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2006年12月13日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』2部ゲーム48

ゲーム 48

白:ブラックバーン 黒:ニムツォヴィッチ

変則オープニング

1 e3 d6

 黒の応手のせいで変則的な序盤になった。1...d5とすれば、無難なクイーンポーンの定跡になったか、2 f4後にダッチ(バード)・オープニングになっただろうに。

2 f4 e5 3 fxe5 dxe5

 黒が優勢になった。センターにポーンがあり、ピースの自由度も勝っている。

4 Nc3 Bd6

 前例があったように、ビショップよりナイトを先に繰り出す方がやや良い。ナイトの方が、指し手の選択肢が制限されているからである。4...Nf6 5 Nf3 Bg4 6 Be2 Nc6の可能性もあった。

5 e4

 白もセンターにポーンを進めたが、展開で1手後れている。

5... Be6 6 Nf3 f6 7 d3 Ne7 8 Be3 c5 9 Qd2 Nbc6 10 Be2 Nd4 11 0-0 0-0 12 Nd1 Nec6 13 c3

 黒はd4を支配して優位に立った。白のcポーンの前進は、居座る黒のナイトに指さされたようなもので、白はdポーンが「出遅れ」になってしまう。

13... Nxe2+ 14 Qxe2 Re8

 ここで 15 d4だと総交換後に ...Bd5でeポーンを失う。

15 Nh4

 白のキング側での反撃が脅威になってきたので、黒はクイーン側での作戦を細心の注意をもって続けねばならない。黒は、キング側の防御のためにいつピースを集結させることになるか分からないからである。

15... Bf8 16 Nf5 Kh8 17 g4 Qd7 18 Nf2 a5

 黒は、クイーン側のファイルを開きたい。

19 a3

 クイーン側ルックを(aポーンの守りから)解放する。

19...b5 20 Rad1 Rab8 21 Rd2 b4 22 axb4 axb4 23 c4 Ra8 24 Qf3 Ra2

 白のdポーンの弱さにつけ込んでクイーン側での優位を目指す前に、黒は、白が危険な戦力を結集したキング側に気をつけるべきである。24...Ra2後、ルックは全く蚊帳の外となる。

25 g5 g6?

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図167
4rb1k/3q3p/2n1bpp1/2p1pNP1/1pP1P3/3PBQ2/rP1R1N1P/5RK1 w - - 0 26

 黒は単純に 25...fxg5とすべきだった。26 Bxg5 Nd4 27 Nxd4 Qxd4 28 Be3 Qd6. 25...g6後は、白の攻撃が圧倒的になる。

26 Ng4!

 白は2つのナイトと引き換えに1つのルックと2つのポーンを得る。これ自体は等価交換である。しかし、この状況では決定的に白に有利となる。黒は、手薄なキングの守りにルックをもどすのに手数がかかるから。

26... gxf5 27 Nxf6 Nd4

 27...fxe4なら、28 Qh5 Qf7 29 g6 Qxg6+ 30 Qxg6から Nxe8で白勝ち。

28 Qf2 Qc6 29 Nxe8 Qxe8 30 Bxd4 exd4 31 exf5 Bd7 32 Re1 Qf7 33 Qh4! Ra8

 33...Bxf5は、34 Rf2から Ref1とされて良くない。

34 Rf2 Bc6 35 Qg4

 g6でhファイルを開いて両ルックでキングを攻撃する狙い。

35... Re8 36 Rxe8 Qxe8

 ...Qh5とするために 36...Bxe8の方が良かっただろう。クイーンがなくなれば、2ビショップを持つ黒に勝つチャンスも生まれる。しかし、白は交換を避けて 37 Qf4後にルックでeファイルを制圧するかもしれない。

37 Re2 Qd7 38 Re6 Ba8

 ...Qb7か ...Qa7とするため。

39 g6! hxg6

 39...Qb7 40 Re8!, 39...Qa7 40 Qh4. いずれも白の勝ち。

40 Rxg6 Qh7 41 Qg3

 狙いは Qe5+.

41... Qh5 42 Rg4! 1-0


 2部(ゲーム集)の途中からブログ更新と平行したからとはいえ、最初に翻訳し始めたこのエドワード・ラスカーの『チェス戦略』、やっと終わりました(最後の定跡表はブログでは割愛)。実は序文や最初のルールが未訳ですが、おいおいHPでのみ補完します。
 次回からは、ソコルスキーの『現代定跡の理論と実践』から本ブログで連載していた第2部の定跡解説で、「別ゲーム」として割愛していた実戦解説を紹介していきます。年代はこれよりずっと新しくなり、旧ソ連のレアなChessGames.comにもないゲームも出てきます。
posted by 水野優 at 00:35| Comment(2) | Ed.Lasker『チェス戦略2』実戦(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月06日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』2部ゲーム47

ゲーム 47

白:タルタコーワ 黒:Asztalos

ダッチ(バード)・オープニング

1 f4 d5

 この白の展開を無視した初手をとがめるポーン・サクリファイス 1...e5が試みられてきた。2 fxe5 d6 3 exd6 Bxd6から、黒の戦力がすばやく機動的になる。しかし、この攻撃−フロム・ギャンビットと呼ばれる−は、最善の防御に対しては優勢になれないようである。タルタコーワ対シュピールマンのマッチ戦(ウィーン、1913年)では、白が以下のように勝った。

4 Nf3 g5 5 d4 g4 6 Ne5 Nc6 7 Nxc6 bxc6 8 g3 h5 9 Bg2 h4 10 Qd3 Bd7 11 Nc3 Rb8 12 0-0 hxg3 13 hxg3 c5 14 Bf4 Bxf4 15 Rxf4 Qg5 16 Ne4 Qh6 17 Nxc5 Nf6 18 Nxd7 Nxd7 19 Qe4+ Kd8 20 Rxf7 Re8 21 Qxg4 Qe3+ 22 Kf1 1-0

 1 d4に対して黒が ...f5とするのは、ダッチ・ディフェンスである。1 d4 f5から白が 2 e4とポーンをサクリファイスすることもでき、この場合はフロム・ギャンビットの黒よりもはるかに白は好都合である。すでにdポーンを進めている白は優位に向かっている。例えば、2 e4 fxe4 3 Nc3 Nf6 4 f3 または 4 Bg5から f3. 黒がfポーンを取ると、白の攻撃が強烈である。極端な実例が以下の短局に見られる。ペトログラードでの大学大会で二人の学生によって指された。4 f3 exf3 5 Nxf3 e6 6 Bg5 Be7 7 Bd3 0-0 8 0-0 b6 9 Ne5 Bb7 10 Bxf6 Bxf6 11 Bxh7+ Kxh7 12 Qh5+ Kg8 13 Ng6 Re8 14 Qh8+ Kf7 15 Ne5+ Ke7 16 Qxg7+!! Bxg7 17 Rf7+ Kd6 18 Nb5+ Kd5 19 c4+ Ke4 20 Re1#.

 4 f3に対する黒の最善手は 4...d5 (5 Bg5 Bf5)である。4 Bg5に対しては、まだ 4...d5とできない。白の Bxf6, Qh5+から Qxd5の狙いがあるからである。この場合はまず 4...c6としなければならないので、白は再び 5 f3として強力に攻撃できる。

 黒は 1 d4 f5後に 2 e4とされる攻撃を 1...e6を先に指すことで防ぎ、次に 2...f5としてダッチ・ディフェンスにすることができる。しかし、白の 2 e4でフレンチ・ディフェンスになることも覚悟する必要がある。

2 e3 e6 3 Nf3 c5 4 b3 Nc6 5 Bb5 Nf6

 白がc6で交換すれば黒にダブルポーンを作れるので、黒は 5...Bd7とすべきだった。ダブルポーンそれ自体は欠点ではないが、この局面では黒のクイーン側ビショップの出場所が得難いために深刻な問題となる。 白がe5に十分な戦力を利かせているために ...e5とできる見込みがないからである。

6 Bb2 Be7 7 0-0 0-0 8 Bxc6 bxc6 9 Ne5 Qc7 10 d3 a5

 黒がe5で交換する試み ...Nd7から ...f6になら、白はすぐに Qg4で対抗する。10...a5によって、黒はクイーン側で仕掛け始めた。白がキング側で攻勢なので全く正しい判断である。

11 Qe2

 白は 11 a4として黒のaポーンのさらなる前進を防ぐべきだった。これはいかなる場合でも理にかなった方針であり、それなら黒のルック向けにaファイルがこじ開けられることもなかった。

11... a4 12 Nd2 axb3

 時期尚早。この交換は、aファイルを抑え込めなければ功を奏さない。そのためには、まず ...Bb7から両ルックとクイーンでaファイルを支配する必要がある。本譜では、ルック交換後にクイーン側ビショップが足手まといとなり、終盤戦で黒は 不利になる。

  a b c d e f g h  
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  a b c d e f g h  
図165
r1b2rk1/2q1bppp/2p1pn2/2ppN3/5P2/1p1PP3/PBPNQ1PP/R4RK1 w - - 0 13

 12...axb3の代わりに黒が 12...a3 (13 Bc3? d4! 14 exd4 Nd5)でビショップを追い払っていたら、黒は強引に ...e5とできたが、長い目で見ると白にaポーンを取られるので、aファイルに白のパスポーンが残って終盤戦の脅威となる。例えば、12...a3 13 Bc1 Nd7 14 Nxd7 Bxd7 15 e4 f6 16 c4から Nb1.

13 axb3 Rxa1 14 Rxa1 Bb7 15 g4

 黒のピースがキング側から遮断されているので、白は自由に攻撃できる。

15... Ra8 16 Rxa8+ Bxa8 17 g5 Nd7 18 Ndf3 Nxe5 19 Bxe5 Qa5 20 c4

 黒がポーン・サクリファイス ...c4から ...c5でビショップを解放するのを防ぐため。

20... Bb7 21 Kf2 Kf8 22 h4 Ba6 23 h5 Bb7 24 h6 g6

 hポーンの前進によって白は黒のf6を弱体化し、ナイトをそこへ据えてhポーンを取るぞという脅威を常に与え続ける。

25 Kf1

 不要な手なのでおそらく時間切迫によるものだろう。正しいプランは、Qb2から Bc7か Bb8として Qh8+.

25... Qa3 26 Qb2

 終盤戦は明らかに白の勝勢である。ナイトをg4へ運んでf6やe5を脅かす。利き目は倍増する。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
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  a b c d e f g h  
図166
5k2/1b2bp1p/2p1p1pP/2ppB1P1/2P2P2/qP1PPN2/1Q6/5K2 b - - 0 26

 黒はビショップがe7、キングはfポーンの近くから離れられない。白のキングがb6までやってきてcポーンを取り、自分のbポーンをクイーンにする。黒 は ...Bd8としても、この白キングの侵入を防げない。白がビショップでc5を攻撃(Bd6)すれば、黒のビショップは必ずe7へもどらねばならないからである。ゲームの残りは解説不要だろう。

26... Qxb2 27 Bxb2 Bd6 28 Nh2 Ke8 29 Ng4 Be7 30 Be5 Kd7 31 Ke2 Ke8 32 Kd2 Kd7 33 Kc2 Ke8 34 Kb2 Kd7 35 Ka3 Ke8 36 Ka4 Kd7 37 Bb8 Kc8 38 Ba7 Kd7 39 Bb6 d4 40 e4 Ke8 41 e5 Kd7 42 Nf2 1-0

 白が Ne4から Bxc5とするから。
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posted by 水野優 at 00:08| Comment(4) | Ed.Lasker『チェス戦略2』実戦(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月22日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』2部ゲーム45

ゲーム 45

白:ルービンシュタイン 黒:シュピールマン

変則オープニング

1 d4 c5

 この手で、黒は大会の実戦で踏みならされた道筋を避けようとする。白は、2 e3で穏やかにクイーンズ・ギャンビットでよしとするか、あるいは 2 e4でシシリアン・ディフェンスにもできる。しかし、2 d5として黒のセンターをいくぶん封鎖することの方が多い。

 2 dxc5だと、黒が ...e6後に難なくポーンを取り返す。

2 d5 d6 3 c4

 4 e4とセットで考えると、3 c4の価値は疑わしい。黒がd4を支配できるようになるからである。cポーンは動かさず、d4へ来た黒の駒を c3として追い払えるようにしておいた方がいい。しかも、c4とすると白のキング側ビショップの邪魔になる。

3... g6 4 e4 Bg7 5 Bd3 e6

 ビショップの大ダイアゴナルをふさぐので ...Nf6とはしたくない。...Ne7なら、センターポーンの交換後に拠点となるf5を支配できるし、そうならなくてもfポーンの前進を支えられる。

6 Nc3 Ne7 7 Nge2

 7 Nf3の方が少し良かった。黒のクイーン側ナイトがe5に来るかもしれないから。

7... exd5 8 exd5 Nd7 9 f4

 9 f4でキングの守りが弱くなった。次に f5としてルックのためにファイルを開ける場合にかぎってこの手は正当化できる。しかし、黒もがっちりとf5を守っている。9 f4は ...Ne5から白のd3のビショップと交換されるのを防ぐ狙いだが、Bc2と退いておく方が良かった。

9... Nf6 10 Ng3 h5!

 白は f5とできない。...h4でナイトが攻撃されるからである。白は h4としてもこれを防げない。黒のナイトがg4に侵入してくるからである。黒陣の方が優勢で、すべてのマイナーピースをキング側に集結できる。一方、白の クイーン側ビショップはfポーンの思慮不足な前進のために威力を発揮できない。

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図163
r1bqk2r/pp2npb1/3p1np1/2pP3p/2P2P2/2NB2N1/PP4PP/R1BQK2R w KQkq h6 0 11

11 0-0 h4 12 Nge4 Nxe4 13 Bxe4

 黒のナイトがf5へ来たら交換するため、白はビショップで取り返さねばならない。13 Nxe4 Bd4+ 14 Kh1 Nf5だと、...Ng3+の狙いのために白のナイトがe4から離れられなくなる。いずれ黒は、白のナイトに交換を強要して優位を決定づけるだろう。例え ば、15 Qe1 Qe7 16 Rb1 Bd7 17 b3 0-0-0 18 Bb2 Qxe4 19 Bxe4 Ng3+ 20 Qxg3 hxg3 21 h3 Bxh3 22 gxh3 Rxh3+ 23 Kg2 Rh2+ 24 Kxg3 Rxb2 または 21 Bxd4 Rxh2+から ...cxd4, Rdh8.

13... Bd4+ 14 Kh1 Nf5 15 Bxf5 Bxf5

 白は、強力な2ビショップに対してなすすべがない。

16 Re1+ Kf8

 黒はキャスリングの機会を失ったが、この状況では大した損失ではない。いずれにせよ、黒のキング側ルックはhファイルに必要なので、キャスリングをするにしてもクイーン側しかなかっただろう。

17 Qf3

 hポーンのさらなる前進を防ぐために 17 h3としなければならなかった。g3の弱点は、黒のナイトがなくなったのでそれほど致命的ではない。ここから黒は、白にgポーンの前進を強要し、両ビ ショップがにわかに威力を増す。

17... h3 18 g3

 18...g418...Qh4とされるのでだめ。

18... Qd7 19 Bd2 Bg4 20 Qf1

 20 Qd3には 20...Qf5とされ、...Bf3#の狙いがあるために白はクイーンを交換できない。

20... Qf5

 狙いは ...Qc2.

21 Rac1 Kg7 22 Be3 Bf6

 黒は、貴重なビショップを交換してはいけない。

23 b3 Rhe8 24 Bf2

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r3r3/pp3pk1/3p1bp1/2pP1q2/2P2Pb1/1PN3Pp/P4B1P/2R1RQ1K b - - 0 24

 黒がeファイルにルックを重ねる狙いに対して他の手だてがない。24 Qf2なら、黒はクイーンをd3へ侵入させてからルックを重ねるので、白のビショップは守れなくなる。24 Bf2後、黒は2ルックと白のクイーンとの交換を強要する。一般的には白の不利にはならないが、キングが攻撃にさらされているために、白の敗北が早まる結果となる。

24... Bf3+ 25 Kg1 Bg2 26 Rxe8 Bxf1 27 Rxa8 Qd3!

 28 Rxf1なら 28...Qf3.

28 Re8

 28...Bxc3に対して 29 Re3とするため。

28... Qf3! 29 Kxf1 Qh1+ 30 Bg1 Qg2+ 31 Ke1 Qxg1+ 32 Kd2 Qxh2+ 0-1

 hポーンがクイーンになるから。
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2006年11月15日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』�2部ゲーム44

ゲーム 44

白:Dus Chotimirski 黒:Vidmar

クイーンポーン・ゲーム

1 d4 d5 2 Nf3 c5 3 c3 e6 4 Bf4

 黒がクイーン側ビショップを展開できないと必ずといって不利になることは、�1部で見た。しかし、白はdポーンが守られているので難なくそれがで き、...Qb6に対してもbポーンだけ気をつければいい。Qc1とすれば、クイーンがh6までのダイアゴナル上でにらみを効かせられる。

 4 Bf4の目的は、早々とe5を占領することである。しかし、本譜が示すように、これは功を奏さない。黒は ...Qb6で時間を無駄にせず、すぐに ...Bd6とすべきである。

4... Nc6 5 e3 Nf6 6 Nbd2 Bd6 7 Bg3 0-0 8 Ne5 Bxe5! 9 dxe5 Nd7

 これで、白にはセンターを保持する手段がなくなった。白が Nf3や f4でeポーンを守っても、黒は ...f6として事態にけりを付ける。

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図162
r1bq1rk1/pp1n1ppp/2n1p3/2ppP3/8/2P1P1B1/PP1N1PPP/R2QKB1R w KQ - 0 10

 白の序盤戦略が基づく作戦が実現不可能と実証されたので、白はプランを立てづらくなった。悪いなりにもましな作戦は、eポーンを捨てる代わりに黒のh ポーンを取ることである。しかし、黒が得る強力なポーンのセンターが物を言う。

10 Bd3 Ndxe5 11 Bxe5 Nxe5 12 Bxh7+ Kxh7 13 Qh5+ Kg8 14 Qxe5 f6 15 Qh5 Qb6

 黒は、パスポーンを作るために白のbとcのポーンを前進させたい(16 b3 e5 17 0-0 Qa5 18 c4 d4)。 この変化を避けるためには、白はクイーン側へキャスリングすればいい。しかし、これは黒に有利となることが判明する。すでに決着がついたことであ る。続く二連ポーンの孫撃において、黒は数手先んじている。孫撃されている白のポーンは、まだ初期位置にいるのだから。

16 0-0-0 e5 17 g4 d4 18 c4 Bd7 19 g5 fxg5 20 Qxg5 Rxf2 21 exd4 cxd4!

 好手である。黒は、手順でクイーン側ルックを活動させるためにeポーンを見捨てる。

22 Qxe5 Re8 23 Qg3 Ree2 24 Rhe1

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6k1/pp1b2p1/1q6/8/2Pp4/6Q1/PP1Nrr1P/2KRR3 b - - 0 24

 24 Rhg1も功を奏さない。24...Qh6 25 Qd3 Qf6 狙いは ...Bf5. 24 Rhe1は、苦痛に終止符を打つ。

24... Rxd2!! 0-1

 25 Rxd2 Rxd2 26 Kxd2 Qxb2+ 27 Kd3 Bf5+ 28 Re4 Qc3+ 29 Ke2 Qxg3で、黒のピース得となるからである。
Starting Out: 1 d4! (Starting Out)
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2006年11月01日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム42

ゲーム 42

白:カパブランカ 黒:アリョーヒン

クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド(第1章参照)

1 d4 d5 2 c4 c6 3 e3 Nf6 4 Nf3 e6 5 Nbd2 Nbd7 6 Bd3 Be7 7 0-0 0-0 8 Qc2

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図160
r1bq1rk1/pp1nbppp/2p1pn2/3p4/2PP4/3BPN2/PPQN1PPP/R1B2RK1 b - - 0 8

 黒はクイーン側ビショップの展開が、特に 8 Qc2で ...e5が阻止されるので困難である。8...Qc7な ら、9 e4から白のクイーンかナイトがe5にに らみを利かす。例えば、9...dxe4 10 Nxe4 e5 11 Neg5 Bd6 12 c5...

 したがって、黒はクイーン側ビショップをb7へ繰り出すために ...b6, ...Bb7 そして ...c5と展開しなければならない。cポーンを2度動かすことで、黒はこの序盤の通常の展開より1手損になる。しかし、それならまだましだろう。本局の ビショップは日の目を見るのが遅すぎた。

8... dxc4 9 Nxc4 c5 10 Nce5 cxd4 11 exd4 Nb6 12 Ng5

 黒がポーンを取れば、白はクイーンいじめで手得して全戦力を活動させる。黒のクイーン側は展開してないままなのに。例えば、12...Qxd4 13 Rd1 Qc5 14 Ng4 g6 15 Be3 Qa5 16 Rac1で強襲。もちろん黒がポーンを取る必要はないが、12...g6は意味がある。Qc3-h3でポーンの手を指させて黒を弱体化さ せる狙いがあるからである。

12... g6 13 Ngf3 Kg7

 ビショップのh6への侵入を防いでいる。

14 Bg5 Nbd5 15 Rac1 Bd7 16 Qd2 Ng8

 h6の弱点が黒陣の不利益に働く様に注目しよう。16 Ng8は弱 いマスを守るが、同時にナイトが戦線から離れることになる。白がクイーン側で優勢になるために、このナイトは戦線にもどるのが間に合わなくなる。

17 Bxe7 Qxe7

 17...Ngxe7だと、18 Ng4から Qh6の狙いに対してまた守られねばならないので無駄である。17...Ndxe7には、18 Be4 Rb8 19 Rc3から Rfc1.

18 Be4 Bb5

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r4rn1/pp2qpkp/4p1p1/1b1nN3/3PB3/5N2/PP1Q1PPP/2R2RK1 w - - 0 19

 ルックをいいマスへ追いやってしまう手だが、もう満足できる手がない。おそらく、Bxd5から Rc7の狙いを 18...Qd6で防ぐのが最善だったろう。それ でも 19 Bxd5に対してはポーンで取り返 さないと 20 Rc5から Rfc1とされる。開いたファイル上から白のdポーンを攻撃する機会は、黒がずっと意図してきたことだろうが、上記のように失われる。18...Bb5後でも、白が7段目を占拠するので黒陣はすぐに崩壊する。

19 Rfe1 Qd6 20 Bxd5 exd5 21 Qa5 a6 22 Qc7 Qxc7 23 Rxc7 h6

 24 Ng5から Ne6+の狙いがあった。

24 Rxb7 Rac8 25 b3 Rc2 26 a4 Be2 27 Nh4! h5

 gポーンを助けることはできない。

28 Nhxg6 Re8 29 Rxf7+ 1-0
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2006年10月25日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム41

ゲーム 41

白:ニムツォヴィッチ 黒:タラッシュ

クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド

1 d4 d5 2 Nf3 c5 3 c4 e6 4 e3 Nf6 5 Bd3 Nc6 6 0-0 Bd6 7 b3 0-0 8 Bb2 b6 9 Nbd2 Bb7 10 Rc1 Qe7 11 cxd5

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r4rk1/pb2qppp/1pnbpn2/2pP4/3P4/1P1BPN2/PB1N1PPP/2RQ1RK1 b - - 0 11

 クイーン側ナイトをc3ではなくd2へ繰り出す場合は、Ne5から f4と続けるのが最もありふれた手順である。11 Ne5に対して、11...cxd4 12 exd4 Ba3で、dポーンを弱めることはまだできない。13 Bxa3 Qxa3 14 cxd5 Nxe5 15 dxe5 Nxd5 16 Nc4から Nd6とされるからである。

11... exd5 12 Nh4

 黒に弱点となる ...g6を指させようとしている。そうなれば、白にはa1〜h8の大ダイアゴナル上の攻撃チャンスが生まれるが、明らかに2手をむだにした。黒は、白の 不利を展開で大いに上回ることができる。

12... g6 13 Nhf3 Rad8

 13...Ne4はまだ早い。14 dxc5 bxc5? 15 Bxe4 dxe4 16 Nxe4.

14 dxc5

 白陣は居心地が悪く、満足な変化を見つけるのが難しい。忍耐強いプランなら、Qe2, Rfd1, Nf1-g3がおそらく最善だったろう。14 dxc5はクイーン側で仕掛ける準備だが、黒のセンターでの見晴らしを良くさせてしまった。

14... bxc5 15 Bb5

 白は、...d4をサポートする黒のナイトを消したい。

15... Ne4 16 Bxc6 Bxc6 17 Qc2

 白は来るべき災難に気付いていない。さもなければ g3としただろう。その場合でも、2ビショップがあってクイーンとナイトが好配置の黒が優勢だが。

17... Nxd2

 メイトを狙う見事なコンビネーションの始まり。

18 Nxd2 d4!

 白がクイーンでナイトを取り返しても、黒はこの手を選んだだろう。

19 exd4

 19 e4の方がまだましだが、黒の攻撃は 19...f5から 20 f3 Bf4...で圧倒的となる。

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図159
3r1rk1/p3qp1p/2bb2p1/2p5/3P4/1P6/PBQN1PPP/2R2RK1 b - - 0 19

19... Bxh2+!! 20 Kxh2 Qh4+ 21 Kg1 Bxg2!

 エマヌエル・ラスカーも、同様の2ビショップ・サクリファイスを決めたバウアーとのゲーム(アムステルダム、1889年)で栄誉を称えられている。おそ らくそういう事情で、このタラッシュの名局は、ペトログラード大会(1914年)では名局賞の2位に甘んじたのだろう。

22 f3

 22 Kxg2なら、22...Qg4+ 23 Kh1 Rd5 24 Qxc5 Rh5+ 25 Qxh5 Qxh5+ 26 Kg2 Qg5+から ...Qxd2.

22... Rfe8

 22...Qg323 Ne4でだめ。

23 Ne4 Qh1+ 24 Kf2 Bxf1 25 d5 f5 26 Qc3 Qg2+ 27 Ke3 Rxe4+! 28 fxe4 f4+

 28...Qg3+の方が黒は2手早くメイトにできる。

29 Kxf4 Rf8+ 30 Ke5 Qh2+ 31 Ke6 Re8+ 0-1

 32 Kd7 Bb5# または 32 Kf6 Qh4#.

脚注:エマヌエル・ラスカー対バウアー:1 f4 d5 2 e3 Nf6 3 b3 e6 4 Bb2 Be7 5 Bd3 b6 6 Nc3 Bb7 7 Nf3 Nbd7 8 0-0 0-0 9 Ne2 c5 10 Ng3 Qc7 11 Ne5 Nxe5 12 Bxe5 Qc6 13 Qe2 a6 14 Nh5 Nxh5 15 Bxh7!! Kxh7 16 Qxh5+ Kg8 17 Bxg7! Kxg7 18 Qg4+ Kh7 19 Rf3 e5 20 Rh3+ Qh6 21 Rxh6 Kxh6 22 Qd7 そして白勝ち。


 ハイパーモダン派の新鋭ニムツォヴィッチと古典派の末裔タラッシュ、論敵同士の戦いはタラッシュの力業に軍配が上がった。そういえば新しいMy Systemはamazon発売後すぐに3〜5週間待ちの実質品切れに。また翻訳は先送りだ(汗。
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2006年10月18日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム40

ゲーム 40

白:ルービンシュタイン 黒:カパブランカ

クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド

1 d4 d5 2 Nf3 c5 3 c4 e6 4 cxd4 exd4 5 Nc3 Nc6 6 g3 Be6 7 Bg2 Be7 8 0-0 Rc8

 8...Rc8は、この時点ではふさわしくない。むしろ、類似の局面でよく生じるコンビネーションを許すことになる。つまり、黒のクイーン側ビショップを交換されて残ったeポーンが、白のキング側ビショップにh3〜c8ダイアゴナルから圧力を受けるのである。8...Nf6とすれば、その後の白にいかなる優位があるとも言いがたい。

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図157
2rqk1nr/pp2bppp/2n1b3/2pp4/3P4/2N2NP1/PP2PPBP/R1BQ1RK1 w k - 0 9

例えば、9 Bg5 Ne4 または 9 Be3 Ng4 または 9 a3 または 9 dxc5 Bxc5 10 Bg5 Be7. しかし、9 dxc5に対してクイーンで取り返すのは良くない。E. コーン対Ed. ラスカー(マッチ、1909年)では、9...Qa5 10 Ng5 Qxc5 11 Be3 Qa5 12 Qb3 この後、黒はポーンを1つ捨てねばならない。12... 0-0-0 13 Nxe6 fxe6 14 Bh3...

9 dxc5 Bxc5 10 Ng5 Nf6 11 Nxe6 fxe6 12 Bh3 Qe7 13 Bg5

 13 e4から exd5後に Bg5を狙う方が強力である。13...d4は 14 Nd5でとがめられる。

13... 0-0 14 Bxf6 Qxf6

 ここから、白が時機を見計らった複雑なコンビネーションでポーン得になる。カパブランカは、ルービンシュタインの巧妙な17手目を考慮していなかった。そうでなければ、すぐにポーンで取り返しただろう。しかし、その場合でも白の優勢は終盤まで続く。15 Nxd5 exd5 16 Qxd5+ Kh8 17 Bxc8. キング側が開けているので、白の両ルックがやがてそこで活躍できる。

15 Nxd5 Qh6

 15...Bxf2+はだめ。16 Kg2 Qf7 17 Nf4!

16 Kg2 Rcd8 17 Qc1

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図158
3r1rk1/pp4pp/2n1p2q/2bN4/8/6PB/PP2PPKP/R1Q2R2 b - - 0 17

17... exd5

 17...Rxd5なら、白はクイーンを交換してから Bxe6+とする。

18 Qxc5 Qd2 19 Qb5 Nd4 20 Qd3

 1ポーン得なので、白はクイーン交換を強要する。黒は拒否できない。20...Qxb2は 21 Rfb1でナイトを取られるし、20...Qb4は 21 Rfd1から Be6+でdポーンを失う。

20... Qxd3 21 exd3 Rfe8 22 Bg4

 22 Rfe1では、黒ルックの侵入を防ぐことができない。22...Nc2 23 Rxe8+ Rxe8 24 Rc1 Re2 25 Bg4 Rd2. 黒はポーンを取り返し、ナイト対ビショップの終盤さえ有利に運びかねない。

22... Rd6 23 Rfe1 Rxe1 24 Rxe1 Rb6

 黒は、まずキングをf6まで動かして白のルックがe5に来られないようにすべきである。dポーンだけが最重要ではなく、bポーンでもその埋め合わせは十 分できる。しかし、ナイトが威圧的な位置から追い払われれば、居心地の悪かったビショップが復活する。24...Rb6後でさえ終盤戦はひじょうに難解なため、勝利に導くためには ルービンシュタインの全力プレーが要求される。

25 Re5 Rxb2 26 Rxd5 Nc6 27 Be6+ Kf8 28 Rf5+ Ke8 29 Bf7+ Kd7 30 Bc4 a6

 黒の唯一の望みはクイーン側の余剰ポーンである。ナイトをビショップと交換するために 30...Kd6 31 Rf7 Ne5 32 Rxg7 Nxc4とするのは、最も大事な時間の浪費となる。白はその間にキング側を掃除してからhポーンを進め、クイーンをできるだけ早く作るために最終的には黒 の残っているポーンとルックを交換する。その後は、3つのパスポーンが黒のルックにたやすく勝てる。このようなルックの終盤では、できるだけ早くパスポーンを作るために数が多い側のポーンを進めるのが、一般的に賢明である。そうすれば、敵のルックはパスポーンがクイーンにならないように牽制せねばならず、相手の優勢なポーンに直面したときでも、より動きやすい自軍のルックが負けを防げることが多い。

31 Rf7+ Kd6 32 Rxg7 b5 33 Bg8 a5 34 Rxh7 a4 35 h4 b4 36 Rh6+ Kc5 37 Rh5+ Kb6 38 Bd5 b3

 白はルックを捨ててポーンを取る狙いだが、まだ有効ではない。Bc4から Rb5+, h5-6等としなければならない。38...b3後、白はプロブレムのような精緻な手順を披露した。

39 axb3 a3 40 Bxc6

 40...a2なら、白は単純に 41 Rb5+ Ka6 42 Rb8から Ra8

40... Rxb3 41 Bd5 a2 42 Rh6+ 1-0

 白のルックがaポーンを逃がさないからである。例えば、42...Ka5 43 Bc4から Ra6+、または 42...Ka7 42 Rh8...


 カパブランカの見落としそうな序盤の緩手をとがめたまま、カパの聖域終盤戦でそのまま押し切ってしまうルービンシュタイン。生涯34敗しかしてないカパとの初対戦での勝利である。ルービンシュタインの本、やっぱり買わねば(買ってないんかい)。
 Chess Fundamentalsを翻訳用にいつ買い直そうかと思ってたらPrimer of Chessもあったかあ。
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2006年10月11日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム39

ゲーム 39

白:Rotlewi 黒:ルービンシュタイン

クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド

1 d4 d5 2 Nf3 e6 3 e3 c5 4 c4 Nc6 5 Nc3 Nf6 6 dxc5 Bxc5 7 a3 a6 8 b4 Bd6 9 Bb2 0-0

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図155
r1bq1rk1/1p3ppp/p1nbpn2/3p4/1PP5/P1N1PN2/1B3PPP/R2QKB1R w KQ - 0 10

10 Qd2

 白は 10 cxd5 exd5 11 Nxd5 Nxd5 12 Qxd5としても、ポーン得にはならない。12...Bxb4+でクイーンを取られるからである。10 Qd2は、クイーン側ルックをdポーンの攻撃に振り向けようと意図している。しかし、攻撃目標を固定するためにまず 10 cxd5とするのが正着だった。10 Qd2に対して、黒は白の狙いを逆手に取り 10...dxc4としてからルックをdファイルへ回せば、やがて白のクイーンに退却を余儀なくさせて手得になるからである。

10... Qe7!

 黒はdポーンをいらないと差し出す。白がこのサクリファイスに応じると、黒のdファイルでの攻撃が致命傷となる。白は、敵ルックの利き筋からクイーンが離れるために手損せざるを得ないからである。そうする間に、白キングの安全を確保する余裕もなくなる。例えば、11 cxd5 exd5 12 Nxd5 Nxd5 13 Qxd5 Rd8 14 Qb3 Be6から ...Nxb4等。

11 Bd3?

 ここでも 11 cxd5(続いて Be2, Rd1, 0-0)は、10手目の解説で指摘したように手損になる。11 Bd3後はさらにもう1手損する。黒がポーン交換すれば、黒のキング側ビショップがc5まで1手で進んだのに対して、白のビショップはc4まで2手かけて移動することになるからである。序盤での2手損は致命的であり、ルービンシュタインは本局をその顕著な実例へと仕立て上げる。

11... dxc4 12 Bxc4 b5 13 Bd3 Rd8 14 Qe2 Bb7 15 0-0 Ne5

 最後の手で黒が得た優位は、この定跡では通常白が得るものである(図36と比較)。しかし、本局では白が2手損しているので、黒はルックがdファイルでことのほか働いており、攻撃的な様相を呈している。

16 Nxe5 Bxe5 17 f4

 黒の狙いは、17...Bxh2+から ...Qd6+, Qxd3だった。17 Rfd1には 17...Qc7で、hポーンとナイトの両取りになる。eポーンをe4 または e5まで進めてどちらかのビショップのダイアゴナルを封鎖する必要があるので、17 f4も不満な手である。

17... Bc7 18 e4 Rac8 19 e5 Bb6+ 20 Kh1 Ng4!!

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図156
2rr2k1/1b2qppp/pb2p3/1p2P3/1P3Pn1/P1NB4/1B2Q1PP/R4R1K w - - 0 21

 とてつもない連続サクリファイスの始まりである。21 Qxg4は 21...Rxd3から ...Rd2等とされて良くない。

21 Be4 Qh4 22 g3

 22 h3でも、黒の勝ち方はすばらしい。22...Rxc3!! 23 Qxg4 Qxg4 24 hxg4 Bxe4 25 Bxc3 Rd3 ...Rh3#の狙い。または 23 Bxc3 Bxe4 24 Qxe4 Qg3 25 hxg4 Qh4#.

22... Rxc3!! 23 gxh4 Rd2!! 24 Qxd2 Bxe4+ 25 Qg2 Rh3

 そして...Rxh2でメイト。


 有名なルービンシュタインの「不滅」局である。発音に自信がないので原語のままにしているRotlewiは、前回38のタイヒマン戦でも引き立て役だったが、序盤で手損しながらも最後のコンビネーションに対してこれだけ粘ったから名局になりえたのだろう。陰の立役者にも拍手したい。
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2006年09月27日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム37

ゲーム 37

白:マーシャル 黒:カパブランカ

クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド(第1部参照)

1 d4 d5 2 c4 e6 3 Nc3 Nf6 4 Bg5 Be7 5 e3 Ne4

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図150
rnbqk2r/ppp1bppp/4p3/3p2B1/2PPn3/2N1P3/PP3PPP/R2QKBNR w KQkq - 0 6

 ラスカーはこの手をマーシャルとのマッチで使って成功したが、広く指されるまでには至らなかった。白は、6 Bxe7 Qxe7 7 Qc2 Nxc3 8 Qxc3 または 7 cxd5 Nxc3 8 bxc3 exd5 9 Qb3で優勢にできる。最初のケースでは黒のクイーン側ビショップが働けず、次のケースでは白のbファイルが開くからである。7 Nxe4は良くない。7...dxe4が、白ナイトのf3への自然な展開を邪魔し、黒がキャスリング後に ...f5-f4で攻撃できるからである。

6 Bxe7 Qxe7 7 Bd3

 これも、展開を進める好手。

7... Nxc3 8 bxc3 dxc4

 この場合、センターポーンの放棄は序盤の精神に反しない。黒のクイーン側ビショップが働けるように、そのダイアゴナルを開いたまでのことである。

9 Bxc4 b6 10 Qf3 c6 11 Ne2 Bb7 12 0-0 0-0 13 a4

 この手は、白が例えば Rfb1, a5とクイーン側で仕掛けるつもりなら好手である。しかし、白のクイーンの位置を考慮すれば、別のプランを採らざるをえない。一つには、この場合クイーンがキング側に陣取っているのだから、戦力をそちらへ集結する方が合理的なため。他には、クイーン側の作戦は、黒が ...c5, Nc6で a5を阻止できるので実行できないためである。明白なのは、e4でセンターを支配するプランである。...c5には d5と応じれば、白の両ルックはd1とe1でとても威力を発揮する。本譜では、白がキング側攻撃を続けるので、13 a4は明らかに手損である。

13... c5 14 Qg3 Nc6 15 Nf4 Rac8

 15...e5は魅力的だが、16 Nd5 Qd8 17 dxc5 Na5 18 Rfd1のために良くない。15...Rac8には、...cxd4, Nxd4, Rxc4の狙いがある。

16 Ba2 Rfd8 17 Rfe1 Na5

 ...Bc6で白のaポーンを狙っている。賢明にも白はすぐにこれをあきらめ、まっしぐらな攻撃の好機と考えた。黒の2つのピースはポーン取りで離散し ているのだから。

18 Rad1 Bc6 19 Qg4

 黒はまだaポーンを取れない。Nxe6から Bxe6+とされる。

19... c4 20 d5?

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図151
2rr2k1/p3qppp/1pb1p3/n2P4/P1p2NQ1/2P1P3/B4PPP/3RR1K1 b - - 0 20

 ここまで複雑にする必要はない。ルックのキング側への道を開くために e4とするのが理にかなっている。手順はこうなっただろう。20 e4 Bxa4 21 Nh5 g6 22 e5 Bxd1 23 Rxd1 そして Nf6の強襲、または 21...f6 22 Rd2で、白の攻撃チャンス。20 d5後は、単純に交換すれば 20...exd5 21 Nxd5 Bxd5 22 Rxd5 Rxd5 23 Qxc8+ Rd8 24 Qf5 g6 25 Qc2 Qa3 黒が優勢になる。しかし、黒はaポーンを取ることで深刻な危険を招く。

20... Bxa4 21 Rd2 e5 22 Nh5 g6 23 d6 Qe6 24 Qg5 Kh8

 黒は、f6とh6の弱点がたいへんにやっかいだと気付く。すぐに 24...Rxd6だと、25 Rxd6 Qxd6 26 Qh6!で負け。

25 Nf6 Rxd6 26 Rxd6 Qxd6 27 Bb1

 27 Qh4は 27...Kg7と応じられる。

27... Nc6

 黒は、マイナーピースを防御にもどさねばならない。それが間に合えば、終盤戦はクイーン側で簡単にけりが付く。

28 Bf5 Rd8

 28...gxf5は 29 Qh6とされるのでだめ。

29 h4

 白の攻撃手段は無尽蔵に見える。クイーンを交換すれば、白は以下のようにポーンを取り返せる。29 Bd7 Qf8 (29...Rxd7? 30 Qh6) 30 Bxc6 Bxc6 31 Qxe5 Qd6 32 Nd7+ Qxe5 33 Nxe5 Be8 34 Nxc4. しかし、これでも黒は、自由に進めるパスポーンがあって ...b5後にルックを7段目に突入できるので、終盤戦での優位を保っている。これが、マーシャルがポーンを取りもどさず疑惑の猛攻へ突進した理由であ る。しかし、カパブランカはその後の混戦の中から正着を見つけた末に勝利する。

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図152
3r3k/p4p1p/1pnq1Np1/4pBQ1/b1p4P/2P1P3/5PP1/4R1K1 b - h3 0 29

29... Ne7 30 Ne4 Qc7 31 Qf6+ Kg8 32 Be6

 ここでは強制的。白がビショップを退いて手損すれば、黒は ...Nd5から ...Qe7として陣形を立て直す。

32... fxe6

 32...Rf8には、33 Ng5! fxe6 34 Qxf8+...

33 Qxe6+

 33 Ng5よりいい。33...Nd5 34 Qxe6+後、黒のキングはg7で安全だから。

33... Kf8 34 Ng5 Ng8 35 f4

 ルックのためにファイルを開くため。

35... Re8 36 fxe5 Re7 37 Rf1+ Kg7 38 h5 Be8 39 h6+ Kh8

 39...Nxh6は 40 Qf6+でだめ。

40 Qd6

 白はできるかぎりの優位を求めたが、黒が戦力を防御に集中させたため、攻撃は成功しなかった。黒はまだメイトに気を抜いてはいけない。例えば、40...Qxd6? 41 exd6 Rxe3 42 Rf7 または 41...Rd7 42 Rf8.

40... Qc5 41 Qd4

 白は 41 Qxc5から Rf8を試せた。そうすればずっとルックでビショップを取る狙いが続いた。例えば、41 Qxc5 bxc5 42 Rf8 Rxe5 43 Nf3 Re7 44 Ng5... 黒は、勝つためにビショップを捨てて 43...Rh5とすべきように思える。しかしその場合、白にはこのすばらしいゲームの結末にふさわしいドローのチャンスがある。

41... Rxe5 42 Qd7 Re7 0-1


 すごいゲームだ。マーシャルは、トラップがらみの手が多いので書き(読み)間違いかと何度も思うし、カパは解説通りの1ポーンアップ終盤は当然見えていたはずなのに、マーシャルの攻撃を横綱相撲で受けきった。解説で疑問なのは、40...Qxd6? 41 exd6 Rxe3 42 Rf7に 42...Nxh6で白の勝ちが見えない。
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2006年09月13日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム35

ゲーム 35

白:レティ 黒:タルタコーワ

カロカン・ディフェンス

1 e4 c6 2 d4 d5 3 Nc3 dxe4 4 Nxe4 Nf6 5 Qd3

 白は、dファイルにルックを回すためにできるだけ早くクイーン側へキャスリングしようとする。

5... e5

 ここから黒は、白のセンターポーンを消すために2手を浪費する。それゆえ無分別な作戦である。...Nbd7, Nxe4, Nf6とするか他の駒を展開する手の方がいい。

6 dxe5 Qa5+ 7 Bd2 Qxe5 8 0-0-0!

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図148
rnb1kb1r/pp3ppp/2p2n2/4q3/4N3/3Q4/PPPB1PPP/2KR1BNR b kq - 0 8

 白は、メイトに導くとてつもないコンビネーションを用意した。このような早期に可能になるのは、相手が全く展開を無視した場合に限られる。

8... Nxe4 9 Qd8+!! Kxd8 10 Bg5+ Kc7 11 Bd8#.

 見事なメイト。10...Ke8なら 11 Rd8#.


 今回は短局だが有名なゲームである。相手のミスがそれほど目立たないうちに豪快なメイトになるフィニッシュは、入門書で引用するにはモーフィーの「あれ」よりお手軽かもしれない。しかし、これが気軽に指した非公式戦だったことは、タルタコーワの名誉のためにも言っておかねばなるまい。
 隠れカロカン本↓
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starCaro-Kannの本である。

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2006年09月06日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム34

ゲーム 34

白:エマヌエル・ラスカー 黒:ニムツォヴィッチ

カロカン・ディフェンス(第1部参照)

1 e4 c6 2 d4 d5 3 Nc3 dxe4 4 Nxe4 Nf6 5 Nxf6+ gxf6 6 Be2 Bf5 7 Bf3 Qa5+ 8 c3 h5!

 深遠な作戦である。白が差し出されたポーンに食いつけば手損になる。白はナイトを繰り出す前にビショップを退かねばならないからである。さらに、hファイルが開くのでクイーン側へしかキャスリングできなくなる。しかし、そこでは黒のクイーンが手ぐすね引いて待っている。白がポーン・サクリファイスに応じなくても 8...h5には意義がある。その場合でも白のキング側へのキャスリングはとても推奨できないが、逆に黒は ...Bh6として即座に白のクイーン側ビショップとの望ましい交換ができるからである。

9 Bxh5 Nd7 10 Bg4 Bxg4 11 Qxg4 0-0-0 12 Ne2 e6 13 Bf4 Qb5!

 先に展開を完了した黒は攻撃を開始する。

14 0-0-0!

 特にクイーン側へしかキャスリングできないので、ポーン形を致命的に損ねる 14 b3よりはるかにいい手である。ここから黒はポーンを2つ取るとはいえ、白の攻勢のため黒はドローに逃げるのに精一杯となる。

14... Nb6 15 Ng3

 ...Nc4に対して Qe2とするつもり。ここでも15 b3は念頭になく、15 Rd2も 15...Nc4 16 Rc2 Nxb2のために良くない(訳注:17 Rxb2 Ba3)。

15... Qd5 16 Kb1 Qxg2 17 Rdg1 Qxf2 18 Ne4 Qh4 19 Qf3 Nc4!

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図147
2kr1b1r/pp3p2/2p1pp2/8/2nPNB1q/2P2Q2/PP5P/1K4RR w - - 0 20

 黒がせっせとクイーンを4手動かして2個のポーンを取る間に、白は全戦力を集中させ、Rg4でポーンを取り返せるまでになる。19...Nc4はこの手を予期している。なぜならここで 20 Rg4だと、20...Qh5 21 Nxf6? Qf5+ 22 Ne4?? Nd2+ クイーン取り。

20 Ka1 f5 21 Ng5 Bd6 22 Bc1 Rd7 23 Rg2 Bc7

 うっとうしい白のナイトを ...Nd6-e4で消す狙い。

24 Rhg1 Nd6 25 Qe2 Ne4 26 Nf3 Qh3 27 a3

 白は「時間」切迫のように見える。そうでなければ、黒に ...f6, ...e5で危うくポーン得を維持する好機を許すほどに消極的である。

27...a6 28 Be3 Rhd8 29 Ka2 Rh8

 黒は、勝ちたいのなら 29...f6とすべきである。ピースの好配置を考慮して、白は何も危険を冒さず、どのポーンを動かしても起こりうる自陣の弱体化も避けようとする。

30 Ka1 Rhd8 31 Ka2 Re8 32 Rg8 Rxg8 33 Rxg8+ Rd8 34 Rg7 Rd7 35 Rg8+

 黒が堅実に指すかぎり、白にドロー以上は望めない。

35... Rd8 36 Rg7 Rf8 37 c4 Nf6

 白のルックを追い払うため。ここから白は、見事なコンビネーションで強制的にドローにする。

38 Bg5! Nh5 39 Rxf7! Rxf7 40 Qxe6+ Rd7

 40...Kb8は良くない。41 Qe8+ Ka7 42 Qxf7 Qxf3 43 Qxc7 狙いは Be7.

41 Ne5! 1/2-1/2

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2k5/1pbr4/p1p1Q3/4NpBn/2PP4/P6q/KP5P/8 b - - 0 41

 41...Bxe5後、42 Qe8+ Kc7 43 Qxe5+ パペチュアル・チェック。

 両棋士が陣形的(ポジショナル)に深い洞察力を披露したので、駒得とピースの動きやすさが興味深い方法で釣り合いを取る様が見られた。
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2006年08月23日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム32

ゲーム 32

白:エドワード・ラスカー 黒:ミーゼス

センター・カウンター・ディフェンス

1 e4 d5 2 exd5 Nf6

 3 c4とするのは良くない(第1章参照)。3...c6で、黒がポーン損の見返りにかなり良くなる。

3 d4 Qxd5

 3...Nxd5も可能である。いずれの場合でも、白は Nc3や c4で黒のクイーンを追い払って手得する。さらに、センターに白のポーンが残る。黒がクイーンで取り返すプランは、迅速にクイーン側キャスリングをして白のセンターポーンを ...e5で攻撃するためかもしれない。白はこのプランを警戒せねばならないが、黒が実行することもたやすくはない。クイーンが危険にさらされているからである。4 Nc34...Qa5は、クイーンを一時的に避難させる唯一の手だが、白が Bd2からナイトを動かして「開き」攻撃の狙いがあるので、黒のクイーンにはさらなる退却の準備が必要である。...c6でそれを準備できるが、ナイトが自然に繰り出すマスc6の邪魔になる。c6のナイトは白のd4ポーンに圧力をかけられる。クイーン側ビショップも、本譜で見るように、繰り出しにくくて攻撃目標になりやすい。

4 Nc3 Qa5 5 Nf3 Bf5

 5...Bg4は、クイーンの助けがないので、白のキング側からの攻撃を助長するだけである。例えば、6 h3 Bh5 7 g4 Bg6 8 Ne5(狙いは Nc4) 8...c6 9 h4 Nbd7 10 Nc4 Qc7 11 h5 Be4 12 Nxe4 Nxe4 13 Qf3 そして Bf4で白優勢。

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図145
rn2kb1r/ppp1pppp/5n2/q4b2/3P4/2N2N2/PPP2PPP/R1BQKB1R w KQkq - 0 6

6 Ne5! Ne4

 至急 ...c6として Nc4から Qf3に備えねばならない。もう黒は負けに等しい。白の優勢な戦力は猛攻を可能とし、黒は展開を完了する前にそれを思い知らさせる。

7 Qf3 Nd6

 7...Nxc3なら 8 Bd2.

8 Bd2 e6 9 g4 Bg6

 黒がf7を守らないと、10 Nb5 Nxb5 11 Qxf7+.

10 h4 Qb6 11 0-0-0 f6

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rn2kb1r/ppp3pp/1q1nppb1/4N3/3P2PP/2N2Q2/PPPB1P2/2KR1B1R w kq - 0 12

 強制的。11...Nc6はとがめられる。12 Nxc6 Qxc6 13 Qxc6 bxc6 14 Bg2 そして h5. 一方、11...Qxd4には、12 Bf4 Qc5 13 h5 f6 14 hxg6 fxe5 15 Bg5 そして Rxd6から Rd8#か Qf7#.

12 Nxg6 hxg6 13 Bd3 Qxd4

 13...Kf7や 13...f5も、黒の不十分な展開のために功を奏さない。

14 Bxg6+ Kd7 15 Be3 Qb4 16 a3 Qc4 17 Qxb7 Qc6 18 Be4 1-0
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2006年08月16日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム31

ゲーム 31

白:ジョン 黒:ヤノウスキー

シシリアン・ディフェンス

1 e4 c5 2 Nf3 Nc6 3 d4 cxd4 4 Nxd4 Nf6

 4...Nf6の目的は白に Nc3とさせることであり、おまけに c4を防いでもいる。c4として白がd5を支配すれば、...d5を阻止するだけでなく、黒のeポーンを動けなくさせる。eポーンを突けばdポーンが「出遅れ」になるからである。

5 Nc3 g6

 第1部で示したように、まず 5...d6としなければならない。いずれにせよ、黒が ...g6とするには注意が必要である。例えば、5...d6後に白が 6 Bc4とすると黒が 6...g6と返して以下のように続く。7 Nxc6 bxc6 8 e5! Ng4(8...dxe5? Bxf7+) 9 e6 f5 白優勢(シュレヒター対ラスカー戦参照)。

6 Nxc6 bxc6 7 e5 Ng8 8 Bc4 d5 9 exd6 exd6 10 Qf3

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図144
r1bqkbnr/p4p1p/2pp2p1/8/2B5/2N2Q2/PPP2PPP/R1B1K2R b KQkq - 0 10

 白には活動しているピースが3つあるのに、黒には1つもない。黒陣はすでに絶望的である。f7は 10...Qd7では守れない。なぜなら 11 Bxf7+ Qxf7 12 Qxc6+. 10...Qe7+でも、11 Be3 Bb7 12 0-0-0から 13 Rhe1で白の猛攻となる。

10... Qd7 11 Nd5

 白は、展開でかなり勝っていることと黒のキングが真ん中からほぼ逃げられないことを考慮し、前述した単純な変化とは違い、ルック向けに真ん中のファイルを開くため、ナイトのサクリファイスを決断する。

11... cxd5 12 Bxd5 Qe7+ 13 Be3 Rb8 14 0-0

 14 0-0-0の方が、クイーン側ルックを同時に繰り出せるのでさらに強力である。

14... Bg7 15 Bf4 Rb6 16 Bc6+ Rxc6

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2b1k1nr/p3qpbp/2rp2p1/8/5B2/5Q2/PPP2PPP/R4RK1 w k - 0 17

 16...Bd7なら、17 Bxd7+ Qxd7 18 Rad1 Qb7 19 Rfe1+ Ne7 20 Rxe7+ Kxe7 21 Bxd6+... または 18...Qc8 19 Bxd6...

 17 Re1なら、黒は 17...Bf6でもう少しがんばれただろう。しかし、17 Qxc6+後は、白戦力が猛攻へと集結する前に早くも崩壊する。

17 Qxc6+ Qd7 18 Rae1+ Ne7 19 Rxe7+! Kxe7 20 Re1+ Kf8 21 Bxd6 Kg8 22 Re8+ Bf8 23 Rxf8+ Kg7 24 Qc3+ 1-0
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2006年08月09日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム30

ゲーム 30

白:タラッシュ 黒:シュピールマン

シシリアン・ディフェンス

1 e4 c5 2 Nc3 Nc6 3 g3

 Nf3, d4とすばやく展開するのが望ましい。さもないと、黒がd4に地盤を築く余裕ができるからである。

3... g6 4 Bg2 Bg7

 黒のビショップの方がよく効いている。白のビショップの利き筋はeポーンにふさがれているからである。わずかな優位のようだが、これが後に甚大となる。序盤での各作戦の価値は、ピースに与える動きやすさに依存するという新たな教義が確立した。

5 Nge2 Nf6 6 d3

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r1bqk2r/pp1pppbp/2n2np1/2p5/4P3/2NP2P1/PPP1NPBP/R1BQK2R b KQkq - 0 6

 ここでも、6 d4とした方が開放的なゲームにできた。おそらく、白は 6...cxd4 7 Nxd4 Nxe4でポーン損になるのを恐れたのだろう。しかし、それは心配に及ばない。例えば、8 Nxc6 Nxc3 9 Nxd8 Nxd1 10 Nxf7!(10 Nxb7? Bxb7 11 Bxb7 Rb8) 10...Kxf7(10...Nxf2? 11 Nxh8 Nxh1 12 Nxg6 Nxg3 13 Nxe7) 11 Kxd1. 6 d4を恐れる理由は何もない。

6... d6 7 0-0 Bd7

 ...Qc8から ...Bh3としてビショップを交換するため。すると、白のh3とf3が弱点になる。

8 h3 0-0 9 Be3 h6

 黒もビショップの交換を阻止する。

10 Qd2 Kh7 11 f4 Ne8

 局面はひじょうに難しくなった。黒が優れたキング側ビショップの展開を最大に生かすには、クイーン側の前進が必要である。しかし、キング側ピースのクイーン側への移動は油断ならない。白が、圧倒的な戦力でキング側を攻撃するチャンスが生まれるかもしれないからである。

12 g4 Nc7 13 Ng3

 黒が ...b5-b4でナイトをd1へ追い払おうとする前に、白は 13 Rf2として Raf1を準備すべきだった。

13... b5 14 Nd1?

 14 Rae1の方がまだ良かった。14...b4 15 Nd1後にクイーン側を長く放置してもかまわないし、f5, h4, g5でキング側の攻撃を開始できる。14 Nd1後はクイーン側ルックが閉じこめられる。

14... Rb8 15 Ne2

 c3から d4とするためである。しかし、白はキング側の攻撃を始めたのだから、プランは全体的に一貫性を欠いている。ここから白は突然クイーン側のファイルを開くが、そこには黒の戦力が集結している。結果的に、白は両側で困難に陥る。キング側での攻撃をやめたとたんに、前進したポーンは、見ての通り弱点の元凶に過ぎなくなるからである。

15... b4 16 c3 bxc3 17 bxc3 Qc8 18 d4 cxd4 19 cxd4 Qa6 20 Rc1 Nb5 21 d5

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図143
1r3r2/p2bppbk/q1np2pp/1n1P4/4PPP1/4B2P/P2QN1B1/2RN1RK1 b - - 0 21

 21 d5は、白のキング側ビショップを閉じこめると同時に、黒のキング側ビショップのダイアゴナルを開いた。したがって、原則と照らし合わせるだけでもこの手は疑問である。実際、このおかげで黒は勝ちを決める見事なコンビネーションのチャンスを得た。 21 e5だけが検討に値する。これなら、相手のビショップが封鎖され、白ビショップのダイアゴナルが開くからである。

21... Nb4!! 22 Qxb4 Nd4 23 Qxd4 Bxd4 24 Nxd4

 3つのマイナーピースは一般的にクイーンに匹敵するとはいえ、この場合、白陣はたちまち崩壊する。ポーンの前進で生じた弱点が多すぎるために、黒の戦力に侵入を許してしまう。

24... Rfc8 25 Rxc8 Rxc8 26 Rf2 Qa3 27 Re2

 ...Ba4の狙いがあった。しかし、27 Re2も有効ではない。黒は、さらなる美しいコンビネーションでけりをつける。

27... Rc1! 28 Bxc1 Qxc1

 29 Re1なら 29...Qc5.

29 Nf3 Qxd1+ 30 Kf2 Bb5 0-1
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star評価が難しい本。特色があるのは確か。好みで星3つ。

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2006年08月02日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム29

エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 29

白:タイヒマン 黒:シュピールマン

シシリアン・ディフェンス(第1部参照)

1 e4 c5 2 Nc3 e6 3 Nge2

 d4 cxd4 Nxd4となれば、3 Nf3と同じことになる。しかし、黒が ...d5とすれば、白のナイトがe2にあることにつけ込める。例えば、3...d5 4 exd5 exd5 5 d4. ここで黒がポーンを交換しなければ、白は g3から Bg2としてキング側ビショップをセンターへ利かすことができる。

3... Nc6

 白は、このナイトとは後で交換できるので、いずれもう一つのナイトが出てくるf6からナイトを追い払うべきと思えばすぐに e5とできる。おそらく、3...Nc6より 3...Qc7で e5を阻止する方が賢明だろう。これは、ポールセンが提唱した古くからの防御である。黒のマイナーピースの展開が遅れるものの、堅い防御陣形を作り、開いたcファイルからクイーン側での攻撃機会を生み出す。例えば以下のように進む。3...a6 4 d4 cxd4 5 Nxd4 Qc7 6 Be3 Nf6 7 Be2 Be7 8 0-0 b5 続いて ...Bb7, d6, Nbd7等。

4 d4 cxd4 5 Nxd4 a6 6 Nxc6 bxc6 7 Bd3 d5 8 0-0 Nf6 9 Bf4 Bb4

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図142
r1bqk2r/5ppp/p1p1pn2/3p4/1b2PB2/2NB4/PPP2PPP/R2Q1RK1 w kq - 0 10

 白が e5から Qg4として弱体化する手 ...g6を強要できるので、黒は、e5に対して ...Nh5としてキング側の守りに1ピースを保てるように、すぐに 9...g6とすべきだった。11...g6後の黒は危険にさらされるので、白の攻撃は成功する。

10 e5 Nd7 11 Qg4 g6 12 Rfe1 c5

 もちろん、黒は 12...d4としてエクスチェンジ・サクリファイスに応じてはいけない。13 Ne4 Bxe1 14 Nd6+ Kf8 15 Rxe1 黒はメイトの包囲網に入って逃げられない。防御に必要な戦力を集める時間がないからである。12...c5も抵抗にはならず、白は見事なコンビネーションですばやく勝利を決める。

13 a3 Ba5 14 Bg5 Qb6

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r1b1k2r/3n1p1p/pq2p1p1/b1ppP1B1/6Q1/P1NB4/1PP2PPP/R3R1K1 w kq - 0 15

 14...Qc7でも同じ結果となる。

15 b4! cxb4 16 Nxd5 exd5 17 e6

 白の15手目の目的が明らかになった。それがなければ、今e1のルックが攻撃されていることになる。

17... f5

 17...Nc5は、18 exf7+ Kxf7 19 Re7+から Qf4とされてだめ。

18 exd7+ Kxd7 19 Bxf5+ 1-0
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2006年07月26日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム28

エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 28

白:アラピン 黒:ルービンシュタイン

シシリアン・ディフェンス

1 e4 c5

 一見すると手損のように見える。序盤戦略の主目的、つまりピースの展開に何も寄与していないからである。しかし、この手が間接的にせよ、その目的に貢献 していることが後に分かるだろう。手順前後によって、いずれ ...c5が指される他の定跡になるという可能性もある。他の定跡では、強力な白のセンター形を崩す手始めとして ...c5が使われる。それは同時に、ルックのためにファイルを開く準備でもある。

2 Nf3 Nf6?

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rnbqkb1r/pp1ppppp/5n2/2p5/4P3/5N2/PPPP1PPP/RNBQKB1R w KQkq - 0 3

 黒は、白の e5が明らかな手得になる間は ...Nf6とすべきではない。他に多くの展開する手がある。(訳注:2...Nf6 ニムツォヴィッチ・ヴァリエーションは現在でもマイナーだが、?が付くほど評価は低くない)

 黒のキング側ビショップを繰り出すマスがe7かg7かによって、2つの展開手順が可能である。e7の場合(ゲーム 29参照)は ...e6とする。g7の場合は、以下のような序盤手順が考えられる。2...Nc6 3 d4 cxd4 4 Nxd4 Nf6 5 Nc3 d6(先に 5...g6はだめ。白がナイト交換から e5でf6のナイトを追い払うから) 6 Be3 g6 そして ...Bg7. 白陣は、ピースの動きやすさと連動するセンターポーンがあるので優勢である。黒は、クイーン側ビショップの展開が悩みの種となる。それでも、黒陣はこぢ んまりしているので攻められにくい。

3 e5

 ルービンシュタインが 2...Nf6としたときにこの手を考慮していたことは間違いない。彼の作戦は、eポーンの前進を挑発することだった。このポーンはe4よりe5にいる方 が弱い。さらに黒のcポーンが、通常の白が d4とする援護を阻止している。しかも、黒の ...d5への白の妨害がなくなる。白は、単純率直にこのずる賢い作戦をとがめる。黒が白陣の弱点を実証する前に、白は攻撃が実るべく展開で優勢にな る。

3... Nd5 4 Nc3 Nxc3 5 dxc3 Nc6 6 Bc4 d6

 6...e6だと、7 Bf4でdポーンが動けなくなる。

7 Bf4 dxe5

 早くも、黒には満足に展開する方策がなくなった。dポーンが三重に攻撃されているので、eポーンは動けず、キング側ビショップもg7へ繰り出せない。 7...Bg4から ...Bxf3, dxe5としようとしても、8 Bxf7+でとがめられる。7...dxe5はクイーン交換になるが、同時に白の他のピースが展開すること がほぼ避けられない。白の有利な展開がやがて駒得になる様は教訓的である。

8 Nxe5 Qxd1+ 9 Rxd1 Nxe5 10 Bxe5 a6

 白の Bb5+の狙いは、10...Bd7では防げなかった。11 Bxf7+とされるからである。

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図141
r1b1kb1r/1p2pppp/p7/2p1B3/2B5/2P5/PPP2PPP/3RK2R w Kkq - 0 11

11 Bc7 Bg4 12 f3 Rc8 13 Bb6 Bf5 14 Bb3 e5 15 Ba4+ Ke7 16 c4

 白は 16 Rd5ですぐにポーンを取れた。16...Ke6なら 17 c4.

16... f6 17 Kf2 Kf7 18 Bd7! Bxd7 19 Rxd7+ Be7 20 Rhd1!

 ポーンは逃げられない。20 Rxb7は、20...Rb8があるから得策ではない。

20... Ke6 21 Rxb7 Bd6

 黒は投了してもおかしくなかった。時間の問題にすぎない。

22 Ba7 Rc6

 さもないと Rb6とされる。

23 Rxg7 a5 24 Rb7 Ra8 25 Rd5 h5 26 a4 h4 27 b3 Rac8 28 Rb5 1-0
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2006年07月19日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム27

エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 27

白:ニムツォヴィッチ 黒:タラッシュ

フレンチ・ディフェンス

1 e4 c5

 この序盤はシシリアン・ディフェンスと呼ばれる。しかし、白が採用した手順はフレンチ・ディフェンスの変化になった。

2 c3 e6 3 d4 d5 4 e5 Nc6 5 Nf3 Qb6 6 Bd3 cxd4

 黒は、白のdポーンが弱いことを実証しようとする。しかし、本局では白が十分に守ることができるのでeポーンも安泰のようである。したがって、eポーン を直接攻撃するために 5...f6とした方が良かったと思われる。ここでは 6...Bd7の方が 6...cxd4より良かった。これ以上d4の守りを強化できないので、白は dxc5とするしかなく、e5をピースで守らればならないという面倒なことになるからである。

7 cxd4 Bd7

 7...Nxd4 8 Nxd4 Qxd4は、9 Bb5+とされるのでだめ。

8 Be2

 8 Bc2は、...Nb4から ...Bb5があるので良くない。

8... Nge7 9 b3 Nf5 10 Bb2

 これで白のセンターはさらなる攻撃を免れた。たしかに白はキャスリングの権利を失うが、白が優勢なキング側で黒は何も仕掛けられないので、g3として 「人工キャスリング」を準備する余裕がある。

10... Bb4+ 11 Kf1 Be7

 ナイトを追い払う 12 g4に 12...Nh4と対抗できるようにした。

12 g3 a5

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図139
r3k2r/1p1bbppp/1qn1p3/p2pPn2/3P4/1P3NP1/PB2BP1P/RN1Q1K1R w kq a6 0 13

 この作戦は賢明ではない。白は 13 a4で対抗する。dポーン が三重に攻撃されている間はビショップとクイーンによる守りを邪魔できないので、クイーン側ナイトを唯一のルートa3から繰り出すためにいずれ必要な手で ある。この白陣の弱点を考慮すると、黒は、白の g4によってナイトを追い払われないようにしなければならない。したがって 12...h5が正着だった。この場合、白も ...g5-g4を防ぐために 13 h4としなければならず、対する黒は 13...g6としてから両ルックを連係させられる。...g6がキャスリングの前に必要なのは、白の Bd3がf5のナイトを攻撃するからである。ディスカバード・チェックがあるために、そのナイトでdポーンは取れない。例えば、12...0-0 13 Bd3 Nxd4? 14 Nxd4 Nxd4 15 Bxd4 Qxd4? 16 Bxh7+ そして 17 Qxd4.(訳注 13...Nxd4?はあいまい手だが、どちらのナイトでも同様だろう)

 図139では、黒の 12...a5が敗着であるばかりか、白の ピースがb5へ居座り続けることを許してしまった。黒のナイトがa5へ行くこともできなくなった。ナイトがa5にいれば、白の a4に対して ...Nb3と反撃できるのに。

13 a4 Rc8 14 Bb5 Nb4

 これらの小競り合いはピース交換にしかならないが、黒のキング側ルックが遊んでいる間は、有利になるのは白だけだと言える。

15 Nc3 Na6

 b5のビショップを追い払うためである。黒は不活発な自分のビショップと交換すべきだった。白のビショップはb1〜h7のダイアゴナルで効力を発揮する 可能性もあるが、黒のd7のビショップに未来はない。

16 Kg2 Nc7 17 Be2 Bb4

 黒はまだキャスリングできない。17...0-0なら、18 Bd3 Nh6 19 Bc1.

18 Na2 Na6 19 Bd3 Ne7 20 Rc1 Nc6 21 Nxb4 Naxb4 22 Bb1

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図140
2r1k2r/1p1b1ppp/1qn1p3/p2pP3/Pn1P4/1P3NP1/1B3PKP/1BRQ3R b k - 0 22

 白はこれまでの8手で展開を完了し、両ビショップは黒キングの攻撃を待ちかまえている。一方、黒は大したことはできなかった。それどころか、貴重なキン グ側ビショップを交換した上に、f5のナイトの退却にも甘んじた。黒のキング側は無防備なので、キャスリングには危険が伴う。ここで 22...0-0なら白は 23 Ng5とし、黒は ...h6か ...g6で陣形の弱体化を余儀なくされる。そして、白はgポーンやhポーンを前進して交換を強要し、ルックのためにファイルを開く。したがって、黒は キャスリングをあきらめてキング側ルックをfファイルで利かすことにする。このために、黒はまず ...h6としなければならないので、白は g4-g5でファイルを開こうとする。続きは以下の通りである。

22... h6 23 g4 Ne7 24 Rxc8+ Bxc8 25 Ne1

 白はまず、黒がキャスリングするかどうかを見定め、しばらくはc2とd3に利いているb4の黒ナイトとの交換を試みる。

25... Rf8 26 Nd3 f6 27 Nxb4 Qxb4 28 exf6 Rxf6 29 Bc1 Nc6 30 g5 hxg5 31 Bxg5 Rf8 32 Be3 Qe7 33 Qg4

 ビショップを解放しようとする ...e5を阻止している。33...Bd7には 34 Bg6+がある。白は、機動力が勝るピースによって驚くべき速さで勝利する。

33... Qf6 34 Rg1 Rh8 35 Kh1 Rg4

 黒は、gポーンを守ればもう少し持ちこたえられた。35...Kf8 36 Rg3 Rh4 37 Qd1 Kg8 38 Bg5 Qxd4(38...Rxd4 39 Qh5) 39 Rd3 Qxf2 40 Bxh4 Qxh4.

36 Qg3 Rxd4

 強制的。37 Bg5の狙いがあり、36...Rh8 37 Qxg7 Qxg7 38 Rxg7だとhポーンで白の楽勝。

37 Bxd4 Nxd4 38 Qxg7 Qf3+ 39 Qg2 Qxg2+ 40 Rxg2 Nxb3 41 h4 1-0
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2006年07月12日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム26

エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 26

白:カパブランカ 黒・ブランコ

フレンチ・ディフェンス

1 e4 e6 2 d4 d5 3 Nc3 dxe4 4 Nxe4 Nd7 5 Nf3 Ngf6 6 Nxf6+ Nxf6 7 Ne5

 黒がクイーン側ビショップをb7へ繰り出すプランを邪魔している。

7... Bd6 8 Qf3 c6

 9 Bb5+ c6 10 Nxc6が狙われていた。

9 c3 0-0 10 Bg5 Be7 11 Bd3

 ここで黒が何をしても、白の Qh3, Bxf6, Qxh7への対策として何か弱点を作らざるを得ないので、白の攻撃は成功に違いない。黒のプランがこのように全体的に抑圧されているのは、... dxe4でセンターを捨てた唯一の理由がクイーン側ビショップを長いダイアゴナルに置くことだったからである。もうクイーン側のピースはたやすく参戦でき な いし、できる頃にはすでに手遅れとなる。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図138
r1bq1rk1/pp2bppp/2p1pn2/4N1B1/3P4/2PB1Q2/PP3PPP/R3K2R b KQ - 0 11

11... Ne8

 ...f5で白のキング側ビショップの利きをさえぎろうとしている。同じ意図で ...g6とすれば、白は h4-5から hxg6としてルックを参戦させる。

12 Qh3 f5

 12...h6だとたちまちつぶされる。13 Bxh6 gxh6 14 Qxh6 f5 15 g4. 12...f5はキングへの速攻を回避するが、eポーンが「出遅れ」になるの で、白はすぐにこの弱点に目を付ける。

13 Bxe7 Qxe7 14 0-0 Rf6 15 Rfe1 Nd6 16 Re2 Bd7 17 Rae1 Re8 18 c4 Nf7 19 d5 Nxe5 20 Rxe5 g6

 21 Bxf5の狙いがあった。

21 Qh4 Kg7 22 Qd4 c5 23 Qc3 b6 24 dxe6 Bc8 25 Be2

 このビショップはやがてd5へ居座るので、黒がポーンを取り返そうとしまいと、ポーンか(ポーンを取れば)ビショップのピンに動きをしびれさせられる。

25... Bxe6 26 Bf3 Kf7 27 Bd5 Qd6 28 Qe3 Re7 29 Qh6 Kg8 30 h4

 キング前のポーンのつながりを断ち切ろうとする決定的な作戦。

30... a6 31 h5 f4 32 hxg6 hxg6 33 Rxe6 1-0

33 Rxe6
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
6k1/4r3/pp1qRrpQ/2pB4/2P2p2/8/PP3PP1/4R1K1 b - - 0 33

 33...Rxe6 34 Rxe6 Rxe6 35 Qxg6+でピース得。見事に簡潔なゲームである。
The Main Line French: 3 Nc3 (GAMBIT CHESS)
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2006年07月05日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム25

 造形で初めてパテを使ったが、思ったより速く乾くし粘っこいので弱ってしまった。元々、小さいへこみの修理やそれ自体で小物を作るには向いているが、私 のように大きな局面を全体的にならすには向いてなかったのかなあ。と、新ブログじゃなくここに書いてしまった(汗。


エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 25

白:エマヌエル・ラスカー 黒:タラッシュ

フレンチ・ディフェンス

1 e4 e6 2 d4 d5 3 Nc3 Nf6 4 Bg5 Bb4

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
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 1   1 
  a b c d e f g h  
図136
rnbqk2r/ppp2ppp/4pn2/3p2B1/1b1PP3/2N5/PPP2PPP/R2QKBNR w KQkq - 0 5

 このマカチョン・ヴァリエーションと呼ばれる防御は、全盛期のタラッシュが長年に渡って推奨した。最も目に付く変化 5 e5は複雑で、未だに最終的な判断が下されていない。5... h6が最善と考えられており、6 exf6 hxg5 7 fxg7 Rb8 8 h4 gxh4 9 Qh5 Qf6 10 Qxh4 Qxg7.

 白はたやすく展開するが、フレンチ・ディフェンスの多くの変化と同じく、黒はクイーン側ビショップの展開に苦心する。5...h6に対してビショップを 退くのは薦められない。6 Bh4 g5 7 Bg3 ビショップが非活動的になるので、黒のキング側ナイトが悠々とe4へ飛んでキング側ビショップと共同できる。この実戦例でのラスカーは、すぐに単純化する 効 果的な変化を選んだ。展開手順が全く違ったものになる。

5 exd5 Qxd5

 黒がポーンで取り返す(5...exd5)と、6 Qf3に対して孤立したダブルポーンを防ぐためには手損(6...Be7)せざるを得ない。5...Qxd5後にダブルポーンを作らされても、孤立しないので必ずしも弱点 にはならない。黒がキング側へキャスリングすると弱点になりうるが、そうしなければ、後に見るように白のセンターへ対して前進する黒のeポーンを支える強 みにもなりうる。

6 Nf3 c5?

 黒は、白がf6で交換する場合に備えて、クイーン側キャスリングの選択肢を残すべきである。6...b6から Bb7の方が良かった。

7 Bxf6 gxf6 8 Qd2 Bxc3 9 Qxc3 Nd7 10 Rd1 Rg8 11 dxc5 Qxc5 12 Qd2 Qb6

 ナイトが動く前にd8でのメイトを防ぐため。しかし、12...Qe7とした方が効果的だった。12...Qb6後は、まだ Bb5+があるためにナイトは動けない。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
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  a b c d e f g h  
図137
r1b1k1r1/pp1n1p1p/1q2pp2/8/8/5N2/PPPQ1PPP/3RKB1R w Kq - 0 13

13 c3 a6 14 Qc2 f5 15 g3 Nc5 16 Bg2 Qc7

 黒はeポーンを突きたい。しかし、白はただちに阻止する。

17 Qe2 b5 18 0-0 Bb7

 黒陣には多数の弱点がある。キングは安全にキャスリングできないし、ポーン形は穴だらけで攻撃にさらされている。白はここに十分つけ込み、数撃で見事に 勝利する。

19 c4 b4 20 Qd2 Rb8

 ここで白がbポーンを取る(21 Qxb4)のは、21...Bxf3があるためにできない。しかし白が欲しいのはポーンではなく、キングである。

21 Qh6 Bxf3 22 Bxf3 Qe5 23 Rfe1 Qxb2 24 Qf4 Rc8 25 Qd6 f6

 2手メイト(Bc6+等)の狙いがあったため。

26 Bxh5+ Rg6 27 Bxg6+ hxg6 28 Rxe6+ 1-0
French: Advance And Other Lines
1904600409 Steffen Pedersen

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2006年06月28日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム24

 また、ささやかなぼやきネタを。マツキヨで割り箸100膳200円を買ってからスーパーへ行った。すると、中国が輸出禁止で品薄のはずの割り箸が100 膳105円で再入荷されていた。これがしばらく品切れだったからマツキヨで買っていたのだが、タイミングが悪すぎる。しかも安い方が高品質なのだ。


エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 24

白:アトキンズ 黒:バリ

フレンチ・ディフェンス

1 e4 e6 2 d4 d5 3 Nc3 Nf6 4 Bg5 Be7 5 e5 Nfd7 6 Bxe7 Qxe7

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図135
rnb1k2r/pppnqppp/4p3/3pP3/3P4/2N5/PPP2PPP/R2QKBNR w KQkq - 0 7

7 Nb5

 意図は c3としてセンターを強化することである。ナイトをまた戦闘にもどすには手数がかかるが、大会でこの変化のゲームはほとんど白が勝ってきた。おおむね、 ゲーム22の解説にあるキング側を攻撃する変化によってである。アラピンの分析によると、どの場合でも黒がクイーン側の対処に懸命になりがち(ちょうど ゲーム22のように)だからであり、黒は自らがキング側で反撃開始することで、白の展開遅れにつけこめる。黒はすぐに ...f6で白のセンターを狙うか、...f5から ...Nc6-d8-f7としてgポーンの前進を準備することもできる。これらの変化は未だに議論されている。7 Nb5より単純に展開する方が望ましく、例えば 7 Bd3 0-0 8 f4 c5 9 Nf3.

7... Kd8

 キャスリングの権利放棄は、他にキングを安全にして両ルックを連係できる方法がなければ良策にならない。そればかりか、ピースの自由 な展開が妨げられ、キングが重大な危険にさらされるのが目に見えている。ポーンがまだ前進してない端側よりセンターの方がファイルを開きやすいからであ る。したがっ て、7...Nb6が唯一検討に価する手となる。

8 c3 f6 9 exf6

 黒のキングがセンターに残っているので、白はもうe5のポーン維持に執着しない。逆に、白はセンターを清算しようとする。

9... gxf6 10 Qd2 c6 11 Na3 Nf8

 早くもこの段階で、黒の展開完了には困難を伴わざるをえないことが明らかになった。常套手段(...c5)は、センターで開戦するとキングが危険になる ために使えない。

12 Nf3 Bd7 13 g3!

 黒がいずれ ...Rg8で白に g3を強制できるので、白はキング側ビショップをg2へ繰り出してf3とh3を守ることにする。この2マスの弱点は、白がクイーン側へキャスリングすれば 一大事にはならない。しかし、センター破壊のためには c4と指したいので、キング側キャスリングが正道である。

13... Be8 14 Bg2 Nbd7 15 c4 dxc4 16 Nxc4 Nb6 17 Nxb6 axb6 18 0-0 Ng6 19 Rfe1 Bd7 20 Qc3 Re8 21 Nd2 Qf8 22 a4!

 白は、ナイトがc5へ分け入るために黒のb6ポーンを消したい。これを阻止する手段がない黒は、やがて白の圧倒的な戦列に屈する。

22... Ne7 23 a5 b5 24 Nb3 Nd5 25 Bxd5 exd5 26 Rxe8+ Bxe8 27 Nc5 Qf7 28 Re1 Kc7 29 Qe3 Bd7 30 Qf4+ 1-0

30 Qf4+
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r7/1pkb1q1p/2p2p2/PpNp4/3P1Q2/6P1/1P3P1P/4R1K1 b - - 0 30

 30...Kd8なら、31 Nxb7+から Nd6+. 30...Kc8なら、31 Qd6から Re7で白勝ち。
The Classical French (Batsford Chess Openings)
0713484837 Eduard Gufeld Oleg Stetsko John Sugden

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2006年06月21日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム23

 光市妻子殺人事件で最高裁が差し戻した。被害者が、家族を失うだけでなく社会へ訴えかける活動を通して人生の目的そのものも変貌していくケースである。本村さんを見ていると、負のエネルギーを糧としている共通性を感じて複雑な気持ちになる。


エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 23

白:イエーツ 黒:エッセル

フレンチ・ディフェンス

1 e4 e6 2 d4 d5 3 Nc3 Nf6 4 Bg5 dxe4 5 Bxf6 gxf6

5... gxf6
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
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 1   1 
  a b c d e f g h  
rnbqkb1r/ppp2p1p/4pp2/8/3Pp3/2N5/PPP2PPP/R2QKBNR w KQkq - 0 6

 クイーンで取り返すと白が展開で有利になりるので、黒はダブルポーンで良しとした。キング側が崩壊しても、これがハンデになるとはかぎらない。黒に は2ビショップがあり、白がキング側で速攻できねば強力な兵器となるからである。教訓的な本局では、f6での交換で生じた陣形が双方にチャンスを与えるこ と が分かる。

6 Nxe4 f5

 キング側ビショップを長いダイアゴナルのg7へ置くなら、この前進は正当化できる。そうでなければひじょうに疑問である。fポーンが攻撃の的になりやす いし、それ以外にも黒はe5の支配を放棄したことになるからである。

7 Nc3

 7 Ng3の方が自然に思える。第一に、黒のキング側の弱点への攻撃に白はピースを回す必要があるから、第二に、dポーンは c3として支えないと黒の ...Bg7で攻撃されるからである。

7... Bg7 8 Nf3 0-0 9 Bc4

 ナイトがg3にいれば、白は c3から Bd3とできた。これがビショップの正しい位置であり、g4でダイアゴナルをこじ開けられる可能性がある。

9... Nc6 10 Ne2 Na5 11 Bd3 c5 12 c3 c4

 12...f6がいいと思われる。12...c4は白のd4を解放 してしまう。12...b6 13 dxc5で孤立ポーンができるのは恐るるに足りない。b7のビショップが効果的で(...Rb8)、白はセンターをあまり固められないからである。

13 Bc2 b5 14 Qd2

 ここから興味深い戦いが続く。白はクイーン、両ナイトと、いずれ(g4として)ビショップを使って攻撃を組み立てる。黒は、前もってキングを安全なh8 へ逃がしてgファイルを両ルックで占めれば、ピースの可動範囲がはるかに広がって優勢になる。

14... Bb7 15 Qf4 Qf6

 ...Kh8から Rg8が考えられた。

16 Ng3 Bh6 17 Qc7 Qd8 18 Qe5

 白はbポーンを攻撃して手得する。こんなことを言うと回りくどいかもしれないが、黒が最初からポーン形を ...b5, c4ではなく ...b6, c5としておけば、これらは起こりえず、ゲームはほとんど違った展開になっただろう。さらに、無防備地点へのポーンの前進は常に攻撃目標になる危険を伴う ので、展開プランに不要なときは必ず避けるのが望ましい。

18... Bd5 19 Nh5 Nc6? 20 Qg3+??

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図134
r2q1rk1/p4p1p/2n1p2b/1p1b1p1N/2pP4/2P2NQ1/PPB2PPP/R3K2R b KQ - 0 20

 両者の最後の手が勝敗を決めた。20 Qf6が最低でもポーン得になり(20...Qxf6 21 Nxf6+から Nxd5, Bxf5)、20...Bxf3は 21 Qxh6 Bxh5 22 Qxh5から g4!の猛攻でたちまち黒敗北となることを、双方ともが見逃していた。

 19...Nc6の代わりに、黒は 19...f6, Kh8からgファイルを両ルックで占めるべきだった。20 Qg3+に 対しては、黒がさらに効果的にそうできる。

20... Kh8 21 Qh3 Rg8

 黒は戦場にいる戦力で優勢になったので、ぶっちゃけると、ルックを活用できない白の負けと結論づけられる。

22 Ng3 Qf6 23 Kf1

 23 Ke2の方がわずかにいい。しかし、もはや適切な防御は存在しない。

23... Rg4 24 Re1 Rag8 25 Ne5

 黒は 25...Bxf3から ...Rh4, ...f4を狙っていた。

25... Nxe5 26 dxe5 Qg5 27 Qh5 Bxg2+ 28 Kg1 Rxg3?

 28...Qxh5から ...Be4+が単純で効果的だった。

29 hxg3 Bxh1 30 Qxg5 Bxg5 31 Kxh1 Rd8 32 f4

 32 Rd1の方が、ポーン損になる(...Rxd1から ...Bc1等)とはいえずっと有望である。色違いビショップの終盤は、ここからでも簡単には勝てない。

32... Rd2 33 fxg5 Rxc2 34 Rd1 Rxb2 35 Rd7 Kg7 36 Rxa7 Rc2

 黒はすぐに 36...b4とできた。

37 Ra5 Rb2 38 a4

 38 Ra3でも、苦痛を長引かすだけだったろう。

38... b4 0-1
French Defence Steinitz, Classical and Other Variations
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2006年06月13日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム22

 チェスオリンピック等には全然触れていないが、そういう情報は提供するブログが増えてきたのでそちらにお任せして私は我が道を行こう。今日はチェス書紹 介の予定だったが、古い本は出尽くした感じだし、新しい本は資料が少ないしで難しくなってきた(汗。


エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 22

白:Forgacz 黒:タルタコーワ

フレンチ・ディフェンス(第1部参照)

1 e4 e6 2 d4 d5 3 Nc3 Nf6 4 Bg5 Be7 5 e5 Ne4

 5...Nfd7の方がいい。...c5の助けになるし、いずれ ...f6で白のセンターを攻撃するときにも役立つからである。5...Ne4は、白にのみ好都合な2つのマイナーピース交換を許す。黒は、ク イーン側ビショップを繰り出せないので、当分は実質的にピースダウン状態だからである。

6 Nxe4 Bxg5

 6...dxe4では、ポーンが弱くなりすぎて長く維持できそうにない。

7 Nxg5 Qxg5 8 g3

 ナイトを跳ねる前に f4とするため(第1部参照)。

8... c5 9 c3 Nc6 10 f4 Qe7 11 Qd2 Bd7 12 Nf3 0-0 13 Bd3 c4 14 Bc2 b5 15 0-0 b4 16 Rae1 a5

  a b c d e f g h  
 8   8 
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 6   6 
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 3   3 
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  a b c d e f g h  
図133
r4rk1/3bqppp/2n1p3/p2pP3/1ppP1P2/2P2NP1/PPBQ3P/4RRK1 w - a6 0 17

 ここまでは、この定跡の第1部での解説に照らし合わせれば容易に理解できる。続く手順では、キング側へ向かう白の効果的な攻撃が教訓的に示される。

17 f5! exf5

 このポーンのサクリファイスは、第二のサクリファイスへの布石であり、まれに見る見事なコンビネーションを生み出す。

18 g4!! fxg4

 黒が取らなければ、白から取られる。いずれにせよ、ポーンの殺到が目標を捕捉し、ピースを自由にする攻撃ラインが開かれる。

19 Ng5 g6

 白はf6への侵入ルートを得たので、残りはたやすい。19...h6は無力。続けると、20 Nh7 Rfd8 21 Nf6+ 以下いずれも白勝ち。21...gxf6 22 Qxh6 または 21...Kh8 22 Nxd5.

20 Rf6 Kg7

 黒は、身動きできる場所を作れない。20...h6には、21 Bxg6とされる。

21 Ref1 Be8 22 Qf4 Nd8 23 e6 Ra6 24 Qe5 Kh6 25 R1f5

25 R1f5
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3nbr2/4qp1p/r3PRpk/p2pQRN1/1ppP2p1/2P5/PPB4P/6K1 b - - 0 25

 助けて!

25... fxe6 26 Nf7+ Qxf7 27 Rh5+ Kg7 28 Rxg6#
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2006年06月07日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム21

 昨日始めた新ブログはライブドアとシーサーの両方に記事を上げて先にコメントが付いた方に決めようかと思ったが(笑、結局管理しやすい、使い慣れてい る、htmlで記事を書ける等の理由でシーサーに決めた。


エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 21

白:エドワード・ラスカー 黒:アリョーヒン

スリー・ナイツ・ディフェンス

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Nc3 Bb4 4 Nd5

 他のピースを Bb5や Bc4と繰り出す方が、原則にかなっている。

4... Be7

 5 Nxb4から Nxe5の狙いがあった。4...d6でも、5 Bb5後にどうせビショップを退かねばならない。c5やa5よりe7に退くのが最善に思えるのは、d5のナイトをとがめるかもしれない ...Bg4のピン狙いを残せるからである。

5 Bc4 Nf6 6 d3 d6 7 Nxe7 Qxe7 8 c3 h6

 キング側ナイトはいずれ ...d5の助けとなるので、黒はそれをピンされたくない。白は、通常c3から ...d5を阻止するクイーン側ナイトをすでに交換しているので、これは理にかなった戦略である。

9 Be3 0-0 10 Qd2 Be6 11 Bb3

 最初の誤り。...d5を阻止するために 11 Bb5とすべきである。

11... Bxb3 12 axb3 d5

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図132
r4rk1/ppp1qpp1/2n2n1p/3pp3/4P3/1PPPBN2/1P1Q1PPP/R3K2R w KQ - 0 13

13 exd5

 2番目の誤り。そうは見えないが、敗着である。白が 13 Qc2としてeポーンを守らなかったのは、10 Qd2を手損にしたくなかったからである。しかし、センター放棄はそれよりはるかに悪い。今、黒はd4とf4を抑えているので、無防備な地点への攻撃を 開始できる。本局は、センターの保持がいかに重要かを如実に示している。

13... Nxd5 14 0-0 f5 15 b4 b6 16 Qe2

 ...e4を防ぐため。16...e4には、17 dxe4から Qc4で反撃できる。しかし、ずっと ...e4阻止はできないのでクイーンはいずれ動かねばならない。ルックに邪魔されない Qc2の方が良かっただろう。

16... Qd6 17 b5 Nce7 18 Bd2 Ng6 19 Ra4 Rae8!

 黒陣が見事に展開する一方で、白は戦力を協同させられない。黒のルックは特に好位置にいて、様々な攻撃で効果的な役割を果たせる態勢にある。すべては、 白がセンターを失った結果である。

20 g3

 ...Ndf4を阻止するが f3が弱くなる。黒が ...f4でファイルを開く狙いがあるのでいっそう深刻である。

20... Qd7

20... Qd7
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4rrk1/p1pq2p1/1p4np/1P1npp2/R7/2PP1NP1/1P1BQP1P/5RK1 w - - 0 21

 ここで白がポーンを取らなければ、黒は ...a5!とする。

21 Rxa7 e4 22 Nd4 exd3 23 Qxd3 Ne5 24 Qe2 f4

 攻撃の道筋はすべて開かれ、白陣は急速に崩壊する。

25 Qh5 Nf6 26 Qf5 Nf3+ 27 Kh1 Qxf5 28 Nxf5 Nxd2 29 Rd1 Nfe4 30 Nxg7 Nxf2+ 31 Kg2 f3+ 0-1


 スリー・ナイツ・ディフェンスは、スリー・ナイツ・ゲームの方が一般的な呼び名である。3つ目のナイトを指すのは白だが、3と4の決定権は黒が持ってい るからディフェンスと呼んだのだろうか。
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posted by 水野優 at 11:50| Comment(2) | Ed.Lasker『チェス戦略2』実戦(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月31日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム20

 昨日のNTV「Newsリアルタイム」で、メイドカフェの男性版ともいえる世界初の「執事カフェ」開店までの様子をレポートしていた。仕掛け人が25歳 の女性というのがミソである。私はどちらがいいと聞かれれば、お嬢様と呼んでもらえる執事カフェだが、みんな若くて藤村俊二のような人がいないのが残念 (汗。


エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 20

白:エドワード・ラスカー 黒:エンクルント

フォー・ナイツ・ゲーム

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Nc3 Nf6 4 Bb5 Nd4 5 Nxe5

 黒は 5...Qe7としてeポーンを取り返し、さらに白の貴重なビショップと交換できる。5 Nxe5の代わりにビショップをa4かc4に退くか、5 Nxd4 exd4 6 e5 dxc3 7 exf6を推奨する。ここで黒は 7...Qxf6とすべきで、7...cxd2+は白の展開を加速して黒がキャスリングの時機を失う。例えば、8 Bxd2 Qxf6 9 0-0 Be7 10 Bc3から Re1.

5... Qe7 6 Nf3 Nxe4?

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図131
r1b1kb1r/ppppqppp/8/1B6/3nn3/2N2N2/PPPP1PPP/R1BQK2R w KQkq - 0 7

 6...Nxb5から ...Qxe4としてビショップの道を開けねばならない。7 Nxb5 Qxe4+ 8 Qe2 Qxe2+ 9 Kxe2 Nd5(10 c4 a6)後、黒は展開終了までもう少しかかる(10 Re1 f6 11 Kf1+ Kf7)が、クイーン交換後は差し迫った攻撃の脅威もないので、2ビショップの優位がやがて物を言う。エドワード・ラスカー対コーレ戦(ロンドン、 1913年)では、12 d4 a6 13 Nc3 Nxc3 14 bxc3 d5. 白のダブルポーンが欠点となり、c2のポーンが動けないので、...Bf5の攻撃に悩まされ続ける。12 d3の方が良かった。

7 0-0 Nxc3

 これでもう ...Nxb5とできなくなった。7...Nxb5 8 Nxb5だと、Nxc7に加えて Re1から d3の脅威がある。この段階で、キングがeファイルに迫り来る攻撃からキャスリングで逃れられないので、ほぼ黒の敗勢である。

8 dxc3 Nxf3+ 9 Qxf3 Qc5 10 Re1+ Be7 11 Bd3

 キャスリングの阻止。11...0-0には 12 Qe4でピース得。

11...d5 12 Be3

 黒がクイーンで手損するので、白はビショップを無条件で展開できる。

12... Qd6 13 Bf4 Qf6 14 Qxd5!!

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r1b1k2r/ppp1bppp/5q2/3Q4/5B2/2PB4/PPP2PPP/R3R1K1 b kq - 0 14

 展開が遅れた黒は、すでにサクリファイス含みのコンビネーションにさらされている。ビショップを取ると黒の負け。14...Qxf4 15 Bb5+ Kf8 16 Qd8+! Bxd8 17 Re8# または 15...c6 16 Bxc6+...

14... c6 15 Qe4 Be6 16 Re3 Bc5

 黒は 16...0-0-0とできたかもしれないが、17 Rd1で本譜とほぼ同様の流れになっただろう。

17 Be5 Qh6 18 Rg3 Bf8

 みじめな撤退。しかし、初志貫徹の 18...Qd2だと、白に 19 Rf1から Bf4の狙いがある。

19 Rd1

 この手で白は展開を完了したが、黒にキャスリングの好機を与えただけのように思える。しかし、それは十分ではなかった。

19... 0-0-0? 20 Qxc6+ bxc6 21 Ba6#
posted by 水野優 at 12:24| Comment(2) | Ed.Lasker『チェス戦略2』実戦(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月24日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム19

 昨深夜TBS「ネプベガス」では10人の中にプロボウラーが3人いる問題があったが、私も知らないプロがいたのでかなり難しかった(笑。しかし、せめて ボウリングシューズくらい履いてもらわないと実際の投球を見ても判然としない。マイシューズかどうかで分かってしまうからなのだろうが。


エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 19

白:エドワード・ラスカー 黒:ヤノウスキー

フォー・ナイツ・ゲーム

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Nc3 Nf6 4 Bb5 Bb4

 4...Be7 5 0-0 d6なら、ルイ・ロペスになる。

5 0-0 0-0 6 d3 d6

 当然ながら、...d6の前にキャスリングする方がいい。白がすぐに Nd5でピンを活用して迅速な攻撃を始められるからである。例えば、5 0-0 d6 6 Nd5 Bc5 7 d4 exd4 8 Bg5.

7 Bg5

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図128
r1bq1rk1/ppp2ppp/2np1n2/1B2p1B1/1b2P3/2NP1N2/PPP2PPP/R2Q1RK1 b - - 0 7

 図90(訳注:白黒のビショップがそれぞれc4とc5にいるだけの違い)と似た局面だが、それと同様に 7 Be3は薦められない。2つのピースのフォークを狙う 7...d5が、黒のセンターポーンとの交換を強いるからである。一方、本譜後 7...Bg4 8 Nd5 Nd4 9 Bc4 Bc5だと、図90で検討した局面になり、白は 10 Qd2で優勢になる。黒は 9...Bc5の代わりに同様の狙いで 9...Qd7とすべきだった。しかし、黒はキング側ビショップを攻撃に参加させられないので、白はかろうじてドローを逃れる。例えば、 9...Qd7 10 Nxf6+ gxf6 11 Bxf6 h6(11...Bxf3 12 gxf3は Kh1から Rg1とされてだめ) 12 c3 Nxf3+ 13 gxf3 Bh5 14 Kh1 Kh7(図129) 15 Rg1.

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図129
r4r2/pppq1p1k/3p1B1p/4p2b/1bB1P3/2PP1P2/PP3P1P/R2Q1R1K w - - 0 15

 もしもの話だが、ここで黒のビショップがc5にあると、白は攻撃の対処に追われる。まずfポーンを守るために 15 Qe2とせねばならないので、15...Rg8 16 Rg1 Rg6から負ける。17 Bh4は 17...Qh3 18 Bg3 Rf6とされ、17 Rxg6 fxg6後は ...Rf8でfポーンが二重に攻撃されるからである。

 しかし、ビショップがb4にあると黒は勝てない。15...Rg8 16 Rg3 Rg6 17 Bh4でおそらくドローだろう。

 この変化は白黒ともひじょうに難しいので、大会ではこれまで避けられてきた。

 図128では、7...Bxc3 8 bxc3 Ne7が長年いいとされてきた。図90の検討で示した理由によれば、9 Bxf6でgファイルをこじ開けられるのを恐れる必要はない。しかし、白はfファイルを開く準備をする 9 Nh4で f4, fxe5から優位になる。9...Ng6で 10 Nxg6にはfポーンで取り返して黒のルックのためにfファイルを開こうとしてもうまくいかない。10 f4から fxe5後、終盤で実質的に余剰ポーンを持つ白が明かに有利となる。キング側の3つの黒ポーンは、白の2つのポーンで抑止されて突破できないからである。

 9...Ne8から ...f6でやっかいなビショップを追い払ってから ...c6, Nc7, d5でセンターを目指す試みは、白がfファイルを獲得する攻撃のために失敗する。例えば、9...Ne8 10 Bc4 Kh8 11 f4 f6 12 Qh5 fxg5 13 fxe5...

 したがって、7...Bxc3から ...Ne7の防御はすたれた。

 本局では、黒は ...Bxc3, Qe7, Nd8-e6から成るひじょうに古い防御を復活させた。これがすたれたのは、白が Re1, d4からいずれ Bc1-a3とすれば、黒のセンターポーン交換を強制し、おなじみの理由で優勢になるからである。本譜では、黒は ...h6!の挿入で防御を強化し、白はピンを保持するかどうかの決断を迫られる。保持すると、白はもう Ba3で黒のクイーンを脅かすことができなくなる。

7... Bxc3 8 bxc3 h6 9 Bh4

 白のビショップがc1かe3に退けば、黒は ...Ne7-g6の防御を使える。その場合の Nh4は、黒が単に ...g5とできるので良くない。ポーンの前進が成立するのは、黒がクイーン側ナイトをg6に運ぶことでキング側のピースが実質1つ増え、...Kh7, Rg8, Ng6-f4から始まる攻撃の見込みがあるからである。

9... Qe7

 9...g5は早過ぎる。10 Nxg5 hxg5 11 Bxg5で、たちまち白の勝ちとなる。白は、黒がナイトを十分に守るか「ピン」を外すまでに、f4から fxe5でナイトを二重に攻撃できるからである。

10 Qd2 Nd8 11 d4 Bg4 12 Qe3 Bxf3 13 Qxf3 Ne6

 13...g5から ...exd4でポーン得を目指すのは誤りである。例えば、13...g5 14 Bg3 exd4 15 Re1! dxc3 16 e5...

14 Bxf6

 黒の狙いは、9手目の解説と同様に ...g5から...Nf4で攻撃を展開することだった。

14... Qxf6 15 Qxf6 gxf6 16 Bc4

 前述したように終盤でビショップより一般的に優れたナイトと交換するため。

16... exd4 17 Bxe6 fxe6 18 cxd4

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図130
r4rk1/ppp5/3ppp1p/8/3PP3/8/P1P2PPP/R4RK1 b - - 0 18

 終盤は白のルックの方が自由度が高くなったので、3段目に沿ってたやすく反対側へ回ることができる。しかし、ポーンはキングで守りやすい黒の方が強固で ある。白のa2とc2のポーンはキングから遠すぎる。したがって白は、黒がルックのためにクイーン側でファイルを開くことを阻止しなければならない。

18... Rac8 19 Rab1 b6 20 Rfd1 Rfd8 21 Rb3

 白は、黒にcかdファイルの支配を許さざるを得ない。21 d5は単純に 21...exd5 22 exd5 c6とされてドローっぽい。

21... d5 22 Rg3+

 やがて来るメイトの狙いを考慮すれば、22 f3が正着だった。

22... Kf7 23 exd5 Rxd5 24 Ra3 a5 25 f4?

 時間切迫状況下でのポーン損になるミス。25 Rad3とすべきだった。

25... c5 26 Rc3 Rcd8 27 Rb1 Rxd4 28 Rxb6 Rxf4 29 h3 Rd2 30 Rb5

 30 Rxc5は、30...Rff2でgポーンを守れないからだめ。

30... Rff2 31 Rg3 f5 32 c4 f4 33 Rg4 h5 34 Rg5 Rxa2 35 h4

 ...Rfc2-c1から ...Raa1とする数手メイトの脅威があった。

35... Rfb2

 35...Rfc2だと、白はfポーンを取るかパペチュアルチェックにできる(36 Rb7+から Rb8-f8)。35...Rfb2にも、白はポーンを取り返せるのでドローにできる。

36 Rxb2 Rxb2 37 Rxh5?

 不注意な手でゲームを落とした。当然ながら白はcポーンを取らねばならなかった。37 Rxc5 a4 38 Ra5ならポーンを後ろから牽制できるし、37...Kf6 38 Rxa5 e5ならドローになる。白のcポーンがやがて脅威となるからである。例えば、39 Ra8 Kf5 40 c5 e4 41 c6 Rc2 42 Rc8 Kg4 43 c7 Kxh4 44 Kh2 e3 45 Rf8 Rxc7 46 Rxf4+ Kg5 47 Re4 Rc3 48 Kg3... または 44 Re8 Rxc7 45 Rxe4 Kg3 46 Re1 Rc2 47 Kh1 Rxg2 48 Re3+...

37... a4 38 Rxc5 a3 0-1

 39 Ra5後は、39...a2から 40...Rb1+ または(40 Kh2なら) 40...f3.


 前回ゲーム18の最後に「本局では白の見事な手腕が光ったので、ラスカーがたぐいまれに局面を把握した実例をさらに続けよう」と締めくくっているのに、 このゲーム19は「ラスカー違い」の著者エドワード・ラスカーのしかも敗局である。自虐的ジョークだろうか。
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posted by 水野優 at 13:22| Comment(0) | Ed.Lasker『チェス戦略2』実戦(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月16日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム18

エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 18

白:エマヌエル・ラスカー 黒:カパブランカ

ルイ・ロペス(第1部参照)

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bb5 a6 4 Bxc6 dxc6 5 d4 exd4

 要検討は、5...Bg4 6 dxe5 Qxd1+ 7 Kxd1 0-0-0+ 8 Ke2 Re8 9 h3 Bxf3+ 10 Kxf3 f6 黒十分。この定跡では、交換が黒のクイーン側ビショップのダイアゴナルを開いて展開を助長してくれるので、黒に主導権があると考えて間違いない。そうせず におとなしく防戦一方では、白のキング側ポーンの数的優位のために好機を失ってしまう。

6 Qxd4 Qxd4

 強制的。6...Be6だと 7 Bf4でc7を攻撃される。7...Bd6は弱い。ビショップ交換によって黒のdポーンが「出遅れ」になり、開いたファイル上で取られることが避けられな い。

7 Nxd4 Bd6 8 Nc3 Ne7

 黒はキング側キャスリングを準備する。クイーン側キャスリングの方が、キングがcポーンを守れるので良く指されるし、おそらく強力である。本局の場合 は、黒のキング側ビショップが交換されるとcポーンが弱くなる。

9 0-0 0-0 10 f4 Re8

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図126
r1b1r1k1/1pp1nppp/p1pb4/8/3NPP2/2N5/PPP3PP/R1B2RK1 w - - 0 11

 黒は、白にキング側での自由を許しすぎた。f5とされるとクイーン側ビショップの邪魔になるので、10...f5で阻止するべきだった。11 e5後に 11...Bc5, Bxd4, Be6として互角にできる。

 その場合は、色違いビショップが残るので実戦的にドローが確実視される。黒は、白が f5でeポーンを弱める危険までは冒さないと考えていたのだろう。しかし、その見過ごされたラスカーの読みは、機動性が大いに勝るピースを活用して、弱い eポーンへの反撃を許す前に攻撃を成功させるというものだった。

11 Nb3 f6

 ここでも 11..f5が、ビショップの進むマスを奪うといえども強制的。12 e5 Bb4 13 Ne2(Na4) Nd5ならビショップも 安全だった。

12 f5!!

 この手には二重の目的がある。ビショップを封じることと、Bf4としてビショップを交換することである。

12... b6

 a8〜h1ダイアゴナルが、封じられたビショップの活動に唯一期待できる。しかし、ビショップが今いるダイアゴナルを放棄したとたんに、白のナイトが e6に居座って黒の両ルックのひじょうな妨げになる。

13 Bf4 Bb7

 黒は、ビショップを交換すべきだった。これでd6に弱いポーンを抱えることになる。...Bb7の前に ...c5として Nd4-e6を阻止すべき。

14 Bxd6 cxd6 15 Nd4 Rad8 16 Ne6 Rd7 17 Rad1 Nc8 18 Rf2 b5 19 Rfd2

 この手は、黒のナイトをc8に釘付けにする。白の次の手は、ビショップを解放する ...c5を阻止する。すべての黒ピースから機動力を奪った後で、白は、黒キングへの決然たる攻撃に転じる。

19... Rde7 20 b4 Kf7 21 a3 Ba8 22 Kf2 Ra7 23 g4 h6 24 Rd3 a5 25 h4 axb4 26 axb4 Rae7

 aファイルに見込みがないので、黒はピースが相互に守り合うように身を固めた。黒は、白のキング側からの侵攻を阻止できない。

27 Kf3 Rg8 28 Kf4 g6 29 Rg3 g5+ 30 Kf3

 黒は、ポーンを取ると、白に Rh3から直ちに取り返され、h6のポーンも失う。

30... Nb6 31 hxg5 hxg5 32 Rh3 Rd7 33 Kg3

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図127
b5r1/3r1k2/1nppNp2/1p3Pp1/1P2P1P1/2N3KR/2P5/3R4 b - - 0 33

 白のキングがビショップのダイアゴナルを離れた。黒を数手で葬ろうとするコンビネーションを ...c5が邪魔するからである。

33... Ke8 34 Rdh1 Bb7 35 e5!!

 見事なとどめの一撃。

35... dxe5 36 Ne4!! Nd5 37 N6c5 Bc8

 Nxb7から Nd6+があるために、黒はあえてルックを逃がさない。

38 Nxd7 Bxd7 39 Rh7 Rf8 40 Ra1 Kd8 41 Ra8+ Bc8 42 Nc5 1-0

 2手メイトが狙われている。黒の絶対手は 42...Ne7だが、その後も打つ手がなく、白が意のままにポーンを一つずつ取っていく(Rc7, Rf7等)。本局では白の見事な手腕が光ったので、ラスカーがたぐいまれに局面を把握した実例をさらに続けよう。
The Immortal Games of Capablanca
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2006年05月09日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム17

 なんでまた電気カーペットを付けなきゃならないほど寒いんだ…。一年の中では、28度くらいの部屋で薄着でいるのが気持ちよくていちばん好き。しかし、 も う1か月もすれば入梅だ。どうせなら真夏と梅雨が重なれば涼しくていいのに(笑。


エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 17

白:ベルリン 黒:リガ

ルイ・ロペス

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bb5 a6 4 Ba4 Nf6 5 0-0 Nxe4 6 d4

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図124
r1bqkb1r/1ppp1ppp/p1n5/4p3/B2Pn3/5N2/PPP2PPP/RNBQ1RK1 b kq d3 0 6

6... exd4

 ゲーム14の6手目の解説を参照されたし。

7 Re1 d5 8 Nxd4 Bd6

 この変化の肝となる手。黒は ...Bxh2+から ...Qh4+, Qxf2+のパペチュアル・チェックでドローを狙っている。大会で弱い相手に対して指すには不十分なので、強豪はリガ・ディフェンスでは満足できない。し かし、そんなことは問題ではない。この変化が成立しないことを証明するために、白は勝ちを見つけねばならないのである。

9 Nxc6 Bxh2+ 10 Kh1!

 10 Kf1には黒の猛攻があるので、白が他のピースを何とか参戦させようとしても追い払われる。マロツィー対ベルガー戦(ウィーン、1908年)が、こ の実例である。10 Kf1 Qh4 11 Be3 0-0 12 Nd4 Bg4 13 Nf3 Qh5 ここで白にはいい手がない。14 Nbd2はクイーンの邪魔になり、ルック同士をつなげるのが困難となる。14 Nc3 Rad8 15 Qd3 Bxf3 16 gxf3 Qxf3 17 Nxe4 dxe4 18 Qc3 Qh3+ 19 Ke2 Qg4+ 20 Kf1 Rd5 21 Bb3 Rh5 22 f3 exf3 0-1.

10... Qh4

 白の敗北のように見える。しかし、黒の攻撃ピースの交換を強いる見事なサクリファイスによって状況は救われる。

11 Rxe4+ dxe4 12 Qd8+ Qxd8 13 Nxd8+ Kxd8 14 Kxh2

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図125
r1bk3r/1pp2ppp/p7/8/B3p3/8/PPP2PPK/RNB5 b - - 0 14

 激しい相殺によって、局面はいくぶん分かりやすくなった。黒は、白の2マイナーピースに対してルックと2ポーンを持っているので終盤戦にはやや有利だ が、まだ終盤は念頭にない。2ビショップを持つ白に、開いたdファイルにいる黒キングを攻撃する好機があるので、ほとんどのマスターは白優勢の局面と考え るだろう。

14... Be6

 14...f5が指せそうに見えるが、15 Bg5#できれいにメイトされる。14...Be6は、...c5, ...b5によってキング側ビショップを消す狙いである。

15 Be3 f5 16 Nc3 Ke7 17 g4

 タラッシュは 17 Rd1から Nd5+を推奨した。17...c6なら 18 Bb6として黒のdファイルからの反撃を永久に防ぎ、Ne2-d4として黒のビショップとの交換を試みることができる。2ビショップがある白に勝機がある だろう。

 17 g4は巧妙な作戦を秘めている。黒のキング側ビショップがもうないことにつけ込み、g5とすることでキング側の4つのポーンをすべて釘付けにしたい。しか し黒は、白のプランをとがめるような驚きの応手を見つける。

 カパブランカ対エドワード・ラスカー戦では(ニューヨーク、1915年)、17 g4 g6 18 Kg3 h5 19 gxf5 h4+ 20 Kh2 gxf5 21 Ne2 b5 22 Bb3 Bxb3 23 axb3 Rhg8 24 Rd1 Rad8 25 Rxd8 Kxd8 26 Nd4 ポーン取り。

17... g6 18 g5 Rag8!!

 黒は、白のクイーン側ビショップを消すためにルックとの交換を持ちかけた。白がサクリファイスに応じるとgポーンを失い、黒はピースの代わりに3ポーン を得て、少なくとも終盤戦で互角になる。白は、怪しい誘いには乗らずに、...h6から ...g5の狙いに対して 19 Rg1と対処すべきだった。

19 Bd4 h6 20 Bf6+ Kf7 21 Bxh8 Rxh8 22 Rd1

 22...c5に対して 23 Bd7とするため。だから白は20手目でチェックしたのである。

22... hxg5+ 23 Kg2 Kf6!

 24 Nd5+なら、黒は 24...Ke5とキングを勇進し、25 Nxc7には、...Bc4-e2-f3とする。黒の密集ポーン方陣は脅威となる。

24 Bb3 Bxb3 25 axb3 Ke6 26 b4 Rh7

 黒はもうルック交換を恐れる必要がない。交換すれば、パスポーンで白の戦力を釘付けにしながら、クイーン側ポーンをキングで攻撃できる。

27 Ne2 Rd7 28 Nd4+ Kf6 29 c3 c6

 この手の狙いははっきりしない。黒は ...g4, f4, Rh7等の前向きな方策を採るべきである。

30 Rh1 g4 31 Rh8

 前進できるポーンがなくなった。31...f4は、32 Re8 Re7 33 Rxe7 Kxe7 34 Nb3とされてポーンの1つは失う。

31... Re7 32 Ne2 Rd7 33 Nd4 Re7 34 Rf8+ Kg7 35 Rd8 f4 36 Rd6 Kf7 37 Nc2 Re6 38 Rd7+ Re7 39 Rd6 Re6 40 Rd1

 白は何が何でも勝とうとし−負ける。クイーン側ポーンの前進を強いれば、白は新たなチャンスを得るが、新たな弱点も生まれる。

40... Kf6 41 c4 Re7 42 Rd4 Kg5 43 Rd6 e3! 44 f3

 44 fxe3は、44...f3+から ...Rh7とされるのでだめ。

44... e2 45 Ne1 g3 46 b5

 遅すぎる。

46... Rh7 47 bxc6 bxc6 48 Re6 Rh2+ 49 Kg1 Rf2 50 Nc2 Rxf3 51 Rxe2 Rd3 52 Ne1 Rb3 53 Rd2 f3 54 Nd3 a5 0-1

 aポーンはa3まで邪魔されずに突けて、その後、黒のルックが最後段でメイトする狙いがある。そこで白の Rd1が強制的となる。しかし、そうなると黒のルックが7段目に侵入する(...Rh2から ...f2+)。


 このベルリン対リガ戦は、目次で2年越しのゲームとなっているので、おそらく二都市それぞれのプレーヤーチームが多数決で指し手を決める電信戦だったと 思うが、著者はその点何も触れていない。リガ・ヴァリエーションと名付けられる決め手となったのは間違いなさそうだ。
Endgame Tactics
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2006年04月25日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム15

 昨日は原因不明の山手線線路隆起があり、今日は福知山線大事故から1年。私もこの路線を常駐先への通勤に利用していたことがある。阪神大震災も経験した が、あれが朝のラッシュ時だったら同じような大事故がいくつも起きていたかもしれない。


エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 15

白:アリョーヒン 黒:ニムツォヴィッチ

ルイ・ロペス(第1部参照)

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bb5 a6 4 Ba4 Nf6 5 0-0 Nxe4 6 d4 b5 7 Bb3 d5 8 dxe5 Be6 9 c3 Be7 10 Re1

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図122
r2qk2r/2p1bppp/p1n1b3/1p1pP3/4n3/1BP2N2/PP3PPP/RNBQR1K1 b kq - 0 10

 ルイ・ロペスで最も重要な局面の一つである。黒は展開で上回るが、センターが危うい。白のセンター・ポーンは強固だが、黒のセンターのナイトはいずれ追 い払われる。白がセンターの要d4を完全に掌握しているのに対して、黒はd5が白のピースの圧力にさらされ続けている。最後に、黒のクイーン側ナイトは、 不都合にもcポーンが他のポーンと足並みをそろえるのを邪魔している。
 1909年にペトログラードで、ラスカーは以下の新しい防御を試みた。dポーンへの圧力を解放して最終的にd4でそれを交換するために、それまでの手得 を放棄して ...Nc5から ...Bg4とする。
 図122の局面に関しては様々な可能性が議論されてきた。付け加えると、10...0-0には 11 Nbd2が、もっともらしい 11 Nd4よりはるかに好手である。攻撃より先にクイーン側を展開すべきだからである(しかし、11 Nd4 Qd7?には 12 Nxe6から Rxe4)。長い間 11 Nd4に対して、黒はナイトを交換しなければならないと考えられてきた。その場合、白は Be3としてc7のポーンを「出遅れ」にできる。ナイトを交換しないと、黒はまず ...h6として f3から f4とされる脅威からナイトを守らねばならない。しかし、11 Nd4をとがめるセンセーショナルな新手が1912年のブレスラウで現れた。以下のサクリファイスである。10...0-0 11 Nd4 Nxe5! 12 f3 Bd6!! 13 fxe4 Bg4!! 14 Qd2 Qh4で圧倒的な攻撃。

10... Nc5 11 Bc2 Bg4 12 Nbd2 0-0 13 Nb3 Ne4

 ラスカーはヤノウスキーに対して(1912年パリで) 13...Ne6と指したが、14 Qd3が黒のキング側に混乱を強いたために悪手と判明した。

 13...Ne4は、ポーン・サクリファイスにはならない。14 Bxe4 dxe4 15 Qxd8 Raxd8 16 Nfd4 Nxd4 17 Nxd4 Rd5 白は 18 Rxe4とできない。なぜなら 18...c5 19 Nc2 Bf5 または 19 Nf3 Rd1+ 20 Ne1 Bf5 21 Re2 Bd3 22 Re3 Bg5.

14 Bf4 f5 15 exf6 Nxf6 16 Qd3 Ne4?

 これでは、cポーンを失ってdポーンが弱くなる。黒は 16...Bxf3 17 Qxf3 Bd6とすることができた。その場合、ナイトをどけてから ...c6でdポーンを守れた。黒が2ビショップに拘泥すると、危険な ...g6とさえしただろう。
 17 Bh6 Rf7には、g8かg4のキング側ナイトでこのビショップを追い払える。開いたファイルは、ある程度の代償と反撃機会となる。

17 Bxc7 Qd7

 17...Qxc7は 18 Qxd5+があるのでだめ。

18 Ne5 Nxe5 19 Bxe5 Bh4

 19...Rxf2は良くない。20 Rxe4 Bf5 21 Qg3.

20 Bg3 Bxg3 21 hxg3 Bf5

 21...Rxf2!で互角にできた。22 Rxe4 Bf5! 23 Kxf2 Bxe4 24 Q動く Qf5+から ...Bxc2. このチャンスを逃した黒は、やがて敗北する。

22 Qd4 Rfd8 23 Rad1 Qc7 24 Nd2 Nxf2

 ついに、やけくその手。黒は2つのマイナーピースと引き換えにルックとポーンを得るが、ルックで攻撃の主導権を取る時間がない。ポーンを捨ててもマイ ナーピースを交換するのが、最も賢明なプランである。クイーンとルックの終盤はたいていドローになるからである。黒は、本譜の代わりに 24...Nxg3とはできない。25 Bb3!とされる。

25 Bxf5 Nxd1 26 Rxd1 Qxg3 27 Be6+ Kh8 28 Bxd5 Rac8 29 Ne4 Qh4 30 b3 Rc6

 白は、パスポーンを得て勝利が早まった。

31 Qf2 Qh5 32 Qf3 Qxf3 33 gxf3 g6 34 Rd2 Rb6 35 c4 bxc4 36 bxc4 Rb1+ 37 Kf2 a5 38 c5 Rc1 39 c6 Kg7 40 Bc4! Rxc4 41 Rxd8 Rxc6 42 Rd7+ Kh6 43 Kg3 Rc4 44 Nf2 Kg5

 以下のメイトが狙われていた。45 Ng4+ Kh5 46 Rd5+ g5 47 Rd6から Rh6#(47...Rxg4+なら 48 fxg4#).

45 Rd5+ Kf6 46 Rxa5 1-0


 ↓表紙がきれい(何だそりゃ。
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posted by 水野優 at 12:23| Comment(2) | Ed.Lasker『チェス戦略2』実戦(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月11日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム13

 いくら短くてもチェス書の書評は単独記事にしないとブログのカテゴリーが機能しない。これから分けることにしよう。しかし、最初の一口日記は残りそう。 シーサーのジャンル別新着記事表示で、タイトルと無関係の序文だけが表示されるのはやむなし。


エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 13

白:タイヒマン 黒:シュレヒター

ルイ・ロペス(第1部参照)

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bb5 a6 4 Ba4 Nf6 5 0-0 Be7 6 Re1 b5 7 Bb3 d6 8 c3 0-0
 8手目までゲーム12と同じ。

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図118
r1bq1rk1/2p1bppp/p1np1n2/1p2p3/4P3/1BP2N2/PP1P1PPP/RNBQR1K1 w - - 0 9

9 d3 Na5 10 Bc2 c5 11 Nbd2 Qc7

 白がまだ d4としていなくても、このようにeポーンを守るのは手損にはならない。11...Qc7は、(...Nc6後に) ...d5とするために、白の exd5後に二重に攻撃されるeポーンを十全に守ったのである。

12 Nf1 Nc6 13 Ne3 Bb7

 13...Be6から ...d5とする方が理にかなっていた。それなら黒の展開はひじょうに良く、白はやや未展開のクイーン側に苦労していた。14 d4でセンターに圧力をかけて黒の ...d5を防ぐ試みは手遅れである。14...exd4 15 cxd4 cxd4 16 Nxd4 Nxd4 17 Qxd4 Ng4!. 13 Ne3が 13 Bg5だったとしても良くない。13...Be6 14 Ne3 Rad8 15 d4 cxd4 16 cxd4 exd4 17 Nxd4 Nxd4 18 Qxd4 Qc5 黒は有利な終盤にできる。本譜の13...Bb7は、すでに見たように良くない。ビショップはf5を守るダイアゴナルに必要だからである。

14 Nf5 Rfe8 15 Bg5 Nd7

 依然 ...d5としたいところなので 15...Rad8が良かった。

16 Bb3

 白ピースの陣形は、相手のキング側を威嚇し始める。

16... Nf8 17 Bd5!!

 見事なコンビネーションの始まり。Bxc6の狙いがあるので、黒はまずe7のビショップを守らねばならない。

17... Ng6 18 Bxe7 Ngxe7

 18...Ncxe7は、19 Bxb7から Nxd6とされるためできない。

19 Bxf7!! Kxf7 20 Ng5+

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図119
r3r3/1bq1nkpp/p1np4/1pp1pNN1/4P3/2PP4/PP3PPP/R2QR1K1 b - - 0 20

 魅惑的なコンビネーションを数多く秘めた局面である。20...Kg6か Kg8なら 21 Nxg7!、20...Kf6なら白はまずhポーンをチェックで取れる。

20... Kg8 21 Qh5 Nxf5 22 Nxh7+ Kf8 23 Qxf5+ Kg8 24 Qg6!!!

 急所。...g6を阻止して、黒のクイーンがg7に守りに来るのを許さない。これで、Re3-f3 または Rh3の脅威に対して黒はなすすべがない。

24... Qd7 25 Re3 1-0

 局面の卓越した判断力によって、自身が混沌としたサクリファイス含みのコンビネーションを使った白兵戦の名手でもあることを実証したタイヒマンの名局で ある。
posted by 水野優 at 15:03| Comment(0) | Ed.Lasker『チェス戦略2』実戦(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月04日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム12

 JCAはもう先月で会費切れさようならと思っていたら今月末までらしく、Chess通信が届いた。山岸さんの「チェスの上達法」という新連載が興味深 く、初心者が早く上達するには、序盤や終盤よりとにかく戦術を磨くべきという説明にはひじょうに説得力があった。
 そこで取り上げられた↓は、晩学で上達できなかった著者が自ら考案して成功した上達法である。日本はかつて、私も含めて実戦の少ない機会を本の独習 で補う頭でっかちで中盤のひ弱なプレーヤーが多かった。今はウェブのオンライン対局があるから事情はかなり違っていていると思う。
 私の公開する翻訳も大してアクセスされていない(約半分は自分で確認するアクセス)し、チュートリアルソフトもあるご時世に技術書を和訳する必要性は何 度も 疑問に思ってきたが、やはり「読み物」に移行していくべきだろう。もちろん読み物にも技術的でためになるものもある。
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エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部
(第1部のほとんどと第2部のゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 12

白:タイヒマン 黒:ルービンシュタイン

ルイ・ロペス(第1部参照)

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bb5 a6 4 Ba4

 白が、ビショップを交換しても 3...a6を無駄な手と実証することはできない。黒はdポーンで取り返し、クイーンとクイーン側ビショップに開いたラインを得るので展開がたやすくな り、2ビショップも保持するからである。この交換は黒陣にある種の弱点を仕掛ける。それは、d4 exd4の後でキング側に黒の3つに対して白が4つのポーンを持ち、クイーン側の4つのポーンに対してはダブルポーン含みなので白が持ちこたえられるとい う理屈である。しかし、この弱点には終盤にならないとつけ込めないし、実戦的な目的とはかけ離れすぎており、全く実現できない。この通常の変化例はゲーム 18に見られる。

4... Nf6 5 0-0 Be7 6 Re1 b5 7 Bb3 d6 8 c3

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図116
r1bqk2r/2p1bppp/p1np1n2/1p2p3/4P3/1BP2N2/PP1P1PPP/RNBQR1K1 b kq - 0 8

8... 0-0

 カパプランカによると、白のセンターでの意図が明らかになるまでは、黒はキャスリングすべきではない。白がdポーンを d4とするか d3で止めるかは大違いである。

 8...Na5 9 Bc2 c5には 10 d4とする。白の狙いは、黒のキャスリング後すぐ d5としてから Nbd2-f1-e3, g4, Nf5でキング側を攻撃することである。このため黒は、白がdポーンを交換するのか d5と進めるのか、その意図を露わにさせねばならない。d5の場合、黒はキャスリングをすっかりやめて、キング側で反撃できる。例えば、10 d4 Qc7 11 h3 Bd7 12 Nbd2 Rc8 ここで 13 d5なら、...h6から ...g5-g4で黒に多くのチャンスがある。逆に 13 dxc5(dxe5)なら、黒はキャスリング後にキング側の攻撃を恐れる必要はない。2つのルックを開いたdファイルで使う好機を得るからである。しか し、黒は依然としてクイーン側の前進したポーンがデメリットであり、攻撃(a4)を受けやすい。

 黒がセンターのポーンを交換すると、違った道筋をたどる。その場合は、11...Nc6 12 Nbd2 Bd7 13 Nf1 cxd4 14 cxd4 exd4 15 Bg5 Qb6. どちらが有利と決めるのは難しい。黒はポーンが多いが、白には主導権がある。

 図116から 8...0-0後すぐに 9 d4だと、黒には以下の興味深い攻撃チャンスがある。9 d4 Bg4 10 Be3 Nxe4 11 Bd5 Qd7 12 Bxe4 d5 13 Bc2 e4 14 h3 Bh5 15 Ne5 Bxd1 16 Nxd7 Bxc2 17 Nxf8 Rxf8. 白は、開いたファイルがないのでルックを活用できない。一方、黒は ...f5からの強力な攻撃を狙っている。

 アリョーヒンはこの変化を分析し、最終的に白が優勢になると考えた。12 dxe5 Ng5 13 Bxg5 Bxg5 14 h3 Bxf3 15 Qxf3 Nxe5 16 Rxe5 dxe5 17 Bxa8 Bc1 18 Na3 Qd2. 私は、白の勝ちに懐疑的である。

9 d3

 この攻撃性に劣る手は、黒のセンターに対してすぐには何も企てない。白は、本局の Nbd2-f1-g3のように徐々にキング側の攻撃を準備する。しかし、黒はセンターでの作戦行動に時間をかけるべきである。

9... Na5 10 Bc2 c5 11 Nbd2 Nc6 12 a4

 多くのルイ・ロペスの変化の中で、黒がポーン交換を避けられないなら、a4の突きは常に好手となる。ポーンを交換すれば、展開しにくいだけの白のクイー ン側 ルックが、交換するかaファイルに居座り続けることができるからである。いずれにせよ、黒のbポーンは終盤で弱点となる。本局で黒が ...b4, ...a5とできても、用を成さないか疑問でさえある。aポーン自身が終盤で弱点になりうるからである。

12... Bb7

 この手が敗北の原因である。ルイ・ロペスでは、このビショップは、白がf5にナイトをすえないために、必ずといってc8〜h3ダイアゴナルにいる必要が ある。さもないと、最も望ましくない ...g6でしか追っ払えない。正しい手順は、...b4, Be6, Qc7, d5としてdファイルを支配することだった。次のゲームの13手目の解説と比較されたし。

13 Nf1 Qc7 14 Ng3 g6

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図117
r4rk1/1bq1bp1p/p1np1np1/1pp1p3/P3P3/2PP1NN1/1PB2PPP/R1BQR1K1 w - - 0 15

 これが弱点になる。白はまず黒の ...d5に備え、それからキング側で鋭い攻撃を開始する。

15 Bg5 Rad8

 すぐに 15...d5は、16 Bxf6のために不可能。

16 axb5 axb5 17 Qc1

 黒が ...d5から ...dxe4としても大丈夫なようにクイーンをdファイルから逃がした。

17... Rfe8

 正しい手順は、概略を上述した通り。

18 h3

 白は、fポーンの前進を準備できるスペースを作った。

18... Ra8 19 Rxa8 Rxa8 20 Nh2 Bc8 21 f4 Ne8 22 f5 Bxg5 23 Qxg5 Qe7

 黒は交換にすがろうとし、当然ながら、有望な攻撃を持つ白はそれを避けようとする。白のピースはキング側へ集中する一方で、黒の戦力はバラバラで防御に もどる暇もない。その上、黒のh6とf6の弱点は、黒のキング側ビショップが交換されたために致命的に見える。

24 Qh6 Qf8 25 Qc1 Qg7 26 Rf1 g5

 白は Ng4から fxg6, Nh6の狙いがあった。

27 Ng4 Nf6 28 Nxf6+ Qxf6

 攻撃するナイトの一つは消えた。しかし、もう一つがf6やg6(訳注:h6の誤り?)へ押し入ってくる。

29 h4

 白のクイーンをh6へ侵入させるため。黒が取れば、29...gxh4 30 Nh5 Qd8 31 Qh6 Qf8 32 Nf6+. ...g6によって生じた弱点の教訓例である。

29... h6 30 Nh5 Qd8 31 f6

 すべてはたやすく理解できる。

31... Kh7 32 hxg5 Bg4 33 Ng7 Kg6 34 Bd1 Qd7 35 Nf5 Bxf5 36 exf5+ 1-0

 とどめは、36...Kh7 37 Bh5 hxg5 38 Qxg5 Rg8 39 Bg6+ fxg6 40 Qh4#
posted by 水野優 at 17:16| Comment(3) | Ed.Lasker『チェス戦略2』実戦(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする