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2006年03月28日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム11

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部
(第1部のほとんどと第2部のゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 11

白:シュレヒター 黒:ヤノウスキー

ルイ・ロペス(第1部と比較されたし)

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bb5 Nf6 4 0-0 Nxe4

 最近好まれる変化は、...d6と ...Be7(第1部参照)。

5 d4 Be7

 白の望み通りに 5...exd4としてファイルを開くととても危険なのは明かである。その手は「リガ・ヴァリエーション」(ゲーム 17参照)という防御手順で指すことができる。その場合、キング側ビショップのダイアゴナルを閉じられる利点がある(訳注:黒が ...Bc5としたときに白が有利という意味?)。「リガ・ヴァリエーション」を指した いなら 3...a6としておく方が良い。

6 Qe2 Nd6 7 Bxc6 bxc6 8 dxe5 Nb7 9 Nc3 0-0 10 Re1 Re8

 第一部で触れた駒繰り、つまり ...Nc5-e6で ...d5を可能にすることが、クイーン側ビショップの展開に欠かせない。黒が本局で負けるのは、白がこのビショップを永久に封じ込めることができるから である。

11 Qc4 Nc5

 c6のポーンが、dポーンを進めたときに「浮き駒」にならないために。

12 Ng5! Bxg5 13 Bxg5 Qxg5 14 Qxc5 Re6

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図114
r1b3k1/p1pp1ppp/2p1r3/2Q1P1q1/8/2N5/PPP2PPP/R3R1K1 w - - 0 15

 この交換後の局面は明らかに白に有利である。ルックの邪魔にもなっている未展開のビショップと比べて、白のナイトは動きやすい。黒のクイーン側ポーンが 弱いので、黒が ...d5からビショップを繰り出せても、白に勝機がある。14...Re6は、c6を守って再び ...d5を準備している。

15 Qd4 Bb7

 唯一のチャンスは ...c5のポーン・サクリファイスで、ビショップがg2に利くメイトの狙いがあり、a8のルックが自由になる。

16 Qb4 Bc8 17 Ne4

 見事な指しぶり。黒がポーンを取れば、白はクイーン、ルック、ナイトで総攻撃する。黒はクイーンしか牽制できないので結果は疑いない。例えば、 17...Qxe5 18 Nc5 Qd6 19 Qc4 Rxe1+ 20 Rxe1 h6 21 Re8+ Kh7 22 Qe4+ g6(22...Qg6? 23 Qxg6+から Nxd7) 23 Nd3から Re7.

17... Qe7 18 Nc5 Rg6 19 Re3 a5 20 Qd4 Rb8 21 c4

 ...Rb5を防いでいる。

21... h6 22 b3 Kh7 23 Rd1 Qg5 24 Rg3 Qf5 25 Rxg6 fxg6

 黒はキングの周りにポーンの壁を造ったが、白が集結できる圧倒的な戦力には通用しない。

 白のプランは明白である。ポーンを進めて黒キングの取り巻きを破壊し、その間は常にクイーン側で黒を自由にさせないように気をつける。そうすれば、白の ピースはたやすく突破できるので、黒は防御を強いられる。

26 h3 Ra8 27 a4

 ...a4のポーン・サクリファイスから黒のルックに活動させるのを防ぐため。

27... Rb8 28 Rd3 Qg5 29 Kh2 Qe7 30 f4 Qf7 31 e6!!

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図115
1rb5/2pp1qpk/2p1P1pp/p1N5/P1PQ1P2/1P1R3P/6PK/8 b - - 0 31

 黒がポーン・サクリファイス ...d6で達成できたかもしれないクイーン側解放のラストチャンスを奪う絶妙手。

31... dxe6 32 Qe5 Qe7 33 g4 Rb4 34 Kg3 Rb6 35 h4 Qf8 36 h5 gxh5 37 Qxh5 Rb8 38 Qe5 Rb6 39 g5 h5 40 g6+

 終わりは近い。Qxh5は白が加速するので黒は取るべきだった。

40... Kxg6 41 Qg5+ Kh7 42 Qxh5+ Kg8 43 Qg5

 Rd8を狙っている。

43... Kf7 44 Rd8 Qe7 45 Qh5+ 1-0

 クイーン取りと数手のメイトが避けられない。黒は全局を実質的に2ピース損で戦ったので、メイトは時間の問題に過ぎなかった。


 ひと頃、欲しいけど品切れで手に入らない〜という声があちこちで聞かれていた(ほんとか)超お得な問題集が再版されてトップセラーを続けてい る。1104ページにゲームや問題が詰まって2千円しないのだから他の著者泣かせ、コツコツとチェス書を和訳しようなどという者泣かせである(泣。
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posted by 水野優 at 15:57| Comment(0) | Ed.Lasker『チェス戦略2』実戦(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月21日

Ed.ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム10

 神戸チェスクラブMLの記事で、「ボビー・フィッシャーを探して」の主人公ことIMジョシュ・ウェイツキンが、事実上チェスを引退していることを知っ た。かつて彼の本を1冊書評したこともあるが、何と言っても彼ががんばってくれないと、翻訳を出せるチャンスはますます遠のく。
 本家フィッシャーは隠遁することで伝説に箔が付いたのかもしれないが、ジョシュの場合はやめたらただの「元神童」だ。記事によれば、映画の件でいろいろ プレッシャーにも苦しんだようでかわいそうな面もあり、お疲れ様と言っておこう。


エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部
(第1部のほとんどと第2部のゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 10

白:タイヒマン 黒:相談して指すアマチュア

ツー・ナイツ・ディフェンス

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bc4 Nf6 4 0-0

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図111(訳注:原文では 4 0-0前になっている)
r1bqkb1r/pppp1ppp/2n2n2/4p3/2B1P3/5N2/PPPP1PPP/RNBQ1RK1 b kq - 0 4

 ポーン・サクリファイスは、eファイルをルックのために開く考え方に基づいている。正しく応じれば、黒は何とかキャスリングもでき、白はポーンを取り返 せても有利にはならないことが、以下に見て取れる。現代のマスターはほとんど指さない定跡である。

 本譜手の代わりに、白はeポーンを 4 Nc3で守ることもほとんどできない。黒が単純にポーンを取り(訳注:4...Nxe4 5 Nxe4)、5...d5でピースを取り返して十分な局面になるからである。白が 4...Nxe4に対して 5 Bxf7+とすれば黒はさらに有利になる。白のeポーンを取ることは、黒のfポーンを取ることよりはるかに重要で、特にa2〜g8ダイアゴナル上で手強い 白のビショップ交換はもったいない。例えば 5...Kxf7 6 Nxe4 d5 7 Neg5+ Kg8! 黒は ...h6, Kh7, Rf8と続けて開いたラインをルックとビショップに活用する。

4... Nxe4

 もちろん、黒は 4...Bc5と展開することもできる。すると、マックス・ランゲ・アタック(5 d4 exd4)に突入するか、5...Bxd4として有力なビショップをあきらめざるを得ない。その場合、白はポーンを失ってから 6 Nxd4 Nxd4 7 f4 d6 8 fxe5 dxe5 9 Bg5後、いずれ Qf3とする。

5 d4

 すぐに 5 Re1はメリットがない。

5... exd4 6 Re1 d5 7 Bxd5! Qxd5 8 Nc3

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図112
r1b1kb1r/ppp2ppp/2n5/3q4/3pn3/2N2N2/PPP2PPP/R1BQR1K1 b kq - 0 8

 この攻撃は、シュタイニッツによって徹底的に分析された。クイーンがまたすぐにマイナーピースで攻撃を受けない唯一のマスはd8しかない。8...Qd8なら、黒は極めて満足のいくゲームにできる。9 Rxe4 Be7 10 Nxd4 f5. ルックを場違いにさせようとするピルズバリーの手である。黒は、ポーンがばらける代償として2つのビショップに開いたラインを得る。11 Rf4 0-0 12 Nxc6 Qxd1+ 13 Nxd1 bxc6. ここから白が妥当なプランを見つけるのはたやすくない。黒は ...Bd6から ...f4で白陣をしびれさせようとしているからである。したがって、白は 14 Rc4から Bf4としてこれに対抗する必要がある。黒が初志貫徹で 14...Bd6 15 Bf4となれば、白は、ビショップ交換を意図しながら黒の ...c5を誘ってdポーンを「出遅れ」にさせる。

8... Qh5 9 Nxe4 Be7 10 Bg5 Be6 11 Bxe7 Nxe7 12 Ng3 Qh6 13 Qxd4 0-0 14 Rad1

 白は展開で先行し、両ルックを活動させ、クイーンの位置も良くなった。白のクイーンは ...Rd8と攻撃されない。白はあっさり Qxd8と取ればいいからである。クイーンが黒のナイトで追い払われると、白はナイトを交換してからクイーンを同じ支配的な位置にもどし、やがて黒のク イーン側ポーンの配置を狂わせる。

14... Nc6 15 Qa4 Rad8 16 Nd4! Nxd4 17 Rxd4 Rxd4 18 Qxd4 b6 19 Qe5 c5

 ポーンの前進で生じたひじょうにわずかな弱点が黒を苦しめる様は、教訓的である。もう黒がcポーンで守れないd6に白のナイトが居座り、黒陣全体を麻痺 させる。白陣のもう一つの優れた要素は、eファイルの支配である。黒のルックは、ポーンを進めてキングの逃げ道ができるまで動けない。しかし、すでに見た ように、そういうポーンの前進は相手ピースの侵入を許すことが多い。

20 f4 Bc8

 もちろん 20...Bxa2は、21 b3から Qb2のために良くない。e6に留まれないビショップはb7へ向かい、...Qc6のメイトの狙いで白ピースを自制させることもできる。

21 f5 Bb7 22 Qe7 Qc6 23 Re2 f6

 強制的である。さもないと f6の前進がgポーンの前進を強いるので、どのみち致命的となる。...g6には、白はfポーンを守りつつクイーンをh6へ運ぶ。...gxf6には、 Nh5-f6で黒はメイトの包囲網にかかる。

24 Ne4 Qd5 25 Nd6 Bc6

 Qxf8+から Re8#の狙いがあった。

26 h3

 ...Qd1+に対して Kh2と退くためである。26 h3は、g3マスを無防備にするという弱点を作るが、黒にはそれにつけ込むピースがない。ルックは動けないし、ビショップは白マスにいる。黒のビショップ が黒マスにいれば、26 h3はひじょうに疑わしい手になっていた。黒がg3を利用して切り込めたかもしれないからである。

26... c4

 黒のクイーンを 27 c4で駆逐し Qe6+から5手でメイトにする白の狙いがあった。

27 c3 h6

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図113
5rk1/p3Q1p1/1pbN1p1p/3q1P2/2p5/2P4P/PP2R1P1/6K1 w - - 0 28

 27...h6によって、メイトの狙いでクイーンを取られることはなくなった。しかし、g6が弱点となり、白に派手につけ込まれる。白は、キング自身を g6まで進めてg7でのメイトの狙いを断行する。黒のクイーンによる幾度の襲撃にもかかわらず、この風変わりな作戦は有終の美を飾る。黒は、26 h3による弱点をこれ以上実証できなかった。

28 Kh2 b5 29 Kg3 a5 30 Kh4 g6

 ここで 31 fxg6だと、黒は1手お先にメイトする(31...Qg5#)。もちろん、白がまず脅威を取り去れば黒に打つ手はない。

31 Re3 Qxg2 32 Rg3 Qf2

 32...g5+に、白は 33 Kg4とできない。見事なメイト 33...Bf3#があるからである。白は 33 Kh5から Kg6とする。

33 fxg6 Qf4+ 34 Rg4 Qf2+ 35 Kh5 1-0

 ピースの優勢な配置が、相手ピースを徐々に無能にし、ポーンの前進を強い、決定的な侵入の機会を得ることによって、間接的に勝利を導く様を披露する点 で、ひじょうに教訓的なゲームである。


 HPの翻訳連載は全部ブログで先に発表することにしたとはいえ、1回分の量が多いこの『チェス戦略』第2部はしんどい。このシステムにすると amazonの リンクが貼りにくいのも欠点だが、思いついたものを適当に紹介していく(汗。
 ボトヴィニクの本で最もためになる本というと↓だろう。若い頃の著作だから選んだゲームも古いし棋譜も英米式だが、量と値段を考えるとかなりお得な本 だ。私が将来翻訳出版する予定リストにこういうゲーム集まで入るかどうかは微妙だが、彼の本の中では筆頭に入るだろう。
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posted by 水野優 at 17:36| Comment(4) | Ed.Lasker『チェス戦略2』実戦(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする