ホームページは「チェストランス」です。古い記事では図の駒が表示されません。

2007年09月15日

Dickins『フェアリーチェス入門』2 フェアリー駒 その4

 これらのヘルプメイトやシリーズ・ヘルプメイトを用いた実例は、普通のメイト問題以外のフェアリー駒を使ったプロブレムになじみの薄い読者が慣れていただくためでもある。

 再びフェアリー駒にもどって、他のまだ扱ってないリーパー、ライダー、ホッパーを検討しよう。全く見たこともない類の駒もある。

他の名前のあるリーパー(図15参照)

 キリン(GIRAFFE)(1-4)、シマウマ(ZEBRA)(2-3)と、平方根に基づく数学的な名前の付いた現代的な駒が2つある。5リーパー(FIVELEAPER)(0-5, 3-4)とルート50リーパー(ROOT-50-LEAPER)(1-7, 5-5)である。後者の2つには2種類の動き方があり、それぞれは移動距離が異なる。a1マスからだと、5リーパーが移動できるマスは、a6, f1(5歩跳び)とd5, e4(4歩跳び)の4つで、その距離はすべてルート25である。ルート50リーパーのa1から移動できるマスは、b8, h2(7歩跳び)とf6(5歩跳び)の3つで、その距離はすべてルート50である(これらの長さに関しては付録B(i)参照)。

図15 名前のあるリーパー





NZ
N

          1      2      3      4      5      6      7歩

W=Wazir(大臣)
F=Fers(女王)
D=Dabbaba(戦車)
N=ナイト
A=Alfil(僧正)
C=Camel(ラクダ)
Z=Zebra(シマウマ)
G=Giraffe(キリン)
5=5リーパー
√50=ルート50リーパー

図16 A. H. Kniest
Feenschach 7954 1966年11月








3手でヘルプステイルメイト
√50=ルート50リーパー
(黒先で白をヘルプステイルメイトする)


他のライダー

 キリンライダー(GIRAFFERIDER)とシマウマライダー(ZEBRARIDER)はキリンとシマウマの跳び方を拡張したものだが、キリンライダーは盤を8 x 8より大きくしないと意味がない。ランクライダー(RANKRIDER)とファイルライダー(FILERIDER)は、ルックの動きをそれぞれランクかファイルだけに制限したものである。付録Aの図4は、2つのファイルライダーを使った500年以上前のプロブレムである。

 デミ(半)ビショップ(DEMIBISHOP)は、ランクライダーやファイルライダーのビショップ版で、1つのダイアゴナル上の動きに制限される。その方向は、デミビショップNE-SW(北東〜南西)d3からb1やh7へ動くものと、デミビショップNW-SE(北西〜南東)d3からf1やa6へ動くものに区別して定義される。アーチビショップ(ARCHBISHOP)は、盤の縁でビリアードのサイドクッションのようにはね返り、グランドビショップ(GRANDBISHOP)は、垂直円筒型盤(別項参照)と同様の動きをし、サイクリック(循環)ビショップ(CYCLIC BISHOP)(付録Eの循環駒を参照)も垂直円筒型盤上のビショップと同じ動き方をする。リフレクティング(反射)ビショップ(REFLECTING BISHOP)は盤のすべての縁で反射するが、無限に続けてはならず、どこかで止まらねばならない(図17参照)。

 最近考案されたライダーにはヘリネズミ(EDGEHOG:ハリネズミhedgehogに由来)(Edgehog)がある。ジョン・ドライバー(John Driver)によってBritish Chess Magazine 1966年2月号 p.63に初めて登場した。この駒はクイーンのように動いてチェックもするが、出発マスか到着マスのどちらかが縁のマスでなければならない。ヘリネズミという名前も、ドイツ語のDas Randschwein(縁豚)に合うように作られた。図18は初めて出版されたヘリネズミを使ったプロブレムである。

図17 John M. Rice
BCM 9688 1966年4月








n7/B2K4/6p1/2p2r2/8/3p4/8/4kb2 b - -
5手でシリーズ・ヘルプメイト
リフレクティング・ビショップ

図18 John Driver
BCM 1966年2月 p.63








2手でメイト
Edgehog=ヘリネズミ c7, d2, f5, g6


 駒の名称訳が徐々に日本語になってきたが、Edgehogをヘリネズミとする誘惑には勝てない(笑。ハシネズミも考えたが、ヘリネズミの方がずっといい。これ以上の訳を思いついた方はぜひ知らせてほしい。
 本書で引用されている類の本がウェブ上にかなりあることを知らせていただいた。私はプロブレム畑の者でも何でもないので、当面は本書をしっかり理解することで今は精一杯である(汗。ちなみに、フェアリーチェスはドイツ語でMärchenschach、メルヘンチェスが定訳になっていた方がどれだけよかっただろう。まだ間に合う?!

2007年09月07日

Dickins『フェアリーチェス入門』2 フェアリー駒 その3

ヘルプメイト

 リーパー、ライダー、ホッパーたちをその基本的な動きを理解するために吟味した。僧正ライダーホッパー(ALFIL-RIDERHOPPER)や戦車ラ イダーホッパー(DABBABA-RIDERHOPPER)のように、実際に使用されるにしても極めてまれな種類の駒もあったが、ありうるすべての種類の 駒を網羅するためにここに含めた。

 さらなるフェアリー駒を吟味する前に、通常の「白が先手で黒をn手でメイトする」規定とは異なる2つのプロブレムに注目しよう。それは、ヘルプメイト(Helpmate)とシリーズ・ヘルプメイト(Series Helpmate)といい、双方が派生的または副次的に関連したプロブレムである。

 ヘルプメイト
は、1854年にマックス・ランゲによって考案された。

 ヘルプメイトでは、黒が先手で白と協力し合い、黒が白にメイトされる1つの手順を見つける。黒先手の慣習は、1860年にサム・ロイド(Sam Loyd)によって始まったが、1930年代まで続いたかどうかは定かではない。厳密には、手順は1つだけであるべきだが、今日では変化筋のあるものも導入されている。2つ以上の解があるなら、変化筋はテーマ的に関連しているのが望ましい。メイトにする手がポーンのクイーンとルックまたはクイーンとビショップへの昇格のように2通りあるのは、ピラン法典によれば、派生形式と同様、厳密な形式においても許容範囲とされている。ヘルプメイトにはとりわけ「理想メイト(the Ideal Mate)」、つまり1つの「模範メイト(a Model Mate)」が適応する。そこでは、盤上の(白のキングとポーンも含んだ)すべての駒がメイト型に用いられる。白駒が周りを固め、黒駒は味方キングの逃げるマスをふさぐ。図11と12は単純な実例で、11は「理想メイト」で終わり、12はやや見慣れない「模範メイト」となる。

図11 理想メイト
447-1966 E. Albert








8/N7/8/3k1K2/1br5/1PP5/8/8 b - -
2手でヘルプメイト (解2つ)

図12 Evening News 1956年10月 A. S. M. Dickins








8/3Pkn2/8/7b/3P4/8/4P3/3K4 b - -
3手でヘルプメイト

 ヘルプメイトは、ピラン法典においてはヘテロドックス・プロブレムの「基本」種と見なされており、この派生種は、ヘルプ・ステイルメイト(HELP-STALEMATE)、ヘルプ・ダブルステイルメイト(HELP-DOUBLESTALEMATE)、ヘルプ強制メイト(HELP-COMPELMATE)(白先で、黒がずっと白に協力し、最終手では、黒にその気がなくても白が自分をメイトするように黒に強制する)等多岐に渡る。中でも、シリーズ・ヘルプメイト(SERIES HELPMATE)では、黒がn手連続で指し(白は指さない)、次に白が黒をメイトできる局面にする。これは、シリーズ・ムーバー(SERIES MOVER) という種のプロブレムに属し、起源は少なくとも中世にまでさかのぼる(付録AのNo.3参照)。T. R. ドーソンが現代に復活させた。このプロブレムで特徴的なのは、ルック等の白ピースの周りを黒キングが味方のピースを楯にしながら周回することである。これは短手数の問題ではまだ成し遂げられていない。図13と14は、両方とも「エクセルシオール(excelsior)」(初期位置 からのポーンの昇格)を用いた好例である。シリーズというアイデアは、シリーズ・メイト(SERIES MATE)、シリーズ・ステイルメイト(SERIES-STALEMATE)、シリーズ・ヘルプ・ステイルメイト(SERIES-HELP-STALEMATE)等多くの関連プロブレムで用いられている。(シリーズ・メイトは図25参照)

図13 Th. Steudelに献呈
H. M. Lommer 1967 オリジナル








7K/3k3p/8/B1P1R3/3P4/2N5/8/8 b - -
22手でシリーズ・ヘルプメイト

図14 Chr. Jonssonに献呈
H. M. Lommer 「北極星(Stella Polaris)」 1967年6月








8/5pK1/8/3k4/8/8/6p1/2R5 b - -
16手でシリーズ・ヘルプメイト


 1週休んだが用語や構成について結局何も進展しなかった。訳しながら模索するしかあるまい。今回のヘルプメイト等のプロブレム形式にはフェアリー駒ほどの問題はないが、compelはさすがに日本語として通りが悪いので「強制」と訳した。
 the Ideal Mateとa Model Mateは、1つだけの(the)理想概念に対して個々の(a)模範実例という意味だろう。冠詞用法の勉強になる(笑。「模範」はやや訳としては強いが「雛形」としても大差ない。

 ヘルプメイトとその派生物は、初めて『チェスの本』で知ったときに驚いたものだ。相手の勝利のために最悪の指し手を続ける究極のマゾヒズム、それに付き合わされる配下の心情はいかほどのものだろう。この考案者とその経緯こそが精神分析の対象となるべきか(笑。
 原文では括弧内略号で引用文献が多数記されているが、ここで略号だけ記しても無意味だし、毎度完全に記すのもたいへんなので、今後HPでのみ対応する。次回分で発表予定だった問題の解答は当該記事のコメント(ハンドル:解答)で記すことにした。

2007年08月24日

Dickins『フェアリーチェス入門』2 フェアリー駒 その2

リーパー(跳び駒)、ライダー(走行駒)、ホッパー(跳び越え駒)の動き方

 a1マスからの様々なピースの動き方を考察して、これらすべての動き方の仕組みを詳細に検証しよう。

図5 1歩リーパー(a1からの動き方)
 2 
 1 
   
 
1 2

 図5は、2つのリーパー、WAZIR(大臣)(0-1)とFERS(女王)(1-1)(どちらもイスラム期の駒)のa1マスからの動きを 示している。大臣は縦横、女王は斜め四方に1マス動く。この2つの基本的な動き方が、他のすべての駒の動きの基となっている。オーソドックスな駒のキング は、これらの動きを兼ねている。大臣と女王の合体が王権となっているのである。

図6 1歩ライダー
 3 
 2 
 1 
   
 
1 2 3

 図6は、一歩目と同じ方向に「走行(riding)」し続けると認められるようになった駒のa1マスからの動きを示している。オーソドックスなクイーン、ルック、ビショップである。

 ルックは大臣ライダー(Wazir-rider)、ビショップは女王ライダー(Fers-rider)、クイーンは(King-rider)または(大 臣+女王)ライダー((Wazir + Fers)-rider)と言える。

図7 ナイト 2歩リーパー(a1からの動き方)
 2 
 1 
   
 
1 2

 図7は、最初の2歩リーパーであるナイトの動きを示している。他のリーパーも、ナイトと全く同じ方法で直接行き先の各マスへ移動するのであり、それ以外のマスは関係ない。

図8 2,3歩リーパー(a1からの動き方)
 3 
 2  D A
 1 
    D
 
1 2 3
A=Alfil, C=Camel, D=Dabbaba (図15も参照)

 図8は、他の2つの2歩リーパー、DABBABA(戦車)(0-2)とALFIL(僧正)(2-2)と3歩リーパーCAMEL(ラクダ)(1-3)(す べてイスラム期の駒)の動きを示している。4,5歩以上の名前のあるリーパーも存在するが、それは後に検討する。Dictionnaire des Echecsは、誤って現代のAlfilは空のマスしか跳び越えられないとしている。

図9 2,3歩ライダー(a1からの動き方)

AR

AR

ARCR
CR
DRDRDR
=ナイトライダー
AR=僧正ライダー
CR=ラクダライダー
DR=戦車ライダー

ライダー(図9参照)
 どのリーパーも、一歩目の方向「走行線(riding-line)」に沿って跳び続ければ「ライダー」になる。戦車ライダー(Dabbaba-rider)のa1マスからの水平方向の行き先は、c1かe1かg1となり、b1, d1, f1にどんな駒があろうと関係ない。これらのマスはこの戦車ライダーには影響せず、その動きを妨げることはない。ナイトライダー(図3,9参照)はすでに説明した。ラクダライダー(CAMEL-RIDER)の動きはナイトライダーと類似しているが、3歩跳びの走行線上を動く。8 x 8マス盤上では、ナイトライダーは一手で3回しか跳べず、ラクダライダーは一手で2回しか跳べない。僧正ライダー(ALFIL-RIDER)は、ダイアゴナル上を1マスおきに跳び続けられ、跳び越える各マスに駒があるかどうかには影響されない。

走行線
 走行線は、駒が定められた動き方で移動する際に立ち寄るマスの中央を結んだ目に見えない線である。水平、垂直、ダイアゴナルのどれとも違う(ナイト、ラクダ等の)走行線は、斜角線(ANGULAR LINE)と呼ばれる。走行線が見えるように紙に(または盤上に)書く場合は、駒が立ち寄らないマスも横切る。斜角線ならそれらのマスの中央を通らないが、水平、垂直、ダイ アゴナルに沿う走行線ならそれらのマスの中央も通る。肝に銘じておくべきは、走行する駒が立ち寄らないマスは、そこをどんな駒が占めていようと、走行する駒やその動きに影響を与えないということである。

図10 1,2,3歩ホッパー(a1からの動き方)








NH=c5を越えるナイトライダーホッパー
AH=e5を越える僧正ライダーホッパー
CH=d2を越えるラクダライダーホッパー
DH=e1を越える戦車ライダーホッパー
RH=a4を越えるルックホッパー
BH=b2を越えるビショッパー

ホッパー(図10参照)
 ホッパーは、ライダーがその走行線上で行き先のマスより1つ(ときには2つ以上)手前のマスに敵味方いずれかの駒がいなければならず、それを跳び越せる。T. R. ドーソンによるこのモダンな考案は、中国象棋の駒に変更を加えたものである。走行線の長さは最低でも2マスになる。行き先のマスと、その走行線上に駒のいるマスが1つ必要だからで、駒のいるマスは通常行き先のマスの一つ手前である。図10の戦車ライダーホッパー(DABBABA-RIDERHOPPER)は、c1と白のキングがいるe1を跳び越えてg1へ行き着く。黒のビショップがいるd1は、走行線上にないマスなので全く無視される。

 他の駒を跳び越える動き方は、オーソドックスなチェスには見あたらないが、1955年のFIDEのチェス規則によると、キャスリングをするときは、まずキングを同じランク上の最も近い同色のマス上に移動し、それからルックがキングを「跳び越え」てキングの隣のマスへ移動する。正にルックホッパーのようである。

 ナイトライダーホッパー(NIGHTRIDER-HOPPER)の2歩斜角跳び越えとラクダライダーホッパー(CAMEL-RIDERHOPPER)の3歩斜角跳び越えも、図10に示されている。さらに、戦車ライダーホッパーと僧正ライダーホッパー(ALFIL-RIDERHOPPER)のそれぞれ(縦)横と斜めに2歩単位の跳び越えと、ルックホッパー(ROOKHOPPER)の縦(横)方向に1歩単位の跳び越え、ビショッパー(BISHOPPER)のダイアゴナル方向に1歩単位の跳び越えも、すべてa1からの位置である。図10で示されているのは、各駒のa1からの動きのすべてではない。白のルックホッパーはd1を跳び越えてe1へは行けない。e1マスに駒がいるからである。e1を跳び越えてf1へ行くこともできない。e1へ行く途中のd1がビショップに占領されているからである。a1のルックホッパーが黒の駒だと、白のキングにチェックをかけていることになる。d1のビショップが白でも黒でも、これらの指し手には全く影響しない。


 駒名称の英字(原語)、カナ読み、漢字の3種併存という問題をまだ引きずっている。イスラム期の駒は、僧正や女王として現代のビショップやクイーンと動きが違うことを示した。アルフィル等のカナにすると意味が分かりにくくなる問題がある。
 リーパーは前回「跳び駒」にしたが、ライダー、ホッパーとセットの訳語が作れず、漢字+カナの名称になった。ラクダは駱駝にしないとカナに埋もれるが、動物を全部漢字にするのも硬い。キャメルライダーの方が格好いいし、戦車に乗るのはライダーじゃないだろう(?)と、ツッコミどころ満載である。
 資料の寄せ集めがまとめ切れていない原書の散文的な構成に振り回されるのはバカバカしいし、もう少し整理して仕切り直すまで連載を中断するかもしれない (汗。

2007年08月17日

Dickins『フェアリーチェス入門』2 フェアリー駒 その1

2 フェアリー駒

 まず、グラスホッパー(G)(wgw)は、クイーンと動く方向と駒の取り方は同じだが、最初に出会う敵味方いずれの駒も跳び越えて、その次のマスで止まる。この最もよく知られたフェアリー駒は、1912年の終わりにT. R. ドーソンによって考案され、Gを初めて使ったプロブレムは、1913年の7月3日にCheltenham Examinerにて発表された。最初のG競技会(Tourney)は、1925年のChess Amateur誌上で行われた。この駒は中国象棋(シャンチー) の「砲(炮)」に由来する(The Fairy Chess Review 4/5/p.82/Paper 55)。グラスホッパーを使ったプロブレムは数千個も発表されている。

図1 グラスホッパー



G




G=グラスホッパー
白Gの可能な手は、Gxf5, Ga1+, Ga8の3つである。
2つ目の手に対する黒の可能な手は、チェックを避ける ...d3や、...Kf6, Kf4, Ke4, Kd5, Kd6, Ke6.

図2 Chess Amateur 408 1923年10月 C. Stockman








2手メイト G=グラスホッパー

 ローカスト(LOCUST: イナゴ、バッタ)は、グラスホッパーに由来するが、跳び越えるのはの駒に限られる。跳び越えた次のマスで止まるのも同じだが、取るのはその跳び越えた敵の駒である。したがって、行き先のマスは空いていなければならない。図 1でa5のグラスホッパーがローカストならば、可能な手はa7の黒ポーンを取ってa8へ行く手だけである。黒のキングがa7にいるとローカストからチェックがかかっていることになるので、チェックをかわすには a8か b8か b7へ行くしかない。f5の黒ポーンは、ローカストに「ピン」されている。ポーンが動くとe5の黒キングにローカストからチェックがかかる状態になるからである。

 ライオン(LION)も、グラスホッパーから派生した。敵味方いずれかの駒を1つ跳び越えねばならず、敵駒なら取り、行き先は跳び越えた先のどの空 マスでもいい。


 次のナイトライダー(NR)(wnrw)は、味方の駒に邪魔されるか盤の縁にぶつかるまで、一手で同じ方向に何度でも飛べる。図3でその動きを示す。

図3 ナイトライダー(NR)








白Nrの可能な手は6つである。
wnrw=ナイトライダー
Na1-c2, e3, g4 または Na1-b3, c5, xd7+

図4 Chess Amateur 887 1926年8月 T. R. Dawson








2手メイト wnrw=ナイトライダー
T. R. D.の作った最初のNr作品は、Die Schwalbe 1925年2月に掲載。

 この跳び駒(Leaper)はチェス駒の第3基本タイプである。伝統的な跳び駒ナイトの出発マスから行き先までの跳び方は、数学的に1-2または2-1という座標、つまり水平に1マス垂直に2マス、または水平に2マス垂直に1マスと表される。この座標は動きの最初と最後のマスの位置関係を示しているだけで、動く道筋とは関係ない。2つのマスが隣り合っているかのように直接移動する。盤上で動く「軌跡」や道筋を定義される跳び駒はない。したがって、跳び駒によるチェックは合い駒で防ぐことができない。さえぎろうにも、動きの「軌跡」がないからである。

 跳び駒は、ヘリコプターのように「跳ぶ(leap)」。


 プロブレムの解答は次回に載せることにする。私は図4さえ先に解答を見てしまった(汗。
 駒の動き方取り方の説明は、通常のルールの場合でもそうだが、かなり意訳した方が分かりやすい。
 フェアリーがドイツを中心に発展したので、原書では基本的にナイトがS、ナイトライダーがNと表記されている。本訳ではナイトはNのまま、ナイトライダーをNRとする。

More Chessercizes: Checkmate! (Fireside Chess Library)
Bruce Pandolfini
More Chessercizes: Checkmate! (Fireside Chess Library)
Fireside 1991-12-15
売り上げランキング : 1510

おすすめ平均 star
star初心者も高いレーティングの方もおすすめです。
starオーソドックスなメイト問題集

Amazonで詳しく見る

2007年08月10日

Dickins『フェアリーチェス入門』1 歴史 その3

 イスラム(Muslim)・チェス(西暦750〜1500)の期間には、長方形(Oblong)チェス、デシマル(Decimal)チェス(10 x 10マス)、円形(Circular)チェス、天文(astronomical)(7つの同心円を12の扇形マスに分割)チェス、リム(Limb)チェス等、様々な新しい形式のチェスが試みられた。いくつかは、H. J. R. MurrayのA History of ChessやJ. Boyerの文献で紹介されている。その中で有名な「大(Great)チェス」や「完全(Complete)チェス」等と呼ばれるものは、11 x 10マス盤で指され、モンゴルの大皇帝ティムール(タメルラン)(1336-1405)のお気に入りだったと伝えられている。通常の駒に加えて、このゲームには、1つの大臣(Wazir)、2つの戦車(Dabbaba)、2つの偵察兵(Talia(scout))、2つのラクダ(Camel)、2つのキリン(Giraffe)がある。大臣、ラクダ、キリンの動きは今日のものと全く同じである。他に使われていたフェアリーピースは大チェス(12 x 12盤に各32個の駒を用いる)に由来し、ライオン(Lion)、雄牛(Bull)、番兵(Sentinel)、ワニ(Crocodile)、主計官 (Paymaster)(ビショップ+ナイト)、王子(Prince)(クイーン+ナイト)、警察署長(Chief of Police)、サイ(Rhinoceros)、ガゼル(Gazelle)、他にも動きを組み合わせた駒がある。

クーリエ(急使)・ゲーム

クーリエ・ゲーム
C=急使 M=男 S=卑劣漢 Bishop=Alfil Queen=Fers

 1202年に言及されているヨーロッパでの初期の最も興味深い改変は、クーリエ・ゲームと呼ばれた。急使(Courier)は今日のビショップの動きと全く同じ、卑劣漢(Sneak)は今日の大臣(Wazir)に相当し、男(Man)はキングのようにすべての隣のマスへ進めた。このゲームはドイツに起源を持つようで、多様化されたチェスの一つとして、19世紀初めまで終の棲家となるシュトレベック(Strëbeck)という村に痕跡を残している。したがって、1500年の直前から300年間、クーリエとAlfilは共存したことになる。今日のビショップと同じ強大な威力とその動きへの関心によって、クーリエは、オーソドックスなゲームのフィルと完全に取って代わった。

 今世紀(20世紀)には、ヨーロッパのとりわけプロブレムにおいて今まで以上に大量の新たな形式が発明されてきた。たしかにそれらの多くは忘却の彼方へと消え去ったが、屈強に生き長らえてやがてオーソドックスなチェス盤へ活路を見出すものがあるかもしれない。将来の世界選手権がクイーンの代わりにグラスホッパーで使って争われるかもしれないという脅威を感じているチェスクラブや団体がたしかに存在する。しかし、未来に何が待ちかまえているかなど、誰にほんとうのことが分かるだろう?


 Alfil、卑劣漢(もう少しましな訳はないものか(汗))、グラスホッパー等、駒名称が3通りの書き方で方針の統一なく来てしまったが、次章からは基本的にカナで紹介していく。最後に出てくるAlfilは原文ではFilだが、単にアラビア語の接頭語Alを省略したと思われる。
 ウェブ上の「フェアリーチェス」を探すと、日本で代表的な「日本チェス・プロブレム協会」にしても将棋との共存が目立つ。将棋駒との混合表記だと、Camelは「駱」となるようで、上記のCourierと紛らわしくなる「C」より分かりやすい。先人のいいところは取り入れられればと思う。

Sit & Solve Chess Problems (Sit & Solve)
Burt Hochberg
Sit & Solve Chess Problems (Sit & Solve)
Sterling Pub Co Inc 2004-07-30
売り上げランキング : 25804

おすすめ平均 star
star見た目は面白そうだけど。。。

Amazonで詳しく見る

2007年08月02日

Dickins『フェアリーチェス入門』1 歴史 その2

 チェス棋士(とプロブレム作家)の趣向は、そもそも新しいアイデアの発見へと向かうのが常であり、最近100年間ほどのこの分野での成果は目覚ましい。今までに見たこともない形やサイズの盤や見たこともない動きの新たな駒、聞いたこともないルールが試行錯誤されてきた。カパブランカを始めとする名人たちが、「指し尽くされた」とチェスの限界に不満を感じたことはよく知られている。彼らは、駒を追加した大盤(10 x 10)を試した(J. BoyerのNouveaux Jeux d'Echecs Non Orthodoxes参照)。しかし、プロブレム作家たちの間では、はるかに奥深い活動が成されてきた。この実験活動が頂点に達したのは20世紀、偉大なプロブレム作家かつ編集者T. R. ドーソン(Dawson)(1889-1951)の存命中と彼の作品の広範な影響期である。The Chess Amateur, L'Eco degli Scacchi, The Braille Chess Monthlyのコラムでの終盤問題とプロブレム担当以外にも、1922年10月〜1931年にThe Problemistを編集、1931〜1951年にBritish Chess Magazineのプロブレムのページを担当、1931〜1943年にイギリス・チェス・プロブレム協会(British Chess Problem Society)の会長を務めた。ドーソンは、Problemist Fairy Supplementを1930年に創刊して1936年まで編集し、その後 The Fairy Chess Reviewと して1936年8月から亡くなる1951年12月まで独力で編集を続ける。本誌は、多くの熱烈な解答者と優れたプロブレム作家を魅惑し、彼らは「フェアリーの輪(The Fairy Ring)」と言われた。ドーソンがフェアリーチェスを猛烈に推進させたおかげで、彼の死後も1958年4月までの6年半に渡り、ニクソン&ケンプ社(Messrs. Nixon and Kemp)が本誌を存続させる。印刷されたプロブレムの総数は10,970個に達した。編集作業の多大な尽力以外にも、T. R. ドーソンは寸暇を惜しんで6,000個以上のプロブレムを作り、フェアリーチェスに関する6冊の参考書を書いている。

 1918年から1958年の40年に渡るこの衝撃的な活動期のおかげで、「フェアリーチェス」はFIDEプロブレム部門で「オーソドックス・チェス」に対する「ヘテロドックス(異端)」として認められるようになった。1958年にユーゴスラビアのピラン(Piran)でFIDE公認の下開催された国際プロブレム作家会議(International Congress of Problemists)後には、ほとんどの種類のヘテロドックス作品をカバーできる規則集を含む法典(Codex)が作成された。この法典の主要関連部 分は、付録Cに収録している。

 2つの「フェアリー」駒がプロブレム作家の間で慣例的に認められてきた。グラスホッパー(Grasshopper)(wgw)とナイトライダー(Nightrider)(wnrw) である。しかし、発明は新しい駒に限らない。チェス盤の形、サイズ、特徴も、無数の実験対象となってきており、垂直円柱型(Vertical Cylinder)チェス盤が今日では慣例的に認められている。「白がn手以内に黒をメイトしなければならない」とするプロブレムのオーソドックスな規定も、他の様々な要求に取って代わられてきた。その中の2つ、セルフメイト(Selfmate)とヘルプメイト(Helpmate)は、今や実質的に「オーソドックス」と見なされている。T. R. ドーソンが考案したマキシママー(Maximummer)も、今日では慣例的に認められている。


 ドーソンの書籍自体はさすがにもう入手困難だが、フェアリー作家として名前はよく見かける。彼の尽力がなかったら友達の輪ならぬ「フェアリーの輪」はこれほどにはなかなかっただろう。私的には、性的嗜好で正常とされる「ヘテロ」がプロブレムでは異端なのが痛快だ(笑。
 フェアリー駒やプロブレム規定名はさすがに直訳するしかないだろう。気になる人のために意味くらい書いておくと、グラスホッパーはキリギリスだが大雑把にバッタやイナゴも含む。ナイトライダーは格好いいが、南北戦争後に馬に乗って黒人を恐喝した白人だそう。頭のKと一緒に騎士道精神もなくした?

 ↓フェアリーじゃないけど、問題集でいちばんお得なのはやっぱりこれ。
Chess: 5334 Problems, Combinations, and Games
Laszlo Polgar Bruce Pandolfini
Chess: 5334 Problems, Combinations, and Games
Black Dog & Leventhal Pub 2006-01-06
売り上げランキング : 7476

おすすめ平均 star
starやりがい満点!
star問題を解いて強くなる。
star持ち運べない!

Amazonで詳しく見る

2007年07月26日

Dickins『フェアリーチェス入門』1 歴史 その1

 西暦600年頃にインドで発祥して以来、チェスというゲームは、絶え間ない「変異(mutations)」による進化発展または一足飛びの飛躍を長い間続けてきた。約1500年を経ても、2つのピース、ルック(またはキャスル)とナイトだけは当初と同じ動き方を保っており、チェックメイトもしかりである。しかし、他のすべての駒とゲームの「ルール(laws)」の多くは変化を被ってきた。

 これらの変化が生じるのは、主にチェスが新しい文化によって初めて取り上げられたときである。したがって、チェスの様々な変種が、ヨーロッパ、インド、ビルマ(現ミャンマー)、タイ、中国、日本、マレー諸国に見られる。

 チェスがヨーロッパ、おそらくイスラム教の影響によってスペインや南イタリアへ伝播した後に、いくつかの重要な変化が生じた。12,3世紀頃からのことである。Shah(キング)、Fers(大臣、現代のクイーン)、Baidaq(ポーン)が、初手の動きを1マスから2マスに拡張された。最初、これら新たなオーソドックスではない動き方は「フェアリーな」動きと見なされていたはずだが、時が経つにつれてオーソドックスなゲームの中に組み入れられた。付録Aに、イスラム圏や中世のチェス・プロブレムを少数集めた。すべてが500〜1000年前の作品であり、ファイルライダー、セルフメイト、シリーズムーバー、ダブルムーブ駒等、「現代」フェアリーに特有の形式を使ったものもある。

 次の重要な進歩は、ちょうど15世紀末になされた。2つの駒、Fers(クイーン)とAlfil(ビショップ)の動きが拡張されたのである。Fersの動きは斜め四方に1マスと制限されていたが、この動きが盤の端までに拡張されるとともに縦横四方にも同じ動きが認められ、現代のクイーンの動きになった。当初、この新しい駒は「狂った(Mad)」または「激怒した(Furious)」クイーンと呼ばれた(フランス語では、激怒した婦人のチェス(eshécs de la dame enragée)、イタリア語では、激怒するチェス(scacchi alla rabiosa))。Alfilは斜め四方の2マス先への動きに限られていたが、現代のビショップのようにこの斜めの動きが盤の端まで延長されて当然と見なされるようになった。この新たな駒は、当初はキングの「顧問(adviser)」を意味する名前で呼ばれていたが、ゲルマン系言語圏では「賢人(Sage)」や「老人(Old Man)」を意味する言葉が広く採用された。しかし、ドイツ人は後にこの駒を「走者」(Läufer)と呼ぶようになる。本章の後で扱うクーリエゲームに出てくる「急使」(Runner)におそらくちなんでいる。アイスランドとイギリスでは「ビショップ(Bishop)」という名前が採用されたが、フランスとプロバンス語圏では、冗談、戯れ、道化師を意味するFolまたはFouと呼ばれるようになった。
 *注 H. J. R. MurrayのA History of Chess (p.426, 注29)によると、フランス語のFouが、アラビア語のFil(象)が転化したものとする歴史的証拠は発見されていない。


 盤上をどう猛に駆けめぐる狂った女王に道化師が加わることで、新たなゲーム形式への増大する関心と移り気は、一世代ほどの期間で古いオーソドックスな形式を廃止に追い込みそうに思える。しかし、旧形式のゲームも、一定の地域や社会階層内で確かに生き延びた。

 西暦1500年頃以来、チェスのルールはヨーロッパ中でほぼ統一されてきたが、キャスリング、ポーンの昇格、ステイルメイト、アンパッサンについては地方によって違いがあった。1924年に世界チェス連盟(Fédération Internationale des Eshecs)(FIDE)が設立されてからは、すべての国際大会と多くの国内組織やチェスクラブのために、国際的相互合意の下でこれらの変則ルール問題は解消されている。それでも、依然として「国内」や「内輪」と呼べる、伝統的ルールが変化したチェスの形式は存在し続け、私的に非公式に楽しまれている。現在、これらは非オーソドックスまたは「フェアリー」チェスと定義されるようになった。


 目次、序文、記号表、謝辞は飛ばし、おいおいHPで対応する。特に通常の駒を逆さや横にしたデザインのフェアリー駒記号は、最初に一気に作るのは骨である。ウェブ上のどこかに画像が転がっていそうだが、通常の駒とデザインを合わせるためにも作った方がいいだろう。
 チェスの起源のところではthe Game of Chessと述べるものの、その後中世まではチェスをthe gameでぼかしている。通常the gameはチェスと訳していいが、現行とは違うチェスのニュアンスを感じさせる。日本語では回りくどいので結局全部チェスにした。

Guide to Fairy Chess
Anthony Stewart Mackay Dickins
Guide to Fairy Chess
Dover Publications Inc. 1971-12
売り上げランキング :


Amazonで詳しく見る