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2007年08月21日

エイベ『チェス終盤の手引き』2-11: マイナーピース+2P 対 マイナーピース+P その1

11.マイナーピース+2P 対 マイナーピース+P

 ポーン数が同じ例35〜63のポーン終盤と違い、パスポーンがなくて黒のキングが守っていると通常ドローになる。ビショップとナイトの違いも結果にほとんど影響しない。

 概して、白が勝てるかどうかはパスポーンを持っているかだけにかかっている。パスポーンがもう一つのポーンから3ファイル以上離れているときは、ナイトよりビショップの方が優れている。さらにパスポーンが離れるほど、ビショップの優位が増す。

 ナイトの方が優れたピースになるのは、パスポーンが2ファイルしか離れていないか、敵ポーンの1つか両方がビショップと同色マスに固定されている場合である。後者のケースでは、敵は「不良ビショップ」を持っているか、「弱色コンプレックス(a weak colour complex)」に陥っている。当然ながら、違う色のマスをほとんど支配できないからである。


 140 Taimanov対Spassky(レニングラード、1952)。防御側は、キングでポーンをブロックできないと通常負けるが、本例では巧妙な反撃によってドローにする。

1 Kg6 Nd5 2 Kf7 Kf5
 2...Nxf4 3 Kxf6もドロー。

図140 白番ドロー
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/8/4pp2/7K/4kP2/4n2N/8/8 w - -

3 Ng1 Nxf4 4 Nf3 e5
 4...Ke4には、5 Nd2+ Kd3 6 Nf1 f5 7 Kf6で、Ng3から Nxf5の狙い。キングが後方から、ナイトが本拠地から攻撃するのは、例133,134と全く同じ。
5 Nh4+ Kg5 6 Nf3+ Kf5 7 Nh4+ Kg4
 他に手があるだろうか?
8 Kxf6 e4 9 Nf5.
 ドローが合意された。白のナイトには、センターポーンを周りから防御できる広さが十分ある。


 141 Boleslavsky対Bondarevsky(レニングラード、1941)のボトビニクによる分析。防御側キングが離れすぎているので、白のキングが、ポーンがクイーンになるマスを支配できる。防御側には、白の2ポーンでつけ込める弱色コンプレックスもある。本例では、ナイトがキング側ビショップより強い。

1 Kf5 Ke7 2 Kg6 Kf8 3 Kh7 Kf7 4 g5 Bc3
 4...Bd6 5 h4 Bg3 6 h5 Bf4 7 g6+ Kf6 8 Ne5 狙いは h6.

図141 白番白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/3k2p1/8/4K3/1b4P1/5N1P/8/8 w - -

5 h4 Bb2
 5...g6 (5...Ke6 6 Kg6) 6 Nh2 (7 Ng4から 8 Nh6の狙い) 6...Be1 7 h5.
6 h5 Bc3 7 Nh4 Bd2
 さもないと、白が Nf5から Nxg7.
8 g6+ Kf6 9 Nf5
 マイナーピースの終盤に典型的なサクリファイス。
9...Kxf5 10 Kxg7 Kg5 11 Kh7
 11 h6?には、11...Kh5 12 h7 Bc3+ 13 Kf7 Kh6でブロック。
11...Bc3 12 h6.
 そして白がクイーンを作る。


 「弱色コンプレックス」(a weak colour complex)とは歌のタイトルのようだが、頻出語ではないし、complexの意味が微妙なのでカナにしておいた。しかし、一般的な「コンプレック ス」はまず劣等感を意味するので、自然科学用語の訳よりは分かりやすいだろう。意味は文脈で分かってください(汗。
 141の「白の2ポーン」は原文がWhite's two piecesだが、ピースは1つしかないのでポーンの間違いとしか思えない。内容的にも2つのポーンが黒の弱色コンプレックスをとがめているようだし。
posted by 水野優 at 13:44| Comment(2) | Euwe『チェス終盤の手引き』終盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月14日

エイベ『チェス終盤の手引き』2-10: マイナーピース+2P 対 マイナーピース その2

 138 Cheron(1945)の見事な分析が、端ポーンがクイーンになるマスと違う色のビショップを持っているときの正しい指し方を示している。

 黒がビショップを犠牲にしてgポーンを取ろうとするので、白は、ビショップを楯にしてポーンの前進を守らねばならない。

1... Bh3 2 g3 Kf6
 2...Kh6 3 Bf1 Bg4 4 h4 Bf5 5 Kf2 Bg4 6 Ke3 Be6 7 Kf4 Bd7 8 Bd3 Bh3 9 Bf5 白のビショップが、gポーンを進める楯になる。9...Bf1 10 g4 Be2 11 g5+ Kh5 12 Kg3.
3 Bf1 Be6 4 Kf2 Ke5 5 Ke3 Bd7 6 h4 Bg4 7 Be2 Be6 8 Bd3
 白は、次にキングをf4へ向かわせようとしている。
 8 h5? Kf5だと、黒がキングをg5に据え、9 Bd3+ Kg5 10 Bg6 Bg4 または 9 Kd4 Bf7 10 Bd1 Be8 11 Kd5 Bf7+ 12 Kd6 Kf6 13 Kd7 Kg5で、白のポーンをブロックする。

図138 白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/8/4b3/6k1/8/8/4B1PP/6K1 b - -

8... Bf7
 白に h5の狙いがあった。8...Bg4 9 Bg6 Bd1 10 h5 Kf6 (さもないと 11 h6) 11 Kf4 Be2 12 Be8 Kg7 (12...Ke7 13 h6 Kf6 14 g4 Bxg4 15 Kxg4 例100) 13 Kg5 Bd3 14 Bg6 Be2 15 h6+ Kg8 16 Kf4 Bd1 17 Be4 Be2 18 Bf3 結局gポーンが前進する。
9 g4 Be6
 9...Bh5 10 gxh5 Kf6 11 h6 Kf7 12 Bh7 例100.
10 g5 Bf7 11 Kf3 Bh5+ 12 Kg3 Kd4
 黒がツークツワンク状態。12...Be8 13 Kg4 Bd7+ 14 Kh5 または 12...Bd1 13 Bg6から h5.
13 Bb1 Ke5 14 Bc2 Ke6 15 Kf4 Kf7 16 Bf5 Bd1 17 Bg4 Bc2 18 h5 Bd3 19 Bf5 Be2 20 h6 Bh5 21 Ke5 Kf8 22 Kf6 Kg8 23 Be6+ Kh8 24 Bf7 Bd1.
 白が後4手でメイト。

 この終盤で黒がビショップの代わりにナイトを持っていても、白が勝てる。


 139 白のポーンがつながっていないので、黒の唯一の望みは、クイーンになるマスの色がビショップと違う端ポーンだけが残るようにすることだが、白はたいていこれを回避できる。

1 Be8
 正しいプランは、まず楯になって「良い」ポーンをできるだけ前進させることである。端ポーンは、進みきるとおとりの役割を果たせなくなる。黒がすぐ取れるようになるからである。
 1 h5? Be2 2 Be8 Bg4だと、Goglidze対Kasparyan(トビリシ(グルジア)、1929)で生じた局面になる。3 Kd8 Kh6 4 Bd7 Bxh5 5 e6 Kg7 6 e7 Kf6 7 Be8 Bd1 8 Bf7 (ビショップがすぐにh5へ行けないので貴重な手待ちをする) 8...Ba4 9 Bh5 Ke5 10 Bg4 Kd6.
 1 h5? Be2 2 Be8 Bg4後のもう一つの変化は、3 Kd6 Kh6 4 Bd7 Bxh5 5 e6 Kg7 6 e7 Kf6 7 Ba4 Bg6 8 Kd7 Ke5 9 Kd8 Kd6.
 どちらの変化でも、黒には端ポーンを取る余裕があり、その後、例129のような垂直オポジションを取りにもどれる。
1... Kh6
 1...Bg4 2 Kd6 Kh6 3 Bd7. 1...Bb3 2 Bh5 Kh6 3 Bg4は本譜に移行する。

図139 白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/4KBk1/8/4P3/7P/8/8/3b4 w - -

2 Kf6
 2 Kd6 Bb3 3 Bc6?は、hポーンを捨て石にするのが早過ぎる。3...Kh5 4 Bd5 Bc2 5 e6 Kxh4 ドロー。
 代わりに、白はビショップを有利なg4に置いてから、上記の変化で手得になるタイミングで最終的にhポーンを捨てる。
2... Bg4 3 Bg6 Bd7 4 Bf5 Ba4 5 Bg4 Bb3 6 Ke7 Bc4
 白がキング周りを再編成する間、黒にできるのは手待ちだけ。
7 Kd6 Bb3 8 Bf3 Bc4 9 Bd5 Bd3 10 e6 Bg6 11 e7 Kh5
 手損だが、11...Kg7だと 12 Kd7 Kf6 13 Kd8 Ke5 14 Bc6 Kd6 15 Be8 Bc2 16 Bf7 Ba4 17 h5.
12 Kd7 Kxh4 13 Kd8 Kg5 14 Bc6 Kf6
 斜線オポジションを失うが、14...Bh5だと 15 Be8 Bd1 16 Bf7 Ba4 17 Be6.
15 Be8 Bc2 16 Bh5 Ba4 17 Bg4 Ke5 18 Bd7.

 fポーン+クイーンになるマスの色がビショップと違うhポーンに対してなら、黒はほぼ確実にドローにできる。しかし、ポーン同士が遠く離れている(dポーン+hポーン等)と、白の楽勝である。
 つながっていないポーンに対する一般的なケースでは、黒は一方をキングでブロック、他方をピースで牽制するしかない。白のキングが黒のピースへ向かうと、黒のピースは、牽制するポーンとの相撃ちを余儀なくされる。


 次項はポーンが2対1の例題が10個なので、説明も長めになってきたから2題ずつ5回に分けて紹介しよう。このブログに盆休みはない(笑。
posted by 水野優 at 13:52| Comment(2) | Euwe『チェス終盤の手引き』終盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月03日

エイベ『チェス終盤の手引き』2-9: マイナーピース+P 対 マイナーピース その2

 122 Reshevsky対Rossolimo(アムステルダム、1950)。N+P 対 Nは、対Bより白に有利なパターンである。この場合、端ポーンが最も強力で、本例では4段目の端ポーンで白が勝てる。

1... Ne6+ 2 Kf6 Nc5 3 h5 Ne4+ 4 Kf7 Kf3
 実際のゲームでは、4...Ng5+? 5 Kg7 Ke4 6 h6 Kf5 7 Nf8 Kg4 8 Kg6 Kh4 9 Nd7 Kg4 10 Ne5+ Kf4 11 Nf7 Ne6 12 Kf6 Nf8 13 Kg7 Ne6+ 14 Kg8で、黒が負けた。
5 h6 Kg4 6 Kg7 Ng5
 黒のナイトは、「循環」手順 ...Ng5-e6-f8-h7でポーンを釘付けにする。白のナイトはg8-f6-d7-e5経由でf7へ向かい、g5を支配して黒の循環手順を妨害する。
 ときおり白のナイトはポーンを守ってキングが自由に動けるようにし、黒のナイトからの妨害を避けつつ手得する。

図122 黒番黒負け
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
5n2/8/6N1/6K1/7P/4k3/8/8 b - -

7 Ne7
 7 Ne5+ Kh5 8 Nf7 Ne6+ 9 Kh7 Nc7 ドロー(Reti). ポーンがブロックされ、自由に動ける黒のナイトにe8, f6, h5からのチェックの狙いがある。しかし、9 Kg8には 9...Ng5.
7... Kh5
 7...Ne6+ 8 Kf6 Nf8 9 Kf7 Nh7 10 Kg7 Ng5 11 Kg6 Ne6 12 Ng8 Nf8+ 13 Kf7 Nh7 14 Kg7 Ng5 15 Nf6+ Kf4 16 Kg6 Ne6 17 Nd7 Ng5 18 Ne5 Ne6 19 Nf7. 作戦は実際のゲームと同様、以下のように続く。
8 Ng8 Ne6+ 9 Kf7 Ng5+ 10 Kf6 Nh7+ 11 Kg7 Ng5 12 Nf6+ Kh4 13 Kg6 Ne6 14 Nd7 Ng5
 14...Nf4+ 15 Kf7 Kh5 16 h7 Ng6 17 Kg7 Kg5 18 Ne5.
15 Ne5 Ne6 16 Nf7 Kg4 17 Kf6 Nf8 18 Kg7 Ne6+ 19 Kg8.

 b(g)ポーンにも勝つ可能性はあるとはいえ、概してさほど有利ではない。しかし、c〜fポーンに対しては、防御側ナイトがどちら側からでも全力を出せるので、たいていドローになる。
 黒のキングが遠く離れているときは、初期位置の端ポーンやそれほど出遅れてないb(g)ポーンでも白に勝つ可能性はある。しかし、c〜fポーンに関してはかなり前進していないと勝てない。


 123 ナイトには、あらゆる通則に対する例外がある。ナイトは位置が悪いと、解決に数手を要するからである。このスタディはHalberstadtによる。
1 Nf4 Nh7 2 Ne6
 ナイトの最大の弱点。盤の端にいると罠にかかりやすい。

図123 白番白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
5nk1/4K3/8/8/8/7N/5P2/8 w - -

2... Kh8 3 f3
 手待ち。なぜなら、3 f4? Kg8 4 f5 Kh8 5 Kf7 Ng5+ 6 Nxg5 ステイルメイト。3 Kf7? Ng5+ 4 Ke7 Nf3.
3... Kg8 4 f4 Kh8 5 Kf7 Ng5+ 6 fxg5.


 図122は原文では「黒番ドロー」となっているが、最終的にはどう見ても白勝ちだから訂正した。実際のゲームでは黒が4手目で悪手を指して負けており、著者の方針では悪手の記号「?」は形勢(白勝ち、ドロー、黒勝ち)が変わるときのみとなっているので、正着なら黒はドローにできたとする方がつじつまは合っている。
 しかし、最初に「4段目の端ポーンで白が勝てる」と書かれているし(原文通り)、本譜解説が白勝ちだと、ドローと明言されている白7手目からのRetiの変化筋が悪手になる等の不都合もある。フリッツだとこうなった等の情報をお待ちします(汗。

 N+P 対 Nは以上の2例だけなので、斎藤夏雄さんのMa vie quotidienneで連載が始まったおもしろくてためになり画面上で駒を動かせる(!)スタディも参照されたし。

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posted by 水野優 at 14:48| Comment(2) | Euwe『チェス終盤の手引き』終盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月27日

エイベ『チェス終盤の手引き』2-9: マイナーピース+P 対 マイナーピース その1

9.マイナーピース+P 対 マイナーピース

 この終盤では、第一に黒のキングの位置が重要である。それがポーンをブロックしていれば、通常ドローになる。さもなければ、黒はポーンを取るためにピースを犠牲にしようとする。対するポーンがa,b,g,hポーンではなく、キングが離れすぎていなければ、それは成功するだろう。しかし、黒のキングが盤の反対側にいれば、ポーンが初期位置にいるa,b,g,hポーンや十分前進したc,d,e,fポーンでも、勝てる場合がある。

 ポーンに関しては、端に寄っているほど有利なので、a,b,g,hポーンが最も有望である。

 最後に、ピースに関しては、このような開けた局面では、ナイトよりビショップの方が強い。

 色違いビショップ同士の終盤は、例174〜188で別に扱う。


 120 白にとって最悪のケースは、N+P 対 Bである。黒は、キングが離れすぎていなければほとんどドローにできる。最も有利なポーンはa,b,g,hポーンであり、本例は、例99と関連する端ポーンがある重要な局面である。

1 Nb7+
 1 Nc4 Bh1 2 Nb6 (2 Nd6(a5) Ba8) 2...Bg2 3 Na4(c4) Bh1.

図120 白番ドロー 黒番黒負け
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
白番:bK1k4/P7/8/N7/8/8/8/8 w - -
黒番:bK1k4/P7/8/N7/8/8/8/8 b - -

1... Kd7 2 Kxa8 Kc8
 黒のキングは、ナイトがいるのと同じ色のマスへ進む。2...Kc7?は 3 Nd6で黒負け。
3 Nd6+ Kc7
 ナイトは手待ちできないので、黒番だとそうはいかない。
1... Kd7
 1...Bh1には 2 Nb7+が、ポーンの前進の楯になる。
2 Nb7 Kc6 3 Kxa8 Kc7 4 Nd6.


 121 黒のキングが可能なかぎり遠く離れている場合でさえ、白は、ポーンが十分前進していないと勝つことができない。大まかな目安としては、例145のように4段目の端ポーン、5段目のb(g)ポーン、1910年Kosek作の本例のような6段目のc(f)ポーン、7段目のセンターポーンとなる。

1 Nd6 Bg1 2 c6 Bb6 3 Ke6 Bc7
 長いダイアゴナル(b8〜h2)と短いダイアゴナル(d8〜a5)が交わるc7マスは、まだポーンが横切っていない。
 勝負は、もっぱら短いダイアゴナルの長さによって決まる。この4マスという長さは、ビショップが居座るには不十分なのでいずれ追い出される。例えば、ポーンがまだc6まで来ていないなら、この場合の短いダイアゴナルの長さは5マスとなり、ビショップはそこに居続けられる。
 端寄りのポーンに勝つチャンスが大きいのは、そのダイアゴナルが短くなるからである。防御側のビショップの威力も比例して小さくなる。
4 Kd7 Bb8 5 Ne8 Kg2 6 Nc7 Ba7
 6...Kf3 7 Kc8 Ba7 8 Nb5 Bb6 (8...Be3 9 Nd6 Bb6 10 Nc4 Bg1 11 Kd7) 9 Nd6 Ke2 10 Nc4 ビショップを追い払う。10...Bf2 11 Kd7 Bg3 12 Nd6.

図121 白番白勝ち 黒番ドロー
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
白番:8/8/8/2PK4/4N3/8/7b/7k w - -
黒番:8/8/8/2PK4/4N3/8/7b/7k b - -

7 Na6 Bb6 8 Nc5 Kf3 9 Na4 Ba5 10 Nb2 Ke4 11 Nc4.
 ナイトがc4からビショップを追い立てる。黒番では、黒のキングがこの急所のマスを支配できる。
1... Kg2 2 Nd6 Bg1 3 c6 Bb6 4 Ke6 Bc7 5 Kd7 Bb8 6 Ne8 Kf2
 黒のキングは、慎重に道筋を選ばねばならない。6...Kf1? 7 Nc7 Ke2 (黒のキングはうっとうしいチェックを避けてこのマスへ進んだ。7...Ba7 8 Na6 Bb6 9 Nc5 Ke2 10 Na4 Ba5 11 Nb2だと、黒のキングはd3へ行けない) 8 Kc8 Ba7 9 Ne6 Bf2 (9...Bb6 10 Kb7 Ba5 11 Ka6) 10 Nf4+ Kf3 11 Kb7.
7 Nc7 Ba7 8 Na6
 以下は堂々巡りになる。8 Kc8 Bd4 9 Nb5 Be5 10 Kd7 Bb8 11 Nc7 Ba7. 8 Nb5 Bb8.
8... Bb6 9 Nc5 Ke3 10 Na4 Ba5 11 Nb2 Kd4.
 12 Nc4を阻止している。


 まずは最も勝ちにくい「N+P 対 B」の2例から始まる。ビショップとナイトが互いの利きを牽制するしのぎ合いがおもしろい。121はやや複雑だが、黒は短いダイアゴナルにビショップを居座らそうとし、白がそれを追い出そうとする狙いに従えば、候補手は絞れてくる。

 ↓のように少数の典型パターンを徹底的に学ぶ方がいいんだろうけど(汗。
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posted by 水野優 at 14:45| Comment(0) | Euwe『チェス終盤の手引き』終盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月07日

エイベ『チェス終盤の手引き』2-1: マイナーピース 対 P

 ナイトとビショップは別々に扱わないが、その異なる特徴を比較できるように示していこう。ビショップの方が動きやすいので、一手で盤面を横切り、遠くからマス目を支配できる点で見晴らしが広い。ナイトは目的のマスに到達するのに最大6手もかかるが、進路を容易に邪魔されることはなく、今いるマスと違う色のマスを支配できる点では利きの範囲が広い。
 ポーンが少ない開いた局面ではビショップの方が強力だが、ビショップが味方のポーンに邪魔される局面ではナイトの方が優れたピースになる。


1.マイナーピース 対 P

 通常はドローで、必要ならポーンを取るためにピースをサクリファイスする。前進したポーンに対するナイトは困難になりうる。


 90 c〜fポーンに対するナイトは、ポーンのどちら側からでも最大限の力を発揮する。

図90 ドロー
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/1KP5/8/5n2/8/8/8/7k w - -

 1 Kc8
 1 c8=Q Nd6+. フォークは黒の防御の基本。
 1 Kb6(b8) Ne7 または 1 Kc6 Ne7+ 2 Kd7 Nd5 ポーンを攻撃し、クイーンになったらフォークをかける。
 1... Ne7+
 良くないのは 1...Nd6+? 2 Kd7 Nc4 3 Kc6 Ne5+ 4 Kb5 Nf7 5 Kc5.
 2 Kd8 Nc6+ 3 Kd7 Na7 4 Kd6 Kg2 5 Kc5 Kf3 6 Kb6 Nc8+
 7段目にある端ポーンを除けば、ナイトがポーンの直前のマスに行ければドローにできる。
 以下、7 Kb7 Nd6+ または 7...Ne7.


 91 ナイトは、b(g)ポーンに対しては分が悪い。

図91 白番白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/KP6/8/4n3/8/8/8/6k1 w - -

 1 Kb8 Nd7+ 2 Kc8
 良くないのは 2 Kc7? Nc5.
 2... Nb6+ 3 Kd8(c7).
 そしてポーンは難なくクイーンになる。


 92 端ポーンに対するナイトは、半分強の力しか発揮できない。1932年のGrigorievによる本例のように、2段目にいる端ポーンに対してでも、ドローにするには苦労する。

 1 a4 Nf3
 1...Nf7+? 2 Kc7 または 1...Ne4+? 2 Kc6では、ポーンに進まれてしまう。

図92 ドロー
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/8/3K4/6n1/8/7k/P7/8 w - -

 2 Kd5
 2 a5 Nd4 3 a6 Nb5+ 4 Kc6 Na7+. ここから、ナイトは安全にc8-d6-b5-a7ルートを巡回する。つまり 5 Kb7 Nb5 6 Kb6 Nd6 または 5 Kb6 Nc8+ 6 Kb7 Nd6+.
 2... Nh4 3 a5 Nf5
 重要なマス。ここから上記の巡回路へ3通りの方法で向かおうとしている。...Nd6, ...Ne7-c8, ...Nd4-b5.
 4 Kc6 Nd4+
 良くないのは 4...Ne7+? 5 Kd7 Nd5 6 a6 Nb4 7 a7 Nd5 8 Kc6.
 5 Kb6 Nf5 6 a6
 6 Kc7 Nd4 7 a6 Nb5+
 6... Nd6.
 黒のナイトはc8かb5へ向かう。


 93 端ポーンの場合にしか起こらない有名な戦略。1 Nxb7+ Nxb7 2 a6 そして 2...Kc7 3 a7.

図93 白番白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
3k4/1p6/3N4/P1n5/8/8/8/7K w - -


 ナイトはビショップより前進したポーンに対して弱いが、私がこういう例題に初めて触れたときはけっこうナイトでも粘れると思った。90は、本譜黒の4手目で 4...Nb5+フォークで即ドローのはず。長引いた方がいろいろな駆け引きが学べるが。
posted by 水野優 at 15:51| Comment(2) | Euwe『チェス終盤の手引き』終盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月30日

エイベ『チェス終盤の手引き』1-6: 多数P戦力的優勢 その2

 74 キングとポーンの終盤では、出遅れ(backward)ポーンは、他の終盤に比べれば総じてそれほど欠点にはならない。通常敵のキングはこれをずっとブロックし続けられないし、出遅れポーンをサクリファイスできる可能性もあるからである。

 白がオポジションを得ていれば楽勝である。1...Kb6 (1...Ka5 2 c4) 2 Kb4 Kc6 (さもないと白が回り込む。2...Kc7 3 Kc5 または 2...Kb7 3 Kb5) 3 c4 (3 Ka5? Kc7 4 Kb4 Kb6 5 Kb3では、黒が遠隔オポジションを取ってドローにする。5...Kb7 6 Ka3には 6...Kc7) 3...dxc4 4 Kxc4 例5. 白は、黒がc6へ下がったときにポーン交換を仕掛ける。

 オポジションがなければ、白はコンビネーションを使う。出遅れポーンのサクリファイスは、ポーンの終盤ではよく見られる。キングは動きが遅いので、新たに作られたパスポーンを止めにもどることができないからである。

図74 白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
黒番:8/8/4p3/1k1pP3/3P4/1KP5/8/8 b - -
白番:8/8/4p3/1k1pP3/3P4/1KP5/8/8 w - -

 1 Ka3 Ka5
 1...Kc4 2 Kb2 黒はブロックし続けられないし、オポジションを失う。2...Kb5 3 Kb3 または 2...Kd3 3 Kb3 (3...Ke3 4 Kc2 Ke2 5 c4).
 1...Kc6 2 Ka4 Kc7 3 Ka5 Kc6 4 Ka6 Kc7 5 Ka7 Kc6 6 Kb8 Kb5 7 Kc7 Kc4 8 Kd6...

 2 c4 dxc4 3 d5 exd5 4 e6
 ニムツォヴィッチは書いている。出遅れポーンは本来拡張する欲望を持っているので、この種のサクリファイスによって実際に突破することは決して珍しくない。

 1 c4+ dxc4+ 2 Kc3だと、2...Kb6 3 Kxc4 白はポーンを取り返すがオポジションを失う。3...Kc6 例5. しかし、図74が1マス上にずれていれば、交換の結果例37になるのでこの作戦でも勝てる。
 両者に端ポーンがある同様の局面は、交換の結果例35, 36, 39等に移行してたいていドローになる。ポーンが盤の白側に寄っている場合も、サクリファイスが功を奏さないので白は直接オポジションでしか勝てない。


 75 Persitz対Paffley戦(サウセンド、 1955). 白の出遅れポーンは進行上何の役割も果たさないが、最終的に勝利を決定づける。

 1... Kd7
 水平のオポジションをめぐる争いがあり、他には 1...a5 2 Kb3 Kd7 (2...d4 3 Kc4 Ke5 4 Kb5 Kd5 5 c6) 3 Ka4 Kc6 4 Kxa5 Kxc5 5 Ka6 (5 c3? Kc4は黒勝ち) 5...d4 (5...Kc6 6 c3) 6 Kb7 Kd6 7 Kb6 (7 Kc8? Kc6だと、黒が垂直のオポジションを保つ).

図75 白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/8/p3k3/2Pp2p1/6P1/2K4P/2P5/8 b - -

 2 Kb4 Kc6 3 Ka5 Kxc5
 3...Kb7 4 c3 (4 c6+? Kxc6 5 Kxa6 d4は、黒がオポジションを保つ) 4...Kc7 5 Kxa6 Kc6 6 Ka7 Kc7 7 c6 Kxc6 8 Ka6 (8 Kb8? Kb6) 8...Kc5 9 Kb7.

 4 Kxa6 Kc6
 4...d4 5 Kb7 または 4...Kc4 5 Kb6 Kc3 6 Kc5.

 5 c3
 オポジションを保つ手待ち。

 5... Kc5 6 Kb7 d4
 6...Kd6 7 Kb6 良くないのは 7 Kc8? Kc6.

 7 cxd4+ Kxd4 8 Kc6 Ke5 9 Kd7 Kf6 10 Kd6.
 良くないのは 10 Ke8? Ke6. 本譜後、白はgポーンを取る。10...Kf7 11 Ke5 Kg6 12 Ke6 Kg7 13 Kf5 Kh6 14 Kf6 Kh7 15 Kxg5 2ポーンで勝ち。


 76 学童(Boys')選手権(ヘイスティングズ、1949)のあるゲームを解説したG. A Thomasによると、黒はダブルポーンを持っていても勝つ。

 1... e4+ 2 fxe4+ Kc5
 2...Ke5? 3 Ke3だと、白がオポジションを得る。

 3 Kc3 e5

図76 黒勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
黒番:8/8/4p3/3kp1p1/6P1/3K1P2/8/8 b - -
白番:8/8/4p3/3kp1p1/6P1/3K1P2/8/8 w - -

 オポジションを得て、白陣に回り込む。

 4 Kd3 Kb4 5 Ke2 Kc4 6 Ke3 Kc3 7 Kf2 Kd4 8 Kf3 Kd3.

 白番でも白は好転しない。1 Ke3 e4 2 f4 (2 fxe4+ Ke5 黒がオポジションを取る) 2...gxf4 3 Kxf4 Kd4 4 g5 e3 5 g6 e2 6 g7 e1=Q 7 g8=Q Qf2+ 8 Kg5 Qg3+.
posted by 水野優 at 14:32| Comment(2) | Euwe『チェス終盤の手引き』終盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月31日

エイベ『チェス終盤の手引き』1-5: K+2P 対 K+P その4

 37 黒のポーンが2段目にある他の5種類の局面では、オポジショ ンを持っているかどうかにかかわらず白が勝てる。

 この特例のケースでは、白のポーンがc7よりc5にある方が好都合なのである。

 1 Ke5
 1 c6+?は良くない。1...bxc6+? 2 Kc5 Kd8 3 Kd6 Kc8 4 Kxc6なら白の勝ち。これ以外の4種類のポーン形ではこの作戦で勝てるが、この局面では 1...Kc8 2 c7 Kd7 例24(ドロー)にな る。白はcポーンを進める前に、キングをd7かd8に侵入させねばならない。

図37 白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/1p1k4/1P6/2PK4/8/8/8/8 w - -

 1... Kc6
 1...Ke7は、2 c6 Kd8 3 cxb7で負ける。黒は、白のポーン が前進しすぎるとオポジションを保てなくなる。

 2 Kd4 Kd7 3 Kd5 Kc8 4 Kd6 Kd8 5 Ke6 Kc8
 5...Ke8 6 c6 Kd8 7 cxb7.

 6 Ke7 Kb8 7 Kd7 Ka8.
 白の5手メイト。8 c6 bxc6 9 Kc7...


 黒のポーンが3〜5段目にある21種類の局面の結果は、両キングがほぼ通常の位置にあるとするなら、オポジションを持っているかどうかによる。

 基本的なポーン形に従うと2つの主要パターンに分けられる。白がcかd(fかe)ファイルに出遅れポーンを持つ12種類の局面と、白に不都合なaかb (hかg)ファイルに出遅れポーンを持つ9種類の局面とである。

 38 この局面のすべての駒を左に1マスか右へ1,2マス動かす、 上か下に1マス動かす、それと動かさないのも含めて左右4種類、上下3種類の位置の総組合せが、上記の最初のパターンの12種類となる。

図38 白番ドロー 黒番黒負け
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
黒番:8/8/8/2p1k3/2P5/3PK3/8/8 b - -
白番:8/8/8/2p1k3/2P5/3PK3/8/8 w - -

 白は、出遅れポーンの横で垂直の直接オポジションを持っていると、以下の2つの狙いがあるので勝てる。回り込み。1...Kd6 2 Kf4 Ke6 3 Ke4 Kd6 4 Kf5 やがて黒のポーンを取る。または、ポーンの交換。1...Kf5 2 d4 cxd4+ 3 Kxd4 Ke6 4 Kc5(例10) 4...Kd7 5 Kb6 Kc8 そしてオポジションを取る。6 Kc6.

 オポジションなしでは、白はわなにかけようとすることしかできない。

 1 Kf2
 1 Kf3 Kf5 2 Kg3 Ke5.

 1... Kf6
 垂直のオポジションを維持するのが単純な方法で、ブロックし合うセンターポーンの場合(例5)では唯一の方法である。しかし、この場合は 1...Ke6でもドローにできる。2 Ke2(遠隔オポジションは功を奏さない。ブロックし合うc(f)やb(g)ポーンでは、反対側へ回り込む余地がないから) 2...Kf6 3 Kd2 (3 Kf2 Ke6 4 Kg3 Ke5) 3...Ke6 4 Kc2 Kd6 5 Kb3 Kc6 6 Ka4 Kb6.
 他の応手ではオポジションを失う。1...Kf5? 2 Kf3. 1...Kd4? 2 Ke2 Ke5 3 Ke3. 1...Kf4? 2 Ke2 Kg5 3 Ke3.

 2 Ke2 Ke6.
 黒は、常にオポジションを保持できる。


 39 端ポーンがブロックし合う場合(例38が2マス左へ動いた) で は、ポーン交換の効力がない。1...Kd5 2 b4 axb4 3 Kxb4で は、白には役立たずの端ポーンしか残らないからである。

図39 ドロー
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/8/8/p1k5/P7/1PK5/8/8 b - -

 しかし、ブロックし合う黒のポーンが3〜5段目にある3種類の基本局面では、白は、キングがもう1ランク前(白のブロックし合うポーンの横)でオポジ ションを取れば勝てる。この局面でなら、1...Kb6? 2 Kd4(2 Kc4? Kc6はドロー) 2...Kc6 3 Kc4 そして単純に回り込む。3...Kb6 4 Kd5 Kb7 5 Kc5.


 40 残りの6種類の局面、白が出遅れのa(h)かb(g)ポーン を持っていて、図40のすべての駒を左へ1マス動かすか、上か下へ1マス動かすかの組合せである。

 白には、出遅れポーンのある側へ回り込む余地はない。

 黒番:

 1... Kf5 2 Kd3
 2 Kf3 Ke5 3 Kg4 Kd4.

 2... Ke5 3 Kc3 Kd6 4 Kc2 Ke6 5 Kb2 Kd7 6 Ka3 Kc6 7 Ka4 Kb6.

図40 ドロー
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
黒番:8/8/8/2p1k3/2P5/1P2K3/8/8 b - -
白番:8/8/8/2p1k3/2P5/1P2K3/8/8 w - -

 白番:

 1 Kd3 Kd6
 1...Kf6?は、白にbポーンの前進を許す。2 Kc3 Ke6 3 b4 cxb4+ 4 Kxb4 Kd6 5 Kb5 例11。
 この変化では、3...Kd6 4 b5でも白の勝ちだが、黒のポーンが5段目にあれば例7,28と同じく、これは功を奏さない。
 白は、キングが先頭の(ブロックし合った)ポーンの横でオポジションを取っていれば勝てる。1...Ke6?なら、2 Ke4から回り込む。2...Kd6 3 Kf5 Kd7 4 Ke5 Kc6 5 Ke6.

 2 Ke4 Ke6 3 Kf4 Kf6.
 オポジションなしでは、白は前進できない。4 Kg4 Ke5.


 白が出遅れポーンを持つ場合の残りである。単純化して以前の例題へ言及する場合が多いのは、ブログ連載泣かせだ。徐々にhave an oppositionという表現が増えてきた。今までできるだけ「オポジションを取る(獲得する)」と書いてきたが、英語では抽象的なものに対しても表現 が豊かである。日本語に対応する概念がないのだからこのへんは直訳気味でかまわないだろう。
posted by 水野優 at 00:13| Comment(2) | Euwe『チェス終盤の手引き』終盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月22日

エイベ『チェス終盤の手引き』序文

 火曜日はいちおうチェス書書評の日だがやりたいときに割り込むことにして、今回から終盤本、エイベとフーパーの『チェス終盤の手引き』を始める。ソコルスキー本に続いて「十年留保」を活用した比較的新しい初の総合終盤本の翻訳連載となる。
 ソコルスキー本は部分訳で始めたのがHP「チェストランス」への掲載を見送った理由の一つでもあるが、本書はHPに平行掲載する。完訳まで最低2年はかかりそう(汗。


序文

 多くのゲームが大会で指されるようになった今日では、クラブやマッチのゲームが最後まで続けられることが多いので、終盤戦は裁定者に委ねられるよりも、通常のプレーヤーにとってますます重要なものとなりつつある。昔から名人は終盤の棋風が抜きん出ていたので、偉大なチェスの名人が終盤戦の名人でもあるのは偶然ではない。終盤の熟練は、序盤のような記憶力ではなく、組織的な学習に依存するので、負けを勝ちやドローにする技術の習得は難しいことではない。

 コンビネーションや戦術的作戦も起こりうるとはいえ、終盤戦は陣形的(positional)性格が支配的である。理想的な終盤戦には、タイミングや正確さ等、独自の魅力がある。しかし、学ばざるをえなくなるのは何といっても実践的な理由からである。長期戦の後で、終盤の力がなかったばかりに結果が報わ れないのがいかに悔しいことか! 本書の実戦からの例題のうち、60局以上で致命的なミスが、その多くは名人によっても指されている。

 様々な点で、終盤戦の性質は他と異なる。センターポーンの重要性は減少し、キングは活動的になり、ステイルメイトの可能性が生まれ、ポーンはもはやピースを身にまとった骨組みではなく、それ自体が強い戦力となる。ポーンは数が減ると価値が変わるので、1つのピースが1つのポーンより価値が低くなることもある。

 全体を概観するよりも、実戦で最も起こりうる特にルックがらみの終盤を徹底的に調査した。本書は、背景にある考え方を理解して堅実な局面判断ができるように、通して学習するのが最適である。最初は必ずしもすべてのニュアンスが分からなくてもよく、難しく複雑な変化を覚えようとしなくてもよい。もっとも、最初から副変化までよく理解できることもあるだろう。特に後寄りの章にあるいくつかの実例は他のものより難しい。入門者向けを標榜しながらも、難解なスタディや、R+BP(c,fポーン)+RP(a,hポーン) 対 Rや、Q+NP(b,gポーン) 対 Qの分析といった最近発見されたセオリーも含めた。一目では難しい終盤はさらなる学習の契機となる。弱いプレーヤーは決して落胆してはいけない。やがて考え方が明らかになり、論理的パターンが見えてくる。

 ほとんどの実例はポーン形によって分類されており、十数題の比較スタディ、例えば例題223〜225は、この重要性を意図してのことである。大方の慣例には従っている。局面図は白が上に向かって進んでいく。有利なプレーヤー、「優勢軍」はたいてい白である。しかし、疑問符はゲームの勝敗を変えるほどの致命的なミスにのみ使用し、そうでなければ使わない。先に名前を書いてあるプレーヤーが通常白だが、説明を分かりやすくするために色が逆になっている場合がある。(訳注:以下、英米式表記に関することなので省略)

 特に感謝したい文献は、Cheronの3巻の傑作『終盤戦の学習と手引き(Lehr- und Handbuch der Endspiele)』、ベルリン、1955〜57; Maizelisの『ルック対ポーン(Rook against Pawns)』、モスクワ、1956; Maizelis, Averbach, Chekoverの『チェスの終盤−ポーン、ビショップ、ナイト(Chess Endings--Pawns, Bishops, and Knights)』、モスクワ、1956; Gawlikowskiの『チェス終盤集(Koncowa Gra Szachowa)』第2巻、1954、第3巻、1957、ワルシャワ(ピースの終盤の集大成)である。
 根気強く校正をしてくれたF. W. Allen氏、いろいろな方法で分析を手伝ってくれたvan den Berg氏、かけがえのない調査をしてくれたK. Whyld氏たちの寛大な協力にも感謝したい。

M. エイベ博士、アムステルダム
デイヴィッド・フーパー、イングランドのライゲート
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posted by 水野優 at 00:50| Comment(0) | Euwe『チェス終盤の手引き』終盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする