ホームページは「チェストランス」です。古い記事では図の駒が表示されません。

2005年10月03日

Yakovich『The Complete Sveshnikov Sicilian』

"When you see a good move wait - look for a better one." -  Emanuel Lasker
「好手を見つけ出したときは、もっといい手を探すべし」−エマヌエル・ラスカー

 思ったより暑さがぶり返したため予定の服が着られずいやになり、例会をさぼってしまった(汗。買い物もしたかったのに(またついでだ。大会は別と して、行きやすい松戸会場だけでいいかなという気もしてくる。来春にJCAの更新をする気にはなれないから、その後は(あれば)勉強会と朝霞の大会だけか も。


 先月の大会後の打ち上げのとき、Ohtakeさんからシシリアン・シュヴェシュニコフのメインラインでは 9 Bxf6より 9 Nd5が主流になっているという話を聞いたが、『JCA通信』1140のYamagishi - Iwasaki戦について福岡チェスクラブ掲示板でのYamagishiさんのコメントでも、9 Bxf6のラインはいずれ 15...f4がきついから云々とある。
 私もICCFの世界選手権セミファイナルで、15..f4ではないがじり貧でつぶされたことがあるので 9 Bxf6には疑問を感じていた。白の戦略的構想よりも黒のキング側での戦術の方が勝っているように思えるからだ。"Beeting Sicilian 3"に 15...f4がないというのではお話にならない。

 激しいラインは本をあてにしてもだめとはいえ、それではレビューにならないのでシュヴェシュニコフ本を紹介する。私もかつて同様の古い本を持っていたが 手放 してしまった。各レビューによると、手順の羅列が主であることも似ている。"Complete"というタイトルはそういう傾向があるのかもしれない。
 では、BCMのレビューを引用して訳す。


This book marks Russian grandmaster Yuri Yakovich’s debut as an author. It is a well-indexed, up-to-date and skilfully cross-referenced opening manual which will be essential reference material for existing aficionados of the Sveshnikov, if somewhat intimidating for anyone trying to set up a repertoire from scratch. It is packed full of variations and relatively short on text, though the author does volunteer his own opinions and assessments.
 本書はロシアのグランドマスター、ユーリ・ヤコヴィッチの記念すべき初著作である。索引が詳しく、巧みに相互参照できる最新の序盤本は、現存するシュ ヴェシュニコフ・マニアには必須の参考資料となるだろうが、ゼロからレパートリーにしようという読者にはいくぶん尻込みする内容となっている。変化手順に 満ちあふれていて文章は少なめだが、著者自身の自発的な意見と評価も見られる。


 手順の羅列より各変化の狙いや考え方を売りにする序盤本が多い中で、そんなことにはあっさり見切りを付けたマニア本らしい。シュヴェシュニコフという名 前は19世紀にこの変化を有名にしたEvgeny Sveshnikovによるが、1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e5という手順は、ラスカー、ペリカン、ピルニックとも呼ばれる。
 著者によると、純粋なシュヴェシュニコフは、1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e5 6 Ndb5 d6までを指すらしい。本書ではもちろん他の白の6手目も扱っている。









6...d6まで

 マニア向けというだけあって、古いバード・ヴァリエーション(7.Bg5 a6 8. Na3 Be6)も当然あり、肝心の 9 Nd5も 9 Bxf6の6章分に近い5章分で扱っている。
The Complete Sveshnikov Sicilian
1901983714 Yuri Yakovich

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2005年09月29日

gambit誤訳〜Barden他『Guide to Chess Openings』

"Life is too short for chess." - Henry J. Byron
「人生はチェスをするには短すぎる」−ヘンリー・J・バイロン

 無料で使えるネット上で最大の英語辞書「英辞郎」に、gambitの和訳が おかしいから訂正を求めた話を以前したが、相変わらず「《チェス》打ちはじめの手、序盤の手、先手」のままだ。もしやと思って手元の英英辞典を引いてみ た。チェスに関連する意味だけ以下に記す。

Longman Handy Learner's Dictionary '88
an opening move in a game.
Longman Dictionary of Contemporary English '03 a planned series of moves at the beginning of a game of CHESS.
Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English '80
kinds of opening move in chess (in which a player sacrifices a pawn or other piece to secure certain ends).
Oxford Advanced Learner's Dictionary '00
a move or moves made at the beginning of a game of CHESS in order to gain an advantage later.
Concise Oxford English Dictionary '01
(in chess) an opening move in which a player makes a sacrifice, typically of a pawn, for the sake of some compensating advantage.
Randomhouse Webster's College Dictionary '91
an opening in chess in which a player seeks to obtain some advantage by sacrificing a pawn or piece.

 意外なことだが、最低限入っていてほしいsacrificeの概念を半分しかクリアしていない。ロングマンが総崩れで、オックスフォードはなぜか小型本 がcompensatingまで入って完璧なのにOALDの新版でアウトという結果だった。
 この本家の結果を踏まえると日本の大型英和辞典は優秀だ。ついでだ からこれも以下にまとめよう。中でも「ジーニアス英和大辞典」には、triangulationに「終盤キングのトライアンギュレーション」の意味が載っ ているからたまげる。他の辞典では「三角測量」しか見たことがない。

ジーニアス英和大辞典
(ポーンなどを捨て駒にする)序盤のさし手
ランダムハウス英語辞典
(主としてポーン(pawn)などを犠牲にして行う)序盤の仕掛け
リーダーズ英和辞典
(pawnなどを捨てゴマにする)開戦の手

 英辞郎で「先手」とされているのは、「交渉等で先手を取る」という gambitの一般的用法からチェスの先手を類推したのだろう。しかし、単に先手 といえば白番のことだから、まだ主導権の方がよかった。ギャンビット はまさにinitiativeを取ろうとする作戦なのだから。


 さて、前置き(?)が長くなったので預かっている本のレビューをおまけ程度に片づけておく(汗。バーデンハー ディングの"Guide to the Chess Openings"である。キーンとレヴィの本と同様古くなってしまった。こういうのを見ると、半分強で止まっているファイン本の訳を早くやらねばと思 う。
Guide to Chess Openings
0713432136 Leonard Barden T D Harding

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2005年09月27日

Kosten『The Latvian Gambit Lives!』

"Chess is as much a mystery as women." - Purdy
「チェスは、女性に負けず劣らず神秘的である」−パーディー

 昨日、TBSの『ウォーターボーイズ2』再放送を見ていたら、「男子チェス部」なるものが出てきた。実際に映ったのはその創部申請書だけで、女 子と仲良く遊ぶという活動内容を女生徒会長に却下される。全くの名ばかりなので、何でもいい名称になぜチェスが使われたのかも分からずじまいだ。
 大阪時代には似たような話があった。京大以外にはいちおう桃山学院大にもサークルがあった頃である。桃山学院の活動はトランプとかをしていたらしい。チェスは優劣がはっきりするので人間関係が悪くなる。特にそれでは女子がやめてしまうという理由だった(笑。
 阪大のサークルは、たしか私と入れ替わるように設立されたようだ が、今も健在なのだろうか。


 今回は、予告していたように、ラインフェルドの"Complete Book of Chess Openings"の訳で序盤 を説明しつつのその序盤本のレビューをしよう。p.24-25を図を増やして訳すが、ラインフェルドの評価は手厳しい。


グ レコ・カウンター・ギャンビット(ラトヴィアン・ギャンビット)

 もう一つカウンター・ギャンビットがある。黒が早々と白から主導権を奪おうとする試みである。そのこと自体が疑わしい。このカウンター・ギャンビットを さらにいっそう疑わしいものにしているのは、愚かにも白の最も強力な展開手 2 Nf3の応手だということである。

1 e4 e5 2 Nf3 f5










 黒のfポーンの前進は時期尚早である。黒のキングの守りを弱め、白に恐ろしい攻撃ができる時間的余裕を与えてしまう。

3 Nxe5

 4 Qh5+を狙っている。4...g6なら 5 Nxg6. したがって黒の応手は、

3...Qf6 4 d4 d6 5 Nc4 fxe4 6 Nc3 Qg6









6...Qg6

 白は展開で勝っているが、黒の戦力は分断されている。黒のクイーンは、クイーン側からみじめに離れていく。

 狡猾な 6...c6はうまくいかない。7 Nxe4 Qe6 8 Qe2 d5 9 Ned6+ Kd7 10 Nf7!!









10 Nf7!!

7 Bf4 Nf6 8 Ne3 Be7

 8...Be6だと、9 d5に続いて 10 Qd4で、黒の陣形は寸断されてeポーンが弱くなる。

9 Bc4 c6 10 d5!









10 d5!

  白は、優れた展開のおかげではっきりと優勢である。黒は、eポーンが自然な...d5の支持を失い、クイーン側の展開の見通しが暗いままである。


 NCOだと、7 Bf4のところで 7 f3!から最終的に+/-だから、さらに白がよくなっている。「皇帝の正しくない チェス」の皇帝閣下は、こんな評価にひるまれないと思うが、皇帝さんが2つお持ちのKostenのラトヴィアン本、新しい方を下に貼っておく、といってもそれも品 切れだ。
 このKostenはフィリドール・ディフェンス本も出しているか ら、ニッチな分野でトップを目指すという気概が伝わってくる。手元の預かり本では、Chess Digest社の"Latvian Gambit (1977 Edition)"というのがある。93ページのタイプライター打ちのコピー本仕様が泣かせるが、7 f3!はない。
The Latvian Gambit Lives!
0713486295 Tony Kosten

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2005年09月24日

Reinfeld『Complete Book of Chess Openings』レビュー

"Chess is 99 percent tactics." - Teichmann
「チェスは、99パーセントが戦術である」−タイヒマン

 今春に例会に復帰した頃から思っていたのだが、現在のチェス界は30代のプレーヤーが少ない気がする。とにかく松戸クラブにはほとんどいないのだ。 '70年前後生まれで'90年前後にチェスにはまった人自体が少ないのだろうか。
 今年の全日本選手権参加者から外国人を除いた38人の中では、30代は5人いるから10代の多さを別とすれば、少ないとはいえない。'80年代のチェス 和書出版ラッシュ(?)ではまった40代以上と、ネットではまった20代以下にはさまれた、「すきま」世代との予想は外れたようだ。
 単に、30代は仕事、結婚、子供で忙しくなってチェスどころではないからという意見もありそうだが、私が大阪の頃は周りが少し年上の30代が主力だっ た。好きならその程度のことでチェスを指せないことなどなかったのだ。今ならネットがあるからOTBからはリタイヤしそうだけど(笑。


 今回は、またラインフェルド本。やはりキヨスクにあるようなハンディーな新書サイズ。それでも元は2つだったのを合本したものらしい。手元のは'58年 物で1.95ドル。この時代に100%再生紙と書いてあることなどに感心してしまった。日本のエコが遅れすぎているのか。
 143番までの局面図番号がやたら目立つが、30余りの序盤定跡を手短に解説したものである。ルイ・ロペスに2ページ、シシリアンに8ページ、ニムゾ・ インディアンに12ページというばらつきはあるが、メジャーな序盤はそれなりに詳しく扱う姿勢はある。このへんが一般的な和書との違いかもしれない。

 これも古いとはいえ、ここで一つずつ紹介するには量的にいいなどと考えてしまう。それに最新の序盤本のレビューをくっつければ、私の序盤解説が楽になっ て一石二鳥だ(汗。また、これといった文章がないので、「著者について」の前半を引用して経歴に触れておこう。


 The late Fred Reinfeld was an editor of Chess Review and a master chess player; he was former champion of the Marshall and Manhattan Chess Clubs and a former New York State Champion. Here, Mr. Reinfeld had applied his vast knowledge of board strategy to chess openings and variations for the beginner and the experienced chess player.
 後年のフレッド・ラインフェルドは、『チェス・レビュー』誌の編集をするマスター級のプレーヤーだった。マーシャルおよびマンハッタン・チェス・クラブ の元チャンピオンで、ニューヨーク州のチャンピオンにもなっている。本書で、ラインフェルド氏は、初心者から経験豊かなプレーヤー向けに、自身の該博な盤 上戦略に関する知識を序盤定跡と変化手順の解説に生かした。
Complete Book of Chess Openings
0706124006 Fred Reinfeld

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2005年09月22日

Sokolsky『Modern Openings in Theory and Practice』レビュー

"Chess is a beautiful mistress." - Bent Larsen
「チェスは美しい愛人である」−ベント・ラルセン

 今朝は、「東京大学チェスサークル」の問題が4つまとめて上がっていたが、いつもより易しめとはいえ全部解くのに1分かからなかったのでうれしい。「継 続は力なり」とは言うが、最近は詰み上がりや駒得が一瞬で見えるケースが増えてきた。8年のブランク前を超えたかもしれない。しかし「本郷チェスの会」の 易しめ問題は★3つでも解けないと憂鬱だ。もっとも解答は確認してないのだが(汗。


 絶版本が続くが、ソコルスキーの"Modern Openings in Theory and Practice"である。ソコルスキーはオランウータンの別名を持つ 1 b4のパイオニアであり、プレーヤーとしてより邦訳された『百万人のチェス』の著者としてよく知られていると思う。
 序盤と中盤のみを扱ったという点では異色の本かもしれない。著者については、以下に引用した英訳者H. ゴロムベクとE. シュトラウスの序文の最初とその訳を見ていただこう。


This is Alexei Sokolsky's last book - he died on 27 December 1969, at the age of sixty-two. An original thinker on the openings, he did not confine his interest to them as such, thereby avoiding the trap into which so many opening theorists fall of regarding the opening phase of the game as self-contained and separate from the rest of play. This was very apparent when I met him on my visit to Russia (H.G.). In contradistinction to the other well-known opening experts there he was much more intent on seeing how the game developed out of the opening, as indeed he indicates in the Preface that follows.
 本書は、1969年12月27日に62歳で没したアレクセイ・ソコルスキーの最後の本である。独創的な序盤の考案者であるが、関心をそれだけに留めず、じつに多くの理論家が陥る「序盤を残りのゲームの段階から切り離してそれだけで満足すること」を回避している。このことは、ゴロムベクが彼をロシアに訪ねたときにはっきりと分かった。他の著名な序盤の専門家とは対照的に、ソコルスキーは、続く「序文」の中で実際に述べているように、ゲームが序盤から先どのように展開するかにもっと重点を置いて考察している。


 本書は「十年留保」に該当するから、古くても例によって訳したくなった。後半の定跡各論が古いのは致し方ないが、前半の「序盤と中盤の原則」は、内容が ここで一回ずつ紹介するのにちょうどいい量なので、ラスカー本の後釜にするかもしれない。
 amazonはマーケットプレースのみだが、現在新品で1000円余りは出品がamazonだしお得かも。
Modern Openings in Theory and Practice
0273314092 A P Sokol'skii

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2005年09月21日

Levy & Keene『How to Play The Opening in Chess』レビュー

"A man surprised is half beaten." - Proverb
「意表を突かれた方は負けたも同然である」−ことわざ

 お笑い芸人、ダチョウ倶楽部の上島竜平が「そんなお前にチェックメイト」という意味不明のギャグをはやらせようとしている。たまたま本人が「チェックメ イトは王手のことだから…」と説明していたから誤用らしいが、「チェック」だとさらに意味不明かもしれない。いずれにせよ、はやらないと思う(笑。


 絶版本ばかりになるが、一時預かり本のレビューを続ける。"How to Play The Opening in Chess"、このタイトルの本だけでもけっこうありそうだが、リーヴィとキーンの本書は、書棚の奥に眠らせているオールドファンが多いのではないだろう か。
 20年前からJCA事業部の書籍リストでタイトルだけは知りながらもう見ることはないと思っていた本書が、ハードカバーで今目の前にある。その間に残念 ながら各定跡を説明する多くの変化筋は時代遅れになってしまった。古い定跡の比率が多い分余計にそう感じる。

 裏表紙や序文では、「手順の羅列より定跡の狙いを論じる」という考え方が示されており、これはファインの"The Ideas behind the Chess Openings"からの流れを脈々と引き継ぐものである。しかし、30年以上後に世に出た本書の方が先に消えてしまった。
 キーンに関しては、「キーンの本など読みたくもない」というmaro_chroniconさんの言葉で十分だろう(笑。リーヴィは序盤とチェス・コン ピュータに明るいイギリスのIMで、"How to Beat Your Chess Computer"なんて本もこのコンビで出しながら、ずいぶん早い時期にコンピュータとのマッチに惨敗して赤っ恥をかいてしまった。

 大半を占める定跡各論の前に、展開、戦術、ポーンについて触れ、その後で「序盤の心理」を扱っているのが興味深い。この5ページでは、当時の記憶も生々 しく'72年の世界選手権の序盤戦での駆け引きについて語られている。その最後の部分(p.44)を引用して訳す。


 In fact, that 1972 World Championship Match is a good, practical demonstration of the psychological tactics we have discussed. We have already stated that Fischer's attitude was to go all out for the win in every game, and not only did he produce innovations in play to that end, he also innovated in his choice of opening. Fischer was known to play certain openings as White and as Black, and he started by playing these. He then switched and started to play 1 c4 - the English Opening - instead of his usual 1 e4. As Black he normally played the Najdorf Sicilian, but in the match he played the Alekhine, and the Pirc. This constant switching to openings that he had never usually played, combined with his playing them well, put great pressure on Spassky, who frequently came out of the openings with a bad position, sometimes as early as move eight or nine. Even as White he often got a dismal position from the opening.
 実際に、1972年の世界選手権は前述した心理的戦術を実証した好例である。すでに、フィッシャーは全ゲームを勝つつもりだったと述べたが、その ために新手を生み出すだけでなく、序盤の選択にも新機軸を打ち出した。フィッシャーは白と黒で決まった序盤を指すと思われていて、最初はそのように指し た。それから、いつもの 1 e4を替えて 1 c4−イングリッシュ・オープニング−を指し始めた。黒番では通常シシリアンのナイドルフのところを、アリョーヒンやピルツを指した。このようにいつも指 さない序盤へ絶えず切り替え、しかもうまく指すことで、スパスキーはたいへんなプレッシャーを受け、しばしば早ければ8手や9手目で序盤の局面が不利に なった。白番でさえ、序盤からみじめな局面になることも多かった。
 Fischer's success showed that he had analysed how Spassky handled the openings, found certain weak spots, and then exploited them. The fact that he changed to fresh openings for himself indicated that he wished to prevent Spassky doing the same for him.
 フィッシャーの成功から、彼がスパスキーの序盤の対処の仕方を研究し、弱点を見つけてそれにつけ込んだことが読み取れる。新しい序盤定跡に変更したの は、スパスキーに同じことをされたくないからである。
How to Play the Opening in Chess
0713471158 Raymond Keene David Levy

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2005年09月16日

Beliavsky & Mikhalichishin『The Two Knights Defence』レビュー

 私は20年前に初めてJCAの公式戦に参加したときに、標準サイズのチェスセットに 初めて触れたので、その初戦でメイティングに来た相手のクイーンがモアイ像のように巨大に見えたことが未だに忘れられない。それまでは盤の一辺が30cm を超えるセットを使ったことがなかったのだ。
 今ならさしづめ、ネットでしか指したことがない人が初めて実戦の大 会に出るようなものだろうか。その場合は立体の駒を見ることが初めて かもしれないし、クロックや棋譜の管理もたいへんな負担になるだろう。座高が低いジュニアの場合は盤面を俯瞰するローアングルが不利なこともあり得る。

 経験を積むほどに駒の配置を抽象的に捕らえられるようになるとはいえ、日頃から通常のセットを使っているに越したことはないだろう。フィッシャーが世界選手権後ロスに住んでいた頃は、友人の話だと家でもポケットチェスで研究していたらしいが、このレベルになると話は別だ。
 ネット対戦ソフトを含めたディスプレー上のビューワーだと、たいて い盤面を真上から見下ろし、駒は区別しやすい真横から見た形になっている。といってもキングとクイーンは王冠だけ、ビショップは帽子だけだ。この構図、イ ンドの壁画に残るチャトランガを指す絵に似ていないだろうか(笑。
 そう考えると3D表示の対局ソフトは見かけ倒しというより、案外捨 てた物じゃないかもしれない。最低17インチのディスプレーでフル画面俯瞰表示にすべきだ。チェスにおけるこういう認知科学人 間工学的な研究も海外ではすでに進んでいるのだろう。


 ツー・ナイツにはまだ続きがある。1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bc4 Nf6の後、ギャンビットスタイルなら 4 d4、駒得主義なら 4 Ng5の分かれ道となる。4 d4にはスコッチ・ヴァリエーションという陳腐な呼び名があるものの、4 Ng5には特にないのが寂しい。それが無意味なほど先の変化が複雑だからかもしれない。
 4 Ng5はタラッシュ博士が「子供の手(child's move)」と読んだ曰く付きの手である。古典派派閥の親分シュタイニッツがけっこう指していても問答無用に批判している。序盤でまだ展開 が終わっていないのに同じ駒を二度動かすことは古典派の教義では許されなかったのだ。

 4 Ng5は、4...d5 5 exd5の後、黒が知らないと 5...Nxd5としがちだ。7月の松戸サマートーナメントでも1局あった。これには即座に 6 Nxf7とサクリファイスする手がある。Fried Liver Attackという変な名が付いていて、ネット上で 「レバーのフライ返し攻撃」なる名訳を見つけたときは笑った。
 これはまだ怪しいサイドラインもあるので、6 d4(Lolli Attack)の方が無難だと思う。メインライン 5...Na5以外にも、5...b5(Ulvestad Var.)や 5...Nd4(Fritz Var.)があり、この両者は同じ手筋になることも多く、逆に白が知らないと痛い目に合う実戦向けの変化である。









4...Bc5

 黒が4手目に 4...d5とポーンでf7を守る代わりに 4...Bc5!?と反撃するのが、Wilkes-Barre Var. (Traxler Counter-attack)である。4 Ng5が白が先手の利を生かす究極の 手なら、4...Bc5は白の一瞬の展開遅れを突いた至高の逆転技な のだろうか。
 今回紹介する本の著者は、'80年代にカルポフの 4 Ng5に対して f7のポーンを取るなら取ってみろと 4...Bc5を指したベリアフスキー。 私などは相手が誰であろうととてもOTBでは指せない。本書の宣伝文句を以下に引用して訳す。


The Two Knights Defence is the most exciting chess opening known to man and literally brims over with sacrifices and beautiful combinative ideas. Despite intensive invesitagtion by theoreticians it has lost none of its relevance and continues to be played at the highest levels of them odern game.
From the outset Black offers the sacrifice of the pawn, the consequences of which are a matter of heated controversy. White can also choose to play in gambit style if he so wishes or try to hold on to the material by hook or by crook.
 ツー・ナイツ・ディフェンスは、最もエキサイティングなチェスの序盤定跡として知られており、文字通りサクリファイスと見事なコンビネーションの狙いで あふれている。理論家の徹底的な研究にもかかわらず、実戦との関連を失うことなく、現代最高のレベルにおいても指され続けている。
 黒のポーン・サクリファ イスで始まるこの変化手順の結果は、熱い激論の頂点を成す。白は望むならギャンビット・スタイルも選べるし、何が何でも駒得にこだわることもできる。
(訳注:odernって何?と思ったが、them odernはthe modernの誤植と気付いた)

 本書は112ページだから(amazonのページ数情報は少なめの場合があるようだが)4...Bc5にそれほどページは割けないだろうが、ベリアフス キーは自分のゲームを載せているはずだ。エストリンにはこの変化を別冊で補完したが、残念ながら絶版となっている。
The Two Knights Defence (Batsford Chess Openings)
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2005年09月10日

Jan Pinski『The Two Knights Defence』レビュー

"Chess is a fairy tale of 1001 blunders." - Savielly Tartakower
「チェスは、千一ポカ物語である」−サヴィエリ・タルタコーワ

 職場の近くで住んでいる弟のアパートが取り壊しで追い出されるが、それほど安いアパートが見あたらないと実家から連絡があったので、ネットで調べてもっと安いアパートを見つけてプリントアウトし、クロネコメール便で送った。
 母親は、日本全国の賃貸住宅情報をネットで調べられることすら知らないし、実家にはファクスもないからどうしても送るには1日かかってしまう。かかってくる電話は実家のみ。相変わらずのローテクにはため息が出る(汗。


 私が8年間のブランク(最初は10年と思っていたのが縮まってきた)前に最も指していた序盤はツー・ナイツ・ディフェンスである。大阪のメンバーに 1...e5プレーヤーが多かったことと、郵便戦のテーマ戦にも参加したからである。
 この序盤は、白が黒の弱点f7への攻めが分かりやすいことと、東公平さんが『ヒガシコウヘイのチェス入門』と『チェス次の一手』の双方で多くの紙数を割いたこともあって、よく知られている。
 
 1 e4 e5 2 Nf3 Nc6、現代ではここからほとんど 3 Bb5のルイ・ロペス(スパニッシュ)になるが、ファインの"The Ideas Behind The Chess Openings"では、その他に唯一白がわずかな優位を残せる序盤として 3 Bc4を評価している。
 1 e4 e5序盤理論の中核を成すルイ・ロペスとはいえ、そのポジショナルな戦略は初心者には分かりにくい。白のBがb5-a4-b3-c2と4手もかかってもどってくるわりに黒は駒の展開が早いから、「白は何がいいの?」と思う人は多いだろう。
 
 3 Bc4(イタリアン)に対しては 3...Bc5と 3...Nf6(ツー・ナイツ)の二大応手がある。黒番で序盤を知らないという人には、3...Bc5の方をお薦めする。これも激しい手はあるから 3...Be7(ハンガリアン)や 3...h6でもいいかもしれない。
 それほどにこの序盤は知らないと一発で負ける。一般的な序盤理論に従って無難な手を選ぶだけでは不十分で、エストリンが言うように手順の「記憶」が重要となる。言い換えれば、記憶だけで勝てる場合もあるということである。
 
 残念ながら、長年愛用してきたエストリンの本はもうamazonに影も形もない。ルイ・ロペスに負けない歴史を持ちながらも激しい序盤故に評価の変動も激しく、古い本は用をなさなくなっていく。
 昨年出た以下の本は、現状ではツー・ナイツの全般をカバーしている唯一のものらしい。この序盤の性格をよく説明した宣伝文句を引用して訳す。


The Two Knights Defence is one of the trickiest tactical openings around. If White initiates complications with either 4 Ng5 or 4 d4, play becomes extremely sharp and gambits and counter gambits abound. Anyone who enters the murky waters of the Two Knights Defence must be well prepared for the mind-boggling complications that ensue. In this book, openings theoretician Jonathan Tait guides the reader through both the well-trodden paths of the main lines plus the less fashionable side variations of this most complex opening. Using illustrative games, Tait studies the key ideas and tactics for both Black and White.

 ツー・ナイツ・ディフェンスは、最も戦術がトリッキーな序盤の一つである。白が 4 Ng5か 4 d4による難解な局面で主導権を取れば、プレーは極めて鋭く、ギャンビットやカウンター・ギャンビットの応酬となる。ツー・ナイツ・ディフェンスの濁流にのまれる者は誰しも、引き続いて生じる圧倒的な困難に備えておかねばならない。本書では、序盤の理論家ジョナサン・テイトが、踏みならされたメインラインの道筋に加えて、この最も複雑な序盤のあまり知られていない変化手順にも読者を案内する。実例ゲームを使って、テイトは黒白双方からの重要な考え方や戦術を分析する。
 
 
 著者はポーランドの若手序盤理論家ヤン・ピンスキーなのに、このうたい文句にはジョナサン・テイトしか出てこないのはなぜだろう?という無責任な私である(汗。
The Two Knights Defence
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2005年09月03日

Yrjola & Tella『An Explosive Chess Opening Repertoire for Black』レビュー

"The winner of the game is the player who makes the next-to-last mistake." - Tartakover
「勝者とは、最後から二番目のミスを犯したプレーヤーである」−タルタコーワ

 「8月のスターデジオクラシック」で書き忘れたが、『のだめカンタービレ』というクラシック音楽をフィーチャーした漫画が人気だ。出てくるキャラ名義演奏のCDまで発売されている。クラシックで覆面演奏者は前代未聞ではなかろうか。
 しかし、なぜか曲目がブラームスの交響曲1番。こんな辛気くさい曲より、劇中も出てくるラフマニノフのピアノ協奏曲なんかにすればと思う。私はブラームスの方がいいが、スターデジオでかからないかな。
 
 うちからamazonで購入されるありがたい方々の傾向は、序盤本とテーマ別本に集中している感じである。そこでまたレパートリー系序盤本"An Explosive Chess Opening Repertoire for Black"を紹介しよう。
 前回までの「驚愕兵器」を連想させるタイトルだが、内容はちょっと変わっている。先にエディターレビューを引用して訳そう。
 
This book provides everything that the reader will need to play Black in a game of chess. Two expert Finnish players describe an exciting repertoire based on 1...d6 against any first move by White. Black's strategy is hypermodern and dynamic. White is encouraged to seize space, while Black develops his pieces rapidly and actively, waiting for the ideal moment to attack and destroy White's central bastions. The variations advocated have been proven in top-level play and have quick strike potential if White is careless or imprecise. The repertoire is based around the Pirc Defence and the variations 1 d4 d6 2 c4 e5 and 1 d4 d6 2 Nf3 Bg4, which fit seamlessly together with 1...d6 systems against White's various flank openings.

 本書は、チェスの黒番を指すために読者が必要なことをすべて提供する。フィンランドの二人のエキスパート・プレーヤーが、白のどんな手に対しても 1...d6とする刺激的なレパートリーを著した。黒の戦略はハイパーモダンにしてダイナミックである。白がいきおいスペースを制圧する間に、黒は迅速かつ積極的にピースを展開し、白の中央要塞を攻撃破壊する頃合いを見計らう。推奨する変化手順はトップレベルのプレーで実証済みであり、白が不注意または不適当な手を指せば、即座に一撃が入る可能性を秘めている。レパートリーは、ピルツ・ディフェンスと 1 d4 d6 c4 e5 や 1 d4 d6 2 Nf3 Bg4を基本とし、白の様々なフランク(側面)オープニングに対しても一貫して 1...d6システムを適合させている。
 
 黒は低く構えることで白の1手目がd4,e4関係なしの陣形を取ろうという考え方である。タルタコーワが名づけ、ニムゾヴィッチやレティが先陣を切ったハイパーモダン(超現代派)の考え方はレビューに書いてある通りだ。
 しかし、d4プレーヤーとe4プレーヤーは全く同じようには指してくれない。1 e4 d6 2 d4(ピルツ)と 1 d4 d6 2 c4 e5(オールド・インディアン)や 1 d4 d6 2 Nf3 Bg4(タルタコーワ・システム)では、かなりその後の展開が違うだろう。
 
 ピルツは、オーストリアン・アタック(2...Nf6 3 Nc3 g6 4 f4 Bg7 5 Nf3)には 5...c5、クラシカル(4 Nf3 Bg7 5 Be2 0-0 6 0-0)には 6...Bg4を推奨する。1 d4系もメジャーな序盤を避けることで意外と手順の幅を狭めることには成功しているようである。
 1 e4に対してすでにピルツを使っているプレーヤーが 1 d4に対しても間口を広げるのにはどうだろう。素直にキングズ・インディアンをやればいい気もするが、この二つは似ているわりには人気度がかなり違う。

 詳しいレビューはJeremy SilmanのHPにあるので、http://www.jeremysilman.com/book_reviews_rb/rb_explosive_chess_opening.htmlを参照されたし。ご多分に漏れず、Explosiveというタイトルははったりくさい(笑。
An Explosive Chess Opening Repertoire for Black
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2005年09月01日

Lev Gutman『The Budapest Fajarowitz: The Fajarowicz-Richter Gambit in Action』レビュー

"Short of actual blunders, lack of faith in one's position is the chief cause of defeat. To be sure, it is easy to recommend faith and not so easy to practise it." -Fred Reinfeld
「大ポカは問題外として、局面に対する確信の欠如は、敗北の第一要因である。たしかに、確信を持てと言うのは容易いが行うのは難しい」−フレッド・ラインフェルド

 熱帯夜にアイスノンを枕に寝るのが一つの楽しみになっていたのに、残念ながら(?)それもそろそろ終わり。急に涼しくなっても服を着るより冷房を切ったりわざと締め切って室温を変えないようにするのが好き(笑。
 
 
 EJCCの棋譜で大竹さんがFajarowitzで快勝しているゲームを見つけたので、「驚愕兵器」を対1.d4に替えて続けよう。黒が 1...Nf6とした場合、最も形の主導権を取れるのが 2 c4 e5のブダペスト・ギャンビットだ。
 普通はここでeポーンを 2...e6で留めておいてニムゾインディアン、クイーンズインディアン、ベノニとかになるところを 2...e5とぶちかます。しかも 3 dxe5と取られるとナイトに当たりになるというのに。
 
 ここでナイトが 3...Ng4と飛んで白のe5ポーンに反撃するのがブダペストのメインラインだ。ポーンを取り返せる 4 e4, Nf3に比べて、白がポーンアップを守る 4 Bf4が最近は主流のようで、黒は厳しそうである。
 '92年にベスト4から世界選手権挑戦者を決めるマッチで、ショートがカルポフに対してやけくそ気味に使ったときは驚いた。ベンコ・ギャンビット(2...c5 3 d5 b5)に比べると、持って行きやすくてディクラインしにくい利点はあるが、いかんせん評価が低い。
 私はかつてOtto Borikの薄い本を持っていて、一時期は対1.d4にこれ一本でやっていた。Fajarowitz(3...Ne4?!)も有名なはめ手でみごとに相手のクイーンをせしめたことがあったが、その後中盤の力不足で負けている(汗。

 ポーンを取り返す気などなくてひたすら攻めたいというなら、相手がまず対策など用意していない 3...Ne4で行った方がおもしろいのではないか。というわけで今回は、Fajarowitz Gambit本を紹介する。
 この変化筋だけで並のブダペスト本をしのぐ200ページ余りのボリュームというのがすごい。こういう本は得てして黒の楽観的評価が目に付いたりするものだが、黒がいいと思って指せばほんとに良くなることだってあり得る(笑。
 実は、Keres65さんの「スカンジナビアンは、(我々レベルで)もっともっと使われてもいいオープニング」というコメントに我が意を得て本書を選んだしだいである。では、書評が見あたらないので、以下の宣伝文句を引用して訳す。
 
The Fajarowitz variation of the Budapest Gambit is one of Black's most exciting options against 1 d4. Established "theory" has maintained a dim view of this line, which nevertheless has been a favorite of club players. In this groundbreaking work, Gutman, an International Grandmaster and expert on opening theory, rehabilitates this ancient gambit with his usual creative and original analysis. A cult in the making, it is a must for all club and tournament players.
 
 ブダペスト・ギャンビットのファヤロヴィッツ・ヴァリエーションは、1 d4に対する黒の最もエキサイティングな選択肢の一つである。確立した「理論」はこのラインを懐疑的としてきたにもかかわらず、クラブ・プレーヤーの間ではお気に入りであり続けた。革新的な本書において、グランドマスターかつ序盤理論のエキスパートであるグットマンは、このいにしえのギャンビットをいつもながらの創造的かつ独創的な分析によってよみがえらせる。カルト的出版、すべてのクラブ&トーナメント・プレーヤー必携の一冊である。
 
 なお、本書はBatsfordの分類ではIntermediate(中級者向け)となっている。
The Budapest Fajarowitz: The Fajarowicz-Richter Gambit in Action
0713487089Lev Gutman

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2005年08月31日

James Plaskett『The Scandinavian Defence』レビュー

"We must despise our opponents strategically, yet respect them tactically." -Mao Tse Tung
「戦略的には敵を見下し、戦術的には敵に敬意を払うべきである」−毛沢東

 もう一つのスカンジナビアン・ディフェンス本の予想までコメントでいただいたので、2冊の比較表まで作ってみた。持ってないのにここまでするのは、私もどちらかを買っておきたいからでもある(汗。
 ちなみにKeres65さんによると、
 
Scandinavian Defense: The Dynamic 3...Qd6
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は、著者は有名なマスターではなく、読みにくく重複も多いが、3...Qd6ラインをこれだけ集めたのは見事。意外とこのラインは使える。スカンジナビアンに興味と知識があれば、ある程度試してから読めばいいだろうとのこと(転載失礼)。

 上記は3...Qd6に限定した本なので別として、「前回の本」と「もう一つの本」との比較を以下の表にしてみた。大したデータは集まらなかったが、左の方が初心者向けといえる。スカンジナビアン本を買ったことがない私でも、なんとなく右の方がおもしろそうに思えるが。
著者 John Emms(GM) James Plaskett(GM) '90英チャンピオン
書名 The Scandinavian (2nd ed) The Scandinavian Defence
価格 ¥1,975(£14.99) ¥2,272(£15.99)
ページ数 176 192
出版年月 '04/11全面改定(初版は'97) '05/1
出版社 Everyman Chess Batsford
構成 2...Qxd5と 2...Nf6が半々 全12章。1〜5章の100ページが2...Qxd5、残りが2...Nf6
ゲーム数 72(郵便戦が多い) 不明。変化数は72
特徴 平明で分かりやすい 読み物的文体ゆえに英語的にも上級者向け


 では、右の本に関するChessvilleにあるレビューの最後の部分を引用して訳す。
 
The book is, I feel, not aimed at beginners in that is does not instruct the reader in the themes and ideas of the opening. It is more of a review of the state of the Scandinavian, and an interesting collection of games. It is ideal for a current practitioner of the Scandinavian wishing to update on theory or for somebody considering a switch of openings. There is much material to be absorbed, and goes a long way to bringing the Scandinavian into the mainstream. (Darren Radford)

 私が思うに、初心者向けではない本書は、読者にこの序盤のテーマや考え方を教えるものではない。むしろ、スカンジナビアン・ディフェンスの評価の再検討、あるいは興味深いゲーム集といったたぐいである。現役のスカンジナビアン使いで最新理論を知りたいとか、使う序盤の変更を検討しているプレーヤーには、理想的な本といえよう。取り上げたゲームは多数に上るが、スカンジナビアンを序盤定跡の主流にまで押し上げるには長い道程が必要である。(ダレル・ラドフォード)
The Scandinavian Defence
0713489111James Plaskett

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2005年08月29日

John Emms『The Scandinavian』レビュー

"A lively imagination can exercise itself most fully and creatively in conjuring up magnificent combinations." -Dr. S. Tarrasch
「生き生きとした想像力は、それ自体が、見事なコンビネーションを最も十全かつ創造的に生み出す魔法である」−S.タラッシュ博士

 怒濤のスカパーチェックも終わったから、毎度ながら本業の造形を頑張らねばならない。そんな中でなんで毎日こんなことを続けているのだろう。今週末は大会があるから序盤をまたおさらいしなけりゃならない。実戦を続けるのはやっぱり無理がある。
 
 初めて個別の定跡書を取り上げよう。全日本ジュニア選手権の小島−南條戦が、昔BCOを見て並べた記憶があるすごいライン(1 e4 d5 2 exd5 Nf6 3 c4 e6 4 dxe6 Bxe6 5 Nf3 Nc6 6 d4 Qe7 7 Qe2 0-0-0 8 d5 Qb4+ 9 Nc3 Bf5 10 dxc6 Bc5 11 cxb7+ Kb8)を指している。そのスカンジナビア(センターカウンター)・ディフェンスである。
 以前"Meeting 1 e4"というシシリアン・フォーナイツをメインとするレパートリー・ブックを紹介したが、シシリアンだと黒は白の 2 Nf3以外に 2 c3, Nc3やキングズ・インディアン・アタック(KIA)(g3, Bg2, d3, 0-0)対策も必要となる。
 
 スカンジナビア(1...d5)はKIAをさせない(2 exd5を強制する)唯一の手と言っていいだろう。2 d3?!には 2...dxe4と取ればいいし、2 Nc3ならそれ以外に2...d4と突いても黒は十分だ。
 左右逆の 1 d4 e5?!(Englund Gambit)と比べると、1 e4というひもの付いていないポーンにクイーンで守られているポーンを 1...d5とぶつけることは理にかなっている。
 白は望みなら 2 d4!?とBlackmar Diemer Gambitにする手もあり、黒は応じてもいいが 2...c6や 2...e6で無難にカロカンやフレンチにすることもできる。いずれにせよこの場合はスカンジナビアにはもどせない。
 
 2 exd5に対して 2...Qxd5と応じるのは、後にNc3とQを追われる手損の代名詞のようにあらゆる入門書で説明されている。攻めるのが好きなら、上記のゲームのように 2...Nf6がお薦めである。
 しかし、白が穏やかに 3 d4とせず 3 c4と守れば、黒にはギャンビット・スタイルで対抗する覚悟が必要となる。南條さんのIcelandic Gambit(3...e6)は強制ではないが、3...c6 4 d4でカロカンに移行する対策は必要である。
 
 ChessvilleのS. Evan Kreiderによると、3 d4には 3...Bg4のPortuguese Variationが有望で、2...Nf6の変化に詳しいJohn Emmsの本を推薦している。ありきたりだが、その裏表紙から引用して訳そう。いきなり1手目を間違っている(汗。
 
In recent years, the Scandinavian Defense (1 c4 d5) has become increasingly popular both at club and grandmaster level. Indeed, it was even used by Viswanathan Anand in his World Championship match against Garry Kasparov! In this book for club and tournament players, Grandmaster John Emms explains the strategy and tactics of this dynamic and fashionable opening. Through the use of model games for both sides, the author provides a thorough grounding in the key ideas so players can quickly and confidently start to use the Scandinavian in their own games.

 近年、スカンジナビア・ディフェンス(1 e4 d5)は、クラブとグランドマスターの両レベルともに人気が増してきた。実際、ヴィスワナサン・アナンドが世界選手権でガルリ・カスパロフに対して使ったほどである。クラブやトーナメント・プレーヤー向けの本書では、グランドマスター、ジョン・エムズがこのダイナミックで流行の序盤の戦略と戦術を説明している。白黒ともが模範的に指したゲームを通して、重要な考え方の基礎を徹底的に教えてくれるので、プレーヤーはすぐにでも自信を持ってスカンジナビア・ディフェンスを実戦で使えるようになる。
 
 もう一つ気になるスカンジナビアの本があるが、それは次回に紹介する。
The Scandinavian
1857443756John Emms

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2005年08月28日

John Nunn他『Nunn's Chess Openings』レビュー

"Methodical thinking is of more use in chess than inspiration." -C.J.S. Purdy
「チェスでは、霊感より秩序だった思考の方が有用である」−C.J.S.パーディー

 ヤクルトは連日のサヨナラ勝ち。記事の右側もamazon新刊書で埋まってきたし(DLエラーは気にしないでください(汗))、ネタ切れになるまで冒頭に格言を入れることにした。チェスアンテナには最初の一行が表示されるからこの方がいいだろう。
 
 また序盤本にもどってきた。でかくて書棚の別の所へ置いていたせいか紹介が遅くなった"Nunn's Chess Openings"である。'80年代に"Batsford Chess Openings"が出るまでは、"Modern Chess Openings"が中型序盤百科では唯一であった。
 BCOは2で改訂が止まってしまったが、その著者の一人であるカスパロフが推奨している点で、NCOはBCOの後継本と見なしてよいだろう。実際、ECOと同じ配列(BCOは1手目順)を除けばレイアウトはそっくりだ。
 老舗のMCOは一つ前の13版しか知らないが、ページ数が多い割にはフォントが大きいから内容量に大差はないだろう。BCOとMCO13の比較ではMCOの方が古いラインが多かったと思う。

 ナン以外の実際は主に執筆したと思われる他の3人の著者Burgess, Emms, Gallagherの顔ぶれが、Everyman Chessの序盤本シリーズで多く執筆しているメンバーであることを見るだけでも、本書の信頼性がうかがえる。
 引用箇所は迷ったが、本書の編集基準がよく分かるナンによる序文(p.6)の第2段落にする。
 
 While this is a large book, the amount of space which can be devoted to each opening is relatively limited - in some cases the space for an opening in NCO is the same as for the index of a specialized book on the same subject! I therefore settled on a system of priorities for ruthlessly weeding out unnecessary material. Inferior continuations were cut down to the bare essentials, then rarely-played lines were pruned. The next step was to cut variations off short as soon as a definite assessment could be given. Finally, even game references were removed except where they were of some particular interest. The resulting compact mass of information contains a great deal of detail, enough for anyone up to grandmaster level to play an opening, but thanks to the table format one can still see at a glance the main lines and their evaluation. The end product contains a surprisingly large amount of information and emphasizes the fundamental aim of the book: to provide the maximum amount of accurate and useful analysis. This principle has also been extended to the list of contents and the index.
 
 本書のボリュームを持ってしても、各序盤にさけるスペースは限られている。NCO上で扱う量が、その序盤の専門書の目次に等しい(!)という場合もある。したがって、不要な素材は無情に切り捨てる方針を優先させた。評価の劣る手順は必須のものだけ残してそぎ落とし、まれな手順は切り取った。次の段階では、評価を下せる範囲で変化手順をできるだけ短くなるまで切り詰める。最終的には、引用元の実戦データさえ、特に興味を引くものを除いて省略した。その結果コンパクトに凝縮された詳細かつ多量の情報により、誰もがグランドマスター級の序盤を指すことが可能となる。なおかつ、表形式のおかげでメインラインとその評価が一目で分かるようになっている。とてつもない情報量を含んで完成した本書は、その基本目的−正確かつ有用な分析を最大限提供すること−に重点を置く。この原則は、目次や索引にも適用した。
 
 骨子はありふれたことだが、引用元のデータまでできるだけ省略する点は特筆ものかもしれない。BCOやMCOでは変化手順の名称まである程度は書いてあるが、NCOはかなり少ない。各定跡の最初に1,2ページの概説があるのはBCOと同じである。
 そんな些末なことを別とすれば、現在もっとも信頼できる中型定跡百科といっていい。自分のレパートリーを狭く限定する人も、中級レベルになればこういう本が手元に一冊必要になるだろう。
 
Nunn's Chess Openings (Everyman Chess Series)
1857442210Graham Burgess John Emms Joe Gallagher

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おすすめ平均star
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2005年08月08日

Sam Collins「An Attacking Repertoire for White」レビュー

 鈴木亜美待望のバラード新曲、このPVのあみ〜ゴがめっちゃきれいで、マネキンに扮する特殊メークとかも出てきて興味津々。いにしえのマネキンガールを想起させる。この刺激、仕事に生かさねば。
 
 さて、残すは白番のレパートリー・ブックだが、白番はどう指してもピンポイントに研究してくる黒の選択肢を狭めることが難しい。そのせいか、黒の方が好きという人が、少なくとも国内ではけっこういるようだ。
 私も、これという本は見つけられない。持っていたSoltisの"Winning with 1 e4"と"...1 d4"はそこそこよかったが絶版だし、GambitやAttackingラインに特化した本は特殊と判断して避けた。
 
 白でも、Trompowskyのように早い段階から形を決めて手を狭める作戦もあるが、今回はレパートリー・ブックにこだわることにして別の機会に譲る。そこで、今年出た新しい本ということでSam Collins "An Attacking Repertoire for White" (Batsford)にした。
 amazonにレビューがないのでBCMサイトのレビューから引用する。

Irish Olympiad player Sam Collins has produced a straightforward repertoire book based on 1 e4. The word 'attacking' in the title is merely publisher's hype: his recommended 2 c3 against the Sicilian is usually regarded as a cautious and non-committal approach. Collins makes the point that the slightly suspect white pawn structure that arises in the c3 Sicilian makes it important to knock out the opposition fast, so that is his rationalisation for calling it 'attacking'. Against the French, Collins gives 3 e5 though he is not too specific on how to follow up. Against 1...e5 it is the Scotch, and against the Petroff he advocates 3 Nxe5 d6 4 Nf3 Nxe4 5 Nc3. Against the Caro Kann, Collins goes for the Panov. There is an interesting mix of games and discussions of opening pawn structures. Collins' suggestions are suitable for an intermediate player wanting to construct a first repertoire. 192 pages.

 アイルランドのオリンピック選手Sam Collinsが、1 e4で始める明解なレパートリー・ブックを出した。「攻撃的」というタイトルは出版社の誇張に過ぎない。著者がシシリアンに推奨する 2 c3は、通常用心深くて無難な作戦と見なされている。Collinsは、c3シシリアンで生じる少し危うい白のポーン形が、黒を早く倒す決め手になることを示す。それを「攻撃的」と呼ぶことでタイトルを正当化している。フレンチには 3 e5を推奨するが、続け方はあまり特定していない。1...e5にはスコッチ(2 Nf3 Nc6 3 d4)、ペトロフ(2...Nf6)には 3 Nxe5 d6 4 Nf3 Nxe4 5 Nc3を支持する。カロカンにはパノフ・ボトビニク・アタック(1...c6 2 d4 d5 3 exd5 cxd5 4 c4)である。ポーン形をオープンにすることに関しては、実戦と考察を興味深く関連づけている。Collinsのお薦めは、初めてのレパートリーを作りたい中級プレーヤー向きといえよう。
 
 Chessvilleのレビューによると、枝分かれの羅列ではなく、51のゲームを例として解説している。黒のレパートリー・ブックについても抜かりなく調べているらしい。他に黒のPhilidor, Pirc/Modern, Scandinavian, Alekhine, Owen, Nimzovich, Latvian, St. George, Elephant, Damianoにも触れている。
 
 やっぱり 1 e4はたいへんだ。これで3種類のレパートリー・ブックは出そろったが、もう少しこのネタは続けようかな。
An Attacking Repertoire for White
0713489103Sam Collins

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2005年08月07日

Alexander Raetsky「Meeting 1 E4」レビュー

 金曜の晩から遠くの花火の音が、強烈な布団叩きの連打のように聞こえてくる。大多数の人間は音だけ無理やり聞かされている現実を考えると、祭りに便乗して暴れる若者だけが問題とは思えなくなる。
 私は毎年フジテレビの神宮ナイター祭りでしか花火を見ない。つばくろうらが団扇で涼んでいる(?)光景は何度見てもシュールでいい。巨人に同情するくらいヤクルトが快勝しているのはもっといい!
 
 というわけで、野球等のネタも面倒だからついでに書いてしまったが、今回は順当に前回の姉妹本、1 e4に対する黒のレパートリー・ブック、Alexander Raetsky"Meeting 1 E4"(Everyman Chess)。宣伝文句は似ているのでちょっとくだけて訳してみよう。
 
Fed up having to defend with Black? Annoyed by all those irritating white systems? Then this is the book for you!
 黒番で守るのに飽き飽きしてないかい? 白のシステムにはどれもイライラするよね? そんな君にはこの本さ!(訳注:臭〜)

Russian International Master Alexander Raetsky draws upon his wealth of experience gained playing on the tough international tournament circuit to supply you with an all-in-one solution to your problems. The reader is provided with a complete repertoire for Black against 1 e4, based on the ever-reliable Sicilian Defense. Lines suggested are dependable and promise Black dynamic counterplay.
 ロシア人インタナショナルマスターAlexander Raetskyは、タフな国際トーナメント巡業から得た豊かな経験をもとに、君のすべての悩みを一冊で解決する本を生み出した。ずっと定評あるシシリアン・ディフェンスで 1 e4に対抗する黒の完全レパートリー・ブックだ。推奨ラインは頼りになるし、黒のダイナミックな反撃を保証してくれる。

The variations are also easy to learn: this book is especially useful for players who have neither the time nor inclination to learn reams and reams of the latest opening theory. (6 1/4 x 9 1/4, 178 pages, diagrams)
 変化手順も覚えやすい。この本は、最新の序盤理論なんてたくさん覚えている時間もないしやる気もないというプレーヤーには、特にうってつけだ。(16x24cm, 178ページ、局面図付き)
 
 著者が違うのにページ数まで同じなのは、編集を調整されているようで気になるが、1 e4に対してシシリアンを使うレパートリー・ブックは初めて見た。フォーナイツ・ヴァリエーションを使うところがシシリアンの各変化本とは大きく異なる。
 1 e4 c5 2 Nf3 Nc6 3 d4 cxd4 4 Nxd4 Nf6 5 Nc3 e6フォーナイツで、メインライン 6 Ndb5に対して Bb4とする。メインラインといっても白が知らない可能性は高い。もちろん、2 c3, d4, f4, g3, Nc3や 3 Bb5対策も扱っている。

 シシリアンは、白が2,3手目に外すラインを除けば黒は形を決めやすいが、Najdorf(2 Nf3 d6...4...a6)は変化が複雑すぎるしDragon(4...g6)はそうとうな熟練を要する。Kan(2...e6...4...a6)やTaimanov(4...Nc6)で形を決めても、その後の白の応手は3通りずつくらいはある。
 フォーナイツでセンターの緊張をいったんがっちり作れば、研究に勝る黒は有利に進められるだろう。もっと切った貼ったをやりたいなら、5...e5でPelican(Schveshnikov)とする手もある。
 
 それでも、1 d4にタラッシュ・ディフェンスを使うのに比べると、このシステムは指し手の幅がまだ広い。白に選択肢を与えない意味ではScandivavian(1 e4 d5)に勝るものはないだろう。また機会があれば紹介する。
Meeting 1 E4 (Everyman Chess)
1857442199Alexander Raetsky

Everyman Chess 2002-04-01
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2005年08月06日

Jacob Aagaard & Esben Lund「Meeting 1 D4」レビュー

 ここ4週間は例会に行かないことをいいことに生活時間の99%以上は家にいるが、それでも熱中症になりそうなくらい暑い。食事の支度やトイレ等、温度差のある部屋を最低限移動するだけでも体がおかしくなりそうだ。
 
 図書館で借りられる和書は別として、自分が買った本しかレビューできないのでは、昔のようにUSCFからバーゲン本を見境なく買っていた頃でもたかがしれている。しかもそれをほとんど処分した今では買うのもかなり慎重だ。
 そこで「チェス書レビュー」を更新しながら思いついたのだが、ChessvilleやBritish Chess Magazineサイトの書評を要約すれば、受け売りでもけっこうなことは書けるのではないか。
 
 しかし、客観性に保証がない「レビューのレビュー」は無責任で徒労にも思える。そこで、amazonにBook Description等があるものに関しては、その訳を提示することにした。生の読者の声ではない宣伝文句にしかすぎないかもしれないが、私の著者、出版社、amazon等への道義は果たせる(汗。
 量的にも「チェス翻訳の話」を兼ねられるし、今回は内容的にも「序盤の話もしよう」の続きとできた。カテゴリーの区分すら煩わしいことがあるのだから、内容を決めた連載などネタ切れが必至だったといえよう。
 
 今後はこういうレビューを基本としつつ、収まりきらないものは別に扱うようにしたい。ブログで最初に公開してからそれをまとめたログとしてHPへ掲載する形も定着させたいが、HPは技術が前世紀レベルなのでこれから勉強しなければ(汗。
 
 今回は、1 d4に対する黒番の完全レパートリー・ブック、Jacob Aagaard, Esben Lund著の"Meeting 1 D4" (Everyman Chess)だ。内容は以下のBook Descriptionと訳に譲る。
 
Are you tired of defending passive of difficult positions with Black? Fed up with having to learn many different defenses to all of White's attacks? Then this book is the answer to your problems!
 あなたは黒番で受け身の難しい局面を守るのに嫌気を感じていませんか? あらゆる白の攻撃に対して別々の防御をたくさん覚えねばならないことに飽き飽きしていませんか? 本書は、そんなあなたの悩みへの答です!

Jacob Aagaard and Esben Lund provide an all-in-one solution to the popular opening move 1 d4 and other White systems that do not involve 1 e4. The lines suggested are based around the Tarrasch Defense (1 d4 d5 2 c4 e6 3 Nc3 c5). They are easy to learn and fun to play whilst also promising the black player dynamic counterplay.
 Jacob AagaardとEsben Lundは、一般的な序番手 1 d4および 1 e4以外の白の序盤システムに対するすべての解決策をこの一冊で提供しています。推奨手筋はタラッシュ・ディフェンス(1 d4 d5 2 c4 e6 3 Nc3 c5)を基本としています。覚えやすくて楽しく指せて、おまけに黒のダイナミックな反撃は有望です。

This book is especially useful for players who have neither the time nor inclination to learn reams of the latest opening theory. Throughout this work, the authors delve into the strategies, ideas and tactics for Black, while also showing the possible traps and pitfalls. (6 1/4 x 9 1/4, 178 pages, diagrams)
 本書は、膨大な最新序盤理論にさく時間も興味もないというプレーヤーには特に有益です。本書を通じて著者は、黒側の戦略や作戦、戦術を深く掘り下げる一方で、起こりうるはめ手や落とし穴も提示しています。(16x24cm, 178ページ、局面図付き)
 
 久しぶりにフライヤーに書いてあるような宣伝文を訳すと調子が出ない。最後の段落は常体(だ・である調)でもいいだろう。裏表紙に書いてある文章もこれと同じらしい。
 
 黒番で 1 d4に対して手を狭めたいならたしかにタラッシュ・ディフェンスは最適だと思う。大阪にいた頃は、codfishさんが「タラ」ッシュブラザーズを結成する(だからcodfishの由来はすぐ分かった)ほどにはやっていた。
 たしかに、ダッチ・ディフェンスも紛うことなく個性的で攻撃的だが、スタウントン・ギャンビットを初めとして白側の変化も多い。インディアン系のディフェンスにしてもポーン同士がぶつかり合うまでに時間がある分、白の選択肢の幅は広がると思われる。
 
 本書については、ChessvilleでJohn Watsonが、1 d4以外の白の手に関しての対策の記述に苦言を呈してもいるが、1 d4に対する黒のレパートリー・ブックとしては現状で最善のものといってよさそうだ。タラッシュ・ディフェンスさえ満足できればの話だが。
Meeting 1 D4 (Everyman Chess)
1857442245Jacob Aagaard Esben Lund

Everyman Chess 2002-04-01
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posted by 水野優 at 16:27| Comment(0) | TrackBack(0) | チェス(洋書評 序盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月05日

序盤の話もしよう 3

 さて、次はメジャーな定跡の話になるが、各定跡ごとに事細かにやっていくかどうかはまだ決めていない。いずれにせよ受け売り程度の紹介しかできないが、最終的に日本語による序盤総括資料ができればそれも有意義だろう。
 
 今回からはとりあえず、序盤定跡の選択で苦労している人に役立つ情報を書いてみようと思う。いろいろ指してみて自分に合うのを見つければいいという声をよく聞くが、これは現実にはそうとうな犠牲を伴う。
 そんなことをしている間に1000で始まったレイティングを3桁から4桁にもどすのが絶望的なところまで落ち込んでしまい、リセットした方がましという状態になる。それでやめてしまった人も多いだろう。
 それに、負けてもともとの段階で自分に合っているかどうかなどどうやって判断すればいいのか。まずは、攻撃か堅実か、オープンな局面かクローズか、その程度の自分の向き不向きは把握しよう。分からなければ嗜好で決めてかまわない。
 
 序盤の準備には最低3つのパターンが必要と言われる。白番と、黒番で対 1 d4と、対 1 e4である。1 c4や 1 Nf3に対しても 1 d4と違う手筋を目指すなら必要だが、差し当たって 1 d4と同じと考えて進めればいいだろう。
 この考え方で書かれた「完全レパートリー本」が「チェス書レビュー」でも紹介している
Opening Systems for Competitive Chess Players
1880673878John Hall

Hays Pub 1992-03-01
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である。絶版のようだが、これは中級以上でよほど横着な人にしかお薦めできない。私も合わないので手放した。

 話をもどして、これから自分に合った序盤を決めようという初心者の方はまず、
Chess Openings--Your Choice!
1857440706Stewart Reuben

Cadogan Books 1995-12-01
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のような本に目を通してほしい。各定跡の狙いをしっかり説明した上で、レパートリーの組合せ方まで指南してくれる。しかしこれも品切れだ。

 前回紹介したBasmanが書いた初心者向け(!)本
Chess Openings (Crowood Chess Library)
0946284741Mike Basman

Crowood Pr
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もお薦めしたいが、これまた品切れ。3冊も載せてもレビューにならない(汗。
posted by 水野優 at 00:13| Comment(0) | TrackBack(0) | チェス(洋書評 序盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月01日

序盤の話もしよう 2

 これもまだ終われないので連載になってしまった。キング側のポーンを突くのでは、クラブレベルでは 1 e4以外に 1 f4はけっこう使えると思う。この週末の大会でも指されたらしく、私自身も昔指していた。日本では加藤富久さんが第一人者だろう。
 
 1 g3はキングズ・インディアン・アタックとかになるとして、おもしろいのは 1 g4だが、大竹栄さんの研究ラインとは知らなかった。ネットではずほさんのHPにも見られる。研究ラインが披露されないのは残念だが、それは私も同じことだ。
 
 1 Nf3以外のナイト手では、1 Nc3が問題なく指せる。郵便戦のテーマ戦に参加したことがあるのでそれを研究結果としていずれ紹介したい。もう関連資料も一部手放してしまったが。
 
 とりあえず、チェス書レビューに載せる前に、ここでMichael Basmanの"Killer the Grob"を紹介しておこう。Basmanは、変則オープニングを指しながら国内チャンピオンになったこともあるというイギリスのIMである。
 1 g4の代名詞ともいうべき彼は、本書で実戦譜から次の手を選択肢で当てさせる問題をちりばめており、その得点結果であなたのGrob度が分かるという仕組みになっている。中盤以降の指し手にも序盤スタイルが関連するのだろうか(笑。

 この本も私はすでに手放してしまったのだが、さらに笑えるのは、Grob度が最も低いと評価されると、「あなたはルイ・ロペスかクイーンズ・ギャンビットでもやってなさい」と言われることだ。
 こういう本は、そもそも選ぶ時点で、真面目に強くなることを期待するわけではないだろうし、著者もそんな読者の期待を分かっていて十分なエンターテインメントを披露してくれる。もちろん実戦の解説等のレベルがまともな上でのことだ。
posted by 水野優 at 00:10| Comment(0) | TrackBack(0) | チェス(洋書評 序盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする