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2010年05月06日

Sam Collins『Understanding the Chess Openings』レビュー

 定跡本の翻訳または執筆は結局没にしたが、すでにこの本も試訳していたので書評として上げておく。著者はアイルランドのIMで先年来日したときは小笠さ んがトーナメントに招いて案内した。そういう縁もあったので翻訳できればベストだったのだが。
 本書は著者1冊目の白レパートリーブックを基にした総合定跡書だが、全体的に著者の好みが色濃く出ている。各定跡の概説では『ここからはじめるチェス』 のような局面図内の矢印表示があって分かりやすいが、定跡を全部扱って200ページ余りという分量は中途半端かもしれない。最近の傾向は、白だけとか1 e4だけで1冊が主流だ。

以下の原文は http://www.gambitbooks.com/pdfs/28XSamp.pdf

スコッチ・ゲーム

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 d4(図)

図(黒番)

 ガルリ・カスパロフは、スコッチ・ゲームのことを「厳密な意味で唯一ルイ・ロペスと肩を並べられる定跡」と表現した。こいうことに精通している彼の意見 は傾聴に値する。白はいきなりd4へ狙いを定めて、黒の中央の拠点を清算し、ピースのためにさらなるラインを開く。
 この前進を 3 c3で有利に準備しようとするのがポンジアニ・オープニングである。以下、3...Nf6 4 d4 Nxe4 5 d5 Ne7 6 Nxe5 Ng6 7 Qd4 Qe7 8 Qxe4 Qxe5 9 Qxe5+ Nxe5 10 Bf4 Bd6! 黒に危険のない終盤戦になる。
 
 3...exd4
 黒は白のポーンを取るしかない。
 3...d6はフィリドール・ディフェンスでナイトがc6へ出す悪形になる。
 4 Nxd4(図)
 
図(黒番)

 4 c3 ゲーリング・ギャンビットは見た目ほどエキサイティングではない。黒は 4...d5で直ちに互角にできるし、挑戦を受けて 4...dxc3 5 Nxc3 Bb4 6 Bc4 d6 7 Qb3 Qe7なら白にポーン損の見返りはあるが、それ以上の有利さはない。
 4...Nf6
 e4のポーンを狙っているので、白は何か対応を迫られる。
 4...Bc5 5 Be3 Qf6 6 c3 (6 Nb5は近年の世界チャンピオン、ポノマリオフによって指されたが、それ以外の者には健康被害警告表示が必要な手だ。6...Bxe3 7 fxe3後、ダブルeポーンは多くのマスを支配しているが醜いことには変わりなく、7...Qh4+ 8 g3以下、黒がクイーンをd8へ退却するか、8...Qxe4 9 Nxc7+ Kd8 10 Nxa8 Qxh1で全く形勢不明)6...Nge7はもう一つの主変化で、迅速に展開して ...d5を準備する。7 Bc4 Ne5!? (7...b6 8 0-0 Bb7で黒がクイーン側キャスリングを準備するのも優れた作戦) 8 Be2 Qg6後、白がe4ポーンを捨てる。例えば、9 0-0 d6 10 f4 Qxe4 11 Bf2 Bxd4 12 cxd4 N5g6 13 g3 Bh3 14 Bf3 Qf5 15 Re1 d5 16 Qb3 0-0 17 Nc3 c6 18 Qxb7 Rfb8 19 Qc7 Qf6は互角。
 4...Bb4+!? 5 c3 Bc5も、トップレベルでは人気がある。黒が ...Qf6に頼らず、白の c3を誘って白のナイトがc3マスへ自然に繰り出せないようにする。
 4...Qh4?!は極めて危険である。白はすぐに 5 Nb5とできるが、5 Nc3 Bb4 6 Nb5の方がさらに良い。6...Qe4+ 7 Be2なら白には十分な代償がある。
 5 Nxc6
 5 Nc3 Bb4はスコッチ・フォー・ナイツに移行する。
 5...bxc6(図)
 
図(白番)
 
 もちろん、5...dxc6? 6 Qxd8+ Kxd8は良くない。黒には、終盤戦になったときのポーンの数的不利(キング側で白4対黒3)の代償がない。
 黒の頼みの綱は、いずれ明らかになるが、すべてのピースを迅速に適切なマスへ展開できることである。一方、白は陣形的な優勢を保っている。したがって、 黒の課題は的を射た手を続けること、白は序盤を抜けるまで優勢を長期的に保つことである。
 6 e5
 ナイトが攻撃されたが落ち着ける逃げ場所がない。黒は消極性に陥らないよう気を付けねばならない。
 6...Qe7!(図)
 
図(白番)

 7 Qe2
 5手目の説明からも分かるように、双方が完全に展開すれば明らかに白の優勢となる。だから、黒は白の展開を妨げるためにこういう波乱含みの作戦を採った のである。黒自身の展開も同じく邪魔をされているとはいえ、(...Nd5後の)黒のクイーンには、e5ポーンを守ることに縛られている白のクイーンより 多くの選択肢がある。私は ...Qe7が局面の要求を満たしているかのように紹介してきたが、実際のところ定跡の文脈に沿った言い方をすれば、悪くて誤った手、良くて結果次第の 手となろう。6...Qe7を指し始めた棋士たちは、6...Nd5後に黒が完敗して他の手を探す必要があったからであり、この手を見つけて役立つことに 気付いたのだ。
 7...Nd5 8 c4(図)
 
図(黒番)

 ナイトをすぐに追い払うことは妥当で、黒に撤退を強いている。黒はナイトかビショップの位置が不適切になりかねない。
 8...Ba6
 8...Nb6も可能で、黒がaファイルから侵攻する(...a5-a4)か、迅速な展開を狙う(...Ba6, ...Qe6, ...Bb4)。
 9 b3(図)
 
図(黒番)

 白は 9 g3も可能だが、すぐにcポーンを守る方が柔軟だと思う。
 9...g5!
 これは、序盤の好手の発見方法に関するまたとない好例である。黒がこうするのは、ビショップを展開させるためのもう一つの手 9...g6には 10 f4!とされ、白に Qf2から Ba3というやっかいな手順を準備されるからである。そこで、黒は展開を進めながらもf4の支配を強める必要があると悟り、この美しい手に思い至った のだ。代表的な指し手は以下のように続く。
 10 g3 Bg7 11 Bb2 0-0 12 Bg2 Rae8 13 0-0 Bxe5!? 14 Qxe5 Qxe5 15 Bxe5 Rxe5 16 cxd5 Bxf1 17 Kxf1 cxd5
 この終盤戦の戦力は流動的な均衡を保っている。白は、黒の2つのルークを抑制できれば有利だが、それらが活動的になると壊滅する。


 The Mammoth Book of Chessの訳を猛スピード?で進めていて、今180/570ページくらい終わったところだ。しかし、2冊目以降の話をいくらしても、まだ1冊目が出てい ないというオオカミ中年状況に変わりはない。最悪1年掛かったという話もあるくらいの版権取りをもっと早めに始めるわけにはいかないのだろうか。
 今年は真の意味での電子出版元年という感じだが、いい本を読んだので次にレビューしたい。

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posted by 水野優 at 11:34| Comment(0) | チェス(洋書評 序盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月26日

P.v.d.Sterren『Fundamental Chess Openings』レビュー

 次のチェス技法書翻訳はThe Mammoth Book of Chessにして訳も進めていると書いたが、その後チェス小説(いずれ紹介)に浮気をし、今は本書の訳にとりかかっている。小説が連続するのもなんだし、 ついに究極の総合定跡書を見つけたからでもある。
 今20ページほどまで訳した。2巻に分けて出版するなら 1 d4は夏に出せる。著者のオランダ人ながら英語らしい英語は訳しがいがあるが、一つだけ強いて心配な部分は、正直なところエンターテイメント性が希薄なと ころだ。その辺も含めて皆さんの意見を求む。

【書名、著者】
"Fundamental Chess Openings" Paul van der Sterren 2009/11 Gambit p.480
 amazonではp.448となっているが、正味p.480.
 
【概要】
 本書は中盤まで(せいぜい20手目まで)しか扱わず、定跡の歴史的進歩とその根底にある考え方の説明に絞っている。例えば、シシリアンに60ページほど 割いているが、Starting Outシリーズのシシリアン全般本が300ページほどだが各変化の代表局を終局まで載せているとしたら、定跡部分の解説量は本書と大差ないのではないか。 つまり、本書は個別定跡本の集大成に匹敵するのだ!
 
【推薦理由】
 Standard Chess Openingsを候補としたとき、どの定跡の変化も1局を最後まで載せることで紙面を食い、レアな定跡まで扱う反面メインラインの説明が手薄なことを指 摘した。それでも700ページ以上あれば大丈夫かと思った。
 本書はFCOの略称でMCOやNCOのような記号中心の定跡書と思っていたら、米amazonのレビューでFineのThe Ideas Behind The Chess Openingsの現代版等の賛辞を見て総合定跡書の候補に決め、amazonから届くのも待てずにGambit社HPに公開されているスラブ・ディフェ ンスの最初の部分を以下に訳した。
 枝分かれを羅列しただけの定跡書の弊害が叫ばれるようになって久しく、その類は姿を消した。しかし、選択肢の少ない日本では、入門書を読み終わったばか りの初心者が路頭に迷わないためにもある程度の変化枝分かれによる整然とした分類も必要である。なおかつ各定跡の基本概念と解説が充実した本書は、読み 物、(読み終わった後の)参考書という条件を満たしている。
 
【目次】
記号&記譜法
序文
初手
 
1 d4
クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド
スラブ&セミ=スラブ・ディフェンス
クイーンズ・ギャンビット・アクセプテッド
その他の 1 d4 d5定跡
ニムゾ=インディアン・ディフェンス
クイーンズ・インディアン・ディフェンス
ボゴ=インディアン・ディフェンス
キングズ・インディアン・ディフェンス
グリュンフェルト・デフェンス
ベノニ&ベンコ
その他の 1 d4 Nf6定跡
ダッチ・ディフェンス
その他の 1 d4定跡

翼定跡
シンメトリカル・イングリッシュ
リバースト・シシリアン
1 c4 Nf6&その他のイングリッシュ
レティ・オープニング
その他の翼定跡

1 e4
ルイ・ロペス
イタリアン・ゲーム
スコッチ・オープニング
フォー・ナイツ・ゲーム
ペトロフ・ディフェンス
キングズ・ギャンビット
その他の 1 e4 e5定跡
フレンチ・ディフェンス
カロ=カン・ディフェンス
シシリアン・ディフェンス
アリョーヒン・ディフェンス
ピルツ・ディフェンス
その他の 1 e4定跡

定跡名索引
変化名索引

【訳例】原文は、http://www.gambitbooks.com/pdfs/132Samp.pdf
スラブ&セミ=スラブ・ディフェンス

1 d4 d5
2 c4 c6(図)

図(白番)

 クイーンズ・ギャンビット・ディクラインドほど古くないとはいえ、スラブ・ディフェンスも優れた実績を残した古典定跡と見なされている。よく知られる きっかけになったのは、アリョーヒン対エイヴェの世界選手権が行われた1935年と1937年に遡り、両棋士が互いに採用することで広く検証された。以 来、1 d4定跡の中でも新しい変化が生まれては改良され続け、最も重要な定跡の一つと見なされている。
 クイーンズ・ギャンビット・ディクラインドのように、黒はd5をしっかり守り続けるが、重要な違いは、クイーン側ビショップを攻撃的なf5やg4のマス へ繰り出せるように、c8-h3斜線を開いたままにしておくことである。もう一点は、2...c6とした時点で ...dxc4と取る狙いが、2...e6後よりも白陣への脅威になることである。c4の黒ポーンはすぐに ...b5で守れるし、そのb5のポーンはc6のポーンに守られているからだ。実際、2...c6は白に根本的な決断を強いる。2...e6に対するとき と比べ、白は自然な展開の中でもより控え目な手(Nf3, Nc3や Bf4か Bg5といった手は、クイーンズ・ギャンビット・ディクラインドの場合ほど自明ではない)を指すか、黒がポーンを捨てるかもしれないかなり激しい変化に立 ち向かう覚悟が必要となる。
 ...dxc4の可能性を消す最も根本的な方法は 3 cxd5 エクスチェンジ変化だが、スラブの主変化は 3 Nf3か 3 Nc3で始まる。この2つの「自然な展開手」は手順前後で同じ局面になることが多いが、もちろん重要な違いもある。

エクスチェンジ変化

3 cxd5 cxd5(図)

図(白番)

 スラブのエクスチェンジ変化最大の悲劇は、過去にトーナメントで事前に仕組んだドローにするために最も使われたという事実で評判を汚されたことである。
 無数のゲームが、4 Nc3 Nc6 5 Nf3 Nf6 6 Bf4 Bf5 7 e3 e6 8 Bd3 Bxd3 9 Qxd3 Bd6 10 Bxd6 Qxd6 11 0-0 0-0という手順で「対戦され」、つまらない手順がもう数手続き、20手未満でドローにされた。
 とはいえ、d5での交換は全く理にかなった極めてまじめな指し手である。その戦略は、ボトヴィニク、ポルティッシュ、カスパロフら偉大なチャンピオンに 使われて成功を収めてきた! 完全に対称形の局面では先手の有利が最大の脅威になりうるという仮定に基づいている。
4 Nc3 Nf6
 エクスチェンジ変化のやや困惑させられる特徴は、その理論が次の図に示した局面に至るまでは実質的に始まらないことである。しかし、いかにしてこの最善 の局面へたどり着くかに関しては、残念ながら問われない。
 4...Nf6が 4...Nc6(5 Bf4 e5!?のような攻撃的狙いを含む)よりはるかに多く指されるのは確かだが、4...Nc6が誤りか少なくとも不正確だと証明できるのは 5 e4だけで、このことはほとんど知られていない! 5...dxe4 6 d5はやや危なそうなので、5...Nf6が賢明だろう。これは、白が 6 exd5 Nxd5 7 Nf3とすればカロ=カンのパノフ攻撃(ページ参照)から生じる局面になるが、6 e5 Ne4 7 Bd3等とすれば全く未知の領域に突入する。
 4...e5!?だとウィナウアー・カウンター=ギャンビット(ページ参照)に移行し、戦略の青写真が全く変わる。白はもちろん、4 Nf3とするか、d5での交換前に 3 Nf3 Nf6とすることでこの可能性を避けられる。
5 Nf3
 この時点で、曖昧ながらも理論が興味深くなり始める。5 Nf3と 5 Bf4は同じくらい指されるが、5 Bf4の方が少し柔軟性があると考えられている。とはいえ、5 Bf4 Nc6 6 e3後の状況は 5 Nf3 Nc6 6 Bf4後と大差ない。以下 6...Bf5と 6...e6が伝統的で、6...a6が厚かましい新手である。
5... Nc6
6 Bf4(図)

図(黒番)

 スラブのエクスチェンジ変化が始まる最重要地点である。ここで黒には4つの手があり、それぞれが対戦に独自性を醸し出す。
 6...Bf5は最も伝統的な選択肢で、対照性を維持しながら白に「有利さ」の価値を見せてみろと迫る。この目的のためには 7 e3 e6 8 Bb5が好選択である。白は 9 Ne5を狙っており、いずれ Bxc6 bxc6として少なくとも黒に出遅れcポーンを背負わせたい。黒は領地を{ある程度/傍点}譲るしかなく、8...Nd7が一般的に最善の防御と見なされ ている。主変化は以下、9 Qa4 Rc8 10 0-0 a6 11 Bxc6 Rxc6 12 Rfc1 白が展開でわずかに勝っている。しかし、これをもっと確実な優位に転換することはとても難しい。
 もう一つの長らく主変化とされているのは 6...e6で、通常やや消極的と見なされがちだが、かなり信頼できる。7 e3 Bd6 (7...Be7も好手)後、白は単純にd6で交換するか、8 Bg3として局面の緊張をもう少し維持できる。この手には、黒のキング側キャスリングが良策にならないようにする狙いがある。例えば、8...0-0 9 Bd3から 10 Ne5は黒にやっかいとなる。8...Bxg3 9 hxg3 Qd6とし、キャスリングを遅らせて白の Ne5を阻止するのが堅実である。確かにこうすれば、黒はどこかで ...e5としてセンターで主導権を取れる。
 白のクイーン側での考えられるいかなる攻撃の機先をも制そうとする、はるか最近に生み出された手は 6...a6(図)である。
 
図(白番)

 この付加価値は ...Bg4の可能性を保留していることで、白が 7 e3と続ければそれが絶妙な応手となる。すぐに 6...Bg4とすると 7 Ne5とされて良くないが、白が(6...a6 7 e3 Bg4後のように)そうしないなら、このクイーン側ビショップの積極的な展開は全く問題ない。実際、多くの棋士が 6...a6に対して 7 e3の代わりに 7 Rc1とするのはこのためである。黒が 7...Bf5と「してしまった」ときだけ、あえて 8 e3とする。しかし、実戦的にこの変化で黒はほとんど困難に見舞われてこなかった。a6のポーンは実に有益だと分かってきたのだ。標準のスラブ手順で ...a6と指す黒が、白が 3 Nf3 Nf6 4 Nc3 a6 5 cxd5 cxd5のような手順でd5での交換をしたとき、この変化に移行しているという点で ...a6変化は特に意義深い。
 同様に新しく、おそらくさらに驚くべき大胆な突撃は 6...Ne4である。黒は対称性を打ち破り、7 e3 Nxc3 8 bxc3 g6と続けようとしている。この変化は危険な要素を含んでいるが、白は最低でも主導権を求めて戦わねばならず、それゆえ気楽なドローを目指している相手に は最適な選択肢となるだろう。
 
3 Nf3(図)

図(黒番)

 この手で主変化の領域へ入っていく。白は中央の緊張を解決せず、...dxc4とされる可能性を気にせず大胆にナイトを繰り出した。興味深いことに、こ の判断は長い間実践的に当然のことと見なされ、1990代になってやっと議論の対象となった。それは、突然 3...dxc4がまじめに検討されるようになったからである。ちょうどノートブーム変化(3...e6 4 Nc3 dxc4 ページ参照)のように、黒はその非対称なポーン形に基づいた激しい戦いを目指す。ノートブームと似て、主変化は 4 e3 b5 5 a4 e6 6 axb5 cxb5 7 b3 Bb4+ 8 Bd2 Bxd2+ 9 Nbxd2 a5 10 bxc4 b4と続く。黒は、白に強力な中央のポーンを「背負わせ」つつ、自らはクイーン側に2つの強烈そうなパスポーンを作る。これは近年受け入れられた理論だ が、このスラブの新しい変化にはまだ名前が付いていない。
 しかし、伝統的な手は依然としてしっかり残っている。
3...Nf6
 ここで白には 4 cxd5として結局エクスチェンジ変化へ向かう選択肢がある。4 e3は慎重で悪くないが、黒が 4...Bf4(4...a6もあり)後にやや指しやすいと考えられている。あるいは、c4のポーンが取られるのを再び無視し、白は最も自然な展開手を指 すこともできる。
4 Nc3(図)

図(黒番)

 伝統的に、スラブの定跡はここから2つの主変化に分かれる。
 4...dxc4で始まるのが一般にスラブ・アクセプテッドと呼ばれ、この定跡の唯一正しい変化と見なす向きが多数である。1935年と1937年のア リョーヒンとエイヴェが対戦した世界選手権のとき、この変化によって初めてスラブに真剣な関心が巻き起こった。以来多くの有名グランドマスターがこれを採 用し、中でも1950年代の世界チャンピオン、ワシリー・スミスロフがおそらく最も著名である。
 4...e6はもう一つの「伝統的」指し手である。この局面は他の手順で生じることも多い。例えば、1 d4 Nf6 2 c4 e6 3 Nf3 d5 4 Nc3 c6. これはセミ=スラブと呼ばれ、クイーンズ・ギャンビット複合定跡が示すべき最も複雑ないくつかの変化の出発点でもある。
 「副変化」のリストは 4...a6(図)で始めるべきだろう。
 
図(白番)

 この手は一見やや愚かに見えるかもしれないが、世界の強豪たちが指し始めて1980年代後半から人気が出始めて以来、2つの伝統的主変化に急速に迫って きた。この変化は、現代チェスに典型的な特徴を多く備えている。挑発的で柔軟で、一見したところそうは見えないかもしれないが、堅実な{陣形的/ポジショ ナル}原理に基づいている。黒は、妥当な 5 e3に対して 5...b5 6 b3から絶好の展開手 6...Bg4とすれば十分満足だが、5...Bg4には 6 Qb3とされる。このまだ幼い変化の理論は急速に成長しつつあり、近年は主に(決してそれだけではないが)必然的な応手 5 c5が注目されている。
 クイーン側ビショップをすぐに活動させる 4...Bf5?!は良くなく、ほとんど指されない。白が 5 cxd5 cxd5 6 Qb3とすれば、望ましい 6...Qb6に対して 7 Nxd5とされるからである。
 最後に 4...g6が考慮されるが、この変化は親戚にあたるシュレヒター変化 3 Nc3 Nf6 4 e3 g6(ページ参照)よりはるかに人気がない。白がまだ e3としていないし、真正シュレヒターでは使えないいくつかの攻撃的選択肢が白にあるからである。特に 5 cxd5 cxd5 6 Bf4となると、白に全く問題がないと考えられている。

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posted by 水野優 at 12:14| Comment(3) | チェス(洋書評 序盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月19日

Eric Schiller『Standard Chess Openings』レビュー

 出版翻訳の最中にも次の候補本選びには常に余念がない。かつて他人のレビューをまとめていただけのチェス洋書レビューに比べれば、翻訳の可能性があるも のに絞り込んだとはいえ、ちゃんと買って判断している。
 『ボビー・フィッシャーを探して』のような未訳の名作はなかなかないので次は技術書をやろうと思う。『チェス戦略大全』が中盤に重点を置いているので、 大雑把には次に序盤(定跡)と終盤の本が必要だ。定跡と終盤なら終盤の方が大切かもしれないが定跡の方が売れるだろう。それならまず、すべての定跡を概説 した本から出すべきだろう。個別の定跡書までは出せないだろうし。

 今のところ最適と思われるのが"Standard Chess Openings" Eric Schiller 1998- Cardoza Pubulishing p.768. マーケットプレイスで安くて買ったのが2000年刷でその後第2版が出ているが、レイアウトの微妙な差程度で実質的には変化なし。 以下、売り文句を書いてみた。
 
【概要】
 まず、定跡とは何か?から一般的に良いとされる序盤の指し方を説明(各駒の具体的なさばき方等)する。次に具体的な各定跡を大きく5つに分け、定跡や変 化を名前とともに詳しく分類解説し、各変化について主要な狙いの説明とともに最低1つの実戦を解説付きで例示する(全部で250局の完全なゲームと 3000の変化手順を含む)。最後に定跡レパートリーの選び方をレベルに応じて紹介し、定跡のコードや名称の分類表、年代、ゲーム、定跡等の索引がある。
 
【推薦理由】
 枝分かれを羅列しただけの定跡書の弊害が叫ばれるようになって久しく、その類は姿を消した。しかし、選択肢の少ない日本では、入門書を読み終わったばか りの初心者が路頭に迷わないためにもある程度の変化枝分かれによる整然とした分類も必要である。なおかつ各定跡の基本概念と実戦例の解説も充実した本書 は、読み物、実戦集、(読み終わった後の)レファレンスという条件を満たしている。
 過去にチェス定跡書の邦訳はなく、邦人著書で『ヒガシコウヘイのチェス入門 定跡編』と『チェス・マスターズブックス 定跡と戦い方』の2冊があったくらいだが、本書はボリューム的にその5倍以上の決定版となるだろう。
 総合定跡書は、一生出くわさないかもしれないレアな変則定跡まで扱う反面、もっとページを割くべきメジャーな定跡があっさり片づけられる欠点があり、上 記の和書もその類である。しかし、これほどの大書になるとその問題はほとんどない。段組にすれば2巻各300ページほどで出せるだろう。
 
【目次】
1.序文
2.概論
 定跡とは何か?
 手順前後
3.最適な序盤の指し方
 白番での最善定跡を選ぶ
 黒番での最善定跡を選ぶ
 各駒に最善のマスを選ぶ
4.オープンゲーム 1.e4 e5
5.セミオープンゲーム 1.e4 e5以外
6.クローズドゲーム 1.d4 Nf6以外
7.インディアンゲーム 1.d4 Nf6
8.フランクゲーム 上記以外
9.レパートリーの構築
10.次の段階
11.付録

 Schillerの英文は易しいので翻訳の歯ごたえや妙味はなく、いかにすっきりした日本語にするかだけなので、作業量としては300時間、暇な私が毎 日3時間かければ3か月で終わる。本当はファインの『定跡の背後にある考え方』の現代版ワトソンのMastering the Chess Openingsシリーズをやれれば最高だが。
 その後「チェス大百科」的本を優先させることにしたので、定跡本は後回しになるだろう。これはという本があれば教えてください。

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おすすめ平均 star
starチェス戦法小辞典
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2007年07月04日

Lev Alburt他『Three Days With Bobby Fischer and Other Chess Essays』

 Lev Alburt, Al Lawrenceの『Three Days With Bobby Fischer and Other Chess Essays: How to Meet Champions & Choose Your Openings』(320ページ、'03年11月、Chess Information and Research Center)を紹介しよう。
 タイトルにはフィッシャーがドンと出てくるが、内容的には最初の少しだけらしい。

出版社レビュー(訳):
 『ボビー・フィッシャーとの3日間と他のチェスに関するエッセイ:チャンピオンたちと出会い、定跡を選ぶ方法』は、肘掛け椅子にどっかと腰掛けて読める本です。駒を箱から出して名局から戦術や戦略を学びたくなったら、それも大いにありでしょう。

 ほとんど誰もに共通するチェスの関心事は次の2つの疑問:
*偉大なチャンピオンたちはどんな風だった?
*自分向きの定跡はどう選べばいいの?

 チェス殿堂入りした3度の全米チャンピオンLev Alburtが、世界のチェス殿堂入り常任理事かつ年間最優秀チェス記者Al Lawrenceとタッグを組んでこの疑問に答える。興味津々才気煥発、ときには奇妙奇天烈な名人&準名人たちの盤外ストーリー。他にはとりわけ、彼らがいかに時代の申し子だったかを語る。

シュタイニッツ、戦国化前に好手の原則を成文化
ラスカー、心理戦を制した盤上のフロイト派
カパブランカ、誰もが癒されるしゃれた美男子
アリョーヒン、勝つために禁酒した亡命者
過小評価されたエイベ、世界チャンピオンになった最後のアマチュア
ボトビニク、栄光を保つためにセックスを自制
スミスロフ、チェスに芸術様式をもたらしたアマチュアオペラ歌手
タリ、不屈の闘志さえくじかせる眼差しと灼熱のサクリファイス
ペトロシアン、チェスを通して矛盾を抱えた社会主義ブルジョア
スパスキー、謎めいたボビー・フィッシャーに屈した不遜な攻撃家
カルポフ、盤上のポジショナルプレーの大蛇
カスパロフ、今なお頂点に君臨するカリスマ・ボクサー棋士

 さらには、記録より記憶に残る、過去から現在に至る多くの準名人たち。


 ...never made it to the very top, but nevertheless left their indelible mark on the gameを、新庄剛志についてよく言われた「記録より記憶に残る」としてみた(笑。

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2007年06月15日

Bruce Albertson『217 Chess Opening Traps』

 Bruce Albertson217 Chess Opening Traps』(224ページ、Cardoza)を紹介しよう。久し振りのはめ手の本である。序盤のはめ手で勝つ快感には抗しがたい魅力があるが、それなりに研究してその定跡を指してくる相手にはネタばれしていると考えた方がいい。
 相手があまりに初心者だと期待通りにはめ手筋に乗ってくれないだろうし、それなら最初から普通に指せばいい。最善の受けをされるとこちらが不利になる無理筋まで使うことは推奨できない。しかし、予防的に知り、戦術テーマを学ぶ実例として、はめ手は教訓的である。

出版社レビュー(訳):
 上達を願う初心者や冒険好きな中級者に打って付け。最も基本的で巧妙なはめ手定跡、序盤を間違いなしに指す方法、はめ手を成功するまたは避ける方法を学べる! 定跡の説明に、どのプレーヤーの秘密兵器にも共通する根本的なはめ手戦術が関連づけられている。217の序盤のはめ手が649の局面図付きでぎっしり詰まった本書では、初心者や中級者が素人の日常的な失敗から学び、これらの教訓を知らない者をやっつける方法を無理なく完璧に身に付けられる。40種類以上の定跡を網羅。

著者について(訳):
ライフマスターBruce Albertsonは、ニューヨーク市で有名なチェス教師かつトレーナーである。最初のチェスマスター50プログラムを開発し、ベストセラーCD-ROM 「秒殺チェス(Quick Kills on the Chessboard)」を作成して語り手も務め、Fred Wilson、Bruce Pandolfiniとの二三十冊の共著もある。新刊のChess Mazesも売れ行き好調。

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Bruce Albertson
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2007年06月07日

Morozevich他『The Chigorin Defence According to Morozevich』

 たまにはマニアックな定跡の本を紹介しておこう。Alexander Morozevich, Vladimir Barskijの 『The Chigorin Defence According to Morozevich: The Lines and Ideas in His Most Original Weapon』(236ページ、New in Chess)である。
 クイーンズ・ギャンビット(1 d4 d5 2 c4)に対して、黒が早くも2手目に 2...Nc6でセンターに挑む。私も郵便戦のテーマ大会で集中的に指したことがあり、古い本も持っていた。白の3手目 3 Nf3と 3 Nc3で主に2つの変化に分かれる。黒は悪形を受け入れつつカウンターを狙う。

IM Jeremy Silman
 「世界最高棋士による、情熱、魅惑的な(しかも多くが独創的)分析、名局、ひいき目なしの評価にあふれたすばらしい本」

ChessVibes.com
 「好定跡書のみならず名局集でもあり、トップ棋士の定跡研究方法への一般的な疑問にまで深く切り込む」

David R.Sands, The Washington Times
 「ありがちな定跡書とは違い、モロセヴィチはお気に入りの定跡の珍妙さを主張するわけではない」

 アレクサンダー・モロセヴィチは、その激しく独創的な棋風により世界中で高い人気を誇っている。彼は現在世界第7位にランキングされている。この定跡は彼の長年のお気に入りとなっている。激しく不屈の戦いへ導かれるので、「モロ」がチゴリン・ディフェンスを始めてからは、多くの支持者が追随した。

The Chigorin Defence According to Morozevich: The Lines and Ideas in His Most Original Weapon
Alexander Morozevich Vladimir Barskij
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2007年05月23日

Djuric&Pantaleoni『Chess Opening Essentials』

 Komarov DjuricPantaleoniの『Chess Opening Essentials: The Ideas and Plans Behind All Chess Openings』(330ページ、New in Chess)を紹介しよう。出版社レビューが短いので書名で他のレビューをググったら、うちのamazonストアが4位に引っかかる(笑。SEO対策などやってないのにありがたいことである。
 新刊書の評価が定まらないのは仕方ないことだが、本書のような定跡総合案内本、特に初心者向けのものは総体的に数が少ないので期待したい。もういいかげん、私の翻訳中のファイン『チェス定跡の背後にある考え方』に代わる本が定着してもいい頃だ。

出版社レビュー(訳):
 定跡の分かりやすい入門書かつ参考書で、すべての定跡に必須の知識を学べる。白黒双方の基本プランや考え方を説明する。初心者は自分の棋風や嗜好に合った定跡を選べるようになり、クラブプレーヤーには自分の定跡レパートリーを吟味する機会となる。Chess Opening Essentials(本書)は、読者がもっと探求したい定跡の特色を正しい指南付きで提供する。


 翻訳連載のラインアップがハードになってきたので、チェス書紹介の日は息抜き(汗。
Chess Opening Essentials: The Ideas and Plans Behind All Chess Openings (Chess Opening Essentials)
Komarov Djuric Pantaleoni
Chess Opening Essentials: The Ideas and Plans Behind All Chess Openings (Chess Opening Essentials)
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2007年05月15日

Nigel Davies『Gambiteer I: A Hard-hitting Chess Opening Repertoire for White』

 久し振りにギャンビット本、Nigel Daviesの『Gambiteer I: A Hard-hitting Chess Opening Repertoire for White』(192ページ、エブリマンチェス)を紹介しよう。白番の完全レパートリー本でもあるようだが、ギャンビット好きでも攻撃力が伴わないと単なる駒損で終わりそう(汗。

裏表紙より(訳):
 君は序盤に恐れを感じないか? 相手を最初から攻撃したいか? リスクを承知で賭けに出られるか? ちまちましたポジショナルなチェスが嫌いか? 早くからポーン・サクリファイスの必要を感じるか? ギャンビット指しか? これらの質問の答えが「イエス!」なら、本書は君のためにある!
 定跡に詳しいNigel Daviesは、2巻組のGambiteerシリーズとして、臆病者には全く不向きな−白黒双方での断固とした猛攻作戦−完全序盤レパートリー本を生み出した。この第1巻では白番でのギャンビット風定跡を扱い、第2巻は黒番での野心的なレパートリーに限定する。すべての定跡においてDaviesは、激しく戦術的な手が、退屈でささいな陣形的問題を完全に凌駕する開けた戦闘局面に至ると主張する。
 戦いの準備はいいかい? では警告を発し、開戦する!

*白番の完全な序盤レパートリー
*血に飢えたチェスの宝庫
*攻撃指向プレーヤーに理想的

 Nigel Daviesは、経験豊かなグランドマスターかつトレーナーである。イギリス快速オープンで優勝したこともあるDaviesは、著者としても棋書出版のベテランで、エブリマンチェスでの前書には『Trompowsky』や好評を博した『Play 1 e4 e5!』がある。


 最近は将棋の本や学参書までうちから買っていただくことがあって、ありがたいことです。最近のチェス書紹介は私のamazonインスタントストア(本ブログからも左帯バナーから行けます)に転載するのが精一杯で、HPベースの書評が取り残されています。何とかしなければ(汗。
Gambiteer I: A Hard-hitting Chess Opening Repertoire for White
1857445163 Nigel Davies

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The Trompowsky
1857443764 Nigel Davies

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Play 1e4 E5: A Complete Repertiore For Black In The Open Games (Everyman Chess)
1857444019 Nigel Davies

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Gambiteer II: A Hard-hitting Chess Opening Repertoire for Black
1857445368 Nigel Davies

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2007年04月26日

Garry Kasparov『Modern Chess Series, Part 1: Revolution in the 70's』

 久々にチェス書を紹介しよう。私自身は、うちのamazonリンクから買っていただいてやっとベストセラーに気付くほどだが、これもその一冊Garry Kasparovの『Modern Chess Series, Part 1: Revolution in the 70's』(ハードカバー、450ページ、'07年3月、エブリマンチェス)である。


出版社レビュー(訳)
 1972年から1975年にかけての時期は、定跡の進歩がその直前の10年間より重要だった! ゲームの展開に多大な推進力を与え、チェスを根本的に再創造したフィッシャーの影響下の時代である。この加速する流れは後年にも及ぶ。結果的に、定跡の全体図はその評価がほとんど塗り替えられた。

 魅惑的な本書で勉強すれば、多くを学び、意外な事実を見つけ、コンピュータ時代へ向かってチェスがどのように急速で容赦ない進歩を遂げているかを理解できること請け合いである。

*史上最も有名なチェス棋士の著作
*My Great Predecessorsに続くModern Chess Seriesの第1部


著者について(訳)
 ガルリ・カスパロフは、世界のトップ棋士、一般に史上最強のチェス棋士と見なされている。世界選手権を最年少で獲得することに始まり、並ぶ者なき大会記録、世界の主要大会での数知れぬ勝利はその多くが大差を付けてのものである。この抜きん出た成功以外にも、カスパロフは常にチェスの普及に尽力し続け、誰よりも現代のチェス人気に貢献した。
Revolution in the 70's (Modern Chess)
1857444221 Garry Kasparov

Everyman Chess 2007-03
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2007年03月26日

John Watson『Mastering the Chess Openings: Unraveling the Mysteries of the Modern Chess Openings』

 昨日うちのamazonから買っていただいたようなので、John Watsonの 『Mastering the Chess Openings: Unraveling the Mysteries of the Modern Chess Openings』(288ページ、ギャンビット出版)を紹介しよう。初出は去年だが、著者が有名でロングセラーになりそうなものは優先して取り上げようと思う。アソシエイトで気付かされただけだが(汗。

出版社レビュー(訳):
 ギャンビット出版社からのメジャーな新刊。ほとんどのチェスプレーヤーにとって、定跡の勉強はたいへんな徒労である。特定の知識が肝である場合もあればもっと全般的な理解が必要とされる場合もあるので、何が重要で何が重要でないかが分かりにくい。よく問題になるのは、序盤が終わったときにその先のプランを立てられない、それどころかピースがそのマスにいる理由すら理解できないことである。John Watsonは本書で、プレーヤーが定跡をもっと広く深く洞察することを目指している。チェス戦略に関する著者の既出本では、かつて一流棋士の独占物だった重要概念を、クラブプレーヤーの一般意識に浸透できるように説明した。本書はその定跡版であり、柔軟な思考や「独立規則(rule-independence)」等の概念を定跡に適用する方法を説明する。Watsonは、理想化や単純化されたモデルよりも、実際に一流棋士が定跡に対処する方法を多岐に渡って紹介する。読者はゲームの始め方について真剣に考えるようになるだろうし、本書は楽しくて挑戦しがいのある勉強素材でもある。

著者について(訳):
 インターナショナルマスターJohn Watsonは、世界一定評あるチェス作家の一人である。1980年代には当時草分け的なイングリッシュ・オープニング定跡の4巻本で評価を確立し、以来最上級の著作を生み出し続けている。1999年には、ギャンビット出版では初となったSecrets of Modern Chess Strategyが、イギリス・チェス連盟のブック・オブ・ザ・イヤーとアメリカ・チェス連盟のベスト・ ブックへのフレッド・クレーマー賞を受賞した。
Mastering the Chess Openings: Unraveling the Mysteries of the Modern Chess Openings
1904600603 John Watson

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Mastering the Chess Openings Volume 2: Unlocking the Mysteries of the Modern Chess Openings
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Chess Strategy in Action
1901983692 John Watson

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2007年02月24日

Christian Bauer『The Philidor Files: Detailed Coverage of a Dynamic Opening』

 Christian Bauerの『The Philidor Files: Detailed Coverage of a Dynamic Opening』(304ページ、エブリマン・チェス)を紹介しよう。

裏表紙(訳)より:
 フィリドール(・ディフェンス)は、白が最もよく指す 1 e4に対するダイナミックだが過小評価されている定跡である。しかし近年、ある種カルトなグランドマスター、フランスのトップ棋士Etienne Bacrotや元欧州チャンピオンLiviu Dieter Nisipeanuらの支持を得てきた。フィリドールの売りの一つはその柔軟性で、黒には最初から2つの選択肢がある。様々な棋風に対応できるので、激しく戦術的な戦いも戦略的で戦型を重んじる戦いもできる。
 本書では、自身フィリドールの権威でもあるBauerが、この興味深い定跡の秘密を明らかにする。自身の経験と他棋士のフィリドール名局を使い、重要な主変化からトリッキーな副変化まで確認する。白黒双方の鍵となる戦術および戦略的考え方を検証する一方で、手順の選択肢−現代グランドマスターの主兵器−等の重要な問題にも着目する。

*挑発的定跡の総合的解説
*独自分析満載
*クラブおよび大会プレーヤー向け

著者について(訳):
 Christian Bauerは、大会での一連の成功で名を挙げたフランスの若きグランドマスターである。元国内チャンピオンで、多くのチーム戦大会で仏代表を歴任し、2000年のイスタンブール・オリンピックでは主将を務めた。有名な仏チェス誌Europe Echecsにコラムの連載もある。本書はエブリマン・チェス社での2冊目で、1冊目は『Play 1...b6!』。
The Philidor Files (Everyman Chess)
1857444361 Christian Bauer

Everyman Chess 2007-02
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Play 1...b6: A Dynamic And Hypermodern Opening System For Black (Everyman Chess)
1857444108 Christian Bauer

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posted by 水野優 at 18:24| Comment(0) | チェス(洋書評 序盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月16日

Mihail Marin『Beating the Open Games』

 Mihail Marinの『Beating the Open Games』(256ページ、クオリティ・チェス)を紹介しよう。1 e4に黒番で 1...e5と返す本だが、ルイ・ロペスの主変化が抜けてる点で、完全なレパートリー本とは言えない。この部分は近刊『A Spanish Opening Repertoire for Black』で補完するらしい。

出版社レビューの訳:
 著者としても絶賛されるグランドマスターMihail Marinが、オープンゲームでの黒の序盤レパートリーを紹介する。これは 1 e4への応手を提供する意図だが、ルイ・ロペスの主変化は考慮していない。しかし、スコッチ、ビエナ、ルイ・ロペスのエクスチェンジ・ヴァリエーションからやっかいなキングズ・ギャンビット等までカバーしている。Marinは、定評ある文才を生かして一手一手の裏にある考え方を説明するので、分析が退屈な羅列に終わるありきたりの本にならずに済んでいる。主に著者自身のレパートリーに基づき、多くの独創的な手や考え方を明らかにしている。本書を 学習すれば、読者は優れたレパートリーを手に入れるだけでなくチェスをより深く理解できる。

 この20年でこれ以上の本を思いつかない。−Jeremy Silman(BCFブック・オブ・ザ・イヤー受賞者)

著者についての訳:
 Mihail Marinは強豪グランドマスターで、チェスの著作は3冊ある。『Learn from the Legends』は、イギリス・チェス連盟(BCF)のブック・オブ・ザ・イヤーと、アメリカ最大の賞ChessCafe.comの2005年ブック・オ ブ・ザ・イヤーにノミネートされた。
Beating the Open Games
9197600431 Mihail Marin

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Learn from the Legends: Chess Champions at Their Best
9197524484 Mihail Marin

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Secrets Of Attacking Chess
1904600301 Mihail Marin

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A Spanish Opening Repertoire for Black
9197600504 Mihail Marin

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2007年02月09日

Sam Collins『Attacking Repertoire for Black』

 Sam Collinsの『Attacking Repertoire for Black』(208ページ、バッツフォード)を紹介しよう。これも再版らしいが、人気なのか入荷が少ないのか国内では品切れのよう。

出版社レビューの訳:
 攻撃的プレーヤーは別格である。最初の数手でチェックメイトや駒得を狙えなければイライラする。好評を得た"An Attacking Repertoire for White"に続いて、元アイルランド・チャンピオンSam Collinsが、黒番での攻撃好きプレーヤーのための秘密兵器を用意してくれた。解説されたことがないゲームを多く含む現代マスターの実戦から最も激しい手筋を選び、フレンチ・ディフェンス、タラッシュ、ストーンウォール・ダッチ等の最も攻撃的な変化を網羅している。引用文献の完全なリストと、各ゲームがたやすく追える局面図付き。
Attacking Repetoire for Black
0713490292 Sam Collins

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2007年01月25日

Anatoly Karpov『Karpov's Caro Kann: Panov's Attack』

 どうもこのカルポフのカロカン本は発売が遅れに遅れているのか再発か分かりかねるが、また発売になっているので取り上げよう。Anatoly KarpovKarpov's Caro Kann: Panov's Attack』 (244ページ、バッツフォード)。

出版社レビューの訳:
 チェス史上最高のポジショナル・プレーヤーと見なされている偉大なアナトリー・カルポフは、30年余りに渡ってチェス界に大きな影響力を持ち続けてき た。今その該博な知識を、カロカンに絞った権威ある必携の定跡書で披露する。本巻では、生涯こだわり続けたカロカンで、白の攻撃的なパノフの開いたラインからの攻撃に対し、持ちこたえるだけでなく反撃かつ優勢になる方法を示す。黒が安全を確保するだけでなく積極的に指す多くの変化を選択して分析している。

著者について:
 アナトリー・カルポフはチェスの生きる伝説である。1975年から85年までの世界チャンピオン在位を含めて10年以上もの間チェス界をリードした。彼 をチャンピオンから引きずり下ろしたガルリ・カスパロフとは、以来イデオロギー的にも対立するロシア人同士の辛辣なライバル関係となる。カルポフは、 160以上の優勝という大会最多勝棋士でもある。他にもいくつかのチェス定跡書を著している。ロシア在住。
Karpov's Caro Kann: Panov's Attack
071349011X Anatoly Karpov

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2006年12月28日

Timothy Taylor『Beating the King's Indian and Grunfeld』

 今月発売のTimothy TaylorBeating the King's Indian and Grunfeld』 (192ページ、エブリマン・チェス)を紹介します。

出版社レビューの訳:
 本書で、ティモシー・テイラーはキングズ・インディアンとグリュンフェルトに真っ向から取り組み、黒が最悪になるように特別に仕立てた簡単に学べて効果的な白の作戦を数多く紹介している。テイラーは、気を付けるべき仕掛けや罠を強調しながら、白黒双方に典型的戦術と陣形的考え方を検証する。本書で勉強すれば、読者はキングズ・インディアンとグリュンフェルトに新たな自信を持って立ち向かえるだろう。

*有名な定跡の専門家による著作
*黒が最もよく指す二つの定跡に対する作戦
*クラブやトーナメント・プレーヤーに理想的

著者についての訳:
 インターナショナルマスター、ティモシー・テイラーは、USオープン優勝を始めとする注目すべき経歴を持つ経験豊富なトーナメント・プレーヤーである。優れたチェス作家でもあり、『How to Defeat the Smith-Morra Gambit』はUSチェス連盟のベストセラーとなった。本書はエブリマン・チェスでは2冊目で、最初の本は『Bird's Opening』である。
 チェス以外にも2冊の小説『Elaine the Fair』と『Amanda』も出版していて、映画『Wicked Pursuits』の監督でもある。
Beating the King's Indian And Grunfeld
1857444280 Timothy Taylor

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2006年12月06日

James Rizzitano『Chess Explained: The Taimanov Sicilian』

 あまりにもマイナーなテーマの本(外国の地方都市におけるチェス史等。尽力には敬意を表するが)や高価な本を避けると、amazonのチェス新刊は週に 1冊ずつも紹介できない感じがする。出版予定は多いが実際の発行が遅れるものも多いのだろう。
 今回は、James RizzitanoChess Explained: The Taimanov Sicilian(112 ページ、'06/11、ギャンビット社)である。Chess Explainedは、ギャンビット社の定跡本新シリーズらしい。エブリマンチェス社にはStarting Outという名シリーズがあり、両社には関連があるようだけどどういう関係なのだろう。

出版社レビューの訳:
 チェスの定跡書の新シリーズChess Explainedは、伝統的な意味での定跡研究書ではなく、豊富な実戦経験を通して定跡に卓越した名人によるレッスン集である。本書で序盤と中盤を理解 すれば、自分自身のゲームにおいて正しい手やプランを見つけられるようになる。コーチがそばにいて、双方のプラン、ある手順の背後にある考え方、特に必要な知識といった質問に答えてくれるようなものである。タイマノフ・シシリアンは、オープン・シシリアンに対する黒の最も柔軟な選択肢の一つである。黒は陣形を決めつけず、白の出方に対応する。このため、中心を成す構造は多様で、典型的なシシリアンのテーマをよく理解しているかどうかが往々にして勝利への鍵となる。タイマノフの局面理解は、うまく指すために必要なのである。戦後の世界チャンピオンの多くはタイマノフを使った。近年のトップ棋士では、アナンドが最もよく用いている。本書は、...Nge7の純タイマノフに加えて ...Qc7のパウルセン陣形も網羅している。
Chess Explained: The Taimanov Sicilian (Chess Explained)
190460062X James Rizzitano

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2006年11月24日

Anatoly Karpov『Caro Kann Defence: Advance Variation andGambit System』紹介

 チェス書でいちばん売れるのは総合的な入門書だろうが、出版される点数だと半分以上は個別の定跡書だろう。そこでまた今月の新刊紹介は定跡書、Anatoly Karpovの"Caro Kann Defence: Advance Variation and Gambit System"(284ページ、バッツフォード)である。

出版社レビューの訳:
 カロカン・ディフェンスは、ポジショナル指向のプレーヤーに人気の選択肢としてその信頼性が高く評価されている。しかし、近年では白からの危険な作戦が新たに多く発見されているために、主変化の定跡研究は実戦のプレーヤーに委ねられている。

 この第1巻では、生涯カロカンに執着する元世界チャンピオン、アナトリー・カルポフが、1 e4 c6 2 d4 d5 3 Nc3に対するクラシカル・システムの詳細とアドヴァンス・ヴァリエーション 3 e5をも扱う。この方法、正確さ、タイムリーさにより、黒の防御と反撃の成功と戦略的優位さえも確約される。

著者について
 アナトリー・カルポフはチェスの生きる伝説である。1975年から85年までの世界チャンピオン在位を含めて10年以上もの間チェス界をリードした。彼 をチャンピオンから引きずり下ろしたガルリ・カスパロフとは、以来イデオロギー的にも対立するロシア人同士の辛辣なライバル関係となる。カルポフは、 160以上の優勝という大会最多勝棋士でもある。チェス史上最高のポジショナル・プレーヤーとも見なされており、他にも数冊のチェス定跡書を著している。ロシア在住。
Caro Kann Defence: Advance Variation and Gambit System (Batsford Chess Books (Paperback))
0713490101 Anatoly Karpov Mikhail Podgaets Jimmy Adams

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2006年11月18日

Emms,Palliser『Dangerous Weapons: The Sicilian』

 チェス書評はすっかりご無沙汰になってしまったが、HP「チェストランス」に設置したamazonのインラインストアによってHP内で買い物をしていただけるようになったことだし、チェス書は翻訳優先で古いのをたまに買う程度の 私だが、新刊書を書評はできなくても出版社レビュー等の訳でまた紹介していくことにする。

 今回は今月発売のJohn Emms, Richard Palliser著『Dangerous Weapons: The Sicilian: Dazzle Your Opponents』(304ページ、Everyman Chess)である。

裏表紙の訳:
 古くて同じ定跡を何度も指すことに飽き飽きしてないかい? 常に最新のセオリーに乗り遅れないようにすることにうんざりしてないかい? 新しくてエキサイティングなものをやりたいだけなのに、たくさんの選択肢の中で迷っているだけかもしれないね? 助けになるから、あきらめないで!
 Dangerous Weapons: The Sicilianで は、John EmmsとRichard Palliserがタッグを組んで、断然人気でいちばん指されている定跡を調査している。それも革命的な方法で。二人はオープン・シシリアンの新しい かあまり研究されていない変化に限定し、白黒双方にとって豊富な作戦や可能性を選択した。慎重に選ばれた秘密兵器の多くは、革新的で衝撃的、ひじょうに狡猾、あるいは不公平に無視されてきたものだから、あなたの強敵にも通用すること請け合いだ。本書を学べば完全武装で自信がつき、対戦相手は逃げ回る!
 Dangerous Weaponsは、全く新しいシリーズの定跡書であり、定跡のレパートリーを再活性化する痛烈な作戦を豊富に提供する。

*これまで見たことがないシシリアン
*著者は有名な定跡の専門家
*野心と冒険にあふれるプレーヤーに理想的
Dangerous Weapons: The Sicilian (Dangerous Weapons)
185744423X John Emms Richard Palliser

Everyman Chess 2006-11
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2006年02月21日

Schiller『Standard Chess Openings』

 今昼ドラで見ているのはないが、14時からの再放送が楽しい。フジ「恋愛結婚の法則」は、小泉今日子のピン主役最後のいわゆるラブコメで、TBSの久世 プロデューサーものを別とすれば、いちばん好きでCSも含めて何回も見ている。ちょっとダメ人間的な役がはまり、最近の映画での活躍もその延長線上に あるのだろう。
 放送中の「N'sあおい」に柳葉敏郎と八嶋智人が出ているゆえの再放送だろうが、私は八嶋は「トリビアの泉」まで名前を知らなかった。他に、北村総 一朗や小野武彦を見ると「踊る〜」のフジならではの感じがする。キョン2と同世代で何かと共演が多い小林聡美との掛け合いもおもしろく、柏原崇ももちろん いい(汗。
 メークの違いもあるとはいえ、近年のパーツ大きめアイドルに比べると、小顔の代名詞だったキョンキョンもパーツはそれほど大きくないから、しばらく見慣 れるまで時間が掛かった(笑。それでも、エリクシールの化粧品で「持ち上げる」必要がなかった頃だから今よりとんがり顎がシャープだ。


 Eric Schillerの"Standard Chess Openings"(768ページ、'02年、Cardoza)である。HP用の序盤資料作成に役立つ資料を探しているが、NCO等は手順 の羅列以外は序論しかなく、個々の定跡書をそのために今さら買う気もしない。手放した本を含めてもあまり役に立つものはなかった気がする。
 本書は新宿タイムズスクエアの紀伊国屋で手に取ったことがあるが、その初版でもでかかったのに、この第2版はさらに横長のようだ。MCO並のページ数だ が、字が大きくて紙も分厚い。ジュニアの購買層も意識しているのだろう。相対的に価格が手ごろに思えてくる。

 裏表紙に「3000の序盤戦略、250の完全解説ゲーム、1000の局面図」とあり、3000は変化の総数と思われる。全定跡を網羅する本にしては珍し くゲームが主体となっており、その解説の中で必要な他の変化にも触れる形を取っている。
 だから、あくまで定跡も学べるゲーム集と考えた方がよく、事典やレファレンス的な使い方にはあまり向かない。シラーは、ナショナルマスターでありながら 多作の 著者であるのが、パンドルフィーニと似ている。膨大な資料から序盤研究をまとめる力が底知れなく、私も見習いたい。

目次の訳:(最下位項目省略)
1.序文
2.概論
3.最善定跡の選択
4.オープン・ゲーム
 雑多なオープンゲーム
 キングズ・ギャンビット
 ロシアン・ゲーム(ペトロフ・ディフェンス)
 スコッチ・ゲームとギャンビット
 スリーとフォー・ナイツ
 イタリアン・ゲーム(ジオッコ・ピアノ)
 スパニッシュ・ゲーム(ルイ・ロペス)
5.セミ=オープン・ゲーム
 シシリアン・ディフェンス
 フレンチ・ディフェンス
 カロ=カン・ディフェンス
 モダン・ディフェンス
 アリョーヒン・ディフェンス
 スカンジナビア・ディフェンス(センター・カウンター・ディフェンス)
 ニムツォヴィッチ・ディフェンス
6.クローズ・ゲーム
 クイーンズ・ギャンビット・アクセプテッド
 クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド
 セミ=スラブ・ディフェンス
 タラッシュ・ディフェンス
 クイーンズ・ギャンビット・リフューズド
 スラブ・ディフェンス
 白のシステム
 クイーンポーン・ゲーム
 ダッチ・ディフェンス
7.インディアン・ゲーム
 キングズ・インディアン・ディフェンス
 クイーンズ・インディアン・ディフェンス
 ニムゾ=インディアン・ディフェンス
 グリュンフェルト・ディフェンス
 モダン・ベノニ
 ベンコ・ギャンビット
 雑多なインディアン・ゲーム
8.フランク・ゲーム
 レティ・オープニング
 キングズ・インディアン・アタック
 カタラン
 ハンガリアン・アタック/ピルツ・フィアンケット
 イングリッシュ・オープニング
 ニムゾ=ラーセン・アタック
 バード・オープニング
 ファン・ヒート・オープニング
9.レパートリーの構築
10.次の段階
11.索引
 ECOコード索引
 年代別索引
 ゲーム別索引
 定跡別索引
 定跡手順別索引
 UCO索引

1.序文から「移行」の訳:
 ある定跡で始まったゲームが、他の定跡の典型的な局面へ移行することはよくある。例えば、1 Nf3 d5はフランク・ゲームだが、2 e4と続ければ、通常は 1 e4 c5 2 Nf3で到達するシシリアン・ディフェンスの局面になる。
 当然ながら、ある局面に至るのにどんな手順を使おうとかまわないが、ときには序盤のかなり後になって、10や12手目に別の定跡の局面になることもあれ ば、違う手数で同じ局面にたどり着くことさえある!
 例えば、1 e4 d5 2 exd5 Qxd5 3 Nc3 Qd6 4 d4 c6はスカンジナビア・ディフェンスの一変化で、あまり評判が良くないわりには私もよく指した。これは、アリョーヒン・ディフェンスからも起こりうる。1 e4 Nf6 2 e5 Ng8 3 d4 d6 4 exd6 Qxd6 5 Nc3 c6. 同じ局面への2つの手順である。もう一つ使ったこともある。1 e4 c6 2 d4 d5 3 exd5 Qxd5 4 Nc3 Qd6. すべては私のお気に入りの変化へ至る道筋である!
 起こりうる移行は数多いので、あるゲームの定跡を特定することも容易ではない。例えば、キングズ・インディアン・ディフェンスについて言うと、1 d4 Nf6 2 c4 g6 3 Nc3 Bg7で始まるかどうかでは確定しない。黒が早期に ...d5とすればグリュンフェルトの範疇に入るだろうし、早めの...c5ならモダン・ベノニになるかもしれない。黒が展開を完了したときに ...d6と ...0-0(ほとんどの場合)としていて初めて、ほぼ確実にキングズ・インディアンになったと言えるのである。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
1 d4 Nf6 2 c4 g6 3 Nc3 Bg7


 本書のセールスポイントからは外れるだろうが、あまり扱ったことのない内容を選んで訳してみた。スカンジナビアからカロカンはあるが、わざわざその逆に することはないだろう(笑。序盤とその考え方を一緒に学びたい人には、NCOやMCOよりずっとお薦めできる本である。
Standard Chess Openings: The Complete and Definitive Standard to All the Major Chess Openings, More Than 3,000 Opening Strategies Inside
1580420486 Eric Schiller

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posted by 水野優 at 14:35| Comment(0) | チェス(洋書評 序盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月24日

Gallagher『Starting Out: The Caro-Kann』

 土曜の雪が降ってから外出してなかったが、さっき買い物に行くとまだけっこう雪が残っている。地球温暖化 が南極半島の氷を雪崩のように溶かすなら、せめて冬ぐらい暖かくしてほしい。野菜は相変わらず高いからキャベツの代わりに漬け物を買ってきた(汗。


 Joe Gallagherの"Starting Out: The Caro-Kann"(192ページ、'02年、Everyman Chess)である。序盤本に定評ある著者のギャラハーについては説明不要だろう。日本はわりとカロカンがはやっている方だと思う。昔から中川さんが指し ているし、カルポフやアナンドの影響もあるらしく松戸でもよく 見た。
 私が大阪で指していた頃、codfishさんは ...e5だったが、今はカロカンと聞いている。ECOのC巻を無駄にしないためにはフレンチを指した方がいいのだろうが(笑、フレンチとカロカンは似て いるようでそうでもない。ルーベン・ファインによると、...e6に比べると...c6は堅実だが、センターポーンでない分攻撃性には欠ける。

目次の訳(第1章だけ下位区分も):
参考文献
序文
1 e4 c6 2 d4 d5 3 Nd2/Nc3 dxe4 4 Nxe4
1 クラシカル・ヴァリエーション 4...Bf5: オールド・メインライン
 序論と早めのサイドライン
 7...Nd7で黒がクイーン側キャスリング
 7...Nd7で黒がキング側キャスリング
 まとめ
2 クラシカル・ヴァリエーション 4...Bf5: モダン 7...Nf6
3 4...Nd7: 5 Ng5以外
4 4...Nd7 5 Ng5
5 4...Nf6
1 e4 c6 2 d4 d5 3 e5
6 アドヴァンス・ヴァリエーション: 3...c5とショート・システム
7 アドヴァンス・ヴァリエーション: 鋭い 4 Nc3
1 e4 c6 他のシステム
8 パノフ−ボトヴィニク・アタック
9 ファンタジー・ヴァリエーション: 3 f3
10 その他のシステム
完全に収録したゲームの索引
変化の索引

第1章の冒頭訳:
序論と早めのサイドライン

1 e4 c6 2 d4 d5 3 Nc3 dxe4 4 Nxe4 Bf5(図1)

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  

図1
クラシカル・ヴァリエーションの開始局面

 クラシカル・カロカンは、4...Bf5とする変化として通常知られており、最も堅牢な変化の一つと評価されている。近年少し活気づけられたとはいえ、 何が何でも勝ちを求めて指される変化ではない。基本的に、黒が負けを避けたいときや攻撃的で圧倒されそうな相手に対して使う変化である。たしかにひじょう に堅実な変化なので、著者を含めた多くのプレーヤーは、白番でこの防御を何度も攻略できないままレパートリーを変えてしまった。
 クラシカル・カロカンは長い歴史を持っている。世界チャンピオンの多くが常時使ってきた−カパブランカ、ボトヴィニク、ペトロシアン、カルポフ、若いカ スパロフ、老タリ−が、他のフィッシャーやアリョーヒンは避けてきた。彼らの範疇ではなかったのである。アナンド、バレーエフ、ドレーエフら現代の才能あ るプレーヤーも使っている。
Starting Out: The Caro-Kann (Starting Out)
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posted by 水野優 at 12:58| Comment(8) | チェス(洋書評 序盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月16日

Shaw『Starting Out: The Ruy Lopez』

 昨日のETV「トップランナー」で沢田知子を見た。自らがいろいろな民族や職業の女性に扮装して撮影した「ID400」という作品は、一昨年に 知ったからその後の目新しいことはなかったが、一見同じようなことをしている森村泰昌が「美術家」、彼女が「(自分でシャッターを押さない)写真家」と自 称する違いが、本人の話を聞くと何となく分かる。
 はっきり言って、芸術家でなければフジテレビの「ビューティー・コロシアム」に出てもおかしくない、美人とはほど遠い容姿だが、その平面顔がコギャル メークに合うし、何より女という自分の肉体素材がなければ成立しないアートであることに羨望を感じる。私の見方は結局こうなんだよなあ(汗。


 やはり序盤の個別本は一通り見ておこうということで、John Shawの"Starting Out: the Ruy Lopez"(144ページ、'03年、エブリマンチェス)である。ルイ・ロペスは、最初に習うことが多い最も古い定跡の一つであり、中世 スペインの名プレーヤーの名にちなんでいる。

裏表紙の一部訳:
 インターナショナルマスター、ジョン・ショーは、スコットランド選手権を3度制覇し、オリンピックや欧州選手権の代表を何度も歴任している。エブリマン での処女作『スターティングアウト:クイーンズ・ギャンビット』は、読者と批評家の双方に好評を得た。

目次の訳(1だけ下位区分も):
序文
1 黒の3手目の選択肢
 序論
 ベルリン・ディフェンス
 シュリーマン・ディフェンス
 稀なディフェンス
2 4手目の選択肢
3 5,6手目の選択肢
4 マーシャル・アタックと稀なクローズ変化
5 クローズの主変化
完全に紹介したゲームの索引
変化の索引

1 黒の3手目の選択肢 序論〜ベルリン・ディフェンスの冒頭訳:
序論

 本章では、主防御 3...a6以外の黒の3手目の選択肢を見ていく。超堅実なベルリン・ディフェンスや、野心的傾向で危険かつ攻撃的なシュリーマンである。他にも多くの風 変わりな変化、変則的なバード・ディフェンスや古風なシュタイニッツ・ディフェンス等を検討する。
ベルリン・ディフェンス

 1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bb5 Nf6(図1)









図1
ベルリン・ディフェンス

 ベルリン・ディフェンスは最近の10年間で黒に大成功をもたらした。ウラジーミル・クラムニックの脅威的なプレーによって、白番のプレーヤーがベルリン の壁を越えられないと心配するようになったのである。しかし、次は攻撃的なアプローチでやり返す白に追い風が吹いている。
 4 0-0
 重要な変化−白はe5もやがて落ちると見てe4を見捨てる。
 穏やかな 4 d3はまともだがほとんど脅威がない−ゲーム1参照。4 Nc3もありうるが、ルイ・ロペスからフォー・ナイツ・オープニングへ移行するのでここでは扱わない。しかし、フォー・ナイツは、ルイ・ロペスに比べて全 般的にほとんど見込みがないと見なされている。
 4...Ne4
 4...Bc5はクラシカル・ベルリン。白には2つの主選択肢があり、5 Nxe5は黒のセンターへの戦術的一撃(ゲーム2参照)で、5 c3は優勢なセンター構築を試みる標準的ルイ・ロペス(ゲーム3参照)である。
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2005年12月24日

DeFirmian & Korn『Modern Chess Openings: MCO-14』

 昨日TBS「一万人の第九」を見た。指揮者の佐渡裕はもう7年目らしいが、去年に続いてユンソナもソプラノに加わった。やはりハイトーンが厳しそうだ。 合 唱も練習するとはいえほとんどが素人だし、自分らが同時に聴き手として同じ空間を共有する不思議なコンサートである。広すぎて音の時差が生じるから指揮者 の意義が高まるとは経験者の弁(笑。


 Nick De FirmianWalter Kornの"Modern Chess Openings: MCO-14"(734ペー ジ、'99年、タイムズ・ブックス)である。私は第13版を持っていた。以下に見るように表の手順が縦に並ぶのが、対抗馬のNunn's Chess Openings(NCO)と異なり、見やすさの好みが分かれるところだろう。
 Batsford Chess Openingsの流れをくむNCOに比べると、古くてあまり指されなくなった序盤でも歴史的意義のあるものは残し、各定跡最初にある解説でも変遷をたど るように詳説されているのが特徴である。その意味でNCOと重ならない部分が多いから、ディープなファンは両方買うしかないだろう(笑。

出版社レビューの訳:
MCO-14 チェスプレーヤーのバイブル
 始めよければ半分は成功したようなものである。
 なぜ『モダン・チェス・オープニングズ』が「チェスプレーヤーのバイブル」と呼ばれるのか? それは、半世紀以上も前に初出版されて以来、チェス界で最 も信頼されてきたからである。チェスの定跡に関して最も新しくて包括的な一巻本資料だからである。さらに、過去8年間の主要トーナメントや定跡研究書によ る変更や進歩を反映した完全改訂版だからである。
著者について:
 ニック・デファーミアンは、全米選手権保持者で、ディープ・ブルーに定跡を教えた。

目次の訳(詳細省略):
謝辞 序文 文献 凡例 初心者への助言
I. ダブル・キングポーン・オープニング(1 e4 e5)
II. セミオープン・ゲーム(1 e4 e5以外)
III. ダブル・クイーンポーン・オープニング(1 d4 d5, f5; Nf6 2 c4 e5)
IV. インディアン・オープニング(1 d4 Nf6 2 c4)
V. フランク・オープニング(1 c4, Nf3, b3, f4, その他)

I. ダブル・キングポーン・オープニング定跡表の冒頭訳:

キングズ・ギャンビット
1 e4 e5 2 f4









 キングズ・ギャンビットはチェス神話の一つである。百年以上もの間、この定跡は失われた黄金期を代表するものだった。冒険に満ちたサクリファイスと戦意 あふれる攻撃という高潔さに対して、公明正大でなくても最善を尽くす防御をできる者がほとんどいなかったのである。
 黄金期には綿密な分析が霧散する傾向があり、ロマンティックなキングズ・ギャンビットの絶頂期も例外ではなかった。しかし、この定跡の成功がしばしば 防御側の技術的問題にあるという現実面に興味が移っていく。キングズ・ギャンビットの衰退は、この防御力と局面理解の拙さによってその繁栄が支えられてい た ことを示している。19世紀中葉には、いくつかのギャンビット手筋も成立しておらず、勝ちどころか敗北筋であることも気付かれ始めた。その後 プレーヤーは、序盤を戦術的利点よりも駒の配置を優先に考え始めるようになる。シュタイニッツとツカートルトによる初の公式世界選手権が行われた1886 年 の頃には、もうキングズ・ギャンビットは下火になっており、1896年までの6度の世界選手権でたった1局しか指されていない。
 20世紀にはその評価もさらに低下する。シュピールマンの論文『キングズ・ギャンビットの病床より』には、カパブランカが1935年に自身の本『チェス 入門』で軽蔑するコメントを書いた。ボビー・フィッシャーの有名な1960年代の論考『キングズ・ギャンビットの崩壊』は、この定跡を永眠させるべきとし ている。しかし、キングズ・ギャンビットは終焉を拒否し、20世紀の幾人かの名人が使う機会を見いだした。アリョーヒン、ケレス、タリ、フィッシャー (!)、そしてスパスキー(実に見事な戦績を収めた)である。20世紀末のキングズ・ギャンビットは黄金期とは比べるべくもないが、イギリスのグランドマ スター、ジョー・ギャラハーとナイジェル・ショートが、1997年のマドリード・スーパー・トーナメントで合わせて2勝1敗の成績を上げた。たしかにまだ キングズ・ギャンビットは生きて健在なのである。

キングズ・ギャンビット
1 e4 e5 2 f4 exf4 3 Nf3 g5

     1           2           3           4           5           6
   キェゼリツキー         フィリドール ハンシュタイン ムジオ
4 h4...........................................................Bc4[l]
   g4                                   Bg7...................................g4
5 Ne5[a]                              h4...............0-0         0-0[t]
   Nf6..............Bg7        d6         h6         h6           gxf3
Modern Chess Openings: MCO-14 (McKay Chess Library)
0812930843 Nick De Firmian Nick De Firmian Walter Korn

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2005年12月12日

Watson『Play the French』

 昨日NTV「真相報道バンキシャ!」でキングカズ(三浦知良)の密着取材を見たので、サッカーをほとんど見ない私も今日の彼が出るゲームは見る気になっ ている。引き際のきれいなスポーツ選手よりボロボロになるまでやる選手の方が好きだ。もっとも、どうせやるならボロボロにならないように体調を維持した方 がいい。
 最近はそういうトレーニング技術が進んできたのに、元々体力低下の影響が少なそうなチェスの方がピーク年齢が早まっているのはどういうことだろう。子供 への教授法がそれを上回る進歩を見せているのだろうか。日本の場合は、子供ほどチェスに時間をさける大人が少なすぎるからのように思えるが。


 また序盤本にもどろう。バレーエフのゲームで思いだしたが、まだ大型定 跡の中ではフレンチを扱っていなかった。全3巻組のような巨大なものを別にすればフレンチ使いのバイブルと言われるJohn Watsonの"Play the French"(248ページ、第3版'04年、エブリマ ン・チェス)である。
 2版まではなかったクラシカル(3...Nf6)も加わって盤石になった。最後の索引は、主要な局面図も付いていてひじょうに見やすい。多くの著作で知 られるIMワトソンについては改めて触れる必要もないと思うが、彼自身もウェブ上で多くの本をレビューしている。

目次の訳:
文献 序文
1 アドヴァンス・ヴァリエーション:序論
2 アドヴァンス・ヴァリエーション:5...Bd7
3 アドヴァンス・ヴァリエーション:5...Qb6
4 キングズ・インディアン・アタック
5 エクスチェンジ・ヴァリエーション
6 タラッシュ・ヴァリエーション:序論と 3...c5
7 タラッシュ・ヴァリエーション:3...Be7
8 ウィナウアー・ヴァリエーション:4手目の選択肢
9 ウィナウアー・ヴァリエーション:5手目の選択肢
10 ウィナウアー・ヴァリエーション:7 Qg4のメインライン
11 ウィナウアー・ヴァリエーション:ポジショナルなライン
12 ウィナウアー・ヴァリエーション:6...Qc7
13 クラシカル・ヴァリエーション:4 e5
14 クラシカル・ヴァリエーション:4 Bg5 (4...dxe4 5 Nxe4 Be7)
15 その他
ヴァリエーションの索引

1 アドヴァンス・ヴァリエーション:序論の冒頭訳:
1 e4 e6 2 d4 d5 3 e5
 歴史的には、アドヴァンス・ヴァリエーションとエクスチェンジ・ヴァリエーションが、フレンチ・ディフェンスに対して最初に指されるようになった。3 e5のセオリーは、ニムツォヴィッチの挑発的な考え方に刺激されたものだが、後を継ぐ主立った支持者が現れなかったために、現代ではほとんどすたれてし まった。しかし、ここ20年ほどの間で、3 e5はわずかながら人気を盛り返してきている。フレンチを使うトップレベルのプレーヤーが増加し、3 Nc3や 3 Nd2から始まる従来の多くの変化筋では白が有望な局面に持って行けなくなったため、主要なグランドマスターがセンターでの異なる形の優位を求めて 3 e5を採用するようになったからである。そこでは、センターを支持するための新たな戦略が考案された。両翼での前進による方策が注目される。これらの考案 は トップレベルで大成功を収めた。目下、アドヴァンス・ヴァリエーションは 3 Nd2にもほとんど引けを取らないほど頻繁に指されている(もっとも、未だに最も頻度が高いのは3 Nc3だが)。
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2005年11月28日

Seirawan『Winning Chess Openings』

 昨日はテレ朝で年に一度楽しみにしているIQ診断番組「テスト・ザ・ネイション」があったので、食事中も解答を紙に書きながら見ていた。結果的には一昨 年127、去年128に比べると今年は121と落ちてしまった(汗。出題パターンが様変わりしたことが原因の一つだと思う。
 小学生の頃から知能テストを何度も受ける機会がありながら、個人的にその結果を知らされないできたことに不満を持つ人は多いだろう。私もその一人であ り、一昨年のこの番組で初めて知ることができた。平均を100とするなら偏差値みたいなものだが、毎年の平均がそこに落ち着いているので信頼できる数値だ ろう。

 今年は例年の80問が、左脳と右脳に特化した問題30ずつとその他20問に分けられた。最後に、情報の入出力がそれぞれ左右脳のどちらが優位かで4パ ターンに分け、職業適性の判断まで行おうという試みが加わった。それによると私は右脳入力左脳出力で、さらに「人」より「物」思考なので、
 
 研究者、建築家、漫画家、エンジニア、ゲームクリエーター、獣医、料理人

 エンジニアはやめたのに、これが適職に「なってしまった」。棋士は入出力とも右脳優位がいいらしく、スタジオゲストの女性囲碁棋士はまさにそうだった。 左脳問題なんて15秒のが5秒で解けるのに、右脳の特に映像中心の問題が毎度難しい。そう感じるのはやはり弱いからか。しかし、四択の解答で右脳的出力 (創造力)なんて測れるのかしらん。

 興味ある人はテスト・ザ・ネイションで挑戦されたし。


 序盤本だが、今回は初心者向けYasser Seirawanの"Winning Chess Openings"(272ページ、'03年、エ ブリマン・チェス)にする。Winning Chessシリーズはうちのリンクからいちばん売れているシリーズだから、ちゃんと紹介しておかねばならない。


裏表紙の訳:
 どのゲームも自信を持って始めよう!
 チェスの初心者にとって2つの最難関は、序盤の段階を切り抜けることとその中で適切な攻撃と防御の陣形を選ぶことである。『勝つチェスの序盤』では、そ れらの方法を扱う。ヤッサー・セイラワンは、楽しく分かりやすく、白黒どちらかの駒を用いて陣形を説明する。
 『勝つチェスの序盤』は以下の方法を説明する:
*キングの安全な場所を作る
*10手以内の負けを読む
*時間、戦力、スペース、ポーン形という要素を活用する
*実証済みの序盤原則に基づく戦略を組み立てる
*白のあらゆる序盤に対する黒の防御を採用する
*世界チャンピオンが使った白の序盤を採用する
 『勝つチェスの序盤』は、あらゆるゲームに適用できる序盤原則の堅実な理解を助ける−長くて退屈な序盤の変化手順を覚えることなしに。

 ヤッサー・セイラワンは、国際チェス連盟(FIDE)レイティング において最高位に位置するアメリカ人プロプレーヤーで、ボビー・フィッシャー以後初めて世界選手権への挑戦権を得たアメリカ人である。3度の全米チャンピ オンと1989年の西半球チャンピオン、チェス・オリンピックにはアメリカ・チームメンバーで8度参加している。現在も世界トップクラスのプレーヤーで、 世界チャンピオンのガルリ・カスパロフとアナトリー・カルポフをトーナメントで破ったことのある数少ないプレーヤーの一人である。

目 次の訳:
序文
第1章 チェスを始めた頃
第2章 序盤の基本原則
第3章 古典的なキングポーンの序盤
第4章 古典的なクイーンポーンの序盤
第5章 現代的なキングポーンへの防御
第6章 現代的なクイーンポーンへの防御
第7章 序盤の解決策
第8章 クイーンポーン序盤の解決策
第9章 キングポーン序盤の解決策
用語集
索引

 第1章は、ブロンシュタインが世界選手権で初手に50分(!)かけた話 で始まる。それほど最初の局面は難しいと、著者は言おうとしている。以下は著者がチェスを始めた頃のゲームを題材にしている部分から訳した。

相手の手を真似ながら
 思い出せるかぎり初期のゲーム

ヤッサー・セイラワン 対 友達じゃない知らない相手
 黙って私の手に付いて来られたし。
  1. d3?
 何ゆえ手を誤ったのか? 実際にどうしたらいいのかが分かっていない。ちっぽけなポーンが大声で叫んでいるのが聞こえてきそうである。私は、すでにすば らしい戦略を「発見」していたからこの「手待ち」をした。やがて明らかになるように。
  1... d5
 熟練した相手はしごくまともな手を指してきた。
  2. d4?
 これが私のすばらしい発見である! 相手の手を真似るだけで自分は何も考えなくていい。利口じゃないか? 相手の手から注意をそらさずにそのプランから ミ スを推理し、肝心のときが来たら真似をやめて見事に勝利をつかむのである。

 訳はこのくらいにして、手だけ続きを転載しておく。2... e5!? 3. e4? Bg4? 4. dxe5? Bb4?


 はっきり言って、ずぶの初心者から序盤を学べる本である。もちろんルール等についてはあらかじめ知っておく必要がある。和書では物足らなくなって洋書を 求める段階でも、この本では少し食い足らなくて中途半端になる気がする。読み物としておもしろい部分は捨てきれないが。


 買うだけの方は知らない部分が多いと思うamazonアソシエイトについて念のため説明しておこう。うちのamazonリンクからたどって購入していた だくと、その代金の3.25%〜(実績によって上昇)が私の利益となる。個別リンクがない商品を検索でたどって買っても同様である。
 買い物の途中でページの寄り道をした場合に、どこまでアソシエイトとしての購入になるかが微妙で難しいが、私の記事や翻訳の労をねぎらって買ってや ろうという方は、ぜひこのブログの両側にあるamazonリンクからたどって購入していただければと思う。
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2005年11月21日

Cox『Starting Out: Alekhine's Defence』

 実家ではネットができなかったが、その分読書三昧だったからそれはいい。いちばん困るのは食生活が変わることだ。贅沢なことだが、普段とは比較にならな いほどおかずが多いのでご飯をごく少量にして何とかやり過ごした。普段から小食にしていると、栄養摂取効率のいい体質に変わっていくと思っている。


 序盤本は今回 1 e4系、John Coxの"Starting Out: Alekhine's Defence"(192ページ、2004年、Everyman Chess)である。本定跡のエキスパート、ロレンさんが推奨しているので私が書くのも今さらだが、IM Igor Khmelnitskyのレビューで概観しよう。


 エブリマンの「スターティング・アウト」シリーズは数冊持っているが、 序盤の複雑さに首を突っ込む準備ができた初心者をメイン・ターゲットにしている印象がある。しかし、本書はそれよりも熟練したプレーヤー向きと思われる。
 多くの分析と最新傾向の好提示に加えて、独自の考え方も見られる。レイティング1300未満のプレーヤーだと得るところは少ないだろう。すべてのメ ジャーな変化が42の注釈付きゲームで紹介されており、古いものは一般的な原則を説明し、新しいものは最近の傾向を表している(1967〜2004年)。

 このエキサイティングな序盤に関して書かれた本はひじょうに少ないが、本書はこれだけで十分なレファレンスとは言えないものの、白黒双方から好ましい手 筋を検討するには好書である。お薦めする。

目 次 (第1章だけ下位目次も示す)

文献と謝辞
序文
1 メインライン 4...dxe5
 序文
 5...g6(ケンギス)
 5...c6(マイルズ)
 5...Nd7(挑発的)
 実例ゲーム
2 メインライン 4...Bg4
3 メインライン 4...g6/4...Nc6
4 エクスチェンジ・ヴァリエーション 5...cxd6
5 エクスチェンジ・ヴァリエーション 5...exd6
6 フォー・ポーン・アタック 5 f4
7 チェイス・ヴァリエーション 4 c5
8 その他の白の選択肢
ヴァリエーションの索引
全局ゲームの索引

 以下、最初の「序文」の冒頭訳。

1 e4 Nf6 2 e5 Nd5 3 d4 d6 4 Nf3(図1)









図1 グランドマスターの選択

 これは白の最も堅実な手順で、グランドマスターに最も見られる選択肢である。このように、「クラシカル」と「モダン」に共通している変化手順について は、時を超えた普遍性を持っていると考えていい。白はe5のポーンを維持する(4 c4 Nb6 5 f4)か交換する(4 c4 Nb6 5 exd6)かより前に、黒がどう指すかを見ないことには選択肢が決められない。黒はここで、e5で交換する(現代的作戦)か、4...Bg4(第2章)と 展開するか、4...g6や 4...Nc6(第3章)とする。
Starting Out: Alekhine's Defence (Starting Out)
1857443705 John Cox

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2005年11月07日

Davies『The Trompowsky』

 本田美奈子・が亡くなった。臍帯血移植までしたから完治すると思っていた。ルックスも声質も、何より体力もそれほど恵まれているとは思えなかったが、 それを上回るテクニックがあった。フレーズの最後で吸うように余韻を残す歌唱法は、真似してもできなかったなあ。


 今回の序盤本は 1 d4の番だが、たまには白から形を決めるものを紹介しよう。全日本トッププレーヤー南條さんのレパートリーでもよく知られるトロムポウスキーである。最も 新しいNigel Daviesの"The Trompowsky, 2nd Edition"(144ページ、'05年、Everyman Chess)をRick Kennedyのレビューで概観しよう。


 何か新しい定跡を探しているのなら、学べて楽しい最新の本書を強く薦め る。1 d4 Nf6 2 Bg5は、Hortが"How to Open A Chess Game"(1974)で扱ってから30年間の歴史を持つ。そこでは、めったに出くわさない作戦とはいえ、知らないと実に困ると書かれている。
 以来、徐々に見取り図が描かれる。'80年代にはBellinがトーレ・アタックとともに本を書く。'90年代には、Hodgsonと Gallagherがそれぞれ著書を出し、21世紀に入ると、Gerstner, De la Villa, Wellsという風に研究者は増えてくる。

 トロムポウスキーがこれほど広まったのは、複雑で独創的な局面が攻撃的かつ野心的なプレーヤーに支持されたからである。白は、黒が用意する複雑な獣道か ら正道 を探す必要はない。Hodgsonは、白は悪くならず、おもしろい局面に進んでいくのだと言う。
 著者は白黒双方でトロムポウスキーを指す。過去の書物を調べ、インフォーマントやTWICの最新情報も追いかける。序文でも以下のようにそのバランスの 良さを見せている。

白の攻撃的レパートリー1
白の攻撃的レパートリー2(1より実戦的)
白のポジショナル・レパートリー
黒の攻撃的レパートリー
黒の攻撃的ポジショナル・レパートリー
黒のポジショナル・レパートリー

 「黒がどう指しても10手で粉砕する」的な試みは、黒が互角にすると著者は戒める。例えば、ボビー・フィッシャーがルイ・ロペスの白でも黒でも勝つの は、彼が序盤以外も強いからである。(だから彼はフィッシャーなのだ)
 トロムポウスキーをうまく指すには、攻撃的精神と大枠のプランが必要だが、ポーンとセンターポーン、難解な中盤と微妙な終盤を理解することも欠かせな い。つまりは、チェスのすべてを知っていなければならないのである。以下に典型的な2つの局面を記す。









Golod-Adamson ラスベガス 2004 (1-0, 68手)









Chepukaitis – Klimov サンクト・ペテルスブルク選手権 2004 (1/2-1/2, 59手)









Hodgson – A. Panchenko ベルン 1994 (1-0, 33手)

 最後の局面は、白が1手得のブラックマー・ディーマー・ギャンビットに見える。

目次

参考文献
序文
1.d4 Nf6 2.Bg5
1.                  2…Ne4 3.Bf4 c5 4.f3
2.                  2…Ne4 3.Bf4 c5 4.d5
3.                  2…Ne4 3.Bf4 d5 と 3…その他
4.                  2…Ne4 3.Bh4 c5 と 3…g5
5.                  2…Ne4 3.Bh4 と 3 その他
6.                  2…c5
7.                  2…e6
8.                  2…d5
9.                  その他の黒の2手目
全局引用ゲームの索引

 著者は、実践例(1つを除いて'90年代以降)を詳しく解説し、正しい変化も発見した戦術的誤りも過去の文献から名前を引用する。10手目まででもかな りの新手が生まれている。各ページには2,3個の局面図があり、各章にはメインラインと関連ゲーム、重要な局面とともにまとめがある。

 本書は、もうできあがったトロムポウスキー狂にはもちろんのこと、これから新しい序盤を指してみようというプレーヤーにもお薦めできるすごい本である。 ちょっと気分転換に読むだけでも、トロムポウスキーの神髄に触れることができるだろう。


 いいとこずくめのレビューだが、一つ注意すべきは、黒の 1...Nf6にしか対応していないので完全な 1 d4のレパートリー本ではない。
The Trompowsky
1857443764 Nigel Davies

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2005年10月31日

Emms『Starting Out: The Sicilian』

 何だかんだ言いながらブログを書いている。序盤、今週は 1 e4の回なのでGM John Emmsの"Starting Out: The Sicilian"(176ページ、 '02年、Everyman Chess)にしよう。毎度おなじみS. Evan Kreiderのレビューを参考にまとめてみる。


 重めの紙質はページがめくりやすく、文字や図面の印刷は完璧で、無 駄な余白のページもほとんどなく、定価も安い。文献と短い序文で始まり、基本的な戦略の考え方とオープン・シシリアンのポーン形につての 説明がある。初心者でも本文の各章の変化に対応できるようにそれぞれの変化をまとめて終わる。

第1章(20ページ):ドラゴン・ヴァリエーション
 ユーゴスラヴ・アタック、クラシカル・ヴァリエーション、レーヴェンフィッシュ・アタック、白g3
第2章(22ページ):ナイドルフ・ヴァリエーション
 メインライン Bg5、イングリッシュ・アタック、白Be2。(6 Bc4は次章で扱う)
第3章(22ページ):スケフェニンヘン・ヴァリエーション
 ケレス・アタック、イングリッシュ・アタック、白Be2、フィッシャー・アタック
第4章(15ページ):シュヴェシュニコフ・ヴァリエーション
 序盤の手、9 Bxf6、9 Nd5
第5章(17ページ):クラシカル・ヴァリエーション
 リヒター・ロイツァー・アタック、ソーズイン&ヴェリミロヴィッチ・アタック、ボレスラヴスキー・ヴァリエーション
第6章(28ページ):その他のオープン・シシリアン
 タイマノフ・ヴァリエーション、アクセレレイテッド・ドラゴン(マロツィー・バインド、5 Nc3)、フォー・ナイツ・ヴァリエーション、カン・ヴァリエーション、カラシュニコフ・ヴァリエーション
第7章(12ページ):Bb5
 ロッソリーモ・ヴァリエーション、モスクワ・ヴァリエーション
第8章(13ページ):c3
 2...d5、2...Nf6
第9章(15ページ):その他
 クローズド、グランプリ・アタック、モラ・ギャンビット

 2 Nc3 Nc6 3 f4ではなく、いきなり 2 f4とするグランプリ・アタックや 2 g3は、言及はしてもゲームの実例がない。ウィング・ギャンビット(2 b4)、2 Nf3に対するハイパー・アクセレレイテッド・ドラゴン(2...g6)、オーケリー(2...a6)、ニムゾヴィッチ(2...Nf6)に関してもわず かを扱うのみである。著者は序文で書いている通り、シシリアンを網羅するつもりはなく、それぞれの変化のメインラインを紹介している。

 各章は、典型的な局面に至る手順で始まり、その変化の特徴変 遷とそれを使った名人たちに触れている。そして、「戦略」、「セ オリー?」(一般原則にのっとれば指せるのか? あるいは詳細な知識が必要な変化なのか?)、「統計」(平均的な白黒の勝率)が続く。
 その後、2,3のゲームが、重要な戦略、戦術、はめ手、他の変化へ の移行、プラン、考え方を説明しながら解説される。最後の簡潔な「まとめ」 では、堅実性、ゲームの傾向、その変化に適したプレーヤーのスタイル等に触れている。

 著者が可能なかぎり教訓的に解説した実戦は本書の圧巻であり、すべ てのレベルのプレーヤーが理解できる明解さは、ファインの"Ideas Behind the Chess Openings"のシシリアン版といってもよい。太字フォントを初めとして、間違いやすい部分等の強調表示もこれ以上望めないほどである。
 唯一の欠点は、他のEveryman本と同様、巻末の手順索引がな いことで、これは長年指摘され続けていることである。Everymanの他書と違って、本書には章末ごとの索引もない。シシリアンのような手順前後による 移行の多い定跡だけに、これは致命的なマイナスである。
Starting Out: The Sicilian (Starting Out)
1857442490 John Emms

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2005年10月24日

Gallagher『Starting Out : The King's Indian』〜早or速指し

 昨日、イトーヨーカドーの流山店へ行ってきた。新しいリュックが必要なので、新松戸のダイエーよりどうせならロッテのセールをやっている方で買おうと 思ったからだ。ネットで調べてみると、新松戸のダイエーは駅から遠い上に(それは知っていたが)それほど大きくなく、パレックスが最近なくなったらしい。
 流山電鉄で流山方面へ行くのはここに引っ越してから9か月経って初めてだったから、どんな街並みかを見ながらの車中だったが、平和台駅の手前でヨーカ ドーに並んで偶然ホームセンターを発見した。松戸市内はタウンページもネットも調べて電車で行けそうなところにないのは分かっていたが、流山市は穴だっ た。
 どちらも駅から至近で日曜でもそれほど混雑していない。ヨーカドーは食料品がもっと安ければ週一くらいで来るかなというところだが品揃えはいい。ビバ ホームは、ホームセンターのわりにゴミゴミしていなく、日用雑貨までそろっている。それぞれでリュックと製作用のパテを買った。これでもう新松戸や馬橋に 買い物の 用はない。


 序盤本の紹介はバランスよく 1 d4と 1 e4を交互にしているから今回は 1 d4。一通り概観しておくべきなので、いよいよのキングズ・インディアンだが、やはり日本のプレーヤーがかなり影響を受けているらしいGMギャラガーの "Starting Out: The King's Indian"(Everyman Chess, 2002)にする。
 (Gallagherの発音だが、アメリカ人ならギャラガーだろうが、イギリス人なのでギャラハーと思われる。ギャラガーとする人が多いようなのでとり あえずそうしておく)

 キングズ・インディアン・ディフェンス(KID)はプロアマ問わず、1 d4に対する最も人気のある防御(カウンターアタック)だが、いかんせん変化が多くてマスターするのが難しい。白が決めるヴァリエーション別の本が多いわ りには、KIDを概観する本は意外と少ない。
 黒番で本腰を入れて指すなら、白番からの各変化本まで総ざらいしておくべきだろうが、そんなことは最初からできるわけがない。そこでこのような本から入 る 必要がある。多くの序盤本の著者ギャラガーは'01年のイギリス・チャンピオンである。

 3ページ分の序文の内容を要約すると…KIDは危険を覚悟で反撃する定跡だから用心深く受け身のプレーヤーはやめた方がいい。KIDのいくつかの戦略 テーマ と、各変化によって異なるその詳細を解説する。KIDの歴史とカスパロフを初めとするKIDを支持したプレーヤーについて触れる。
 KIDの人気の一つは、白が1 c4, 1 Nf3としても同じように使えることである。ギャラガーは、本書を可能なかぎり「公正」に書こうとしたが黒びいきになることを避けられなかったと告白して いる。読者のほとんどは黒番対策に使うのだし、正直でいいではないか。

 章ごとの構成は以下のようになっている:
1: クラシカル 7 0-0以外 (7 dxe5; 7 d5(ペトロシアン・システム); 7 Be3)
2: クラシカル 7 0-0: 7...Nc6以外 (7...Na6; 7...Nbd7; 7...exd4)
3: クラシカル 7 0-0 Nc6: 9 Ne1のメインライン (10 Nd3(メインライン); g4(キング側ブロック); 10 Be3)
4: クラシカル 7 0-0 Nc6: 9 Ne1以外 (9 b4(バヨネット) 10 Re1以外, 10 Re1(メインライン); 9 Nd2)
5: ゼーミッシュ(6...c5(サクリファイス); 6...Nc6(パノ); 6...e5; 6 Bg5; 6 Nge2)
6: フィアンケット(6...Nbd7 ... 8...exd4; 6...Nbd7; 6...Nc6(パノ))
7: 4ポーンアタック(6...c5: 7 d5 e6 8 Be2 exd5 9 cxd5(メインライン), その他; 6...Na6)
8: アベルバッハ(...c5; ...e5; 6...Na6)
9: 早めの h3 (6 Bg5 ... 遅いNf3, 6 Nf3")
10: その他(5 Bd3; 5 Nge2; スミスロフ)

 今回はレビュー訳はしんどいからやめて(汗、最近翻訳で気になることを書く。「早指し」という言葉はひとかたまりで漢字変換されるほどだが、play rapidlyを訳すときは「早く指す」ではなく「速く指す」になる気がしてならない。
 「早い」と「速い」はそれぞれ時間と速度で使い分けると覚えている人が多いと思う。狭義の「早い」は時間というより時刻(例:朝早く起きる)に関する場 合である。辞書では、時間に余裕があること(例:早く到着した。飲み込みが早い)にも使うとあって、earlyとfastほど区別が厳密ではない。

 迅速な行為の結果時間に余裕が生まれたと解釈すれば、「速い」を使ってもよさそうだ。結論としては、プレーヤーの手が素速く動く様に注目すれば「速く指 す」、 20手まで進んで3分しか使っていないと思ったら「早く指す」ということである。
 そもそも「早指し」と書かれたのは、持ち時間が短いから、つまり速く手を動かすかどうか以前に持ち時間が早かったからということにでもして納得しておく しかない。二つの漢字が入り乱れるのはすっきりしないから、全部「速い」にしたいのは山々だが。
Starting Out : The King's Indian (Starting Out)
1857442342 Joe Gallagher

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2005年10月18日

Kotronias他『Beating The Petroff』

 映画やテレビドラマでは、なぜ自転車の二人乗りシーンがこうもひんぱんに出てくるのだろう。週に一度は何かで見ている気がする。道交法を知らない者への 影響もそうだが、公道で撮影するそのときだけを考えても問題にならないのか。ちなみに私はここ20年で2回しか自転車に乗っていない。
 月末にアメリカからの来客も交えて、フィメールマスク製作者とユーザーの集まりがあるので、それに向けて試作品を製作している。石膏が足りないので、買 い物のついでに近くの文房具屋へ念のために行ったら、おばはんに「置いてない」とタメ口で答えられて気分が悪い。時代遅れの小売店は早く潰れてく れ。


 棋譜まで並べたのは最初だけだったけど、私もFIDE世界選手権の結果はロレンさんやmaroさんのところで追っていた。序盤に関しては、参加者のレ パートリーのせいもあるだろうが 1 e4がずいぶん多かったと思う。そこで、今回はAdamsやAnandが指していたペトロフを取り上げよう。
 Vasilias KotroniasとAndreas Tzermiadianosの"Beating the Petroff"(224ページ、バッツフォード、2005年)である。古くは"Complete Defense to 1 e4"にも使われた黒からの限定しやすくかつ堅実な防御だが、これは白用の限手集。
 IM Igor Khmelnitskyのレビューを引用して訳そう。


"Beating the Petroff" is another interesting book I have checked recently.  While acknowledging that it is not possible to give the reader any real way to beat this very popular opening, the authors attempt to provide a set of clear-cut lines that should help White to get a good positions against virtually every Black's play.  The book is written solely about 3.Nxe5 line and you are only advised to buy it if this is the variation you want to play.  You won't find another main line, like 3.d4 or sidelines 3.d3, 3.Nc3 etc…  Moreover, after 3.Nxe5 d6, only 4.Nf3 is given.  I suggest you do your preliminary research using a database program (ChessBase / ChessAssistant), Chess Informants, New In Chess and other recently published books on Petroff.  Once again, the authors cover all recent trends.  Also, I found really attractive how the authors present relevant Middlegame (25 pages) and Endgame (3 pages) ideas.  I would suggest using Fritz/or another chess playing program to practice some of those Middlegame setups, to see if you like the positions.  38 well annotated games with numerous sub-variations will provide a lot of information to absorb even for experienced players.  Overall, if you want to try 3.Nxe5, this books is Recommended.
 『ペトロフをやっつけろ』は、最近チェックした中で(Starting Out: Alekhine Defenseの他に)もう一冊おもしろかった本である。このようなメジャーな序盤をほんとうに打ち負かせる方法を読者に披露することなど不可能ではある が、著者は、枝刈りをすることでほぼすべての黒の応手に対して有望な局面となるべき手筋を提供している。本書は 3 Nxe5に限定しているので、この手筋を指したい人にしかお薦めできない。3 d4や 3 d3, 3 Nc3といったマイナーな変化は載っていない。さらに、3 Nxe5 d6に対しては 4 Nf3しか扱っていない。事前に、データベースソフト(チェス ベースやチェス アシスタント)を使ったり、チェス・インフォーマント、ニュー・イン・チェスや最近出版された他のペトロフに関する本を調べることを勧める。改めて、著者 は最近のすべての傾向を網羅している。もう一つ実に魅力的なのは、著者が関連する中盤(25ページ)と終盤(3ページ)の考え方を提示していることであ る。気に入ったものがあれば、フリッツのようなチェス対局ソフトに中盤の局面を配置して練習してみるといい。多数の副変化手順付きで詳しく注釈された38 局は、熟練したプレーヤーが吸収するにも多くの情報である。全体としては、3 Nxe5としたいなら本書はお薦めだ。










1 e4 e5 2 Nf3 Nf6 3 Nxe5 d6 4 Nf3

 国内のトップクラスのペトロフ指しで私が思い浮かぶのはichiroさんだ。JPCAでの対戦のときもそうだった。しかし、黒が反撃を狙うタイプの序盤 ではないせいか、日本ではあまり指されないように思う。逆にe4プレーヤーは、これさえあればペトロフには十分と言っていいだろう。
Beating The Petroff
0713489197 Vassilios Kotronias Andreas Tzermiadianos

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2005年10月10日

Chris Ward『Starting Out the Nimzo-Indian』

 "The Chess Game"レビューのときに書き忘れたが、チェスの棋譜譜面に見立てて音楽にできないかと考えたことがある。ファイルのa〜hはそれぞれ音名(ドイツ 音名 ならロがh、ロのフラットがbなのですべて使える)にし、ランクの1〜8と駒の種類をオクターブか音価(長さ)にして、駒取りやチェックは強調や装飾か。
 クセナキスあたりがデュシャンほどチェス好きならすでにやっているかもしれない、というか私がすで に知らないだけで誰かがもうやっているのかな。声で トーン発信電話をかけられるソプラノ歌手の逆で、その音楽を聴いて棋譜を並べられる絶対音感の持ち主が出てきたりして(笑。


 序盤(本)の紹介をマイナーどころばかりから始めているが、やはり 一通り主なものから一覧しておかねばと思い、今回はニムゾインディアン・ディフェン ス である。1 d4に対して 1...d5 2 c4のクイーンズ・ギャンビットは盤石で、19世紀後半は黒の暗黒時代と言われるほどだった。
 そこでインディアン・ディフェンスが注目されるようになった。インディアンはそもそもフィアンケットのことだが、ディフェンスが付くと 1 d4に対して 1...Nf6と指すものをいう。白のe4を間接的に阻止する狙いのこの序盤は、ハイパーモダン派の代表ニムゾヴィッチ(正しくはニムツォヴィッチ)の名 にちなんでいる。









1 d4 Nf6 2 c4 e6 3 Nc3 Bb4

 レビューする本は、GM Chris Wardの"Starting Out: The Nimzo-Indian" (Everyman, 2002年, 176ページ)である。ロレンさんが期待するStarting Outシリーズだが、私は一冊も持っていないし、1 d4対策も今まで猫の目のように変えてきたのでニムゾに対しても個人的にあまり言えることはない(汗。
 とりあえず、分かりやすい出版社レビューを引用して訳そう。


Ideal for those wanting to understand the basics of the Nimzo-Indian. The Nimzo-Indian is one of the soundest and most popular defenses against 1 d4, offering Black the chance to unbalance the game early on and play for a win without undue risk. Advocates include virtually all of the world's top players, including Garry Kasparov, Vladimir Kramnik, Vishy Anand and Anatoly Karpov. In this revolutionary book, Grandmaster Chris Ward revisits the basic principles behind the Nimzo-Indian and its many variations. Throughout this easy-to-read guide the reader is helped along by a wealth of notes, tips and warnings from the author, while key strategies, ideas and tactics for both sides are clearly illustrated.
 ニムゾインディアンの基本を理解したい読者には理想的な本書。ニムゾインディアンは、1 d4に対する最も堅実で人気のあるディフェンスであり、黒がゲーム早々から均衡を崩し、あらぬ危険を冒さずに勝つチャンスを秘めている。そして、ガルリ・ カスパロフ、ウラジーミル・クラムニック、ヴィシー・アナンド、アナトリー・カルポフなど、現に世界のトッププレーヤーが支持している。画期的な本書で は、グランドマスター、クリス・ウォードが、ニムゾインディアンとその多くの変化の背後にある基本原則を再検討している。この読みやすい指南書を通して、 著者の豊富な注釈や助言、警鐘が読者の助けになり、白黒双方の側から重要な戦略や考え方、戦術が分かりやすく説明されている。


 ChessvilleのBill Whitedのレビューによると、これほど事細かな定跡書が英語で手に入るようになったのはフィッシャーのおかげだとしている。そういえばろくに学校で勉 強していないのに、フィッシャーは英語に訳されないチェス書を読むためにロシア語やスペイン語にも堪能だった。

 本書は、ルービンシュタイン(4 e3)(通常メインライン)、クラシカル(4 Qc2)、4 Nf3、ゼーミッシュ(4 a3)、レニングラード(4 Bg5)、4 g4, 4 Qb3, 4 Bd2まで扱っている。白の4手目は多いと思えるかもしれないが、キングズ・インディアンやクイーンズ・ギャンビット・ディクラインドほど複雑ではないの がニムゾの利点だ。
 しかし、3 Nf3や 3 g3に対しては、あくまで 3...Bb4+(ボゴインディアン)で突っ張るか、クイーンズ・インディアンやカタランにするかの準備が必要である。白でしか指さないなら、4手目を限 定した本を選べばいいだろう。いずれそれらも紹介する。
Starting Out the Nimzo-Indian (Starting Out)
1857442547 Chris Ward

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