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2011年07月04日

ダンセイニ『世界の涯の物語』書評等

 本は少しずつでも読んでいるが、以前のように書評をする気も時間もなくなった。しかし、本の売り上げに影響する(?)ので、チェスがらみくらいはやって おこう。

 ロード・ダンセイニ(1878 -1957)はアイルランドの 男爵で、アーサー・C・クラークにまで影響を与えたファ ンタジー作家、チェスの腕前も国内チャンピオン級だったらしい。本書には、2つの短編集「驚異の書(The Book of Wonder)」と「驚異の物語(Tales of Wonder)」が収められている。チェスが出てくるのは後者の中の「チェスの達人になった三人の水夫の話(The Three Sailors' Gambit)」で、12ページしかない。
 今までにも何回か触れたので、内容については省略する。私は「文 学」好きでもないのに翻訳家になった(ノンフィクション指向)変わり種だが、ファンタジーはその中でも何がいいのかさっぱりわ からない。『指輪物語』あた りでやっと広く知られるようになったジャンルだから、ダンセイニは時代を先取りしすぎたのだろう。
 この作品の訳は長らく古いものしかなかったようだが、この安 野玲の新訳はチェスに関しても問題なくていい。特に台詞の処理がうまいので、ちょっとずつ進めていた私の翻訳はやめることにし た。本書には4人の訳者がいるが、古株らしき中野善夫は時代後れも甚だしい。

 未訳の短編なら今後翻訳を出すかもしれないが、私は短編向きではないようだし、来年にはジョン・ブラナーのSF The Squares of the Cityを チェストランス出版で出せればと思っている。『ボビー・ フィッシャーを探して』でさえまだ出ないように、一般出版社からチェス小説を出すのは難しい。
 私は未読だが、ベルティーナ・ヘンリヒスの『チェスを する女』は、amazonで見るかぎりうちの本より売れていない。海外では映画化されるほど売れているから邦訳しただけのこと なのだろう。日本で無名の作家に日本で売れる保証はない。

 「ソーシャル・ネットワーク」のデビッド・フィン チャー監督とスパイダーマンのト ビー・マグワイア主演でボビー・フィッシャーの伝 記映画が制作されることになった。公開は再来年だが、この二人の話題性を考えればチェスの日本でのマイナー性を差し引いても、 「ボビー・フィッシャーを探して」よりは大きな扱いになるはずだ。特にフィンチャーは「スター・ウォーズ」等のVFXをやってきた人だから、チェスをエキサ イティングなエンタメに仕立て上げるだろう。
 この追い風すら生かせずに『ボビー・フィッシャーを探して』を出せないようなら、「出版社がアホやから翻訳が出されへん」と決別 し、以後自社からしか出さない。その頃にはもう映像制作にすっかりはまっているような気もするが。

世界の涯の物語 (河出文庫)
ロード・ダンセイニ 中野 善夫
世界の涯の物語 (河出文庫)
河出書房新社 2004-05-01
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2010年10月28日

ルノー&カーン『The Art of the Checkmate』レビュー

 2冊目の出版本の原書も訳が終わって編集に入ったので、紹介しておこう。2人の著者、国内チャンピオンクラスのフランス人棋士が、チェックメイトを分類し、歴史的意義から名前を付け、名局に関しては全局を解説し、問題も全部で80題を配し、バランスの取れた名著だ。

 メイトに関する本はさすがに日本語でも何冊か出ている。「ボビー・フィッシャーのチェス入門」は実質メイトの初心者向け問題集、チェスマ スターブックス「チェックメイトの手筋」はその上級編にあたり、最近 の新刊では「どうしたらチェスのできみのパパに勝てるか」がメイト中 心の本らしい。
 今気づいたが、本書の出版予定も含めて全部翻訳物だ。例題や問題中心になるから独自に素材を集めるのが面倒だし、定跡のように古くなるジャ ンルでもないから、翻訳で済ましてきたのだろう。チェスの代名詞ともいえるチェックメイトに関する洋書は数多い。

 しかし、本書のようにメイトを整然と分類し、名局に初心者でも分かる解説を付けた好書を私は知らない(敗者との力量差が大きいから 戦略が分かりやすい)。各メイトの名前は誰でも知っているとか頻繁に呼ばれるものではないが、ウィキペディアにも載っていて、本書の資料的価値の高さがうかがえる。



 念頭に「今年は人生最高の年にする」と書いた。初出版を果たしたこ とでそれは何とか達成できたと思うが、「ボビー・フィッシャーを探して」 がこのままだと今年も出そうにない。

 今年の前半は評言社から出す次の本としてThe Queen's Gambit(小 説)とThe Mammoth Book of Chessを訳して いたが、どちらも半分弱で止め、チェストランス出版で出せる翻訳に切り替えたから、これらが出ないうちはかなり時間を無駄にしたことになる。
 今年の後半からMy Memorable 60 Gamesを訳し 始めたが、ページ数が多くて印刷製本代の先行投資がきついから後回し にし、本書The Art of the Checkmateに代え たが、もっと薄い本を探して「チェス 終盤の基礎知識」が先になっ た。

 いろいろなリスクを避けるために薄い本からという選択は正しかったが、薄い本、つまり安い本は何かと割損だと痛感した。直販は5冊以上としているが、amazonへの納入は売り上げが先細りになると1週間に2回の納入時に1冊だけ送ることにもなりかねない。1冊でも宅配便で送らねばならないので、ゆうパック持ち込みでも最低500円かかる。こ れでは赤字だ。
 これを回避するには適宜在庫切れを宣言し、予約がたまったらまた納入するしかない。今後はこういう措置を取って、ときどき 在庫切れ&予約 受付中になるかもしれない(汗。

 本書は訳にまだ局面図入れもしてないのでページ数は分 からないが、原書と同じ200ページくらいになるだろう。装丁を良くしても、安くて割損にならない分、定価を2000円までに抑えられると思う。
 装丁に関しては様々な意見をいただいた。チェス書装丁の最高峰は「チェス戦略大全」だ。あの装丁で10円/1ページを切っているから、私の本が高 く思えてしまうのだろう。しかし、初刷2000部と500部の違い。 プロの翻訳家がフルタイム作業として編集までやっていることを理解し ていただきたい。生活懸けずにここまでやる人はいないだろう。
 「チェス戦略大全」は内容レベルも最高峰だが、難しすぎるという声 も耳にした。私が来年にかけて出したいのは入門書とこの間を橋渡しで きる本だ。それなくしてはもっと難しい本を訳しても売れるようにはならず、採算が取れないことになる。チェストランス出版のラインアップがそろえば、上記の送料割損問題もなくなるだろう。それまで突っ走 るからよろしく!

The Art of the Checkmate
Georges Renaud & Victor Kahn
The Art of Checkmate
Dover Publications 1962-06-01
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star鮮やかな Checkmate の数々

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Simple Checkmates The Most Instructive Games of Chess Ever Played Weapons of Chess: An Omnibus of Chess Strategies (Fireside Chess Library) Simple Chess: New Algebraic Edition Pandolfini's Endgame Course: Basic Endgame Concepts Explained by America's Leading Chess Teacher (Fireside Chess Library)
posted by 水野優 at 13:28| Comment(2) | チェス(洋書評 その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月22日

Richard Peyton編『Sinister Gambits』レビュー

 Richard Peyton編『Sinister Gambits(不吉なギャンビット』1991 Souvenir Press p.318. チェスの出てくる古今の短編小説を集めたアンソロジーで、目次のように3つのテーマで分けられている。4月の帰省中に短 い作品から順に斜め読みして以下にまとめた(粗筋は読んだものだけ)。


序文

I: グランドマスターの悪夢

「アルバート・モアランドの夢」フリッツ・ライバー(1910-92 米)
 1939年の秋のことを振り返ると私は戦争とモアランドを思い出す。彼は賭けチェスで稼いでいたが本当はかなりの強豪だった。彼は毎夜、宇宙空間でグロ テスクな駒を使った独自のチェスをさせられるという夢に悩まされていると告白した。そのせいで現実の夢を負け始めた。私は妄想だと助言して彼も納得したか に見えたが、私は彼の部屋で彼から聞かされていたグロテスクな駒を見て…。
 同じ作者の別作品が『モーフィー時計の午前零時』にあり。

「スリー・セーラーズ・ギャンビット」ロード・ダンセイニ(1878-1957 アイルランド)
 古い酒場で3人の水兵が相談をしながらスタフロクラツとチェスを指した。3人は相手が元世界チャンピオンと知らずに指し、スリー・セーラーズ・ギャン ビットという定跡で彼に勝ってしまった。見ていた私は3人がチェスをろくに知らないことを見抜いたが、スタフロクラツは次の対局も負けた。私は3人の中で いちばん強そうなビルと対戦して勝った。彼らが3人で指さないと勝てないことには秘密があり、私はそれを聞き出すことができた…。
 既訳で、数年前に消えたHPで和訳を上げていた方もいた。

「チェス盤にいたずらする悪魔」ジェラルド・カーシュ(1911-68 英)
 私はぼろアパートに3か月以上住んでいた。隣にはシャクマトコがいる。彼はポルターガイストに恐れていた。悪魔は彼の本や写真を破り、最後に残ったチェ スセットを壊したがっている。これは彼が世界チャンピオンになり損ねたときから始まり、引っ越しても付きまとわれているという。私は彼と部屋を入れ替わっ て彼の代わりにチェスセットを見守ることにしたが、そこに現れたのは…。  (ベタな落ち)

「ポーンをキングの四へ」スティーヴン・リーコック(1869-1944 カナダ)
 私は友人を訪ねて初めてチェスクラブで対局する。対局中(フィリドール・ディフェンス、チェスの理論にも触れる)友人はこの静かですてきなクラブに関す る変な話をする。今晩ここに指名手配中のメンバーがやってくるというのだ。その予定の時間頃に私の局面はメイト寸前になり…。

「ロイヤル・ゲーム」 シュテファン・ツヴァイク(1881-1942 オーストリア)
 中編だが三大チェス小説の一つと言われる。特に棋士の心理描写が優れている。

「エンド=ゲーム」 J・G・バラード
 ニューウェーブSF作家の「奇妙なチェス短編集」からの一編。

II: 奇妙なチェスの駒(未読)

「チェスの赤いクイーンの駒」 Lucretia P・ヘイル(1820-1900 米)

「チェスのゲーム」 Robert Barr(1850-1912)

「一揃いのチェスの駒」 リチャード・マーシュ(1857-1915 米)

「呪われたチェスの駒」 アーネスト・R・パンション(1872-1956 英)

「ビショップス・ギャンビット」 オーガスト・ダーレス(1909-1971 米)

「不朽のゲーム」 ポール・アンダーソン(1926-)

III: 血に飢えたチェス

「チェス・プロブレム」 アガサ・クリスティー(1890-1976 英)
 強豪同士のマッチで一人が心不全で亡くなった。他殺の疑いを持つ警部がポワロに熱弁して興味をあおる。亡くなったアメリカ人棋士を調べてから相手のロシ ア人棋士を訪ねた。その姪は本当はおじが狙われたのだと言う。その後、棋士とも話したポワロには真犯人と殺害方法が分かった。しかし、それは間違いだっ た…。

「チェックメイト」 アルフレッド・ノイズ(1880-1958 英)
 作家のマーティンは、妻と娘が出かけてから仕事じゃない読書やチェスのゲームを並べるのを楽しみにしていた。大学の頃の強豪を思い出して並べ始めると、 相手の駒が勝手に動きだした。単純化を目指したがパスポーンを作られる。そしてチェックメイトされる寸前に女から電話がかかってきた。妻と娘が今会ってい る娘の恋人が二人の目の前で自殺したのだという。電話の女はその母親だった。その父親というのは…。
 作家は有名なイギリスの詩人で本作は傑作サスペンス。

「パウナル教授の見逃し」 H・ラッセル・ウェイクフィールド(1888-1964 英)
 私は学生時代からのライバル、モリソンをイギリス選手権中に殺害した。それまでずっと彼の二番手に甘んじてきたのだ。そして国代表として臨んだ国際大会 で新手を披露して相手を苦戦させるが、モリソンの亡霊が相手の手を動かして逆転させる…。

「シャム猫」 フレデリック・ブラウン(1906-72 米)
 『モーフィー時計の午前零時』で既訳。

「フールズ・メイト」 スタンリー・エリン(1916- 米)

「チェスの勝者」 ケネス・ゲイヴレル
 『ミステリマガジン444号』で既訳。


 短編は既訳かどうかが調べにくいが、思ったより有名作家が多くて「残念ながら」既 訳の可能性が高い。しかし、1960年までに作者が亡くなっているか1970年 までに書かれてそれから10年以内に訳されていないと(これが分かりにくい)勝手に訳せるので、いずれ『モーフィー時計の午前零時』のような編訳をしよ う。
 版権取りは『ボビー・フィッシャーを探して』で懲りたので(エー ジェントに頼んでもこんなに時間がかかるってどういうことだ? タトル・モリとかのちゃんとしたところに頼んでくれ)べつに新しいものにはこだわらない。

Sinister Gambits
Richard Peyton
Sinister Gambits
Quarry Pr 1993-11
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2010年05月12日

『The Genius and the Misery of Chess』レビュー

『The Genius and the Misery of Chess』 Zhivko Kaikamjozov 2008 Mongoose p.224

 チェスの歴史書を1冊訳したいともずっと思っているが、起源まで遡るのではなく棋士の人間ドラマを紹介したい。本書は中世からカルルセンまで時代の幅は 申し分ないが、世界 チャンプがかなり抜けた小物が多い選択となっている。悲劇も含んでいるためにしかたないのかもしれない。1人あたり平均4ページ、棋譜は1,2局を簡単に 解 説。 著者はハンガリー人。
 フィリドール〜フィッシャーを名文で描いたショーンバーグの『Grandmaster of Chess』にフィッシャー以降を補足して出す方がいいというのが正直なところ。

参考までに、以下は「序文」の訳

 昔のチェス名人の輝かしい功績を読む機会は多いわりには、チェスのせいで不幸な棋士が神経衰弱になったり、あげくの果てに保護施設や救貧院へ入れられた ことはほとんど知られていない。対照的に、神童、チェスの天才児の人生は成功に満ちあふれた最たるものである。これらの神童はその幼い時期に信じられない 業績を打ち立てる。しかし、彼らの前途有望な道のりが運命に妨げられ、不幸な苦境に身を捧げることになる場合もある。本書ではそういう物語を並べた。老い たマスターの悲哀、神童の勝利、それらはときに幸運と不運の両極端である。
 シュタイニッツ、アリョーヒン、シュレヒター、ルビンステインといった有名なチャンピオンが悲惨な死を遂げたと言うと、読者は驚かれるかもしれない。 チェスのマスターは40か50またはそれ以上の歳まで長らく成功し続けるつもりでいる。しかし、長年の過酷なトーナメント生活はマスターの健康を蝕むに十 分である。それに、昔の最強トーナメントが長期間にわたって劣悪な状況で行われたことも忘れてはならない。例えば、1882年のウィーン、1883年のロ ンドン、1889年のニューヨークだが、1883年のロンドンでは、戦いがあまりに激しかったために優勝したヨハネス・ツッカートルトはただの1局もド ローにしなかった。当時は、事前に取り決めをする「グランドマスター・ドロー」というものがまだなかったのである。ドローが何度でもやり直しになるトーナ メントもあり、極端なケースでは、フランスのマスター、ローゼンタールは1つのトーナメントで20局ものドローを再対戦させられた。そういう過酷な環境が 彼の心身に与えたダメージは想像することしかできない。
 しかし、過去のマスターたちには選択の余地はなかった。彼らには休むことなど考えられなかった。貧しい世界に暮らし、その収入は家族を支えるにはあまり に乏しかった。第二次世界大戦以前のプロ棋士で幸せな老後を迎えた者が数少なかったのは、こういう理由からである。他の棋士たちは戦争中に窮乏や飢えで亡 くなった。今日では、チェスに命を賭ける者は過去の悲しい思い出に過ぎない。チェス界は裕福になり、チェスの社会的地位も向上してきた。最高の才能にあふ れた棋士には立派な生活が保障されるようになった。
 近年の神童たちはその限界を打ち破り続けている。ウクライナのルスラン・ポノマリオフは18歳の誕生日前にFIDE世界選手権を制した。彼の同胞カヤキ ンは12歳でグランドマスター(GM)になった。インドのハンピー・コネルは、不倒と思われていたユディット・ポルガールの記録より3か月早い15歳と1 か月27日でGMの称号を獲得した。ハンピーは、現在女子のレイティング・リストでユディットに次いで2位である。
 当然ながら、すべての天才児が幸運に恵まれるわけではない。本書に登場する24人中6人の命が悲劇的な最期を迎えた。そのうちの2人、アメリカのポー ル・モーフィーとロバート(ボビー)・フィッシャーは、精神病を患い、その経歴の最後には深刻な心理的問題との葛藤が目立った。他の3人ジョアッキーノ・ グレコ、マルク・ストールベリ、クラウス・ユンゲは非業の死を遂げた。グレコの足跡は遠い異国で途絶えており、ユンゲとストールベリは第二次世界大戦の苦 しみの中で亡くなった。
 
 本書には包括的な伝記は書かれていない。棋士たちの人生を彩った歓喜と悲劇を棋士たちの真髄として発見できるだろう。今までに考えたこともない視点から チェスと棋士たちを満喫されることを願っている。

The Genius and the Misery of Chess
The Genius and the Misery of Chess
Mongoose Press 2008-10
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2010年04月05日

『Bxh7: Master Both Sides of Chess' Most Useful Piece Sacrifice in 5 Easy Lessons and 116 Exercises』

 amazonのお薦めメールで以下の本が来た。Bxh7+サクだけの本が出せる英語圏がうらやましい。内容は推して知るべしだが、それよりこの表紙が気 になった。ビショップ駒をわざわざトロイの木馬にするなら、次に Nxf7サクの本を出してナイトの木馬にするに違いない(笑。

 『ボビー・フィッシャーを探して』の出版時期についてはこれ以上言うと狼少年状態になるので、はっきり決まってから言おうと思ったが、表紙に関しても出 版社にお任せにしている。
 技法書なら購買層もほぼ決まっているから『チェス戦略大全』のようにチェスセットの写真でもいいのだろうが、作家のネームバリューや話題性のない小説は 表紙と帯で売れ 行きが決まってしまう(それも平積みの間だけ)。帯には映画化されたことや著名人の推薦文が載る予定とはいえ、表紙には検討の余地がある。

 私もアイデアは持っている。4人の棋士が麻雀のようにテーブルを囲んでチェスをしている図だ。奥に後光が差した神のようなフィッシャーがいて手前のジョ シュ(この小説の主人公)少年と指している。左右方向にはカスパロフとカルポフが対戦している。実際に対戦するには無理な構図だが、盤を上下にずらして宙 にでも浮かせばいい。
 しかし、立体造形と違って私はさっぱり絵が描けない。描画やCGのソフトを使っても基になる棋士の似顔絵が必要だ。写真をいじくって肖像権に引っかから ないようにもできるだろうが、いずれにしてもそれなりの技術がいる。
 とにかく出版社にお任せでは後に後悔するかもしれないので、版権取りに時間が掛かっている間に(著者に連絡が取れないからと3か月止まっていた。相談し て くれればその息子にメールを出せることを教えたのに)何とかしなければならない。

 しかし、次の翻訳も進めたい。定跡本なら自分で書く方がいいと結論して資料集めをしていたが、やはり時間が掛かりすぎるので、結局堂々巡りでまたThe Mammoth Book of Chessの訳を続けている。技法書の翻訳出版が最初で最後になってもいいように史上最強のチェス和書にしよう。

Bxh7: Master Both Sides of Chess' Most Useful Piece Sacrifice in 5 Easy Lessons and 116 Exercises
Bxh7: Master Both Sides of Chess' Most Useful Piece Sacrifice in 5 Easy Lessons and 116 Exercises
Thinker Press 2009-10
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¥2,000(投稿時)
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2010年01月05日

Burgess『The Mammoth Book of Chess』レビュー

 次の翻訳出版はチェス総合書を優先させると言っていたが、以下の本の訳を見切り発車で勝手に進めている。
 
【書名、著者】
"The Mammoth Book of Chess NEW, FULLY REVISED AND UPDATED EDITION"
Graham Burgess 1988-2009 Running Press Book Publishers(USA) p.570
 私のはイギリスのRobinson版だが、同じく最新の第三版。安いが紙質と製本は全くのペーパーバック仕様。
 
【概要】
 大きくは「チェスの習得」「チェスの世界」「チェスの基本情報」という一風変わった3部に分類されているが、その内容は目次にあるようにルールから序中 終盤、メイト、戦術、コンビネーション、対局時計、競技会、コンピューター、ネットチェス、スタディ、さらに用語集、歴代世界チャンピオン、名人たちが始 めたきっかけといったコラム的要素まで含み、戦術や攻撃防御の説明には19世紀から2009年の名局までが惜しげもなく使われている。
 
【推薦理由】
 2度の改定で研ぎ澄まされたむだや無理のない説明に加えてテーマや難易度がバラエティに富んだ問題。初心者はルール、メイト、戦術…と学習できるが、コ ンビネーションは中級者以上をうならせる良質な難問ぞろい。読むだけでも1400、完全にマスターすれば1800。そうならない者はチェスに向いていない と断言していい!
 数十年間に日本語で書かれたチェスの入門書は20冊を超えるが、情報が古くなるとはいえロングセラーは少ない。ピノー氏の「ダイナミックチェス入門」は やや主観的とはいえボリューム的にも良書なのに絶版。古すぎる定跡が改められることもなく「ヒガシコウヘイのチェス入門」が未だに再版されている状況は、 初心者をバカにしているとさえ思わせる。
 単行本1冊でルールから中級までカバーするのは無理だからシリーズを組んだのが河出書房新社のチェス・マスターブックス。微妙な改定で続いているが、そ もそも1冊ずつのボリュームが少ないから、せっかくのシリーズのメリットを十分に果たしたとはいえない。
 訳じゃなく自分で書くなら総合書(事典、百科)と思っていたが、訳の半年に比べて1年以上かかるだろうし、実戦例の解説部分には著作権があるので丸々パ クれないもどかしさもある。そう考えると、本書を訳せば、あまり知られていないのがもったいなかった3冊シリーズの翻訳書「チェスの教室」のはるかにしの ぐものになり、以後10年は新たにチェスの入門書を出す必要がなくなるだろう。よほど子供向け以外は出す意味すらなくなる。
 
【翻訳】
 できれば「チェス戦略大全」の2,3巻の間、今年の夏から秋頃に出したい。訳自体は半年で終わると思うが、局面図入りのデータを効率よく処理する方法が 必須。海外にはありそうだし、対局ソフトにコメントを付ける形でいいのがあれば使いたい(買いたい)。ネットチェス等には日本ローカルな補足が必要。
 装丁は400ページ、横書き、左右段組、ソフトカバー。3000円でも、通読後も手元に持っておきたい内容なので売れるだろう。
 
【目次】
GMジョン・ナンの序文
記号と略号
序文
第2版への序文
第3版への序文
FAQ

第1部:チェスの習得
メイト問題 解答
戦術
コンビネーション 解答
終盤 解答
定跡
 オープンゲーム
 セミオープンゲーム
 クイーンポーンゲーム
 その他雑多
攻撃と防御 解答

第2部:チェスの世界
始めるきっかけ
対局時計
競技会
コンピューターとネットチェス
パズル 解答
女性、ベテラン、ジュニアと通信チェス
終盤スタディ
メディアのチェス

第3部:チェスの基本情報
チェス用語集
簡単な世界チャンピオン史
付録A:チェスのルール
付録B:記譜法
付録C:基本的なメイト
付録D:文献
ゲーム索引
定跡索引

 せっかく中級者以上向けの『チェス戦略大全』シリーズが出たのだからもっとレベルの高い本が続いてほしいと思っている方は多いと思うが、同書が難しすぎ るという意見も聞かれる。私は長らく入門から中級までを1冊にまとめるのは無理と言ってきたが、ルールの説明から『チェス戦略大全』までの橋渡し を1冊で済ませられる(他の入門書がいらない)なら、こういう本こそ世に出すべきだ。もちろん実戦も並行してやらないとなかなか上達できないけどね(笑。

The Mammoth Book of Chess
Graham Burgess
The Mammoth Book of Chess
Running Press 2010-01-05
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2009年12月27日

John Bellairs『The Chessmen of Doom』レビュー

 もちろん読み物系のチェス翻訳候補本も探している。本書はチェスがらみじゃないと絶対読まないたぐいだが見事に外れた。米amazonで裏表紙を見た ら、One wrong move could mean the end of the world!とあるから具体的な手順くらい出てくると思ったのに、駒が魔術のアイテムとして出てきただけ。だまされた!
 ジョン・ベレアーズの子供向けミステリー、ジョニー・ディクソン・シリーズは11冊出ていてそのうち3冊が集英社から林啓恵の訳で出版されている。 2005年で止まっているのであまり売れなくて続きが出なくなったのだろう。チェスの扱いはともかく、おもしろかったら私も集英社に問い合わせようと思っ たが、私の嗜好を差し引いてもこれは駄作に思える。
 とはいえ、せっかくだから(腹が立つので)、読みながら書き留めた粗筋でネタばらしをしておこう。英語のレベルはハリポタより少し上だが、アメリカな分 だけ読みやすい。

第1章
 ロデリック・チルダーマン教授の弟ペレグリンが謎の遺書を残して死亡。ロデリックはディクソン老夫妻の孫ジョニーと仲良しで、二人は謎を解くためにペ リーの邸宅へ向かうことにする。
第2章
 学校が休みになる夏までに準備し、ジョニーの友人ファーギーも加わった三人はペリーの大邸宅への探検に出かける。教授はそこで窓越しに見知らぬ人影を見 るが、すぐに幽霊のように消え去った。
第3章
 教授は邸宅の塔の部屋で謎の遺書の手がかりらしきチェス盤を発見するが、謎は深まるばかり。外食からもどるとペリーの墓が荒らされていた。
第4章
 翌朝教授は警察を呼んだ。数日後、三人が映画を見た帰りに教授がうっかり転ばせた男の鞄から男女の形をしたチェスの駒がこぼれ落ちた。邸宅にもどると塔 の部屋から灯りが漏れていた。ジョニーは夜中に目を覚まして部屋の隅に幽霊を見る。翌朝ジョニーと教授がそのことを話していると、ファーギーが庭で変な物 を見る。
第5章
 庭の石膏像にボールが当たって壊れた中から人の頭蓋骨が出てきたのだった。教授は図書館で頭蓋骨が盗まれた事件を調べても分からなかったが、ロンドンの 博物館から盗まれた800年前のチェスの駒がスコットランドで発見されたことを知る。あの男が落とした駒がそれだったのだ。ジョニーが夜中に夢遊病者のよ うにドームの近くまで歩いていき、我に返ると「教授を止めろ」と言う声を聞き、気絶する。
第6章
 翌朝目を覚まして邸宅に帰ったジョニーは号泣してすべてを教授に話す。三人は近くの湖の中の島へキャンプに行く。夜教授が寝ている間にファーギーはジョ ニーを説得して別の島を探検し、そこの別荘に例のチェスの駒と星図があるのをのぞき見るが、背後から声を掛けられる。
第7章
 ジョニーとファーギーを脅した男は幽霊のように消え去った。二人は一目散にボートで教授のいる島にもどるが、途中で空に彗星を見る。翌朝教授に彗星のこ とを話すが、夜中の探検のことは話せない。8月のある日、三人が邸宅へもどると家中の灯りがともっていて何物かの力で入ることができなかった。しばらくし てそれは解け、空の彗星も消えた。
第8章
 三人が邸宅にはいると中は荒らされており、教授は駒を盗んだ男のしわざと確信した。塔の部屋で頭蓋骨を発見して遺書の謎が少し解け、教授は男が駒を使っ て彗星を招き寄せていると考える。その男エドマンドが月曜に買い出しで島を留守にすることを突き止めた教授は、半ば強引に二人を連れて島へ向かった。豪雨 と霧で見えないままある島に着くと鐘が鳴る教会があり、中で三人の葬儀が行われていたので一目散にボートで島から逃げるが転覆して湖に投げ出されてしま う。
第9章
 三人は警察船に助けられて邸宅へもどる。教授は遺産をあきらめて家へ帰ろうと言い出すが、二人は本心ではないと見抜く。とにかく三人は家にもどり、九月 になって三人とも学校が始まる。教授がこっそりと他の教授チャーリーたちに助けを求めていることから、ジョニーは教授があきらめてないことを確信し、 ファーギーとともに教授の行動を追い続けた。
第10章
 二人は教授の家にしのび込んで聞き耳を立てる。教授とチャーリーはペリーとエドマンドが儀式を企てていたことを突き止めていた。魔法の儀式が次に行われ るのは天文学的に来年の1月と予想し、それまでに謎を解いてエドマンドと戦おうと誓う。
第11章
 1月になった。ジョニーとファーギーは教授たちの最終決戦に合わせて列車とタクシーで邸宅へ向かう。ところが、列車を降りて乗ろうとしたタクシーにはエ ドマンドが乗っていた。
第12章
 二人は雪の中を教会に連れてこられる。寒い地下室の棺に教授たちが眠らされていて二人も縛られて放置されるが、一人の女性が入ってきた。
第13章
 女性は教授の死んだ弟が救世主と言ってたアニーだった。彼らは鍵を求めてアニーの家へ行く。教授が鍵を見つけ、アニーに一緒に邸宅へ行ってくれと頼む。 邸宅ではすでに儀式が行われているらしく、塔の部屋まで行くと自然にドアが開いた。
第14章
 アニーは鍵のパワーと呪文でシールドを破ってエドマンドをやっつけた。
第15章
 5人はアニーの家にもどって今までの疑問点を整理したり今後のことを考えた。
第16章
 後日談。教授、ジョニー、ファーギーはいっしょにチェスの駒を大英博物館に返しに行き、館内を鑑賞する。

 内向的な主人公ジョニーよりチルダーマン教授や無鉄砲なファーギーが活躍する。ジョニーはその代わり特に頭脳明晰というわけでもない。ドラえもんがいな い のび太ではどうしたものか。本シリーズの他の作品が全部こうなのかは知らないが、どんな日本語に訳されているのかも含めて立ち読みくらいはしてみたい。
 教訓としては、chessmenやchessboard(ルース・レンデル参照)がフィーチャーされているものは、チェスセットが骨董品やイメージで出 て くる程度と思った方がいいということだろう。

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2007年08月05日

Weteschnik『Understanding Chess Tactics』紹介

 Martin Weteschnikの『Understanding Chess Tactics』(p.235、'06年7月、クオリティチェス)を紹介しよう。晩学で来日したこともある著者が興味深い。原文の一部がpdfで見られる。

出版社レビュー(訳):
 「チェスは99パーセントが戦術である」という古い格言がある。これは誇張だろうが、残りの1パーセントでさえ戦術しだいである。Martin Weteschnikは、地元のチェスクラブでトレーナーを始めたときに、クラブで最強のプレーヤーでも戦術に重大な弱点があることにいち早く気付いた。そして、多量の問題を解かせるだけではこの問題が解決しないことも悟った。彼らには明らかに良書が必要だが、Weteschnikは適切な本を見つけられない。そこで自分で書くことにした。しかし、完全には満足できなかったので、構成を見直して完全に書き直した。

目次
 記号表
 前書き
 本書には何が書いてあるか?
 序文
1 ピースに親しむ
2 ピン
3 ディスカバード(開き)攻撃
4 リローダー(Reloader、チェスではどういう意味だろう)
5 ダブル攻撃
6 メイト
7 手得/挿入手
8 X戦攻撃
9 ラインを開くことと閉じること
10 形勢判断
 練習問題の解答
 索引

著者について(訳):
 Martin Weteschnikは、ドイツの(マイン川沿い)フランクフルト在住。ドイツ語と哲学を修めた後、日本文化研究のために1年間日本で過ごす。その後アメリカで5年暮らし、25歳でチェスを覚えた。
 たった1年でプロ棋士に勝利するが、実戦経験より理論に専念することを決意する。チェスの古典を研究し、理解を深めるためにヨーロッパへもどる。現在はトレーナーおよびコーチとして成功している。主な専門領域である戦術については、経験豊かなトーナメント棋士でも、組織的な戦術知識の獲得によって棋力が劇的に向上するという。

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2007年07月15日

John J. Watkins『Across the Board: The Mathematics of Chessboard Problems』紹介

 John J. Watkinsの『Across the Board: The Mathematics of Chessboard Problems』(272ページ、'07年4月、プリンストン大学出版)を紹介しよう。普通のプロブレム(詰めチェス)ともそこから派生したフェアリーとも違う、チェス盤上の幾何学的パズル集といった風である。

目次
序文
第1章 序文
第2章 ナイト・ツアー
第3章 ナイト・ツアーの問題
第4章 魔法のマス
第5章 円柱型とドーナツ型チェス盤
第6章 クラインの壺と他の異形
第7章 盤面支配
第8章 クイーンの盤面支配
第9章 他の盤面支配
第10章 独立
第11章 他の盤面、他の異形
第12章 オイラーのマス
第13章 複合正方形
文献
索引
 (domination「盤面支配」は盤面のすべてのマスに利きが及ぶように駒を配置することだろう。independence「独立」は逆にすべての駒の利きが互いに重複しないことだと思う)

 最初に紹介されている1512年のガリーニの問題では、以下の3x3のチェス盤に4つのナイトがある。

黒ナイト
黒マス
黒ナイト
黒マス

黒マス
白ナイト
黒マス
白ナイト

 このナイトが、ナイトの動きにしたがって互いに取り合うことなく、白と黒が位置を入れ替わるにはどう動かせばよいかである。試行錯誤しながらコツをつかんでいくのもよし、法則性を先に検討してからスラスラ解くもよし、というところだろうか。
 今までにも言ってきたが、本書のような内容なら普通のチェス書よりはるかに和訳を出版できる可能性はある。しかし、私はもうそんな労多くして功少ない営業をやる気はない。誰かがお膳立てしてくれたら翻訳だけやるけど(汗。

Across the Board: The Mathematics of Chessboard Problems
John J. Watkins
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2007年06月22日

John Emms『The Survival Guide to Competitive Chess』紹介

 John Emmsの『The Survival Guide to Competitive Chess : Improve Your Results Now!』(192ページ、エブリマンチェス)を紹介しよう。初心者用以外ではこういう総合的な指南書はあまりないのでおもしろそうだ。

裏表紙から(訳):
 自分のチェスの才能を最大に伸ばしているか? 常に能力を最大限まで発揮しているか? その結果はあなたのチェスの理解度に見合っているか? どの質問の答も「ノー」なら、本書を読もう!
 本書では、グランドマスターで経験豊かなトーナメント棋士でもあるJohn Emmsが、潜在力を最大にし、結果を改善する秘訣を明らかにする。自身の実戦経験から引用し、Emmsは実戦の最も肝要な側面−対局時の集中と作法−に取り組む。勝ちやドローを目指すこと、好局を勝ち難局をしのぐこと、時間切迫の対処、ポカの回避、自身の長所と短所の理解、序盤レパートリーの構築、チェスコンピュータとソフトの利用、対戦相手に備えること、原則の利点の理解活用、その他多数。本書を読めば、どんなゲームにも、最善を尽くせる自信を持って臨めるようになる。

*実戦の総合指南書
*野心的プレーヤーに打って付け
*百戦錬磨の著者による

 John Emmsは、イギリスを代表するGMで、2回のチェスオリンピックではチームキャプテンも務めた。世界選手権のファイナリストMichael Adamsを初めとして、多くのトップ棋士を育てた熟練コーチでもある。著者としても高名で、エブリマンチェスの既刊には、The ScandinavianやベストセラーのStarting Out: The Sicilianがある。

The Survival Guide To Competitive Chess: Everything You Wanted To Know About Chess But Were Afraid To Ask(競技チェスで生き残る方法:聞きたいけど聞きにくいチェスに関するすべてのこと)
John Emms
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2007年03月03日

Jeroen Bosch『The Chess Combat Simulator』

 Jeroen Boschの『The Chess Combat Simulator』(262ページ、New in Chess)を紹介しよう。米amazonでの評価は満点の5つ★だが、初心者にはレベルが高すぎるようである。

出版社レビュー(訳):
 アマチュア棋士向けのチェス自習書。グランドマスター(GM)の50局で最善手を見つける。独自の採点法で、実力を評価し上達を記録できる。スキル向上にはエキサイティングな方法である。読者はグランドマスターと「実際に」対戦する−過去のゲームであることを除けば。各ゲームごとに上げた得点で自身の実力を判定できる。GMと違う他の手も分析されていて採点できるので心配なく。有名なチェスコーチMark Dvoretskyはこう言った。「トレーニングは、実際の大会ゲームに似た状況でするほど、より効果的になる」。本書が読者を上達させる理由もここにある。さあ、GMの頭脳から一手ずつ選んで強くなろう!

著者について(訳):
 Jeroen Boschはインターナショナルマスターで経験豊かなチェスコーチである。著者としても名高く、ベストセラー『SOS - Secrets of Opening Surprises』シリーズを編集している。
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2007年02月01日

Tibor Karolyi, Nick Aplin『Kasparov's Fighting Chess 1999-2005』

 初出は昨夏のようだが、Tibor Karokyi, Nick Aplinの『Kasparov's Fighting Chess 1999-2005』 (304ページ、バッツフォード)を紹介しよう。

出版社レビューの訳:
 ガルリ・カスパロフは、他のどのチャンピオンより長い間世界を制してきた。彼の経歴の中でもっとも魅惑的かつ議論の絶えない期間である。世界選手権再統一を試みる多くの不毛の尽力にも触れ、リナレスでの7回目の優勝直後の劇的な引退宣言で締めくくる。IM Tibor Karolyは、この時期から豊富に選んだエキサイティングな対局を広くかつ深く明瞭に分析する。チェス盤上の大巨人の多彩な棋風を理解するには極めつ き。
Kasparov's Fighting Chess 1999-2005
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2007年01月17日

Bruce Alberston『Chess Mazes 2: Short King Mazes』

 今回はちょっと変わった新刊、Bruce Alberstonの『Chess Mazes 2: Short King Mazes』(180ページ、Russell Enterprises)を紹介しよう。

出版社レビューの訳:
 Chess Mazesの第1巻は、チェス教師と学習者の双方にたちまち好評を持って受け入れられた。チェスを指す際の視覚化能力を鍛える全く新種のパズルだったから である。今回のChess Mazes 2には、中級者と上級初心者向けのさらなる320個の魅惑的なパズルが収録されている。読者の上達ペースに合わせるように、各章は難易度順に配列され、こ れ自体でチェスの特別講義を成している。駒の動かし方を知っていれば、誰もがChess Mazesで学習できる。難解なものは何もなく、すべては理解の範疇内にあり、楽しく学べる。

 1手ポカを防ぐ訓練に打って付け!−ドイツ人GM Karsten Muller

著者についての訳:
 Bruce Alberstonは、アメリカ人マスターで、今日世界で最も有名なチェス作家の一人である。Chess Mazes第1巻を始めとする彼の著作は、20年以上に渡り世界のチェスプレーヤーを啓蒙し、楽しみを与え続けている。妻とともにニューヨーク市在住。
Chess Mazes 2: Short King Mazes
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Chess Mazes: A New Kind of Chess Puzzle for Everyone
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2006年12月21日

Jan Timman『On the Attack: The Art of Attacking Chess According to the Modern Masters』

 今月発売のJan TimmanOn the Attack: The Art of Attacking Chess According to the Modern Masters』(235ページ、New in Chess)を紹介する。

出版社レビューの訳:
 世界的に有名なグランドマスターがアマチュア棋士に現代風攻撃的チェスを説明する。本書は、優位に立つ方法と、その優位を攻撃的戦略や手順に転換する方法を説く。相手陣内の弱点につけ込む得策を教える。ティマンは、アマチュア棋士に現代風攻撃とその成功例を解説するために、カスパロフ、トパロフ、カルポフ、シロフ、ジュディ・ポルガー等の名人の最も教訓的な攻撃を含むゲームを選択した。On the Attackは、読者の想像力と自信を強化し、いつどこでどのように攻撃したらいいかを理解できるので、多くの勝利をもたらすだろう。

著者についての訳:
 ヤン・ティマンは、世界のトッププレーヤーの一人として20年活躍し、世界選手権の挑戦者決定戦にも何度も勝ち上がった。『Chess the Adventurous Way』『Power Play with Pieces』『Curaçao 1962』等の評価の高いチェス書の著者であり、世界最高のチェス雑誌『New In Chess』の編集長でもある。

ブリティッシュ・チェス・マガジンのレビュー訳:
 ティマンは11人のトップ棋士を選択し、彼らの簡単な紹介とそれぞれ3局ずつを解説している。棋士は、カスパロフ、カルポフ、ティマン自身、トパロフ (校正ミスのせいで、本文内で"Wild Adventures"と呼ばれている)、アナンド、シロフ、ショート、イヴァンチュク、J.ポルガー、I.ソコロフ、Volokitin. Volokitinが入るとはちょっと驚きだ。フィッシャー(おそらくもう現代風じゃないから)やクラムニク(攻撃的といえないから?)らの入る余地はな い。したがって、本書は攻撃的棋士の33局「断片」集だが、卓越した学識と洞察を惜しまない著者により丁寧に書かれている。

 他の情報によると、書き方は『Curaçao 1962』に近いらしい。
On the Attack: The Art of Attacking Chess According to the Modern Masters (New in Chess)
9056911872 Jan Timman

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2006年12月14日

Valeri Beim『Paul Morphy: A Modern Perspective』

 新刊紹介は、Valeri Beimの『Paul Morphy: A Modern Perspective』 (164ページ、ラッセル・エンタープライズ)である。

出版社レビューの訳
 1857年にニューオーリンズから突如としてチェスシーンに現れた物腰柔らかな天才ポール・モーフィーは、何もないところから生み出されるかのような息 をのむコンビネーションでチェス界を感銘させた。チェスのキャリアは短かったが、世界最高の棋士と広く認められた。インターナショナルマスター Valeri Beimは、この19世紀中葉のチャンピオンの棋風に注目し、そのゲームを21世紀の詳細な分析視点でとらえる。その結果、このアメリカの伝説棋士の戦略 と戦術と、それらへの現代的アプローチの観点を新鮮かつ教訓的に眺望している。

 ひじょうに興味深いとともに、読者の先入観をくつがえす本かもしれない。ゲーム解説が主だが、モーフィーの背景情報も扱う。 −John Saunders, ブリティッシュ・チェス・マガジン、'05年10月

著者についての訳
 Valeri Beimはインターナショナルマスターで、著者やトレーナーとしても高名。ソ連出身でオーストリアのウィーン在住である。
Paul Morphy: A Modern Perspective
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2006年12月01日

Jacob Aagaard『Practical Chess Defence』

 最近一般書の書評がないのは読めてないから(汗、というわけでまた新刊Jacob Aagaardの『Practical Chess Defence』 (192ページ、Quality Chess)である。防御に関する本は数少ないので興味深い。

出版社レビューの訳
 チェスは今、かつてなかったほどの速さで進化している。強いチェスコンピュータの登場は棋士の考え方を変えた。過去には、多くの局面が防御不能として退けられ、最高の棋士でさえ、困難な防御に直面するような駒得は避けていた。この態度は改められ、今日のトップ棋士は、防御的な好変化へ進むことを恐れない。本書は様々な防御方法に関する実戦的指南であり、読者に200の実例でテストと訓練を提供する。臆病でなければ、本書は読者の防御力を大いに向上させるだろう。

著者について
 Jacob Aagaardは、世界的に評価の高いチェス作家である。chesscafe.comで自身のベストセラー"Excelling at Chess"が2002年ブック・オブ・ザ・イヤーに輝き、多くの言語に翻訳されている。
Practical Chess Defence
9197524441 Jacob Aagaard

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2006年06月06日

A. J. Gillam『Simple Checkmates』

 予定通り6ぞろ目の今日、新ブログを立ち上げた。ライ ブドアシーサーの2箇所にすでに作っているので どっちに決まり、どっちが消えるのかまだ分からない(笑。本ブログ開始時にも迷ったくらいこの2つは一長一短だが、どちらもシーサーにした方が管理が楽な のは確かだ。
 新ブログには、ここのカテゴリーから変身関連のすべてとアイドル等の一部が移動する。特にチェス関連でこちらをご覧の方には不可思議な分野だろうが、新 ブログは日英2カ国語で書くのでその意味では翻訳的な要素も持っていくことになる。興味ある方は新ブログもどうぞ。


 A. J. Gillamの『Simple Checkmates』 (233ページ、'96年、Ballantine)を紹介しよう。ほぼページごとに2つずつの問題(局面図)があって総数は430図(解答は各ページ 下)。1手メイト116題の後は最後まで2手メイト問題という初心者向けだがルール説明等は付いていない。代数式記譜法とピンの説明はある。

 問題の前にチェックメイトをかける駒別に、ルックは10、クイーン8、ビショップ10、ナイト19、ポーン7つの典型的なメイトがかかった局面が挙げら れている。これでパターンや直観が鍛えられて問題に取り組みやすくなるだろう。
 和書だと『ボビー・フィッシャーのチェス入門』に相当し、本書の方がバラエティに富むが2手メイトまでに限定しているので両方読む必要まではないだろ う。
Simple Checkmates
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2006年05月23日

Jeremy Silman『The Amateur's Mind』

 新ブログ開始日のきっかけがつかめないでいるが、「オーメン」の新作映画公開にちなんで'06/6/6にしようかな(笑。近所のスーパーに耳で1秒で測 れる体温計が980円であったので買ってきて早速試した。たしかに便利だが今までなくても済んだので実家へ持っていきそう。BraunのIRT-3020 だがamazonにはない。


 HPの表紙にThe Amateur's Mindを置こうとしたらまだ紹介していなかった。というわけでJeremy Silmanの『The Amateur's Mind: Turning Chess Misconceptions into Chess Mastery』である。amazonカスタマーレ ビューに渡辺暁さんが書いているので今さら何を書こうかという感じだが(汗。
 "How to Reaccess Your Chess"で詳しく述べた著者が提唱する局面分析概念「インバランス」が、ここでも登場する。扱うゲームが本書の方が低レベルなので全体的に内容は易し めになっている。松戸チェスクラブでは本書の方がいいと言う意見を聞いた。


目次の訳:
前書き 序文
インバランス
ビショップとナイトの戦い
センター、領域、スペースの獲得
ポーン形という分かりにくいテーマ
戦力
展開と主導権
多くのインバランス、盤は一つ
序盤の指し方
ルックの活用
浅はかなキングハンターの呪い
どちら側で事を起こすべきか?
精神力の強化
テスト
テスト解答
用語集

インバランス」から抄訳:

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
rn2k2r/pppbqpb1/4p1pp/4P3/8/2NB1N2/PPP2PPP/R2Q1RK1 w kq -

Dzindzichashvili-Yermolinsky全米選手権1993
白番

 多くのプレーヤーは、この局面から関連するプランもなく何手も作まで読もうとするだろうが、インバランスの項目に照らし合わせれば、事はずっとたやすく なる。

(インバランスの項目に関しては"How to Reaccess Your Chess"のレビュー参照)

 この局面のインバランス
 マイナーピース:黒には2ビショップがある。局面はかなり開いているので、黒の2ビショップは白の2ナイトより有力と考えられる。
 ポーン形:黒はポーン形に弱点なし。e5のポーンのみ弱点になる可能性を秘めている。
 スペース:白は、前進したe5ポーンによってセンターで空間的に優位。
 戦力:戦力は互角。
 ファイルとマス:dファイルは開いているが、双方ともルックで支配しようとはしていない。f6は弱点になる可能性がある。
 展開:白は展開で勝っている。
 主導権:どちらかにあるとしても不明。


 この分析に基づいて手順(例)が示されていく。著者はアマチュアが陥りやすい誤りを気付かせてくれる。そのかゆいところに手が届くのが本書の狙いでも あって、読者が置いてきぼりにされることはないだろう。
The Amateur's Mind: Turning Chess Misconceptions into Chess Mastery
1890085022 Jeremy Silman

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2006年05月18日

Angus Dunnington『Blunders and How to Avoid Them』

 メイソンの『チェスの原則』をとりあえずルールと記譜法だけは訳そうと 連載してきたが、エドワード・ラスカー『チェス戦略』のルールと記譜法だけ訳すのを後回しにしていたのに一昨日気が付いた。これを仕上げれば、わざわざ 新しい本に手を出す必要はなかったのだ(汗。
 なのでメイソンは休止して、今回は久々に洋書紹介をしよう。


 Angus Dunningtonの『Blunders and How to Avoid Them(ポカとその防 ぎ方)』(144ページ、'04年、エブリマンチェス)である。イギリスのIMの著者は、国際大会で尊敬される好人物で自国トップジュニアの名コーチでも ある。エブリマンチェスでは『Attacking with 1 d4』と『Understanding the Sacrifice』も執筆。

出版社レビューの要約:
 ポカをしたいプレーヤーはいないが、世界的な名人でさえポカをする。悪くても最小限にとどめるにはどうすればいいか? 本書を読んで見つけよう! チェ ス災害に遭いがちな人必読。

目次の訳:
引用文献 序文
1 危険の感覚
2 はめ手と罠
3 心理学
4 キングの防御
5 チェック
6 誤ったプラン
7 単純化の危険
8 ドロー
9 終盤
10 時間切迫
11 勝利の危機から敗北を得る
12 意外を予想する
13 典型的なポカ
14 特大のポカ
15 トワイライトゾーン

1 危険の感覚より「バックランク」の一部訳:
 キャスリングしたキングに逃げるマスがあると、バックランクを危険リストから除外しがちです。これは、以下のようなポカがよく起こる原因です。

エマヌエル・ラスカー 対 フォン・シェーフェ
ベルリン、1890

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r2r2k1/2p2pp1/2p3q1/1p6/5P2/N1Pb1Q2/PP4PP/3RR1K1 b - 24

 黒は明らかにポーン形の代償を得ており、その卓越したマイナーピースをd3に固着させようとしています。
24... c5?? 25 Rxd3!
 白勝ちです。黒がルックで取り返すのは問題外で、もう一つのa8のルックが宙ぶらりんとなります。h1〜a8ダイアゴナルはもう開いているのです。
25...Qxd3 26 Re8+! 1-0

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r2rR1k1/2p2pp1/8/1pp5/5P2/N1Pq1Q2/PP4PP/6K1 b - 26

 バックランクの脆弱さに無神経だったために、黒は重大な駒損を避けられません。26...Rxe8 27 Qxd3では、ナイトが大きな戦力差となり、26...Kh7 27 Qxd3+ Rxd3 28 Rxa8だと、さらに深刻です。27 Qh5#も悪くありません。


 すでに何かで訳したゲームと思うが、調べるのもおっくうになってしまった(汗。最後の「27 Qh5#も悪くありません」は、ちょっと洒落ている。目次の「11 勝利の危機から敗北を得る」も皮肉な表現で、わざわざ勝ちを逃して負けにいくポカとい う意味だろう。
Blunders and How to Avoid Them
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2006年04月17日

Alburt『Chess Strategy for the Tournament Player』

 特に新刊でもないレヴ・アルバートの"Chess Strategy for the Tournament Player"(336ページ、'97年、ノートン社)がよく売れている。著者の Comprehensive Chess Courseシリーズの第5巻にあたり、カスパロフに「かつて秘技だったロシアのトレーニング」が露わになったと言わしめた。
 実戦から採取したテーマに関連した数百の局面が難易度で整理され、戦術的認識や洞察力を磨けるように作られている。体裁はテーマ局面から投了までに絞っ た実戦解説集なので、ほんとうに力を付けるためには次の一手を自分で予想する必要がありそう。

目次の訳:
序文
1:良いビショップと悪いビショップ
2:色違いビショップ
3:ピースの本領を阻害
4:ビショップがナイトより強い場合
5:ナイトがビショップより強い場合
6:ビショップペアー
7:長いダイアゴナル上での戦い
8:開いたファイルとダイアゴナル
9:弱いマスと強いマス
10:マスの組織が弱い場合
11:弱いポーンと強いポーン
12:センターの重要性
Chess Strategy for the Tournament Player (Comprehensive Chess Course Series)
1889323055 Lev Gm Alburt Sam Gm Palatnik

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2006年02月28日

Agur『Bobby Fischer: His Approach』

 JPCA会報誌「The Pawn」の作成にも入っている。今後の運営の根幹でもあるトーナメント案内は、国内と国際でそれぞれ1ページずつの体裁になりそうだ。ウェブチェスが新 規 に加わるので国際部門が拡大する。細かい部分についてはまだ議論中である。


 Elie Agurの"Bobby Fischer: His Approach"(276ページ、'93年、エブリマン・チェス)である。以前からこの一見マニアックな本は気になっていた。米 amazonのレビューでは平均で☆5つの評価、日本では4つだが、そのレビューはかなり好意的だ。

目次の訳:
棋風には何があるか?
ポーン形
 gポーン
 ポーン・チェーンI
 ポーン・チェーンII
 ポーンの三角形
 キングズ・インディアンのセンター
ピース配置
 異例の駒組み
戦力考察
タイミング
戦略
 戦略プラン
 主導権の確保
 典型的駒繰り
 清算の技巧
 駒の配置的緊張の維持
 優位の転換
 空間を求めて
 美学の役割
 空マスの詩情
明快さ
率直さ
用心深さ
相手の選択肢を奪う
勝利を目指して
 勝利への意志
 積極的な防御と反撃
 危険を背負う
実戦的好機
 好機の利用
 はめ手
戦術
 戦術的洞察
 両刃で投機的なチェス
 戦術的策略の失敗
技術的側面
 テクニック
 ビショップペア
 色違いビショップのあるルックの終盤
皮相
勝ち損ない
典型的ポカと見落とし
総合的視野へ
 壮大な道筋
 統一した視野
あとがき
参考文献

ポーン形」より一部訳:
 フィッシャーは常に、双方のポーン形を考慮しながら、自分と相手 の指し手の結果がどうなるかをひじょうに良く理解していた。ペトロシアンとのマッチ第7戦(1971年の世界選手権挑戦者候補者戦)では、ペトロシアン (黒)の12手目後に以下の局面(図6)になった。

図6 白番
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 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
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 ここでフィッシャーは 13 Re1とした。この決断は、主としてこの局面のポーン形を考慮すれば理解できる。彼はクイーンのない中盤戦へ向かいたかった。クイーン側での2対1のポー ンの数的優勢に加えて黒の孤立したdポーンは、あらゆる終盤で白が 満足できる具体的な長所となるからである。さらに、すぐ後で b4として ...a5の前進を牽制し、a6のポーンに長期的な圧力をかけるという展望も描いていた(図158参照)。現に、これが黒陣を崩壊させる要因になることが 判明する(図285参照)。…


 たしかに棋風の研究といっても小難しいものではない。同一ゲームからいくつもの局面が実例として利用され、それらが緊密に参照し合っているのが見て取れ る。長い手順を並べる必要もあまりないので読みやすそうだ。羽生さんもこれを読んだのかなあ。
Bobby Fischer: His Approach to Chess (Cadogan Chess Books)
1857440013 Elie Agur

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2006年02月14日

Kasparov『Garry Kasparov on My Great Predecessors Part 1』

 ha4shu2さんの尽力によって「JPCA日本郵便 チェス協会の存続を願う集い」なる掲示板が立てられ、同会存続への話し合いが持たれている。私が協力できるもしくはしたい部分は会報の発行だか ら、そういうブログにしていけば一石二鳥なのかもしれない。でも、ウェブで見られる人には紙で必要ないのかなあ(汗。


 Garry Kasparovの"Garry Kasparov on My Great Predecessors, Part 1"(464ページ、'03年、エブリマン・チェス)である。5冊で完結(?)の1冊 目では、主としてシュタイニッツ、ラスカー、カパブランカ、アリョーヒンの世界チャンピオン最初の4人の棋風を分析している。
 「シュタイニッツ以前のチェス」の全局分析は"The Mammoth Book Of The World's Greatest Chess Games"と同じマクドネル対ブルドネ戦で始まる。ガルリ・カスパロフは、言わずと知れた元世界チャンピオン(第13代)で、'85〜'00年には並ぶ 者がいなかったほどあらゆる国際大会で活躍した。
 ソフトによるチェックも加わったカスパロフの解説は信頼できる上に、当時の時代背景や文化にも触れる歴史書でもある。なにぶん大書なので、少なくとも歴 代世界チャンプを扱う最初の3巻を読破する気力がないと買ってもしょうがないだろう。上級者や収集家のライブラリーには必須だが。

目次の訳:
序文
1 シュタイニッツ以前のチェス
2 ウィルヘルム 初代
3 エマヌエル 第二代
4 ホセ・ラウル 第三代
5 アレクサンダー 第四代
プレーヤー別索引
定跡別索引

1 シュタイニッツ以前のチェス冒頭訳:
 チェスの歴史的発展段階は、誰もが初心者から上級プレーヤーへ進んでいく道筋に似ている。16および17世紀の黎明期には、誰もが指し方には無頓着に ゲーム を繰り返していた。チェックができればそれを怠らず、クイーンをすぐに戦線へ繰り出し、すべてのピースを展開することを考えず、キングへの攻撃を急いだ。 コンビネーションは、成功するときもあれば、突然全くの失敗と判明することもある。防御技術はお粗末で、深遠なプランなどはかけらも存在しな かった。
 これは、「イタリア派」として知られるようになったプレーヤーたちの才能と創造力に刺激された棋風である。イタリア派を代表する伝説のジョアッチーノ・ グレコ(1600-1634)の草稿は、初心者ばかりを相手にした短局らしきものであふれている。
 1. e4 e5 2. Nf3 Qf6? 3. Bc4 Qg6 4. O-O Qxe4? 5. Bxf7+! Ke7 6. Re1 Qf4 7. Rxe5+ Kxf7 8. d4 Qf6 9. Ng5+ Kg6 10. Qd3+ Kh5 11. g4+ 以下メイト。
 1. e4 e6 2. d4 Nf6?! 3. Bd3 Nc6 4. Nf3 Be7 5. h4 O-O? 6. e5 Nd5 7. Bxh7+! Kxh7 8. Ng5+ Bxg5 9. hxg5+ Kg6 10. Qh5+ Kf5 11. Qh7+ g6 12. Qh3+ Ke4 13. Qd3#.
 1. e4 e5 2. f4 f5?! 3. exf5 Qh4+ 4. g3 Qe7 5. Qh5+?!(5 fxe5! Qxe5+ 6 Qe2の方がいい) 5... Kd8 6. fxe5 Qxe5+ 7. Be2(7 Qe2! Qxf5 8 Bh3) 7... Nf6 8. Qf3 d5 9. g4? h5! 10. h3? hxg4 11. hxg4 Rxh1 12. Qxh1 Qg3+ 13. Kd1 Nxg4 14. Qxd5+ Bd7 15. Nf3 Nf2+ 16. Ke1 Nd3+ 17. Kd1 Qe1+ 18. Nxe1 Nf2#.

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 この時代ならではと言うしかない! 白のクイーン側を見るだけでも…。
Garry Kasparov on My Great Predecessors Part 1
1857443306 Garry Kasparov

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2006年02月07日

Walker『Chess Combinations: The Improving Player's Puzzle Book』

 maroさんの「戎棋 夷説」でちびさんの「ちびぶろぐ」 を知った(最近は自分専用の「アンテナ」しかチェックしてない)。今年始まったばかりのブログだが、チェスの情報が充実している。立ち上げに際していろい ろなブログを参考にしたがHPに比べてブログの独自性が見出せないものが多いと感じたそうだ。
 うちなどはその最たる例だろう(笑。ブログの記事でまずは発表してHPにログ化すれば、一粒で二度おいしいし、毎日見てくれる人はブログだけ見て(一方 のみのコンテンツもあるが)、初めてかたまにしか見ない人はHPでまとめて見ていただければという配慮でもある(こういうときにブログの「重さ」は鬱陶し い)。

 HPとの差異化はけっこうだが、べつにブログらしさ、つまり日記にこだわる必要は感じていない。翻訳とのコラボが特徴の私は対局主体の人とは 根本的に違う。 書評等の各曜日の記事執筆作業はルーティーン化し、丸翻訳できる著作権切れ書物への執心は、私にとってチェスがもう過去のものになっている証だ。
 ジャンルでブログを分割したくな いゆえの「水野優のブログ」だが、月に一度も書かないほとんど見捨てられたジャンルに関しては申し訳ないが、少しずつでも書きためてHPへ置くしかないと 考えている。チェスの序盤資料作成もウェブ上で修正する形でやっていくだろう。HPが更新の差分を明示しにくいのは仕方あるまい(汗。


 ベストセラーからJohn Walker"Chess Combinations: The Improving Player's Puzzle Book"(128ページ、'99年、エブリマンチェス)である。長年子供にチェスを教えてきたイギリス、 オックスフォード州チャンプのジョン・ウォーカーが、初心者にも易しくコンビネーションを解説する。
 まず解法に必要なテクニックを詳説してから実戦的なパズルに挑戦する趣向になっている。最善手である解答は派手なメイトから静かなプランまで多岐に及 ぶ。実戦さながらの問題を鍵の与えられたパズルを通して解くことで棋力向上が期待できる。

目次の訳:
記譜法と記号
コンビネーションとは何か?
なぜコンビネーション・パズルを解くのか?
パズルの取り組み方
戦術手段
戦術手段テスト
攻撃目標キング!
攻撃目標キング・テスト
防御駒の扱い
防御駒の扱いテスト
絶体絶命
絶体絶命テスト
テスト
得点表
テスト1〜32
それは思い込み!

コンビネーションとは何か?冒頭の訳:
 ボクサーはコンビネーションをこう語る。最初のパンチで相手を威嚇して捕らえ、さらに強い一撃への布石とする。
 チェスプレーヤーも同じである。最初の一撃で驚かせる。たいていサクリファイスである。相手の応手にはほとんど選択肢がなく、続いてチェックメイトか駒 損をお見舞いする。

 実例を見ればこの意味がもっと良く理解できるだろう。

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 白が良好に思える。黒のナイトとポーンに対してルックの駒得だし、g7でのメイトの狙いがある。
 しかし、白は思いがけない衝撃を受ける!

    1...      Qxg1+!!
 最初の一撃が…
    2 Kxg1
 …第二波を…
    2...      Ne2+!
(以下省略)
Chess Combinations: The Improving Player's Puzzle Book
1857445392 John Walker

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2006年01月31日

Soltis『Pawn Structure Chess』

 耳あかがパサパサかドロドロかを決める遺伝子が見つかったそうである。意外だったのは、世界的にはドロドロが多数派でパサパサは突然変異型なのに、日本 は8割がパサパサだということだ。私はドロドロだから耳かきは無縁で、あかがたまって聞こえにくくなるなどという話は想像もできない。
 パサパサならウレタンの耳栓の寿命がもっと延びてくれるのにとは思うが、ドロドロが世界標準なのに日本では少数派とは、私らしくて何となくうれしい (笑。


 めぼしい個別序盤本は一通りやっておこうと言ったばかりの洋書レビュー だが、それは序盤連載に回してまた方向転換する(汗。思えばブログを始めたときは「チェスがメイン」になることすら決まってなくて、翻訳の延長で試行錯誤 してきたものだ。いろいろやってみないと形が見えてこないことだけは分かった。
 Andrew Soltis"Pawn Structure Chess"(368ページ、'95年、ランダ ムハウス)である。フィリドールが「チェスの魂」と表現したポーンだけを扱った本はけっこうあるとはいえ、ポーンの形にだけ(もちろんそれに伴う 戦略や実戦解説も含まれるが)に焦点を合わせた本書は異例で、米amazon等での評価も高い。

 ポーンは、キングも含めたピースのように前後左右に対称的には動けない、つまり後戻りができないので、勝敗を決する猛攻をかけるときやピースがほとんど なくなった終盤は別として、常に他のポーンやピースとの連係を考慮しながら慎重に進める必要がある。
 私がすでに訳した分のラスカー『チェス戦略』もそうであるように、序盤の懇切な解説本は必ずといってポーン形に言及している。ポーン形は各定跡のプラン 決定と密 接に関連しており、それは逆に、定跡を外れてもポーン形の扱いを誤らなければ中盤まで問題なく指せるということでもある。

裏表紙の一部訳:
・あらゆる種類のポーン形の扱い方
・ポーンチェーンの強さと弱さの識別法
・センターポーンを交換すべき時−すべきでない時
・相手ピースを抑制し、自陣を柔軟に保つ方法
・つけ込めるポーンの「ホール」その他の弱点の作り方

目次の訳:
序文:何のゲームの魂?
1.カロ−スラブ系
2.スラブ形
3.オープン・シシリアン−イングリッシュ
4.ポーンチェーン反発
5.e5チェーン
6.キングズ・インディアン複雑系
7.クイーンズ・ギャンビット系とその親戚
8.パノフ形
9.ストーンウォールと他の監獄
10.クローズ・シシリアン−イングリッシュ
索引

1.カロ−スラブ系の冒頭訳:
 系(family)は、同じ特徴を持つものや共通の定跡に由来するポーン形が緊密に関連し合うグループを意味する。カロ−スラブ系では、一方だ けが1つのセンターポーンを4段目d4に持ち、相手はdポーンをeポーン(カロ形)かcポーン(スラブ形)とすでに交換している。交換されたセンターポー ンはそれだけである。

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カロ形

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スラブ形

 見た目の類似性以外にも、2つのポーン形は根本的に堅固さと保守性の点でも共通している。白にとって、危険を伴わずにセンターをこじ開けることは難し い。中盤は緩やかに進行することが多い。しかし、白はdポーンのおかげで依然として基本的に優位を保っている。dポーンのセンター支配力は大きく、ピース の拠点にも好都合で、大突破(d4-d5)の好機も狙える。黒は窮屈な陣形を克服せねばならず、自らもポーン形が突破(...c5 か ...e5)を計る。
Pawn Structure Chess (Mckay Chess Library)
0812925297 Andrew Soltis

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2006年01月09日

Waitzkin『Josh Waitzkin's Attacking Chess』

 ウェブ上でメンバーオンリーのコミュニティを作るには機能が多彩のmixiを教えても らったが、性別欄必須なので個人的には遠慮した。チェスの場合は サークル限定なら使えるだろうが、国境さえボーダレスに楽しめるチェスには向かないかもしれない。


「本書は、白と黒のエキサイティングなジャングルに読者を誘う…」−ガル リ・カスパロフ

 和訳を出せる見込みを考えるたびにため息が出る"Searching For Bobby Fischer"だが、実在の主人公Josh Waitzkinの"Attacking Chess"(240ページ、'95年、ファイアーサイ ド)を紹介する。子供の頃は全米を制覇した彼も今はIMに落ち着いている。
 19種の戦術(出版社レビューはstrategyとしているが)が攻撃を進展させる様を初歩から解説する。題材には著者自身のゲームを引用する。 私的には"Searching For Bobby Fischer"ラストで巧みにドローにする終盤ゲームを知りたいが、さすがに小学生のときのゲームは使ってないようだ。

裏表紙の一部訳:
 ジョシュ・ウェイツキンは6歳のときニューヨークのワシントン・スクエアでチェスを始め、ブルース・パンドルフィーニに見出され、師事した。13歳でナ ショナルマスター、16歳でインターナショナルマスターになる。全米学生チャンプには8回、'94年には全米ジュニアを制した。ニューヨーク市在住。

目次の訳:
謝辞
序文
1 メイト
2 フォーク
3 ピンと串刺し
4 二重の狙い
5 防御駒の除去
6 ディスカバリー
7 破壊
8 ポーンの猛攻と神風特攻隊(The Power Of The Kamikaze)
9 クイーンのはめ手
10 マイナーピースのはめ手
11 度胸
12 不満な形勢に甘んじない
13 序盤のはめ手
14 穏やかな攻撃手
15 ツヴィッシェンツーク
16 7段目とルック
17 メイトの包囲網
18 メイトへのサクリファイス!
19 総仕上げ
付録:代数式記譜法
索引

1 メイトの一部訳:
 読者は、チェスの技術を理解したと思うたびにそれが戒めでもあると分かってくるだろう。それがチェスの偉大な一面で、身に付けるのが難しい理由でもあ る。分 かったと思うたびに、自分が単に初心者にすぎないことを思い知らされる。私は11歳とのき、世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフの同時対局で指したゲー ムをドローにした。後で、チェス盤にサインをお願いすると、彼は少し考えてからこう書いてくれた。「黒と白のジャングルでの幸運を祈る」。そのときは、意 味がよく分からなかった。しかし今では、チェスが草木と影のだまし合う狂乱だと理解している。カスパロフのような天才にとってもそうであるように。

 レベルは初心者向けだが、こういう著者の経験談もあって楽しめそうだ。
Josh Waitzkin's Attacking Chess: Aggressive Strategies and Inside Moves from the U.S. Junior Chess Champion (Fireside Chess Library)
0684802503 Josh Waitzkin Fred Waitzkin

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2006年01月02日

Pandolfini『Beginning Chess』

 ホームページ「チェス トランス」も知らないうちに風さんの「はてなチェスアンテナ」に登録されていた(喜。アンテナへのブログRSS対応についてはヘルプを読んでもよく分から ない。 チェックされる側は何もしなくていいようだが。
 今日でラスカー『チェス戦略』の第一部訳は終えて、ズノスコ=ボロフスキーの『いけないチェスの指し方』(このタイトル訳お気に入り)も今月中には終わ らせたい。原文最低5ページ/日で今年何冊訳せるかな。


 『ボビー・フィッシャーを探して』の原作"Searching for Bobby Fischer"には、ブルース・パンドルフィーニが 主人公ジョシュのレッスン以外にも他の子供のレッスンや講演、執筆、出版社との打ち合わせなどで忙殺されている様がよく描かれている。
 今回は、その打ち合わせで出てくるサイモン&シュースター社から出ている"Beginning Chess"(272ページ、'93年、ファイアーサイド)である。ここから出ているパンドルフィーニ本だけで何冊あるか分からないほどだ が、選択肢が多いのはいい。

裏表紙の訳:
 初心者に分かりやすいこの手引書でナショナルマスター、ブルース・パンドルフィーニと一緒に始めよう。パンドルフィーニは、年齢や棋力も様々な何百人の プレーヤーの指導をしてきた。『チェスを始める』は、初心者向けのレッスン集である。
 この種の他の本と本書の違いはシンプルさにある。どの問題も一手で答えられ、駒数は10個を超えない。頻出する戦術テーマ、フォーク、ピン、串刺し、土 台崩し、X線、はめ手等を中心にした初心者向けの総合的な入門書となっている。

目次の訳:
謝辞
序文
1 駒の動き、ルール、戦術
2 300の問題
3 解答
付録
問題表
問題結果
戦術的助言
戦術用語集
戦術索引
索引

 戦術索引によると戦術別の内訳は、ディスカバード攻撃38、囚われ駒15、フォーク65、メイト67、防御過負担11、ピン41、ポーンの昇格6、串刺 し37、はめ手7、土台崩し7、X線6題である。最初にルール説明もあるから全くの初心者でも問題ない。
Beginning Chess (Fireside Chess Library)
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2005年12月31日

Znosko-Borovsky『Art of Chess Combination』

 私のチェス書翻訳も、第一には自分の満足感のためだが、これだけ「日本語」の情報がウェブ上で得られることで国内のチェスの底辺層が増えてレベルが上 がってほしいという願いはもちろんある。それが即中級レベルのチェス和書が出版されることにはつながらないだろうが、少しは意識が変わってくるだろう。
 羽生さんの海外での活躍はうれしい。そのフィッシャーに似た棋風に、ブームまで'70年代のアメリカの再来をなどと期待するのは行き過ぎだろうが、チェ ス書の翻訳だけで食べていける状況を夢想するなというのが無理な話だ。文体も好きなSilman本の訳を出せるなら印税じゃなく「千円/ページ」でもやり たい(印税より高そう)。


 年末を飾るほどの本ではないが、著作権切れならまた訳す狙い目のEugene Znosko-Brovsky"Art of Chess Combination"(212ページ、'77 年、ドーバー)である。数冊の英訳された技法書で有名な著者だが、短いプレーヤー人生の戦績も華々しかった。
 日露戦争への従軍後トーナメントデビューし、1930年のパリ大会では無敗で優勝した。同時対局も得意で、講義、レッスン、執筆等幅広く主にロシアとフ ランスで活躍した。ロシアの文学と演劇評論でも名を成している。本書の記譜はもちろん英米式である。

目次の訳:
ドーバー版への序文
序文
第1部 コンビネーションとその研究
1 コンビネーションの技術は学べるか?
2 コンビネーションとは何か?
3 特別なコンビネーション
4 分類の試み
第2部 コンビネーションの考え方
1 コンビネーション、プロブレム、スタディ
2 幾何学的考え方
3 ナイトのコンビネーション
4 序盤の手筋
5 手筋の妨害
6 ディスカバード チェック
7 ステイルメイトをメイトへ
8 無防備なピース
9 防御負担過剰ピース
10 防御されたポーン
第3部 局面依存のコンビネーション
1 局面に関連するコンビネーション
2 hポーン
3 2ビショップのサクリファイス
4 g7(g2)ポーンとgファイル
5 fポーンとキャスリングしたキング
6 ナイトのコンビネーションによるf7(f2)とe6(e3)への攻撃
7 センターでのコンビネーション
8 前進したfポーン
第4部 コンビネーションの生死
1 コンビネーションの準備
2 コンビネーションの仕組み
3 コンビネーションの反駁
結論
追記:最近の選手権からの二例
実例ゲーム(200)の索引
練習問題(10)解答

1 コンビネーションの技術は学べるか?の冒頭訳:
問題の難し さ
 「コンビネーション」という神秘の領域への魅惑的な旅−あまりに探検されていないゆえに魅力的な−を始める前に、待ちかまえる困難を十分に現実化し ておく必要に迫られた。
 コンビネーションの学習は、そこに現れる想像力豊かな美によって楽しく容易く実現するものであり、厳格な法則や厳密な論理に支配されたチェスの他の 問題よりもずっと単純な事柄だと思われてきたかもしれない。しかし、それは間違っている。正しく明白な論理に欠けていることこそが、コンビネーション学 習の困難な元凶なのである。一般論ではほとんど扱えない。本書で、一般原則や支配的概念を何か主張できるだろうか? どのコンビネーションも、そ れぞれが独自の規則を持つ特殊なケースではないのか? したがって、読者をうんざりさせる危険を承知で、多くの実例が必要となった。この労力に価するもっ とも らしい推論ができる確信もないのだが。
Art of Chess Combination
0486205835 Eugene Znosko-Borovsky

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2005年12月28日

Wolff『The Complete Idiot's Guide To Chess』

 いろいろ考えたが、翻訳は、ラスカー『チェス戦略』の残している第1部を優先して仕上げることにした。来月末には古いチェス書がいろいろ届く予定なので それまでは目移りせずに我慢しよう(汗。もっと読み物的なものも訳したいなあ。


「本書は、チェスをうまく指すために必要なルール、基本戦術と戦略をすべ て 教えてくれる」−ディープ・ブルー(!)

 入門書としてひじょうに評価の高いPatrick Wolffの"The Complete Idiot's Guide to Chess" (第3版、428ページ、'05年、アルファ)を紹介する。バカでもチョンでも学べるというタイトル通り、平易な英語でルールから様々な内容が詳しく説明 されているひじょうにお得な本である。
 著者のパトリック・ウルフは2回全米チャンピオン(1992,95)になったグランドマスターで、『ボストングローブ』紙にコラムを連載している。分か りやすくてお得な洋書の入門書は、チェスの専門出版社以外から出ているものに多い気がする。和書だと専門出版社がないから比べようもないが(笑。

目次の訳:(さらに詳しい目次もある)
第1部:チェスをしよう
 1 なぜチェスをするの?
   チェスの歴史と今日の人気
 2 戦線を引く
   チェスの盤、駒、ルール:そして棋譜の読み書きの方法
 3 約束事
   ルールの補足、これでゲームを始められる
 4 1つのピースだけで勝つ方法
   クイーンとルックだけで裸のキングをチェックメイト
第2部:戦術
 5 戦力の世界
   戦力を相手より大きくする
 6 戦術的交換のトリック
   相手のピースをせしめる最重要戦術
 7 さらに狡猾なトリック
   相手のピースをせしめるさらに重要な戦術
 8 キングを追いつめる
   戦術と戦力を使って相手のキングを攻撃する
第3部:戦略
 9 序盤
   ゲームの序盤の指し方
 10 ピースを最大に生かす
    ピースの力を最大にする戦略
 11 ポーン教室
    ポーン利用に関する特別な戦略
 12 最後の砦
    相手より多くの領土を支配する方法と、できないときにどうするか
 13 弱いマス
    他より重要なマスがあることを認知し、活用する方法
 14 楽しいゲームも必ず終わりが来る
    ゲームの終盤の指し方
第4部:基本を越えて
 15 自主訓練
    本書を越えた学習継続への助言
 16 殿堂
    チェス界のスーパースター:今昔の世界チャンピオン
 17 競争意識を持つ
    新たな相手探しとクラブや大会参加に必要な知識
 18 サイバー空間のチェス
    インターネット上のチェス探しとコンピューターチェス選びに必要な知識
 19 コンピュータの指し方
    機械の「思考過程」の説明
 20 コンピュータのやっつけ方
    人間とコンピュータで指し方が違うことを利用した秘訣
付録
 A 読者用見出し(?)
 B 他の記譜法
 C 練習問題解答
 D 用語集
   索引

「1 なぜチェスをするの?」からAre We Having Fun Yet?の 冒頭訳:
まだ楽しんでる?
 基礎が分かっていなかったときの気持ちを覚えています。だから基礎はゆっくりと、一歩ずつやっていきましょう。私はチェスを隅々まで理解しているので、 読者を混乱させることなくすべてを教えられます。最後まで読まなくても8才の子供に勝てるようになることを保障します!(さらに、読者の頭痛の種となって いるコンピュータソフトを負かす方法で特に章をもうけています)
 しかし、学ぶ喜びと同じくらい指す楽しみも感じてほしいと思っています。しょせんチェスは遊びです。楽しまなければ何のためのゲームでしょうか?
The Complete Idiot's Guide To Chess (Complete Idiot's Guide to)
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posted by 水野優 at 13:32| Comment(2) | チェス(洋書評 その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月26日

Edmonds&Eidinow『Bobby Fischer Goes To War』

 冬は寒い以外にも乾燥による静電気と肌のかゆみがいやだ。静電気はほとんど外出しないことで解決したが(靴下との摩擦で静電気がおきるほど豪華な敷物は ない)、かゆみは ローションや乳液でごまかしてきた。先日「メンタームEX」という尿素入りのクリームを買って使ったらよく効いた。お薦めする。


「ボビーと指すときは、勝ち負けは問題ではない。問題は生き残れるかどう かだ」−ボリス・スパスキー

 来年には訳が出ると聞いているDavid Edmonds, John Eidinowの"Bobby Fischer Goes to War"(342ページ、'05 年、ペレニアル)である。これは出版社と発売時期の違いでサブタイトルが様々だが、同じ本だと思う。フィッシャーの経歴を振り返る内容だからWarはソ連 との戦いを指している。最近の話題だとアメリカを指しているようにも思えるが(笑。

目次の訳:
ロシア文字のローマ字表記について
登場人物
用語集
1969年までのチェス世界チャンピオン
1 世紀のマッチ
2 ブルックリンの少年
3 夢の模倣者(?)
4 破壊の申し子
5 レニングラードから来たロシア人
6 命を持ったチェス
7 レイキャビクへのブルドーザー
8 楽園でのトラブル
9 大きな対決、小さな島
10 やり損なうボビー
11 今みじめなのは誰か?
12 怒りが支配する
13 血を見る楽屋裏
14 にらみ合い
15 愛と憎悪の関係
16 決まった一撃
17 中盤
18 チェスの感染力
19 苦難の結末へ
20 盤外手段と隠された手
21 対戦相手のセコンド
22 偉大なる者に安堵の時なし
付録
謝辞
文献選集
索引

表紙袖の冒頭訳:
 1972年夏、ソ連との冷戦状態のさなか、二人の男を中心としてアメリカ政府を揺るがす重大事件が巻き起こった。世界チェスチャンピオン、ソビエトのボ リス・スパスキーと、アメリカ人挑戦者ボビー・フィッシャーが、空前絶後の名高い対戦で顔を合わせたのだ。アイスランドのレイキャビクで行われた二人の対 決、 心理戦、最後通牒、政治的策略、手に汗握る接戦に、世界は2か月間に渡って振り回された。マルクス兄弟のドタバタ喜劇に匹敵するバカ騒ぎである。
 30年後、全米ベストセラー『ヴィトゲンシュタインのポーカー』の著者デイヴィッド・エドモンズとジョン・アイディナウは、孤独なアメリカ人スターとソ 連のチェスマシン−数十年クレムリンが保った世界選手権を他国へ献上したマシン−間の実質的な冷戦が終結した今、資料の再収集と物語の再吟味に取りかかっ た。未発表のソ連とアメリカ双方の記録を引用しながら、著者の二人は驚くべき伝説の全貌を再構成する。それは従来の想像よりはるかに辛辣で幾重ものヴェールに覆われていた。


 目次は象徴的なタイトルが多くて難しい。どこの出版社か知らないが、『白夜のチェス戦争』の再来を期待しているのだろうか。こんな本をまた出せるのだっ たら私が訳すのにと、いつもながら後の祭りだ。私より下手だったら許さんぞ!(笑。
Bobby Fischer Goes To War: How The Soviets Lost the Most Extraordinary Chess Match of all Time
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posted by 水野優 at 13:28| Comment(4) | チェス(洋書評 その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月21日

Yalom『Birth Of The Chess Queen』

 やはりどうやら先日の冷え込みが異常だったようで、電気毛布は余熱だけで寝ればよく、朝方寒いときに付ければ二度寝で風邪を引くことが防げる(汗。布団 の中 が暖かいから起きづらいかと思ったが、風呂上がりのようにあまり寒さを感じずに出られる。これが電気毛布最大の収穫だ(笑。


 今回は、ずっと気になっていたMarilyn Yalomの"Birth Of The Chess Queen"(276ページ、'05 年、ペレニアル)である。チェスではなぜキングよりクイーンの方が強い駒なのかと疑問を感じた人が多いだろう。ジェンダー問題に近いところにいる私はそれ 以上の興味を感じる。

出版社レビュー訳:
 スタンフォード大学で女性とジェンダー問題を研究し、『妻の歴史』等女性史に関する執筆も多いヤロムは、何世紀にも渡る女性の権力向上をチェスの駒ク イー ンの変遷に重ね合わせて見ていく。「クイーンは、母なる大地、アマゾン、聖母マリアと並んで、ジェンダー記号に加わった」。500年の間、インド、ペル シャ、アラビアで指されたチェスにはクイーンがなかった。クイーンは、西暦1000年頃の南ヨーロッパで姿を現す。「チェス盤上の象徴的なクイーンと多く の宮廷にいる実在の女王」との関係を引用しながら、ヤロムは、読者にヨーロッパ中に女王、女帝、女伯爵が広まった足跡をたどる。逸話、芸術、伝説、文学 を通して、チェスのクイーンがいかにして「西洋における女性権力の典型的象徴」になったかを示す。恋愛儀式としてのチェスも特筆する。「チェスのクイーン と恋愛礼賛は、相伴って成長し、共生関係を成し、互いにはぐくみ合った」。現在、世界のプレーヤーに占める女子の割合が5%という状況にも言及し、「最強 の男子プレーヤーを(いつか)倒せる」かどうかも考える。女性史の該博な知識と徹底的な調査の融合により、ヤロムは、古代からのゲームに新しい展望を見い だす楽しく啓蒙的な調査を成し遂げたのである。

目次の訳:
謝辞
序文
各時代のえり抜きの統治者
第1部 チェスのクイーン誕生の謎
 1 クイーンがなかったチェス
 2 女王登場!
 3 チェスのクイーンが現れる
第2部 スペイン、イタリア、ドイツ
 4 キリスト教下スペインにおけるチェスと女王性
 5 イタリアとドイツにおけるチェスの道徳性
第3部 フランスとイギリス
 6 チェスがフランスとイギリスに広まる
 7 チェスと聖母マリア崇拝
 8 チェスと恋愛礼賛
第4部
 9 北欧のクイーン、現実と盤上における
(カラーイラストページ)
 10 古代ロシアにおけるチェスと女性
第5部
 11 新たなチェスとカスティリャの女王
 12 「クイーンのチェス」の発生
 13 女性プレーヤーの衰退
エピローグ
注釈
索引

 本文訳は英語以外の単語が多いので省略する(汗。こんな本が翻訳出版できたらおもしろそうだ。チェスと他の一般的な分野が重なった本ならうまくすれば可 能 性はある。そういう本も探してまた出版社にアタックしよう。何かおもしろそうなのがあれば教えてください。
Birth Of The Chess Queen
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posted by 水野優 at 13:22| Comment(0) | チェス(洋書評 その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする