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2007年09月20日

Vukovic『チェスの攻撃技術』第1章 キャスリングしていないキングへの攻撃 eファイル上の攻撃 その3

 以下の局面(Ravinsky-Panov、モスクワ、1943)からの手順は、eファイル上での攻撃の好例である。(訳注:ここまでの手順 は、1. e4 c5 2. Nf3 e6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 d6 6. g3 Nc6 7. Bg2 Bd7 8. O-O a6 9. Be3 Rc8 10. Qe2 b5 11. a3 Ne5 12. Rad1 Nc4 13. Bc1 Nxa3 14. e5 dxe5 15. Nc6 Qc7 16. Nxe5 Nc4 17. Nxd7 Nxd7 18. Nd5 Qa7 19. Nf4 Nce5)

図9
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
2r1kb1r/q2n1ppp/p3p3/1p2n3/5N2/6P1/1PP1QPBP/2BR1RK1 w k - 0 20

 20 Rxd7! Nxd7 21 Nxe6 fxe6 22 Qxe6+ Be7
 22...Kd8だと、23 Bg5+ Kc7 24 Qc6+ Kb8 25 Bf4+ Rc7 26 Bxc7+ Qxc7 27 Qa8#.

 23 Re1 Qc5 24 b4! Nf8?
 24...Qxb4 25 Bg5 Qxe1+ 26 Qxe1 Nf6の方が、黒に十分なドローのチャンスがあっていい。本譜後はどの変化でも黒が負ける。

 25 Qg4!
 交換を避けつつc8をにらみ続ける。

 25...Qc3 26 Rxe7+!
 勝負を決する新たなサクリファイス。

 26... Kxe7 27 Bg5+ Kd6 28 Qd1+ Kc7 29 Bf4+ Kb6 30 Qd6+ Ka7 31 Qe7+ Rc7 32 Bxc7
 もちろん、もっと単純なのは、32 Be3+ Kb8 33 Qd8+ Rc8 34 Qb6#.

 32... Qa1+ 33 Bf1 Ng6 34 Qc5+ Kb7 35 Ba5 Rf8
 35...Rc8には、36 Qb6+ Ka8 37 Qxa6+ Kb8 38 Bc7から 39 Qxa1.

 36 Qb6+ 1-0. 36...Ka8なら、37 Qc6+ Kb8 38 Bc7+から数手でメイト。


 以下のシュタイニッツの名局では、一貫してeファイルから圧力をかけ続けた白が、ついにそこを突破して勝利をもぎ取る。

Steinitz-von Bardeleben
ジオッコ・ピアノ
ヘイスティングズ、1895

 1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bc4 Bc5 4 c3 Nf6 5 d4 exd4 6 cxd4 Bb4+ 7 Nc3 d5
 今日では、より良い 7...Ne4が指され る。

 8 exd5 Nxd5 9 0-0 Be6 10 Bg5 Be7? 11 Bxd5
 白が連続交換を仕掛けてeファイル上の圧力を維持し、黒のキャスリングを阻止する。

 11...Bxd5 12 Nxd5 Qxd5 13 Bxe7 Nxe7 14 Re1 f6
 黒は、うまくキャスリングできないことに気付いた。14...Qd7に は、白が 15 Qe2でe7への圧力を増す。14...f6は、黒が ...Kf7から Re8, Kg8によって「人工キャスリング」する意図を示しており、白のナイトの動きも制限する。しかし、これらは、10手目の疑問手のせいですでに劣勢になった黒陣の取り繕いに過ぎない。

 15 Qe2 Qd7 16 Rac1 c6?
 16...Kd8の方が良かった。16...c6は白の d5を阻止できない。それは、白がナイトのためにd4マスを空けるためだから。

 17 d5! cxd5 18 Nd4 Kf7 19 Ne6 Rhc8 20 Qg4 g6 21 Ng5+!
 見事な、19世紀チェスで最上のコンビネーションが始まった。黒のキングは、危険なeファイルへの帰還を余儀なくされる。

 21... Ke8

図10
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r1r1k3/pp1qn2p/5pp1/3p2N1/6Q1/8/PP3PPP/2R1R1K1 w - - 0 22

 22 Rxe7+! Kf8
 白のe7でのサクリファイスが、eファイルでの攻撃の総仕上げとなった。eファイルの弱体化のせいで、黒は他の弱点まで抱え込んだ。基本的な欠点がいったん生じるとこうなることは珍しくない。22...Kxe7としても、23 Re1+ Kd6 24 Qb4+ Kc7 (24...Rc5 25 Re6+) 25 Ne6+ Kb8 26 Qf4+で白勝ち。したがって、黒はサクリファイスに応じず、自身もc1でのメイトを狙い続けるいわゆる「宙ぶらりん」陣形で戦うことにした。

 23 Rf7+ Kg8
 23...Qxf7は、もちろん 24 Rxc8+と応じられる。

 24 Rg7+!
 黒は、このずうずうしいルックを取れない。24...Kxg7な ら 25 Qxd7+24...Qxg7には 25 Rxc8+とされる。

 24... Kh8 25 Rxh7+
 ここで、シュタイニッツの相手は大会会場を後にして二度と現れなかった。彼は、これらの攻撃手段によってシュタイニッツから「死なないピース」を奪うつもりだったが、注釈によると、白の意図も全く同じだったことが分かる。
 25...Kg8 26 Rg7+ Kh8 27 Qh4+ Kxg7 28 Qh7+ Kf8 29 Qh8+ Ke7 30 Qg7+ Ke8 31 Qg8+ Ke7 32 Qf7+ Kd8 33 Qf8+ Qe8 34 Nf7+ Kd7 35 Qd6#.


 最後のシュタイニッツのコンビネーションは、初めて並べた頃は白がルックばかり動かす手が奇妙に思えてよく理解できなかった。その原因は、黒のc1でのメイトの狙いがあるので、白が連続チェックで攻めないといけないからである。メイトまで途切れないチェックが気持ちいい。

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2007年09月12日

Vukovic『チェスの攻撃技術』第1章 キャスリングしていないキングへの攻撃 eファイル上の攻撃 その2

 eファイル上の攻撃では、eファイルを実際に開くことが最たる困難となることが多い。特に、図6のように他のすべてのことが成し遂げられている場合である。

図6
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r1bqr1k1/ppp2ppp/2n2n2/2bppP2/4P3/2PP1N2/PP2Q1PP/RNB1KB1R b KQ -

 図6(Tchigorin-Burn、オステンド(ベルギー)、1906)には、すでに成し遂げられた3つの要素(e1の白キング、e2の白クイーン、e8の黒ルック)があり、後はeファイルを開くことだけである。この目的は、f5での黒ビショップのサクリファイスによって促進される。

 1...Bxf5! 2 exf5 e4
 白がeファイルが開くのを阻止できない点が重要である。白のナイトが逃げれば 3...exd3とされる。しかし、黒の緩手 1...dxe4 2 dxe4 Bxf5 3 exf5 e4では、黒は ...exd3の機会を失い、白はナイトが逃げてeファイルの開放を阻止できる。

 2...e4後の手順はもはやおもしろみがない。白はまだ 3 Kd1 exf3 4 Qxf3と粘れるが、4...Ne5から ...Ng4や ...d4で、黒の優勢となる。


 eファイルがすでに開いていて三連形(triple link formation)も存在する場合は、焦点e2等、キングの前の重要なマスから相手ピースを引き離すための計画的な作戦が採られることが多い。図7は、この種の作戦の実例である。

図7
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
2kr1b1r/ppp2ppp/2n5/8/3PqBb1/2P2N2/PP1QB1PP/R3K2R b KQ -

 Hansen-Lundin(オスロ、1928)からの局面で、黒番。

 1...Rxd4! 2 Nxd4 Nxd4 3 cxd4
 3 0-0-0には Nxe2+、3 Rd1には Qxe2+...

 3...Bb4
 メイトを避けるために、白はクイーンを捨てざるをえない。例えば、4 Kf2 Bxd2 5 Bxg4 f5 6 Bxd2 fxg4...


 キングを守るピースへの攻撃方法の好例が、図8の局面からの手順である。

図8
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r1nqk2r/ppp1bp2/3p2p1/6Bp/3P4/5N2/PPP3PP/R2QR1K1 w kq -

 手番の白は、e7の黒ビショップへの圧力を増す正確な方法を見つけねばならない。1 Qe2 Kf8 2 Bxe7+ Nxe7 3 Ng5 Nf5では不十分で、黒にうまく防御される。1 Re2も 同様に功を奏さない。1 Rxe7+ Nxe7 2 Bf6 (2 Qe2には 2...f6から ...Rf8) では、黒が 2...Kd7 (3 Qe2 c6...) で依然互角を保てる。したがって、白の唯一の正着は、

 1 Bf6!
 これで、黒のキャスリングのみならず、...f6からの反撃も阻止できる。
 1...0-0には、2 Rxe7 Nxe7 3 Qe2! Re8 4 Qd2 Kh7 5 Ng5+ Kg8 6 Ne6! fxe6 7 Qh6 Nf5 8 Qxg6+ 白勝ち。

 1... Rf8 2 Rxe7+!
 この種のルック・サクリファイスは、eファイル上の攻撃を正しく遂行するために必要となる場合が多い。もう1つのルックのためにe1マスを明け渡すことが欠かせないからでもあるが、サクリファイスによって、まずはe7のピースを取り除く。

 2... Nxe7 3 Qe2 Qd7
 3...Kd7なら、4 Re1 Re8 5 Qb5+ Kc8 6 Qc4 d5 7 Qe2 Kd7 8 Ne5+ 白勝ち。

 4 Re1 Qe6 5 Qb5+ c6 6 Qxb7 白勝ち。

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2007年09月05日

Vukovic『チェスの攻撃技術』第1章 キャスリングしていないキングへの攻撃 eファイル上の攻撃 その1

第1章 キャスリングしていないキングへの攻撃

 まだキャスリングしていないキングへのメイト攻撃は、かつてのチェス棋士の楽しみの一つだったが、今日では、マスターとの同時対局でキャスリングの好機を逃したプレーヤーに降りかかる不運くらいでしかお目にかかれなくなった。

 キャスリング前のキングの初期位置には2つの大きな弱点がある。1つは、eファイルが開くと無防備になること、2つ目は、f2/f7マスがキングにしか守られていないので攻撃されやすいことである。したがって、キャスリングしていないキングへの攻撃の大多数は、これらの弱点の1つに標的を定める。

eファイル上の攻撃

 eファイル上の攻撃のまず根本的な条件は、相手のキングをeファイルに釘付けにできるか、そこから逃げ出すのを不可能か困難にする方策があるかどうかである。キングの隣のマスを味方のピースが占めているか、そのマスを相手のピースに支配されていれば、キングは絶対に逃げ出すことができない。しかし、キングが単にキャスリングを阻止されているだけなら、つまり動き方をやや制限されているだけなら、キャスリングの権利を放棄して逃げ出すことができる。キャスリングは間接的に阻止することもできる。例えば、(e2/e7等にある)ピースを攻撃されると、キングがそれを守るためにキャスリングができなくな る。

 eファイル上の攻撃の第二条件は、攻撃者自身の状況である。まずは、開いているラインか、開くための攻撃力がある程度必要で、ファイルを支配できるピース(1つのルックかクイーン)がeファイルにいるか、すぐにそこへ行けねばならない。この他にも、ルックをファイル上で2つ重ねたり、キングを守っているeファイル上の相手ピースの1つを攻撃する等、eファイル上での圧力強化がたいてい必要となる。

 これらの必要条件によると、eファイル上の攻撃は関連し合う戦型を取る傾向があり、その攻撃は中央の戦力、つまりキングを防御するピースに対して遂行される。このピースがキングの直前のマス(e2/e7)にいるなら、攻撃側は、このマスを焦点にできれば、このピースをクイーン(かルック)で取ってメイトにできる。

 eファイル上の攻撃は、ゲームの初期段階で生じることがひじょうに多い。以下の短局(miniature)は、序盤のミスに対するこの種の攻撃がいかに迅速に進展するかを示す実例である。

N. N.(無名)-H. Müller
イングリッシュ・オープニング
郵便戦、1928/9

 1 c4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Nc3 Nf6 4 d4 exd4 5 Nxd4 Bb4 6 Nxc6 bxc6 7 g3? Qe7
 好手。白のプラン (Bg2から 0-0) にeファイル上の攻撃で対抗している。白が 8 e3とすれば以下の攻撃を許すことはなかったが、それでも陣形は弱まっただろう。

 8 Bg2 Ba6 9 Qd3 d5 10 b3 d4!

図5
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r3k2r/p1p1qppp/b1p2n2/8/1bPp4/1PNQ2P1/P3PPBP/R1B1K2R w KQkq - 0 11

 興味深い手。黒はしばらくeファイル上の攻撃をやめて、弱体化したダイアゴナルa5〜e1へ圧力をかける。白が Bxc6+から Bxa8でルックを取れば、黒は ...Bxc3+から ...Bxa1でナイトとルックを取ってピース得になる。

 11 Qxd4 Rd8
 クイーンにナイトの防御をあきらめさせる。

 12 Bxc6+ Kf8 13 Bd5 Rxd5!
 白投了。14 cxd5は 14...Qxe2#でメイトされるからである。最終的な勝利の決め手はeファイルとなった。


 内容で特に難しいところはないだろう。本章から英語の内容も具体的でずいぶん易しくなったが、気になる細かい点はある。the attack along the K fileを最初は「eファイルに沿った攻撃」としたが、シンプルな「eファイル上の攻撃」(the attack on the K file)に統一した。
 沿うはalongの定訳になっているが、この場合はファイルの真上なので「川沿い」のようなあいまいなイメージを避けるためでもある。フレーズの結合力は「に沿った」の方が勝っていると思うが。

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2007年08月29日

Vukovic『チェスの攻撃技術』序論 メイト攻撃の技術

メイト攻撃の技術

 さらに厳密な区分をするために、メイト攻撃の基本概念から生じる一連の疑問を洗い出さねばならない。それは同時に、今日のチェス技術の最も難解な部分を扱うことでもある。

 本質的なことは、メイト攻撃とゲーム内で生じる他の作戦との関連である。

 メイト攻撃は、実際の盤上局面によってある程度決まってしまうのか、攻撃者の能力に大いに依存しているものなのか?

 メイト攻撃に付きもののリスクはどこにあるか?

 今日の棋士がメイト攻撃を未だ懐疑的に思う根拠は何か?

 これらの疑問は個別に提起したが、互いに関連し合っていることが容易に見て取れる。しかし、個々の疑問に個別の解答が得られないとしても、個別の答えを得ようとすべきである。

 メイトは最終目的、つまり競技に勝利することであり、メイト攻撃は、他の寄与的(contributory)に過ぎない作戦とは対照的に究極的(ultimate)である。したがって、メイト攻撃には他の作戦より多くの条件が必要とされる。メイト攻撃には多くの必要条件が存在し、これらが共同して攻撃者側に要求される相当な優位を形作る。優位が卓越している場合は、攻撃者に多大な知識と能力は要求されない。しかし、優位が正確な攻撃の判断を必要とする微妙な場合は、最大限の能力(maximum skill)が攻撃の遂行に際して要求される。ロマン派の棋士たち(The Romantics)にはあまり知識はなかったが、自信がみなぎっていた。最初の小さな知識の増加によって、彼らの棋風は方向を変えることになる。今日なお受け入れられているその新たな法則は、一連の予備作戦を実行することである。わずかな優位さえあれば、いずれメイト攻撃に十分な優位が得られるのである。しかし、この結果、攻撃技術を全開することに失敗し続け、マスターたちは攻撃に付きもののリスクに目を奪われ始めた。リスクがありえない場合でさえも…。攻撃のリスクは、知識が不十分なときに生じる。未だに、最小限の必要条件、つまりメイトにどういう類の優位(kind of advantage)が必要なのかは明らかになっていない。例えば、ゲーム内で二度と再現しないある局面が疑問になりうる。もう一つ未解決なのは、攻撃の準備に際して必要な義務を判断する(weighing up the obligations)棋士の能力に関する疑問である。準備の手順はとりわけ重要である。唯一単純なのは、伴う義務がより少ない指し手をもっと義務に縛られた手より先に指すべきという原則である。しかし、この原則を実践に生かすには多大な能力が要求される。これまでのところ、この種の能力を十分に所有していたのはカパブランカ(Capablanca)とアリョーヒン(Alekhine)だけである。


 mating attackは「メイトにする攻撃」としてきたが、頻出するので縮めた。他にも斜体強調(訳文では太字)ゆえに用語的に訳出せねばならない制約にも弱った。これがなければ文脈に溶かし込めるのに、硬い文体にせざるをえない。と、言い訳しておこう(汗。

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2007年08月22日

Vukovic『チェスの攻撃技術』序論 メイトのマスと焦点

メイトのマスと焦点

 メイトのマス(mating square)は、メイトされるときのキングがいるマスであり、メイトの焦点(mating focal-point)とは、至近距離からキングをメイトにし向けている(キング、ナイト、ポーン以外の)ピースがいるマスである。したがって、図3では、1...Ne2後の焦点はe6で、その間近からクイーンがメイトできる。同様に、1...gxf5 2 Bg7 Ke4後は、クイーンがd4からメイトできるのでd4マスが焦点となる。しかし、黒番で 1...Bc3に対する 2 Bg7#等は、ビショップの攻撃が距離を置いていると見なし、「焦点」という用語は使わない。

図3(再掲)
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/1K1Q4/6pB/4kB2/3b1n1P/5p2/8/8 b - -

 メイトにする攻撃を成功させるためには、可能なメイト型を探し、それに見合うメイトの包囲網を準備し、焦点へ戦力を集中させることが必ず必要である。これと関連して多くのケースでは、焦点のクリア(clear the focal-point)が重要となる。これは、焦点になりそうなマスへの相手ピースからの利きをさえぎることである。図4でその一例を示す。

図4
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/p5K1/1p2p3/4kp2/1Q6/2PpbP2/1R2n1B1/q7 w - -

 手番の白は、d4に黒のナイトとビショップが利いてなければ、クイーンがそこでメイトできるのでこのマスが焦点だと正しく判断する。そこで、白は以下のように焦点d4をクリアする。

 1 Rxe2 (ナイトを消す) 1...dxe2 (1...Kd5 2 f4#, 1...Qc1 2 Qd4#, 1...f4 2 Qd4+ Kf5 3 Qf6#) 2 f4+ (黒ビショップのd4への利きをそらせる) 2...Bxf4 3 Qd4#.
 多くの読者は、このようなメイトの攻撃形は見えすいた陳腐なもので扱う必要すらないと言うかもしれない。しかし、私はこの種の単純な知識の強化が有益と考える。現に、この点で多くの誤りが生じているからである。メイト型に関する誤りの例をいくつか挙げる。

 1.攻撃側が、相手のキングをメイトの包囲網から出ることもそれに入ることも阻止できないことに気付かず、それでもメイトにこだわる。こういう攻撃は当然ながら無益で、パペチュアル・チェックにはなってもメイトにはできない。

 2.攻撃側が典型的なメイト型にこだわるあまり、「非典型的」メイトの可能性がある手順を見逃す。

 3.焦点に基づく可能なメイト型はすべて見えているが、キングが動くとすべてが無効になることに気付いていないので、その場合のいかなる新たなメイト型に対しても準備がなされていない。

 4.ある焦点に基づいた攻撃を決心するが、焦点に戦力を利かせることも焦点から相手ピースの利きをクリアすることさえ実現できない。焦点の選択ミスは、後に解説するマスターの対局ですら見られる。

 したがって、メイトの一般的な形や構成を知ることは有益である。とりわけ未熟なプレーヤーには、特定のゲームを吟味して、メイト型に関してミスがあればそれはどこかを指摘することを推奨する。


 focal-pointは、光が集中するように、2個以上の駒の利きが重なる部分である。訳語はそのまま「焦点」とするしかないだろう。clearは迷ったが、下手な訳語よりそのまま「クリア」とする方が、電卓のCボタンを押すようなニュアンスで分かりやすいと判断した。
posted by 水野優 at 14:43| Comment(2) | Vukovic『チェスの攻撃技術』戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月15日

Vukovic『チェスの攻撃技術』序論 メイトの基本形

メイトの基本形

 メイトにするためには、キングが盤の中寄りにいると9マス、縁にいると6マス、隅にいると4マスに駒を利かせねばならない。これらのマスの中には、キングが行けない、つまり味方の駒に占められているものもあるが、残りのマスは、攻撃側のピースやポーンで制圧しなければならない。キングを取り囲むすべてのマスにキングが行けなくなり−味方の駒に占められるか、「チェック」の状態になっている−キングのいるマスにもチェックがかかっていて、その防御手段がないと、キングがチェックメイトされたことになる。これは有名なことだし、メイトの基本形構造(anatomy)から始めるのは退屈かもしれないが、実際に、基本原則はこの論拠においてのみ定式化できるのである。

図3
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/1K1Q4/6pB/4kB2/3b1n1P/5p2/8/8 b - -

 図3は黒番だが、4種類のメイトを避けることができない。白は 2 Bg7#(第1メイト型)を狙っている。1...Kf6にも、2 Bg7(第2メイト型)がある。黒のナイトが動くと 2 Qe6#(第3メイト型)。1...gxf5には、2 Bg7+ Ke4 3 Qxd4#(第4メイト型)となる。

 最終的な局面、つまりメイトの局面をメイト型(mating pattern)といい、この用語は、特に覚えておくべき型の場合に有益である。メイト型には、典型的なもの(つまり、よく生じるもの)から型にはまらないものまである。関連するすべてのマスに2つかそれ以上の攻撃駒が利いているメイト(またはメイト型)を純粋(pure)と呼ぶ。したがって、1...Ne2 2 Qe6は純粋メイトだが、1...Kf6 2 Bg7はそうではない。f5のビショップがなくてもメイトが成立するからである。純粋メイトはプロブレムにおいて有意義だが、実戦では重要性がない。

 今見たメイト型では、黒キングを囲むマスのいくつかが味方の駒に占められ、残りのマスが敵の駒に制圧されていた。これらの要素が組み合わさったものが、メイトの包囲網(mating net)と呼ばれる。


 「形」と「型」の使い分けにはよく悩まされる。「基本形」は一般的な形を総称しているから「形」、「メイト型」は個々の形を指しているから「型」としたが、英語ではどちらもpatternだ。こういう場合の漢字のバラエティはうっとうしい。
 純粋メイトの説明がやや分かりにくいが、キングに隣接するマスを占める攻撃駒が他の隣接マスに利いていない場合に、その駒は不要(他の攻撃駒に守られていないとキングに取られるのでむしろお荷物)なので純粋メイトにならないという意味である。
posted by 水野優 at 13:30| Comment(2) | Vukovic『チェスの攻撃技術』戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月01日

Vukovic『チェスの攻撃技術』序論

 戦闘(action)は、チェスを競技たらしめている根拠であり、狙い(threat)−広い意味での攻撃−を擁する戦闘は、ゲームの最も際立った特徴を成している。

 棋士の想像力や注意力、集中力や意志力、巧妙さや狡猾さ等、盤上でせめぎ合う様々な主観的要素は、理論的考察に抵抗し、遵法者(observer)によっても計測できない。あらゆるゲームでそれらを即座に知覚することは、それがいかに重要とはいえ、主観的要素と理論的考察の葛藤や関連を知覚することになる。これら戦闘の最終目的は、原則的に、相手のキングをメイトすることなので、この目的を伴う戦闘は、直接的にせよ間接的にせよ、攻撃(狭義のattack)またはメイトを狙う攻撃(mating attack)と呼ばれる。これが本書の主題である。

 チェスにおける最も重要な戦闘、古代にはゲームの中心要素として、攻撃は、ゲームのあらゆる展開局面で現れ、様々な形で認知されてきた。さらに、チェスのルールは常に攻撃機会を増大促進する方向へ変革されてきたと言える。

 現代ヨーロッパのチェスを生み出した1485年頃の大変革は、新たな攻撃機会の地平を開き、チェス技術の豊かな進歩期間を先導した点で特に重要である。名人の実戦において攻撃が防御を優越したチェス史上の3世紀の間は、熟達は攻撃技術の習得を意味した。フィリドールの陣形的な(positional)考え方によって初めて、防御プランが成熟し始め、1世紀後に、天才立法者(legislator)シュタイニッツによって見出されることとなる。

 モーフィーからシュタイニッツ、ラスカーへと至るチェスの古典期には、攻撃の重要性が徐々に低下した。陣形的理解を深めることが、防御技術を完璧にできる根拠にもなったからである。しかし、続く新時代には、カパブランカやとりわけアリョーヒンによって攻撃技術も同様に磨かれた。中でも、正確な作戦に基づくキャスリングした陣形に対する攻撃技術である。アリョーヒンの攻撃的かつダイナミックな棋風は頂点を極めた。この時期が引き続き今日まで至っているが、再び直接的な攻撃のリスクを徐々に避けて、新たな方法が模索される傾向にある。この主な理由は、いかなる弱点もない攻撃的な棋風というものが見あたらない からだが、単に、今日の大会状況では定跡を研究する方が得策かつ有利だからでもある。今日の定跡はまだひじょうに未熟で、センターのマスに関するニムツォヴィッチの考え方をきめ細かく発展させたものだということは、肝に銘じておかねばならない。未だに埋めるべき隙間がたくさんあり、新手を生み出す可能性に満ちている。したがって、強いマスターたちは、定跡を勤勉に自己研鑽して現代的な「安全第一」の棋風へと向かう傾向がある。この新定跡の泉が枯れ始めるときに、攻撃の問題が再浮上するだろう。それは、アリョーヒンが組み立てた攻撃の原則が完全に理解されたときや、天才のひらめきを呈したアリョーヒンの攻撃 技術がすべてもっと身近なものになったときかもしれない。これらは、本書の最後で議論すべき問題だろう。ここでは、チェス棋士にはひじょうに様々なタイプ、初心者ではないが、かといってマスターでもなく、ポイント稼ぎ屋(point-hunters)でもなく、ゲームから美的満足感を得ることを第一目的とする者までいることを指摘するにとどめておこう。そういう棋士にとっては、攻撃的ゲームは陣形技術的ゲームより魅力的だし、リスクを気にせず攻撃を続けられる。彼らのゲームは、定跡書で注釈を付けられたりしないからである。ならば、そういう棋士が攻撃の一般原則を熟知しないでいるべき理由はないだろう?  自らが最も心得た攻撃的棋風を極めない理由はないだろう?


 結局ブコビッチ(ほんとはヴコヴィッチなんだろうけど、この頃妥協気味)の『チェスの攻撃技術』を始めることにした。私の持ってるパーガモン版(英米式)は422ページだけど、字は大きいから3年で何とか終わらないかな…。
 各章の典型例を駆け抜ける序論は、序文と違って飛ばせない。第2段落は大したことは言ってないけど、メタフォリックなobserverをそのまま生かしたから分かりにくくなってしまった(汗。理論を遵守する棋士という感じだろうか。

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posted by 水野優 at 16:12| Comment(4) | Vukovic『チェスの攻撃技術』戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする