く さいポーンの見合い三角法が分からず分厚い本を投げ出した人も多いだろうから、これは正解かもしれ ない。しかも、見合いや対応マス要マス(key square)という概念で分かりやすく説明されている。私も終盤はこれを先に読めば良かった。
 私が最初に読んだ終盤本はファインのBasic Chess Endingsで、 今もベンケー(ベンコ)の改訂版が出ているが、最初に読むには量が多すぎてちっともBasicじゃない。20年前にこれを翻訳し掛かったのは私のチェス翻 訳の原点だが、これはさらにまずかった。今の状況では、本書が『ボビー・フィッ シャーを探して』より先に出ると思うが、そうなると初のメジャー翻訳出版の感慨も何もあったものではない。

 今は訳をワードに移してタイトルや棋譜を太字にしたところ。図入れをどうするか思案している。最終的にはpdfで印刷に回すが、チェス駒のアウトラインフォント情報をpdfに埋め込めるならその方が印刷がきれいにな る。しかし、たいていの図作成ソフトはBMPやJPGの画像として出 力する から何のためのアウトラインか分からないし、そもそもpdfへのフォント埋め込みが印 刷機に有効かは問い合わせてみないと分からない。
 大きな問題はこれくらいなので何とか資金を工面できる9月に出版で きると思う。1000部は刷りたいと思っていたが資金的に最悪500になるかもしれない。中は1色刷り、表紙は色バックの黒文字のみでカバーなし等、ビジュアル的には見劣りするだろうが、原書より安い値段で分かりやすく読みやすい内容にはなるはず。

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Yuri Averbakh著 P.H. Clarke英訳
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2007年07月10日

Van Perlo『Endgame Tactics』紹介

 Van Perloの『Endgame Tactics: A Comprehensive Guide to the Sunny Side of Chess Endgames』(479ページ、'06年5月、New in Chess)を紹介しよう。maro_chroniconさんやksharaさんからの評判を聞いているのでタイムリーに選んでみた。
 昨年の英国チェス連盟ブック・オブ・ザ・イヤーを受賞している。例題はフリッツでチェックされているが、6駒以下局面をテーブルベースでチェックすると誤りがあるらしい。すべては実戦からの局面で、駒の組合せや難易度も多岐に渡っている。

出版社レビュー(訳):
Paul Motwani (The Scotsman)
「1100以上の仕掛けと罠に満ちた悩殺的終盤問題。極上の一冊。大いに啓蒙的」

Jules Welling (Schaaknieuws)
「すべてのクラブプレーヤーに理想的な本。ひじょうに有益」

 なぜ、ほとんどのアマチュア棋士は、定跡や中盤の戦術は好きでも終盤戦を嫌うのでしょう? なぜ、どんな終盤の理論書を開いても、2,3ページ見ただけで投げ出してしまうのでしょう? 終盤の理論書は忘れ、リラックスして本書で本当のチェスの息吹を満喫しましょう! 聡明なグランドマスターがかつて言ったように、チェスの上達に王道はありません。しかし、楽しめるものには一生懸命になれるはずです。終盤戦の上達(ともっと勝つこと)への最初の一歩は、終盤戦を好きになることです。終盤戦の楽しさが、本書で毎日例題を解けば証明されるでしょう。

Endgame Tactics: A Comprehensive Guide to the Sunny Side of Chess Endgames
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2007年05月09日

Pandolfini『111 Winning Endgames』

 amazonからのお薦めメールでBruce Pandolfiniの新刊『Pandolfini's Chess Challenges: 111 Winning Endgames』(256ページ、ランダムハウス)が来たので、パンドルーフィーにだし、紹介しておこう。

出版社レビュー(訳):
 111題の奇抜でためになり、意外かつおもしろい誰もが上達できる戦術問題集が、有名なブルース・パンドルフィーニ先生によって生み出された。ゲームの創造力と想像力を上達させるために、すべては7つ以下の駒しかない終盤の短手数問題である。

・すべての解答は2部、プランと必要な戦術に分かれており、それぞれは通常の対局向けのレッスンにもなっている。
・各解答には点数が与えられるので、読み進むうちに自分の上達具合を把握できる。
・解答ページは、使われた勝ち方の記述と説明になっている。
・問題は、与える課題を強化するためにテーマ別に構成されている。
Surprising Chess Moves: 111 Winning Endgames (Chess)
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2007年01月11日

Jeremy Silman『Silman's CompleteEndgame Course: From Beginner To Master』

 発売開始早々在庫切れのようだが、発売前から期待の高いJeremy Silmanの『Silman's Complete Endgame Course: From Beginner To Master』(532ページ、Siles Press)を紹介しよう。

出版社レビューの抄訳:
 100年以上に渡り、世界のトップ棋士や教師は、終盤を勉強しなさいと言い続けてきた。そして、今初めて、革命的でひじょうにためになりあらゆるレベルのプレーヤーに適応した終盤の手引書が作られた。高名な著者&棋士ジェレミー・シルマンによるSilman's Complete Endgame Courseは、これだけあれば初心者から大会の強豪そしてマスターへと上達するのに必要十分である。

 個々のプレーヤーに「話しかける」ように、シルマンの本は、すべての読者が現在のレイティング・レベルを知り、その次段階の知識を構築する必要があると教えてくれる。初心者レベルから始めれば、すべての初歩的なメイトを徹底かつ明瞭に説明してくれる。その後は、大会で有望な、または経験豊かなプレーヤーにとって終盤戦の土台となる重要な基礎事項が、詳しく探求される。最後は、記憶よりも概念に基づいた終盤の秘訣上級編が、習得しやすい方法で述べられている。

 豊かな終盤戦勉強には基本用語−オポジション、ルセナおよびフィリドール局面、キャットおよびマウス、トレビュシェット、フォックス・イン・ザ・チキン・クー、トライアンギュレーション、ビルディング・ア・ボックス、ポーンの正方形、回り込み、2弱点原則−が欠かせない。しかし、終盤戦への愛着も同じく重要である。これは本書の最後で、戦術、マイナーピース支配、チェス史上の終盤戦5名人の検討とともに述べられている。すべてのレベルのチェスファンが楽しめる内容ばかりである。

裏表紙よりの訳:
 IMジェレミー・シルマンは、自身のみならずクラブプレーヤーの視点を備えたたぐいまれな才能の持ち主である。それゆえ、私はいつもジェレミーの本を生徒に薦め、ひじょうな好結果を得ている。今回は、生徒たちの終盤の勉強に薦める本だ! GM Alexander Baburin

 最高にためになり秀逸−初心者にも熟練者にも等しくすばらしい手引書。 GM Pal Benko

 今まで見た最高の終盤本の一つ。レイティング・グループ別に内容を分けるアイデアが秀逸! GM Gregory Kaidanov


 用語Cat and Mouse, Fox in the Chicken Coup, Building a Boxは、見たこともないのでカナにしておいたが(汗、シルマンの造語かもしれない。
Silman's Complete Endgame Course: From Beginner To Master
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2005年11月30日

局面図作り方〜Seirawan『Winning Chess Endings』

 HPやブログに局面図を掲載する方法が分からないという人のために説明しておこう。図の作り方は基本的に2つあり、図を1つのgif画像として作成して 貼り付ける方法(一画像法)と、私のやり方でもあるマス目一つをセルとする表に一マスずつgifファイルをはめ込む方法(はめ込み法)である。
 一画像法は、通常大きさが変えられて曲線もきれいだが、画像ファイルが図面ごとに増えるため管理が煩雑で、多量に使うとダウンロードが遅くなる。は め込み法はおおむねその逆で、大きさが変えられないのが最大の欠点だが、画像は使い回しなのであらかじめ30種類ほどをアップロードしておくだけで済む。

 私のように1ページ内に100個以上も図面を貼るのでなければ一画像法がお薦めだ。Chess Diagramsからフリー やシェアウェアソフトがダウンロードできる。"www"という分類が付いているものがウェブ上に局面図を貼ることに対応しているソフトである。
 これはデンマークの"En Passant"というチェス総合サイトの下にあって、図面作成以外にもこの種のノウハウが詰まっている。全く分からないという人は、まずチェスフォントFAQページから読ま れたし。私が使っているのはEPD2diagで、前記両方法に対応している。別にダウンロードした様々なチェスフォントを使う場合は、一画像法に限られ る。


 予想通りかもしれないが、今回はSeirawanの"Winning Chess Endings"(240ページ、'03年、エブ リマン・チェス)である。

裏表紙の抄訳:
 『勝つチェスの終盤』は以下のやり方を説明する。
*容赦なくチェックメイトを見つける。あらゆる基本的な終盤パターンにおいて、易しいものから難しいものへ
*キングとポーンの難しい終盤を習得する
*最もありふれた終盤、ルックの終盤を堅実に勝つ
*ビショップ対ナイトの終盤でそれぞれの長所と短所を習得する
*端ポーンとdポーンの終盤におけるそれぞれの利点を把握する
*終盤の分析でグランドマスターのように指す
 『勝つチェスの終盤』は、有名なマッチから直に採取したストーリーのまっただ中に読者を誘うという新しいエキサイティングな方法によって終盤の戦略を指 南する。椅子に座って世界一エキサイティングなチェスの終盤を体験しよう。そして終盤のマスターになろう!

目次の訳:
謝辞 序文
第1章 基本メイト
第2章 キングとポーンの終盤
第3章 クイーンとポーンの終盤
第4章 ルックの終盤
第5章 ビショップの終盤
第6章 ナイトの終盤
第7章 ビショップ対ナイト
第8章 ルック対マイナーピース
第9章 希有と「完全」
資料 索引

第1章 基本メイト 困難の一部(p.5)訳:
困難
2つのビショップ、2つの原則
 
2つのビショップによるメイトでは(クイーンやルックの場合のような)四角形で追いつめる戦略は使えない。代わりに2つの原則が有効であ る。
 ■ 2つのビショップは、中央で協力し合って働くのが最善である。
 ■ 2つのビショップを持つ側は、キングを積極的に活用しなければならない。

 この後、当然ながらメイトまでの指し手が解説付きで続く。"Winning Chess Openings"に比べると終盤という性格上、さらに内容が整然と分類されている。クイーンに関しては、ポーンの終盤の延長としてのみ扱っていると思わ れ る。問題を解くよりまず易しい終盤の参考書が欲しい初心者に向いているだろう。


 昨日うちのアソシエイトから"Chess Personalia: A Biobibliography"というチェス関連の人名辞典(プロフィール集)が注文されているが、念のため米 amazonでも調べてみると、カ スタマーレビューで「'05年発行だが'87年版と内容は同じ」とある。老婆心ながらご参考までに。
Winning Chess Endings (Winning Chess)
1857443489 Yasser Seirawan

Everyman Chess 2003-09
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2005年11月23日

Flear『Starting Out: Pawn Endgames』

 昨日買ったヘッドホンは予想を十分上回る音質で大満足な結果となった。「耳かけ」は、重さよりも長時間はさんでいる痛みが特に右側にあるが、そのうち耳 が慣れてくるだろう(笑。PCのスピーカーの音がいかに悪いかが明らかになったのかもしれない。


 終盤本は、そろそろ総合本で既存レビューとamazon在庫が両立できるものがなくなってきたので、今回から個別終盤本も扱おう。Glenn Flearの"Starting Out: Pawn Endgames"(192ページ、 2004年、Everyman chess)である。チェスの本は全部Starting Outでそろえてもいいほど、このシリーズは何でもそろっている。


裏表紙の訳:

 キングとポーンだけの終盤はすべてのチェスの局面の中で最も基本的なものゆえ、これを堅実に理解することは、前段階のもっと複雑な終盤に自信を持って望 むための必 須事項である。この読みやすい指南書で、グランドマスターかつ著名な終盤のエキスパートであるグレン・フレアーは、ポーンの終盤の基本中の基本を中心に 扱って いる。簡単な局面から始めてほんの少しずつ難しくしていく中で、フレアーは重要な原則や規則を概説し、例題においてそれらが機能する様を実証する。ポーン をクイーンにするのはこの終盤の優先事項だが、フレアーは、単純な局面から成り行き上生じるクイーンの終盤も補足的に扱っている。有名な「スターティン グ・ア ウト」シリーズの通例として、豊富な注釈や助言、注意点が読者の上達を助けるべく随所に散りばめられている。『スターティング・アウト: ポーンの終盤』 は、『スターティング・アウト・イン・チェス、若いプレーヤーへの助言と終盤に強くなる(Starting Out in Chess, Tips for Young Players and Improve Your Endgame Play)』で腕を磨いた読者に最適である。

*すべての重要なポーンの終盤を網羅
*終盤戦がたやすくステップアップできる指南書
*上達を目指すプレーヤーにうってつけ
*重要な考え方を身に付けやすく見やすいレイアウト

 イギリス人グランドマスター、グレン・フレアーは、国際トーナメントを駆け回る最も有名なプレーヤーの一人である。フレアーは経験豊かなトレーナーでも あり、イギリスのトップ・ジュニア達のコーチでもあった。著したチェス書も多く、エブリマンの新刊には『終盤の考え方をテストする(Test Your Endgame Thinking)』と『...a6 スラブ・ディフェンス(The ...a6 Slav)』がある。

目 次 (第1章のみ下位区分も)

文献
序文

1 ポーンの終盤は特別!
 序論
 ツークツワンク
 キングのテーマ
 他のテーマ
2 最後のポーン
3 局所戦
4 パスポーンの威力
5 パスポーンがいっぱい
6 競争!
7 キングの作戦
8 ポーンの力
9 さらなるポジショナル・テーマ
10 ポーンがクイーンになる時
11 ポーンの終盤にするピース交換

追加練習問題
練習問題解答

11〜12ページのZugzwang訳:

ツークツワンク
 これは、ポーンの終盤で最も重要なテーマの一つである。
 例6: ツークツワンク









図7(黒番)
ツークツワンク

 (図7)ツークツワンクは珍しいものではない。この例では、黒は動かねばならないので、白にc5かe5への侵入を許さざるを得ない。
1...Kc6 2 Ke5 そして白の勝ち。
要点: ツークツワンクはドイツ語で、好むと好まざるに関わらず「動くことを強制さ れた」という意味。

 さらに2,3の典型的なツークツワンクが続くが、このありきたりの用語は他の著者によっては言い換えられている。いくつかの本では、「相互 (reciprocal)ツークツワンク」という用語が「白番ドロー、黒番黒負け」といった局面、つまり手番を持っていることは要求されないが勝敗には決 定的な局面に用いられている。
 一方がツークツワンクによっていずれ指し手が尽きて負ける局面を、「スクイズ(squeeze)」または単にツークツワンクと呼ぶことがある。
 本書では、この2つを峻別する必要はなくツークツワンクで十分と考える。


 きりがないのでこのくらいにしておくが、著者はこう書きながらも次に「スクイズ」の例題をちゃんと説明している。目次によると、本書が白黒のポーン数で 厳密に体系立てた本ではないことが分かる。しかし内容は、上記のように少しかいつまんだだけでも豊富な用例が的確な説明され、「要点」でまとめられてい る。
 ポーンの終盤だけをまるまる1冊で基礎から分かりやすく解説した贅沢な本と言えよう。
Starting Out: Pawn Endgames (Everyman Chess)
1857443624 Glenn Flear

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2005年11月09日

Nunn『Endgame Challenge』〜メイソンの文体

 また訃報である。JPCA会長早川茂男さんが亡くなった。JCAより長い歴史を持つ同会を創設から支え続け、店を奥さんに任せっきりにしても会報誌 The Pawnの発行は欠かさず、プロブレムや入門書、そして何より日本のチェスの普及に尽力された。
 私も数年お世話になった。 USCFに入る前にグッズの代理輸入など、お忙しいのに無理なお願いをしたと思う。いつも丁寧に書いてくださったお返事のくせ字が印象深い。会員を自然消 滅してしまい、生前にチェス書を出版して届けられなかったのが心残りだ。


 終盤本は、ベストセラーから紹介しようにもレビュー等の資料が乏しいので、仕方なくレビューのあるもので続ける。ナンの"Endgame Challenge"(240ページ、'02年、ギャンビット社)は高価だが、エチュード(スタディ)本もたまにはいいだろう。Bill Whitedのレビューを概観しよう。
 なお、「エチュード」は松本康司前JCA会長がstudyにあてた訳語だが、そのまま「スタディ」とする場合が増えてきて無用の混乱が起きているよう だ。個人的な思い入れか何かがあったのだろうが、そのままスタディとしておけばよかったのにと思う。


 チェス書の名著者の数は少ない。中級者と上級プレーヤー向けにそれぞれ 本を書ける著者はもっと少ない。一つの本でそれを同時にできる著者は片手で数えられるくらいだ。ジョン・ナンはそのうちの一人である。

 定義をはっきりさせておこう。終盤のエチュード(Endgame Studies)はプロブレムとは密接に関連があるが別物である。プロブレムは、実戦ではほとんど起こりえないようなかなり作為的なものなので、実戦のプ レーヤーの多くには見向きもされない。
 一方、エチュードは、通常現実的な終盤を彷彿とさせるもので、たった一つの解しかなく、ひじょうに勉強になるように作られている。エチュードを解くゴー ルは勝ちかドローで、たいていは現実の終盤を凝縮したものである。
 メイトや戦術問題とは違って、終盤はパターン認識より具体的な深い読みを必要とする場合が多い。よくできたエチュードは、終盤の原則を強化するのと同時 に分析力を研ぎ澄まさせる。実戦の終盤によってもこれは学べるが、エチュードは余解がない分集中できて根底にある原則も学べる。

 ナンは1年以上かけて、集めた20000題を250題まで厳選し、ディープフリッツで慎重にエラーをチェックした。これは終盤戦が作局者の能力を超えて 難しいことの証明である。しかし、ナンの分析と詳細な説明によってひじょうに読みやすく理解しやすい本となっている。
 本書の基本的な読者層はクラブの上級プレーヤーだが、ナンの解説力によってもっと下位レベルのプレーヤーにもためになる。詳細な分析は、IMやGMでさ え有益で楽しめるものだろう。


 今日訳してアップしたばかりのメイソン"The Art of Chess"の図14の解説文が妙に分かりにくい表現だったのでその原文の最後を記しておく。興味ある方は、私の訳と見比べてみてほしい。ラスカーと 違ってこれはイギリス人メイソン、つまりネイティブの英語だから分詞構文等が多くて癖があるのは分かる。
 しかし、この英文はさすがにネイティブであってもチェスの知識がないと皆目見当も付かないと思う。いや、チェスの知識があっても、例題図が併記してない と何のことやら分からないほどなので、訳注で意味を補足せざるをえなかった。
 こんな英語を律儀に訳しているくらいならリライトした方がずっと分かりやすい。結局自分で本を書いた方がいいという結論になるようである。
 There are in reality two sides involved here, White's side and the Queen side; so that, after capturing, the Kings are equidistant each from a side; and White, having the move, has also a sort of combination of advantages quite sufficient.
Endgame Challenge
1901983838 John Nunn

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2005年11月03日

Snape『Chess Endings Made Simple』〜メイトを強制?

 例の著作権切れアーカイブサイト、プロジェクト・グーテンベルクには、スタウントン、バード、そしてCaxtonという著者の1474年(!)に書かれ たチェス書があるのも見つけた。バードのはいくぶん読み物っぽいので、当時のチェス界を知るのにおもしろそうというくらいか。
 それよりはpontaさんに頂いた本にJames Masonの2冊があって19世紀末に書かれたものだから、ラスカー訳の後釜にと考えている。そういう古いネタは困らないのだが、何とかもう少し新しめの 本を紙で 出すことも考えねばならない。本業が軌道に乗ってからか。軌道に乗るとそれどころではなくなったりして(笑。


 終盤本も終盤全般を扱ったものはめぼしいものがなくなってきたが、もう少し続ける。今回は、Ian snapeの"Chess Endings Made Simple"(144ページ、'03年、ギャンビット社)である。以下に、Carl Tillotsonのレビューを要約して見ていこう。


 チェス出版界では比較的新顔の著者は、終盤の知識をかなり限られた紙数 の中で網羅している。本書は、記憶や長たらしい読みよりも、パターンや概念の提示に重点が置かれている。読者が向上する可能性がいちばん高い領域に焦点を 合わせていると言えるだろう。
 本書は2部構成になっている。第1部は「セオリー」を重点的に扱い、第2部は100問の練習問題となっている。問題はすべて実戦から採られたもので、作 図ではない。多くの他書と同様に、豊富な練習問題を解くことで概念が実証されるという利点がある。

第1部の構成は以下の通りである。
 1.ポーンのない終盤
 2.キングとポーンの終盤
 3.ルックとポーンの終盤
 4.ルックと1つのポーンの終盤
 5.ナイトの終盤
 6.ビショップの終盤
 7.ビショップ対ナイトの終盤
 8.クイーンの終盤

 頻出するルックとポーンの終盤は2つの章で扱っている。「ルセナ」や「フィリドール」といった古くからある局面だけでなく、並のプレーヤーにはあまりな じみのない「ヴァンキュラ(Vancura)」ポジションも出てくる。以下がそれである。










 防御側が持ち込むべき局面である。黒のキングとルックが、白がルックを横に振る狙いを封じる場所にいる。各章では多くのテーマが解説され、章末では実 戦例によって再び考察される。実例はGMや著者自身のゲームから取材されている。

 第2部の練習問題では、最高のプレーヤーでさえ実戦でミスを犯すことが示される。例えば、以下のドローにできる局面で、黒番のシロフは敗着 ...Rc6を指した。正着を知りたい人は本書を読まれたし。










 決して初心者向けではなく、中級以上のプレーヤーがさらなる上達を目指す本である。難点は価格だが、高くても気にしないという人なら「買い」だ。


 force a mateの訳なのだろうが、「メイトを強制する」という変な訳を見かけることがある。forced mateが「強制メイト」だからそのまま動詞化してい るとも考えられる。かく言う私も昔そう書いていた反省でもあるのだが、これは単純に「メ イトにする」や 「メイトできる」でいいだろう。
 文脈にもよるが、「メイトできる」というのは、相手のいかなる応手に対してもメイトできるという前提がすでにあるわけで、そうで なければ「メイトできる」とは言わない。英語の表現は逐語訳すると、とかく大袈裟で冗長になりがちなのだ。
Chess Endings Made Simple
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2005年10月26日

Alburt&Krogius『Just the Facts!: Winning Endgame Knowledge in One Volume』〜extraの訳

 一昨日のNTV「ニュースプラス1」でエスカレーターの危険性を扱っていた。歩くあるいは走る人に引っかけられて転倒する事故等が起こっているからだ。 エスカレーターを管理する会社や業界代表に話を聞くと、エスカレーター上で歩くことは推奨していないという。たしかに最近は歩くなというアナウンスをよく 聞く。
 いつから歩くようになったのかとVTRで検証すると、意外と最近の10年前くらいからだと判明した。大阪万博のときに海外の「マナー」が導入されたとい う話を以前聞いたことがあった。だから大阪は国際式に左側を空けるが、東京はなぜか右側を空けるようになったのだと。
 それは間違いではないようだが、一般に広がるきっかけになったのは、関西の私鉄会社が混雑時用の措置として、左側を急ぐ人のために空けるようにアナウン スしたからだという。それが、同じエスカレーターだということで百貨店とかでも半ば強制されているような状況になってしまったのだ。

 今頃になって歩くなとアナウンスをされても、元来気ぜわしい日本人が元にもどるとは思えない。海外も歩行禁止へ向かっているというが、全くよけいなこと をしてくれたものだ。私は歩いてもゆっくりだし、猛烈に込んだ駅だとエスカレーターまで扇形に並ぶのがうっとうしいので急いでなくても階段を使う。
 引っかけられる可能性はむしろエスカレーターが空いているときだろう。そんなときに真ん中気味に立っている年寄りが危ない。私は幅の1/3に収まるよう に立っていても腕に当てられたことがある。広いと気を抜いた相手になめられないように、体は1/3に収めても1/2くらいまでは荷物とかを張り出しておく べきだ(笑。


 昨日のクロギウスつながりでちょうどいい終盤本を紹介する。アルバート +クロギウスの"Just the Facts: Winning Endgame Knowledge in One Volume"である。S. Evan Kreiderのパンドルフィーニ本との比較レビューが的を射ているので、以下に抄訳のみ記す。


 アルバートとクロギウスの『終盤で勝つ知識だけを一巻で』は、一冊でアマチュアに必要な終盤の知識を提供する点においては『パンドルフィーニの終盤コー ス』と似ているが、その内容と教授法、書き方にはかなりの違いがある。
 アルバート本は、K+Q v. K or K+R v. K等の初歩的メイトを省いている。オポジションや回り込みを使う基本的なK+P v. K終盤も省いている。その代わりになぜか「有名な終盤プレーヤー」なる内容にかなりのページを割いている。

 パンドルフィーニ本にないものは、Q v. R+マイナーピースのポーン付きや2ビショップが有利な終盤、そして特に重要なR v. マイナーピース+Pである。これらはアマチュアのゲームでも見られるし、こういった「まぜこぜの」終盤を学ぶことは重要だ。
 違いを強調したが、両者には重なる部分も多い。しかし、同じテーマを扱うにしてもその切り口が違う。パンドルフィーニが百科辞典的に簡潔なのに対して、 アルバートは実際のレッスンに近い散文的スタイルである。これはどっちがいいとは言えず、好きずきの問題だろう。

 パンドルフィーニは、本質まで煮詰めて「単純な」終盤に還元しようとする。初心者から中級者には最善の方法である。逆にアルバートは、実際に起こるピー スとポーンが混在したもっと複雑な終盤を披露する。もっと経験を積んだ中級者やパンドルフィーニ本をマスターした者に向いている。
 それに関連して、アルバートは、複雑な終盤から単純な終盤へ、さらには中盤から終盤への移行をも多くのページを使って示している。これもまた経験を積ん だ中級者と、単純だがある意味これより作為的なパンドルフィーニ本の局面をマスターした者に最適と言えよう。

 パンドルフィーニ本は初めて終盤を学ぶ者か意欲的な中級者に最適であり、アルバート本は、もっと上達した中級者かパンドルフィーニ本をマスターした者に 向いている。アルバート本は他の同種の本に比べて高いので、価格だけが問題という人は他を度外視してパンドルフィーニ本を選ぶことになるだろう。


 mikageさんのamazonカスタマーレビューも参考にされたし。
Just the Facts!: Winning Endgame Knowledge in One Volume (Comprehensive Chess Course Series, the)
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star大変読みやすく理解しやすい

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 また翻訳で気付いた話をしよう。レビューの丸訳よりはこういう一般論をする方がおもしろい。「チェス翻訳の話」が記事の締めくくりで復活である。「近況 報告〜主文〜締めの話」の構成は、一般的なメルマガに似てきたかもしれない。

 extra pawnを皆さんはどう訳すだろうか。用語的には「余分のポーン」とする場合が大半だろう。しかし、この言葉は聞くたびにひっかかる。「余分な話」のよう なマイナスの意味を感じてしまうからだ。実際、この言葉はそういう意味に使われる方がはるかに多い。
 局面の説明を含めてなら「駒得のポーン」とすることもできるが、局面が既知の場合は冗長になる。それに、ポーンの終盤で相手と比べてあるファイルにだけ ポーンが余分にあるなどというときは、他の言葉ではニュアンスが出しにくい。

 類語辞典を引くと、硬いがニュアンスがより平明な「余剰」しかないと判断して、今ラスカー訳等で使っている。「余分ポーン」と言えるほど用語としての結 びつきが強ければ、ニュアンスは度外視して使うが、それほどの言葉とは思えない。
 ロケ撮影の「エキストラ」じゃあるまいし、「エキストラ」としなければならないほど特殊な概念とも思えない。余分「な」ポーンという風に形容動詞にする とマイナスイメージ全開になるから、使う場合は余分「の」に限定すべきことだけは言える。
posted by 水野優 at 00:01| Comment(2) | チェス(洋書評 終盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月20日

Pandolfini『Pandolfini's Endgame Course』

 今回は、1988年に出てから初心者用終盤本の定番となったパンドルフィーニの"Pandolfini's Endgame Course"だが、中級者にもひ じょうに役立つ本である。私も以前持っていたが、こういう本を全部マスターしたわけでもないのに手放す時点で実戦への気合はなくなっている(汗。

第1部:ピース編。
 その第1章は、「K+Q+R v. K / K+R+R v. K / K+Q v. K / K+R v. K」といったメジャーピースで裸キングをメイトするテクニックを扱う。ステイルメイトを避ける手待ちさえ覚えれば初心者でもそれほど難しくないケース だ。
 第2章は、「K+B+B v. K / K+B+K v. K」のマイナーピース編。 特に後者は、中級者でも間違えて50手ルールドローになる可能性がある。実戦ではほとんど生じないが。
 第3章は、「K+Q v. K+Q / K+Q v. K+R」のメジャーピース 対決編。
 第4章は、「R v. B / R v. N / R+B v. R」のルック対 マイナーピース編。この2章は、駒が互角なら通常ドローだが、著者は勝敗が付く例外を強調する。

第2部:ポーン編。
 終盤の要。「K+P v. K / K+2P v. K /  K+P v. K+P / K+2P v. K+P」を重点的に、それ以上のポーンまで扱う。オポジション、テンポ、トライアンギュレーション等のテクニック解説もあって十分の内容。

第3部:ピースとポーン編。
 「Q v. P(s) / R v. P(s) / B v. P / N(s) v. P / B+P (v. K) / B+P v. P / N+P (v. K) / N+P v. P / Q v. R+P / Q+P v. R+P / Q+P v. Q / R+P v. R / R+P(s) v. R(+P) / B+P v. B / K+P v. N / B+P v. N / N+P v. B」という多様なケースを扱う。重要なルックルセナフィ リドール局面もしっかり説明。

 1ページ1題という見やすさと分かりやすさもいい。長い手数を要す るパターンは数題に分割するなどの工夫をすることで、わずらわしい多 くの枝分かれを追う負担も軽減している。長い前置きを読まずにすぐに問題に 挑戦しながら同時に学んでいける気安さが取り組みやすい。誤植は、忙 しいパンドルフィーニには付きものなので大目に見よう(笑。
Pandolfini's Endgame Course (Fireside Chess Library)
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starこれ以上分かりやすいものは無いでしょう
star実戦で役立ちました

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posted by 水野優 at 00:01| Comment(0) | チェス(洋書評 終盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月12日

Mueller&Lamprecht『Fundamental Chess Endings』

 野球は、日米ともプレーオフや監督去就、阪神は別の話題で盛り上がっているが、私にとっては昨日のヤクルト−横浜戦に目が離せなかった。青木の200安 打、若松監督退任と佐藤真一の引退である。そして勝ったから、まだ金曜の最終戦でAクラスへ滑り込める可能性は残した。


 終盤本の3冊目は、ミュラーとランプレヒトの"Fundamental Chess Endings"である。これはロレンさんが推薦しているし、松戸クラブで持っている人からもいい評価を聞いている。著者はドイツ人で、それぞれ終盤の権 威であるGMとトレーナーのIM。同じ共著の"Secrets of Pawn Endings"も好評を得ている。
 出版社レビューによると、終盤のテーブルベースとこれにアクセスする分析エンジンを用いている。書いている私がよく分かってないが(汗、終盤のデータ ベースを利用して効率化とミス防止を図っているのだ。封じ手のない現代トーナメントに対応する実戦的かつ包括的な21世紀のレファレンスとしている。

 amazonカスタマーレビューに「ぶ厚いけど」とあるが、416ページなのでファインの"Basic Chess Endings"よりはかなり薄い。S. Evan Kreiderのレビューでも、ファインBCEやBCE("Batsford Chess Endings")よりは局面のパターンが少ないとある。
 しかし、それは実戦でよく現れる形にしぼった結果である。そのあたりの事情はもう一つのamazonカスタマーレビューと一致する。では、 Kreiderのべた褒めレビューから最後の部分を引用して訳す。


This book also serves as an excellent instructional text, with thorough and clear discussions of the principles, techniques, and ideas underlying the various endings.  The text includes plenty of appropriate examples, and even has practice problems which help the reader assimilate the information.  The book ends with a chapter of exercises for further practice, and another chapter summarizing the most important endgame strategies and principles.  In conclusion, I wholeheartedly recommend FCE.  If you can only afford one of these three encyclopedias, get this one.
 本書は、様々な終盤の根底にある原則やテクニックや考え方を徹底的かつ明解に検討した最高の(参考書であるとともに)指南書でもある。多数の適切な実例 を含むほかに、読者の理解の助けとなるプロブレムの練習もある。最終章は力試しの練習問題、そしてもう一章は、終盤の最も重要な戦略と原則のまとめとなっ ている。結論として、FCEを心から推薦する。3つの終盤百科(+ファインのBCE+BCE)の中から一つしか買う余裕がないなら、本書を買うべきであ る。


 Richard Palliserのレビューによると、BCEの頃と比べても終盤のセオリーは、ナンのような専門家(テーブルベース作成)やコンピュータのおかげで進歩し てきたという。その成果が、レファレンスであると同時に優れた学習書にもなっている本書である。
 ただ、R+2P vs R+Pのようなものはあまり扱っていない。これはポーンを交換してR+P vs Rにしてからそちらを参考すべきということだろう。クイーンの終盤はナンの"Secrets of Practical Chess"を拠り所としている。局面図の中に○や☆を使って説明したりもしている。
 BCEとの比較は難しいが、BCEでセオリーを詳述されている少数の終盤はFCEでは抜けており、R+マイナーピース+Pは実践で起こる確率が15%未 満のものも省かれている。しかし、テーブルベースによるピースが6個までの終盤は網羅されている。

 後者のレビューを訳すべきだったかもしれない。John Watsonは、レファレンスとしては本書の方が便利としつつも、"Dvoretsky's Endgame Manual"の方がいいと言っている。これもいずれ取り上げよう。
Fundamental Chess Endings
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starJust Great
starぶ厚いけど

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posted by 水野優 at 15:05| Comment(5) | チェス(洋書評 終盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月05日

Speelman他『Batsford Chess Endings』

"The blunders are all there on the board, waiting to be made." - Tartakover
「ポカは、盤上のあらゆる場所で指されることを待っている」−タルタコーワ

 訳を続けているラスカーの『チェス戦略』は序盤のクイーンポーンゲームに入ったが、さすがに前世紀初頭の本だと序盤はどうしようもなく古い。このへんは いずれ別の本でカバーしていこう。それでも考え方やその変遷を見るのは楽しい。


 久しぶりに終盤本のレビューをしよう。当分は総合的な本を優先するので、今回は"Batsford Chess Endings"だ。BCEと聞くと私は以前紹介したファインの"Basic Chess Endings"のことと思うのだが、一般的にはBCOの姉妹本となっている"Batsford..."の方を指すらしい。
 「ベーシック」も国際式表記等で改訂されたとはいえ、「バッツフォード」の新しさにかなわないところがある。コンピュータのチェックが入っていることも そうで、信頼できる参考書としては「バッツフォード」の方が一枚上ということになる。
 では、その続きになるが、以下にChessvilleからの引用と訳を記す。


In general, the content is quite good.  Each position is thoroughly analyzed, with a concise explanation of its underlying principles when appropriate.  Important sections also conclude with brief discussions of general principles and techniques.  For example, the K+P section concludes with concise explanations of opposition, triangulation, corresponding squares, etc. 
 全体的に内容はとてもいい。すべての局面は徹底的に分析されていて、適宜、根底をなす原則に関する簡潔な説明が付いている。重要な区切りでは、一般的な 原則およびテクニックに関して手短な考察で締めくくっている。例を挙げると、K+Pの項目は、オポジション、三角法、対応マス等の簡潔な説明で締めくくっ ている。

However, its conciseness, while making it an excellent reference work, make BCE less useful as an instructional text, especially for the intermediate player who may be encountering some of these concepts for the first time.  So given a choice between  FBCE and BCE, I’d recommend FBCE as the better instructional text of the two, and BCE as the better reference source, but I’d qualify both recommendations with the various shortcomings mentioned above.
 しかし、すぐれた参考資料たらしめている簡潔さが、学習書としてのBCEを使いにくいものにしている。とりわけ、初めてこれらの概念に触れるという中級 プレーヤーにとってそうである。したがって、ファインのBCEとBCEの選択はと言われれば、学習書としてはファインのBCE、参考資料としてはBCEの方を推薦 する。ただし、上記の様々な欠点も含めた上で。


 このレビューによると二者は一長一短だ。たしかに、基本的に序盤手順の羅列にすぎないBCOの姉妹終盤本(表紙がそっくり)と考えれば納得がいく。用語 で一つ気になるのがcorresponding squaresで、とりあえず「対応マス」としたが用語集に加えねばならない。
 これについては、いとうせいこうさんのブログを見れば一目瞭然だが、ブロックされたポーン形等のためにディスタンス オポジションが複雑になったケースで、相手キングがいるマスに対してキングがオポジションを取れるマスの対応関係を示すためにマス目に数字を付けているのである。
Batsford Chess Endings
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2005年08月20日

Reuben Fine『Basic Chess Endings』レビュー

 わざわざこのくそ暑い時期に1km弱歩いて最寄りの図書館(分館)へ行くのもなんだから、和書の書評はしばらくお休みにする。手持ちのもまだネタはあるが、チェスの翻訳や例会準備、そして何より本業をもっと優先せねばならない(汗。
 
 今回は、まだやってないジャンル終盤本、私がかつてポーンの部分だけワープロ専用機印刷&コピーでひどい訳を作ったReuben Fineの"Basic Chess Endings"である。以下、「チェス書レビュー」より転載する(汗。
 
 世界チャンピオン以外で最強のプレーヤーの一人ルーベン・ファインは、晩年は心理学書も含めて著作に専念した。本書はその中でも特に名著である。'41初出だけに間違いが多かったが、"Chess Life"誌上でその多くが指摘され、Samuel Louiによる"Basic Chess Endings Correction"なる小冊子までが作られた。
 現在の新版ではもちろんそれらの間違いはPal Benkoの監修で訂正され、記譜も代数式に改められている。

 '69年版から目次を章タイトルだけ引用する(目次だけで6ページある)。
 1.基本のメイト
 2.キングとポーンの終盤
 3.ナイトとポーンの終盤
 4.ビショップとポーンの終盤
 5.マイナーピースの終盤
 6.ルックとポー ンの終盤
 7.ルックとマイナーピースの終盤
 8.クイーンの終盤
 9.結論とまとめ
 
 Basicというタイトルは似つかわしくないボリュームである。残り駒のケースで理路整然と分類されていることがBasicなのかもしれない。5章以降 はもちろんポーンがある局面も含まれる。例外的なケース(例えばK+2P vs KでドローやK+2N vs K+Pで勝ち)も多く言及している点が特徴として挙げられる。
 なので、レファレンスとしての意義が大きいといえよう。実戦で出くわす頻度が高い終盤を手っ取り早く学びたいとか、初心者がとりあえず一通り終盤を勉強するには向いていない。最後までやれずに挫折すること請け合いだ(笑。
 
 第9章のまとめ15箇条を引用して訳そう。600ページ弱のボリュームを極限まで凝縮したありがたい内容である。
 
1. Double, isolated and blockaded Pawns are weak: Avoid them!
2. Passed Pawns should be advanced as rapidly as possible.
3. If you are one or two Pawns ahead, exchange pieces but not Pawns.
4. If you are one or two Pawns behind, exchange Pawns but not pieces.
5. If you have an advantage do not leave all the Pawns on one side.
6. If you are one Pawn ahead, in 99 cases out of 100 the game is drawn if there are Pawns on only one side of the board.
7. The easiest endings to win are pure Pawn endings.
8. The easiest endings to draw are those with Bishops of opposite colors.
9. The King is a strong piece: Use it!
10. Do not place your Pawns on the color of your Bishop.
11. Bishops are better than Knights in all except blocked Pawn positions.
12. Two Bishops vs. Bishop and Knight constitute a tangible advantage.
13. Passed Pawns should be blockaded by the King; the only piece which is not harmed by watching a Pawn is the Knight.
14. A Rook on the seventh rank is sufficient compensation for a Pawn.
15 Rooks belong behind passed Pawns.
 
1.ダブルポーン、アイソレートポーンができたり、ポーンがブロックされると弱点になる。そうならないようにせよ!
2.パスポーンは可能なかぎり速く進めるべきである。
3.1,2個ポーン得していれば、ポーンではなくピースを交換せよ。
4.1,2個ポーン損ならば、ピースではなくポーンを交換せよ。
5.優勢ならは、ポーンが盤の片側だけに残らないようにせよ。
6.1ポーン得でポーンが盤の片側だけにしかなければ、99%ドローになる。
7.最も勝ちやすいのは、ポーンだけが残った終盤である。
8.最もドローにしやすいのは、色違いビショップの終盤である。
9.キングは強力な駒である。活用せよ!
10.ポーンを自分のビショップと同じ色のマスに置くべからず。
11.ビショップは、ポーンがブロックされた局面以外では常にナイトより勝る。
12.2ビショップは、ビショップ+ナイトより実質的に有利である。
13.パスポーンはキングでブロックすべきである。ポーンの見張りをしても痛手にならない駒はナイトだけである。
14.7段目に突入したルックは、1ポーン分の代償に匹敵する。
15.ルックはパスポーンの後ろに配置せよ。
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posted by 水野優 at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | チェス(洋書評 終盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする