ホームページは「チェストランス」です。古い記事では図の駒が表示されません。

2006年08月21日

ラスカー『チェスの常識』No.10,11,12その10

 エマヌエル・ラスカーの『チェスの常識』翻訳連載は今回で終了です。ブログの連載は途中からなので、通して読むにはHPチェストランスからのリンクページをお薦めしますが、ブログにはブログにしかない若干の内容も含んでいます。


 以下の局面は、1895年にヘイスティングズで行われたシュレヒター、チゴリン両氏のマッチで生じたものです。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
3r3r/1ppnk3/p3np2/4p1pp/4P3/1PPNBPP1/1P2K2P/R2R4 w - -

 白の手番でゲームは続きました。

1 b4

 はっきりした目的のないポーンを動かす手はとがめられます。ポーンが進んだb4は、ナイトに取っての好位置でした。Nd5の狙いですぐに Nb4として ...c6を強いれば、ビショップの威力も増したのです。しかも、1 b4は黒のナイトにc4の拠点を提供しました。白は、もう一つのbポーンを前進させないとc4を守れません。

1... Rdg8 2 Rg1

 白は、重要なdファイルからルックをそらすべきではありません。2 h3で十分守れます。2...g4には 3 fxg4 hxg4 4 h4、2...h4には 3 g4とできます。

2...g4 3 f4 Nd8 4 f5 Nf7 5 Nf2 Nd6 6 Bc5 Nb6

 6...Nxc5はだめです。7 bxc5 N動く 8 c6とされます。

7 Nd1

 ここでd1は、間違いなくルックが入るべきマスです。例えば、7 Rd1 Rd8 8 Rxd6 Rxd6 9 Rd1でおそらくドローでしょう。

7... Nbc8 8 Ne3 Kf7

 白のeポーンが無防備になりました。

9 Nd5 c6 10 Nc7 Nxe4 11 Rad1 Nxc5 12 bxc5 Rd8 13 Ne6 Rxd1 14 Rxd1 Ke7 15 h4

 これでは、黒にファイルを開かれ、ルックを陣取られてしまいます。15 c4の方がはるかにいい手で、黒のナイト、ルックがともに好位置に行けません。15...h4には、例えば 16 gxh4 Rxh4 17 Rd8 Na7 18 Ra8でピース得になります。

15... gxh3 16 Rh1 Kf7 17 Rxh3 Ne7 18 g4 h4 19 c4 Ng6

 ...Nf8の狙いもあるちょっとうまい手です。

20 fxg6+ Kxe6 21 g7 Rg8 22 Rxh4 Rxg7 23 Ke3 Kf7

 残るはキング側の最後のポーンに交換を強いれば、ラインがすべて開いて優勢が明白になります。

24 b4 Kg6

 24...Kg8は良さそうですが、25 Ke4 Rh7 26 Rxh7 Kxh7 27 Kf5 Kg7 28 g5 fxg5 29 Kxg5で難なくドローにされます。

25 Rh8 f5 26 gxf5+ Kxf5 27 Rh5+

 27 Rf8+には対策があります。27...Ke6 28 Re8+ Kd7 29 Rxe5 Rg3+ 30 K動く Rb3 黒の勝勢となります。

27... Ke6 28 Rh6+ Kd7 29 b5 axb5 30 cxb5 cxb5 31 Ke4 Re7 32 Rb6 Kc7 33 Rxb5 Kc6 34 Ra5 Re8

 このルックの動きで手待ちをして勝負を決しました。白のキングが無理して動けば、黒のeポーンがさらに前進するからです。白は、すべての指し手が強要されています。

35 Ra7 Re6 36 Ra5 Re7 37 Ra1 Kxc5 38 Rc1+ Kd6 39 Rd1+ Kc6 40 Rc1+ Kd7 41 Rc5 Kd6 42 Rc2 b5 43 Rb2 Kc5

 白は、黒に完全にねじ伏せられた戦いを投了しました。

終わり
posted by 水野優 at 00:05| Comment(6) | Lasker『チェスの常識』講義(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月31日

ラスカー『チェスの常識』No.10,11,12その7

エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.10,11,12 その7

黒:モーフィー
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
白:ハルヴィッツ
4r1k1/pbp4p/1p1p1np1/1P1P1p2/2P2P2/P3P1P1/6K1/1B2RN2 b - -

 引用した局面は、モーフィーのマッチのある局で生じたものです。ゲームは以下のように進みました。

1... a6 2 a4 axb5 3 axb5 Ra8

 最初の利点として、相手のルックがいない開いたファイルにルックを回すことができました。

4 Nd2 Ra3 5 e4 fxe4 6 Nxe4 Nxe4 7 Bxe4 Rc3 8 Bf3

 もちろん、白は Re8+から Rb8を狙っているのです。

8... Kf7 9 Re4 Bc8 10 Be2 Bf5 11 Rd4 h5

 この手で黒は、重要地点f5を強化しました(訳注:白の g4を阻止)。

12 Kf2 Kf6 13 Rd2 Bc2 14 Ke1 Be4 15 Kf2 Kf5

 白のキングは黒のルックに抑え込まれていますが、黒のキングはチェックされずに前進できます。

16 Ra2 h4

 キングの侵入口をこじ開けます。これがやがて危険な攻撃となります。

17 gxh4 Kxf4 18 Ra7 Rh3 19 Rxc7 Rh2+ 20 Ke1 Ke3

 すべての抵抗を鎮圧しました。

黒:シュタイニッツ
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
白:ラスカー
4k3/1p2b2p/r2pp1p1/1p6/r2BP3/1KPR1P2/1P4PP/7R w - -

 上記は、シュタイニッツ氏とのマッチの一局で生じた局面で、白番です。

1 Rhd1 e5

 すぐに 1...Kd7だと、2 f4で白が指しやすくなります。

2 Be3 Kd7 3 Bc5 Ra1 4 R1d2 Ke6 5 Ba3 g5 6 Rd5 Rb6 7 Kb4

 白のキングが積極的に参戦してきました。

7... g4

 形勢を逆転しかねない巧妙な反撃の始まりです。

8 Ka5

 まずはポーンをもらっておくのが賢明でした。したがって、8 fxg4 Re1 9 Ka5 Bd8 10 Rxb5 Ra6 11 Kb4 Rxe4+ 12 Kb3 ポーン得を維持。

8... Ra6+ 9 Kxb5 h5

 または 9...Rh1 10 fxg4 Re1 11 h3 Rxe4 12 c4.

10 Rd1 Rxd1 11 Rxd1 gxf3 12 gxf3 Ra8 13 Kb6 Rg8 14 Kxb7 Rg2 15 h4 Rh2 16 Kc6

 黒陣が持ちこたえられない作戦です。

16... Bxh4 17 Rxd6+ Kf7 18 Kd5 Bf6

 18...Rd2+ 19 Kxe5 Bg3+ 20 f4 Rxd6 21 Bxd6 h4 22 Bc5 h3 23 Bg1だと、4つのパスポーンがビショップにたやすく勝ちます。

19 Rd7+ Kg6 20 Ke6

 黒のキングの前進を牽制するためです。

 20...Kg5だと、21 Rf7 Bd8 22 Rf8 Bb6 23 Be7+ Kg6 24 Rg8+ Kh7 25 Kf7 続いて Bf6で、黒のキングはメイトの包囲網にかかります。

20... h4 21 Rd1 h3 22 Rg1+ Rg2 23 Rxg2+ hxg2 24 Bc5

 後はパスポーンを数手動かせば勝ちです。


  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
白:モーフィー
3b3r/3P1kp1/3p2p1/1B1P1p2/5P2/6P1/7P/4R1K1 w - -

 モーフィーのエネルギッシュな終盤の攻撃をもう一つ。

1 Re8 Rf8 2 Kf2 g5 3 Ke3 g4 4 Kd3 g5 5 Bc6 gxf4 6 gxf4 Rg8 7 Kc4

 黒の全戦力が白のルック、パスポーン、ビショップの共同攻撃にかかりきりなので、勝敗を決するためには白のキングの協力だけで十分です。

7... Rf8 8 Kb5 Rg8 9 Ka6 Rf8 10 Kb7 Rg8 11 Kc8 Bb6 12 Rxg8 Kxg8 13 d8=Q+ Bxd8 14 Kxd8 1-0


 最後の局面は、エネルギッシュというよりエチュードのような感じだ。これもメイソン『チェスの技術』第1部にあったと思う。この連載訳は後3回で終わりそうだ。後釜にはいよいよファインの『序盤の背景にある考え方』を予定している。
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posted by 水野優 at 00:02| Comment(0) | Lasker『チェスの常識』講義(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月24日

ラスカー『チェスの常識』No.10,11,12その6

 プロ野球オールスターはヤクルト選手も活躍したので楽しめた。逆に、欽ちゃんの独断的球団解散騒動はいただけない。結果的には予定通りの撤回再出発だっ たのかもしれないが、「自分の球団だから」の一言で残酷な決定を下すのは、いかにも日本的な親子心中を連想して気分が悪くなった。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.10,11,12 その6

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
4k3/2p5/4PP2/8/3p4/5K2/8/8 w - -

 白は、キングの有利な位置のおかげで勝てます。ポーンが黒よりずっと前進しているからです。

1 Kf4

 勝ち手順のタイミングを正確に計る必要があります。したがって、すぐにe4へ進んではいけません。

1... Kf8 2 Ke4 c5 3 Kd3 Ke8 4 e7

 ポーンを進める絶好のタイミングでした。ここから黒の動きはすべて強制的です。

4... Kd7 5 Kc4 Ke8 6 Kxc5 d3 7 Kd6 d2 8 Ke6 d1=Q 9 f7#

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
5b2/8/5k2/3K4/P5P1/8/8/8 w - -

1 a5 Bh6

 白のaポーンはもう一つ黒マスを越えるだけでよく、そこまで後2手です。したがって、黒のビショップは、それを止めるために急がねばなりません。

2 g5+ Bxg5

 これで、ビショップは味方のキングに邪魔されました。

3 Ke4 Bh4 4 Kf3

 そして、ポーンがクイーンになります。

 終盤の段階が近づくと、様々なピースの威力はずいぶん変化してきます。状況が異なってきたなら、基準も変えねばなりません。ゲームの初期段階で正しかっ た考え方は、実用的に修正されるのです。各ピースの価値は、当然ながら各終盤局面に応じて大きくなったり小さくなったりします。しかし、駒には指針となる ある程度平均的な価値があります。この価値は以下の項目によって決定されます。

 (a) 相手のキングに対して攻撃的なピースとして戦う能力。
 (b) パスポーンに対して戦う能力。
 (c) 最後に、障害が(終盤の常として)少なくなったときの到達力や 攻撃力。

 まずキングを検討しましょう。相手のキングに対してオポジションの位置にあれば、相手から3つのマスを奪っているので、前進を阻止することができます。 キングは単独でも、6段目を越えていない3つのつながったパスポーンと、片方が7段目まで進んだ2つのつながったパスポーンを止めることができます。キン グは、センターのマスの例えばe4にいれば、盤上のすべてのマスに3手以内で利かせられます。
 キングの行動範囲は、盤の端以外の障害には全く影響を受けません。したがって、センターや重要な地点の近くにいれば強力な戦力となります。しかし、妨害 の手段には使えないし、いかなる直接的な攻撃にもさらすことはできません。強力なピースの攻撃に対すると、キングの攻撃力は如実に低下します。
posted by 水野優 at 00:00| Comment(2) | Lasker『チェスの常識』講義(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月17日

ラスカー『チェスの常識』No.10,11,12その5

 最近前書きを書かないのは単にさぼっているだけだが、腹が立つことは書く気になる。アパートの階段辺りをまた野良猫がうろうろしていた。総じて動物嫌いだが、うるさい犬以外にも猫の一旦逃げてから振り返ってこちらを見返すのが無性にむかつくので自分でも出したことのない声で思わず吠えていた(笑。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.10,11,12 その5

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
2K5/2P2R2/k7/8/8/8/2r2p2/8 w - -

 両軍のキングの位置の違いが争いを決します。

1 Kb8 Rb2+ 2 Ka8 Rc2 3 Rf6+ Ka5

 3...Kb5には、4 Kb8で早く勝てます。

4 Kb8 Rb2+ 5 Ka7 Rc2 6 Rf5+ Ka4 7 Kb7 Rb2+ 8 Ka6 Rc2 9 Rf4+ Ka3 10 Kb6 Rb2+ 11 Ka5 Rc2 12 Rf3+ Ka2 13 Rxf2

 そしてクイーン対ルックの勝ちになります。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/5P2/8/P7/8/7k/7r/6K1 b - -

1... Rg2+ 2 Kf1 Rg4 3 f8=R

 ポーンがクイーンになると、3...Rf4+のサクリファイスでステイルメイトにできます。

3... Ra4 4 Ra8 Kg4

 絶妙手です。白は a6-a7としてからルックでチェックを狙っています。ここで 5 a6だと、5...Kf3のメイトの脅威でドローにできます。例えば、6 Ke1 Ke3 7 Kd1 Kd3 8 Kc1 Kc3 9 Kb1 Rb4+...

5 Ke2 Kf5 6 a6 Kf6

 6...Ke6はだめです。7 a7 Kd7 8 Rh8でルックを取られます(訳注:8...Rxa7 9 Rh7+)。

7 Kd3

 決定的な作戦です。白のキングは、ルックを自由にするためにポーンの守りに向かいます。しかし、黒は局面を好転させることができません。a7のマスは、白のキングが黒のルックからのチェックを安全に防ぐために空けておきます。

7... Kg7 8 Kc3 Kh7 9 Kb3 Ra5 10 Kb4 Ra1 11 Kb5 Rb1+ 12 Kc6 Rc1+ 13 Kb7 Rb1+ 14 Ka7

 この避難場所がなければ、ゲームは勝てません。これで問題はとても単純になりました。

14... Kg7 15 Rb8 Ra1 16 Rb6 Kf7 17 Kb7 白楽勝。


 どちらの問題もHPで訳したメイソン『チェスの技術』の第1章終盤にあってそちらの方が解説が詳しかったと思う。古典を単に訳しているとこういうことが多い。効率の悪い作業だ(汗。
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2006年07月10日

ラスカー『チェスの常識』No.10,11,12その4

 ブログ連載の後釜候補で忘れていたが、そろそろチェス以外のものも翻訳したい。バー トランド・ラッセルの初期の哲学書が著作権切れでちょうどいいとか思っていたが、いい新訳が出たからわざわざ対抗する意味もなくなった。
 チェスがらみの「読み物」なら『鏡の国のアリス』が極めつきだが、 これは山形浩生新訳が無料で読める。他にはエドガー・アラン・ポーが自動チェス人形について書いた何だっけ(汗)くらいな ら、旧訳よりずっと読みやすいものにできる。何かいいネタ教えてくださいませ。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.10,11,12 その4

 以下の局面は、パスポーンの強さを実証するものです。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
1k1r4/pP2q3/8/Q7/8/6bP/6P1/2R4K w - -

 巧妙な一撃で白の勝ちです。b7のポーンの力が最大に利用されます。

1 Rc8+ Rxc8 2 Qxa7+ Kxa7 3 bxc8=N+ クイーンを取って勝ち。

 上記の例は、終盤というよりは中盤のコンビネーションが支配的です。しかし、とてもわずかな援軍といえども、パスポーンはひじょうに危険になりえま す。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
7k/5K2/4P3/8/7b/8/8/6N1 w - -

1 Nf3 Bd8 2 Ne5 Kh7 3 Ng4 Kh8 4 Nf6

 ここで黒番なので白の勝ちです。3...Bh4(Bg5)でも、4 Nf6+でビショップの利きを邪魔して勝ちです。

;
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
2K1k3/1P6/8/8/8/8/7b/B7 w - -

1 Bd4 Bg3 2 Ba7 Bf4 3 Bb8 Be3 4 Bc7 Ba7 5 Bb6

 そして数手で白の勝ちです。この2つの例では、白のキングがひじょうにいい位置にいます。
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2006年07月03日

ラスカー『チェスの常識』No.10,11,12その3

 電話帳は忘れた頃に届く。古い電話帳を指定された時間に出しておくが最近は回収された試しがない。回収フリーダイヤルにかけたら、「すみませんが資源ゴ ミに出してください」とのこと。全くといって使わないし、無料でも捨てる手間がかかるから、もう取らないことにしよう。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.10,11,12 その3

ロコック氏による終盤問題。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
黒番:6k1/3p4/3p4/3P4/4P1p1/6P1/8/1K6 b - -
白番:6k1/3p4/3p4/3P4/4P1p1/6P1/8/1K6 w - -

 白には2つの危険な攻撃があります。1つは、黒の弱いgポーンをキングがf4から取ろうとする狙いです。もう1つは、d4でキングが守りながらポーンを e5に前進させることです。したがって、白のキングがe3へ行った直後に、黒のキングはg5へ行けねばなりません。さらに、白のキングがd4にいれば、黒 のキングはf6へ進んで e5へのポーンの前進を阻止せねばなりません。白のキングがd3にいると、e3とd4のどちらへも1手で行けるので、黒のキングはg6にいなければなりま せん。したがって、双方の陣地のマス同士が互いに対応することになります。この方法で推論すると、白番ならドロー、黒番なら黒の負けとなるはずです。

 例えば、黒番なら、

1... Kh8 2 Kb2 Kg8 3 Kb3 Kh7 4 Kc2 Kh6 5 Kd2 Kh5 6 Kc3 Kg5 7 Kc4 Kg6 8 Kd3 Kg5 9 Ke3 白勝ち。または 8...Kf6 9 Kd4 Kg6 10 e5 dxe5+ 11 Kxe5 Kf7 12 Kf5 白勝ち。

 白番だとすると、

1 Kc2 Kh7 2 Kd2 Kh6 3 Ke2 Kh5 4 Kd2 Kh6 5 Kc2 Kh7 6 Kc3 Kg7 7 Kc4 Kf7 8 Kd4 Kf6 9 Kd3 Kg6 10 Ke3 Kg5...

 出席者のお一人、マクラレン氏から以下の局面の解説を求められました。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
白番:8/8/8/4p1p1/8/5P2/8/3k2K1 w - -
黒番:8/8/8/4p1p1/8/5P2/8/3k2K1 b - -

 この局面も消耗原則に基づいています。黒にとっての有利な位置は、白のポーンを攻撃できる3マス、e2, e3, f4です。最も前にあるe2が中でも最善です。黒のキングがe2に来るときは、白のキングは必ずg2へ行けねばならず、黒のキングがe3へ行けば、白のキ ングはg3を占めねばなりません。したがって、ゲームはこう進むでしょう。

1 Kh1 Kd2 2 Kh2 Kd3 3 Kh3 Kd4 4 Kg4 Ke3 5 Kg3 Ke2 6 Kg2 Kd1 7 Kh1(またはKh3) ドロー。

 どちらかをパスポーンにする試みは失敗します。

1 Kh1 g4 2 Kg2 ドロー。

 黒番なら黒の勝ちです。

1... Ke1 2 Kg2 Ke2 3 Kg3 Kf1 4 Kh3 Kf2 5 Kg4 Kg2 黒勝ち。
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2006年06月26日

ラスカー『チェスの常識』No.10,11,12その2

 久々にチェス用語訳について話そう。positional advantageは日本語にしにくい訳語の一つとかねがね思っていたが、positionを陣形と訳す場合が多いのだから(客観的には「局面」だが、白 黒双方の立場から主観的に見ると「陣形」になる)、「陣形的優位」がすっきりしていいではないか。
 むしろ、なんでこの程度の訳語が思いつかなかったのかという感じだ。カタカナ訳を極力使わないYamagishiさんの訳には毎度感心させられるが、す でにこのように訳されているのに私が見過ごしているだけかもしれない(汗。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.10,11,12 その2

 消耗原則は、以下に続くいくつかの局面で説明されます。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/8/8/5p1k/5P2/6K1/7P/8 w - -

 白は、hとgファイル間をうろうろしても勝てるチャンスはありません。自由になる空間が足りないのです。例えば、1 Kh3 Kh6 2 Kh4 Kg6の後、白は後退するしかなく、盤の向こう側は黒のキングに譲り渡さざるを得ません。白のhポーンは結局のところ弱点となるので、できるだけ後ろにい るままの方が賢明です。黒のキングは、g4を占めるのが最善の位置となります。黒がそうしたときには、必ず白のキングはe3かe5へ行ける態勢でなければ なりません。これらから以下の手順が導き出されます。

1 Kh3 Kh6 2 Kg2 Kh5 3 Kg3 Kh6

 最初の原則の兆候です。

4 Kf2 Kh5 5 Ke2

 5 Ke3は、5...Kg4でポーンを取られるからだめです。

5... Kh4 6 Kd3 Kg4 7 Ke3 Kh3 8 Kd4 Kxh2 9 Ke5 白勝ち

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/2k5/p1P5/P1K5/8/8/8/8 w - -

 白には2つの勝てる要素があります。パスポーンと、黒のaポーンの弱さです。黒のキングは、この2点に関して現状では有利な位置にいます。これが以下の 作戦によって変化します。

1 Kd5 Kc8 2 Kc4 Kd8 3 Kd4 Kc8 4 Kd5 Kc7 5 Kc5

 これで手番が替わったので、白の楽勝です。または、

4... Kd8 5 Kd6 Kc8 6 c7 Kb7 7 Kd7

 あと数手でメイトになります。
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2006年06月19日

ラスカー『チェスの常識』No.10,11,12その1

 昨日も2週連続でスターデジオ・レビューを落としてしまったが、最近音楽は相変わらず聴いているものの、音楽に関して読み書きする意欲が萎えてきた。読 む 方は今週レビューするが、知的興味は哲学や科学へ移ってしまった。チェスと同じく音楽は出版翻訳ネタにならないからでもある(汗。
 maroさんが戎棋夷 説で06/06/14から触れている松浦寿輝の『青の奇蹟』は、グールドについても触れているので気になるし図書館で借りられるが、ごった煮 のエッセイ集なので今一つ触手が伸びずにいる。将棋のおまけ(?)としてチェスに興味のある方は意外に多いという印象を持った。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.10,11,12 その1

 皆さん。双方が中盤の戦いをしのぎきり、攻撃と防御に戦力が消耗して激減したためにキングへの直接攻撃の見込みがなくなると、ゲームは今までとは多く の点で異なる新たな段階に突入します。この段階を終盤と呼びます。キング−今まで相手から直接か間接の攻撃目標とされてきた−は、その安全を考慮して数個 のポーンによる防御で威力を封じる必要があったのですが、終盤では強力な攻撃兵器となるのが特徴です。

 ゲームが最終段階へ入っても、攻撃と防御の一般的原則は特に変わりません。弱点は主としてポーンで、ブロックされる等の理由で前進できないとか他のポー ンで守れない場合です。やはり、攻撃それ自身は直接弱点へ向かいます。弱点は、敵のピースやキングにさらされていて味方のどのピースやキングにも守られて いないような地点です。自陣の拠点は、相手の弱点へ向かうので、敵の弱点の近くに同じくらいの新たな弱点を作り出そうとします。ここでも攻撃軍が成功する ためには、ある種の優勢が必要です。これらすべてと相まって、2つの新たに導入される要素が終盤を特徴づけています。

 まず要求されるのは、(戦力の消耗の結果として)パスポーンをクイーンにする手際の良さです。このためには最大で5手かかりますが、たいていはそれ未満 で済みます。ポーンが前進するファイルがすべて拠点となっていれば、敵は駒の一つ、おそらくキングで守り、それらの拠点を支配するかファイルを妨害しなけ ればなりません。敵の駒がパスポーンの前進を阻止するマスやファイルを、有利な位 置(points of vantage)と呼びます。ゲームはたいてい、これらのポーンが前進するマスやファイルをめぐる争いを呈し、自軍の駒で邪魔したり、敵の駒が追い払われ たりします。一方で、敵の戦力の一部が自軍のパスポーン牽制の遂行でよしとするならば、自軍は他の地点を総力を上げて攻撃できます。

 ゲームの最終段階での攻撃と防御がひじょうに均衡していて、双方共に駒が好位置にあり、相手が自主的に道を譲らないかぎり両軍共に陣形を改善できない場 合が生じます。言い換えると、手を指さないことが特権となり、「時間」(つまりは何か有益なことをするために手を指す権利)が、全く異なる新たな性格を帯 びます。このような局面は、十分に戦ったゲームによく現れ、確実に先読みした結果であることもしばしばですが、手を指さねばならないことがピース活用にお いて損失となり、その結果ゲームを落とすことも多いのです。これを消耗原則(つ まり、陣形を改善するための手の消耗)と呼ぶことにします。この原則では、消耗作戦の好機が訪れるまでに、双方が出し惜しむ陣形を改善するか少なくとも劣 勢にはしない手に関して、大いなる慎重さを原則自体が必要とします。
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posted by 水野優 at 14:42| Comment(4) | Lasker『チェスの常識』講義(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月12日

ラスカー『チェスの常識』No.9その5

 メールソフトは評判の悪いアウトルックを使っている。古いメールが妙になくなると思ったら、スパム対策として「既存の保存設定」を半年で削除にしてし まっていた(汗。「既存〜」だからすべてのフォルダに適応されてしまったのだ。
 いったんは「保存フォルダ」の「削除済みアイテム」に入ったようだが、それも消してしまったらしい。半年以上前だと、仕事のメールでもどうでもいいほど の作業環境だったりするのだが(汗。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.9 その5

黒:ラスカー
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
2r3k1/1b1n3p/p3q1p1/1p2np2/8/1P3PP1/P2R1Q1P/1B1NN1K1 w - -
白:シュタイニッツ

 これは、シュタイニッツ氏とのマッチの第18局で白が33手目を指す前の局面です。この局面を注意深く勉強することをお薦めします。ここでは、ひ じょうに巧妙な防御作戦によってしか、白が互角を維持することができません。問題は次の白の一手だけです。黒は、1...Nxf3+ 2 Nxf3 Bxf3 3 Qxf3 Qxe1+で勝ちを狙っています。

 白はどうしのげばいいのでしょうか?

 1 Rc2 Rxc2 2 Bxc2 Qc6 3 Kg2 Nxf3 4 Nxf3 Ne5だと、ピースを取り返されてポーン得を保たれます。

 1 Re2 Rc1 2 Bc2 Qd5 3 Ne3 Qxf3 または 3 Rd2 Nxf3+ 4 Nxf3 Qxf3 5 Qxf3 Bxf3 6 Rxd7 Rxc2は、黒の勝ちでしょう。1 Ne3は、1...Rc8 2 Rd1 Nxf3+ 3 Nxf3 Rxd1+ 4 Nxd1 Qd5と応じられ、やはり最低でも互角の局面から黒がポーン得になります。

 1 Kg2 Nxf3 2 Nxf3 Ne5 3 Rd3 Rc1 4 Rd8+ Kg7 5 Qa7 Qc6は、抗しがたい攻撃を生み出します。

 実際に指された、そして唯一白が負けずに済む(ドローになる)手は、1 Kf1!です。対する黒は、不利にならないように慎重に指さねばならず、過激な攻撃はすべて成功しません。

 いい防御手を見つけるために、ときには局面を深く洞察する必要に迫られることでしょう。しかし、これだけは言えます。それは、原則に従っても読みの役に は立たないということです。いかに危険に見える攻撃も、先を読めば見つかります。
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posted by 水野優 at 12:04| Comment(0) | Lasker『チェスの常識』講義(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月05日

ラスカー『チェスの常識』No.9その4

 イタリアのアルベルト・スギの作品を盗作した疑惑で文部科学大臣賞剥奪の可能性がある話題の画家和田義彦が、ついに白状し始めた。'06/2/3に書評 した『著作権とは何か』を 基 準に考えても、スギの作品を知っていたことは疑いがないし、タイトル名や構図の酷似が「アイデア」だけを盗んだように見えないから著作権侵害に違いない。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.9 その4

黒:シュタイニッツ
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
白:ラスカー
5N2/1k1r2pp/1ppp1p2/4nP2/1P2P3/2PqB1Q1/1P4PP/4K2R w K -

 引用した局面(白番)は、シュタイニッツ氏とのマッチで生じました。私はいくぶん急いでこう指しました。

1 Rf1

 Nxd7はパペチュアル・チェックでドローにされそうだったからです。しかし(最初に指摘したのはチゴリンだったと思いますが)、それは間違いでした。 例えば、1 Nxd7 Qb1+ 2 Kd2 Qxb2+ 3 Kd1 Qb3+ 4 Ke2 Qc4+ 5 Ke1! Qxc3+ 6 Bd2 Qa1+ 7 Ke2で、白の楽勝でしょう。

1... Qc2 2 Bd2 Re7 3 Ne6 Qxe4+

 ここで白は、用心深く応手を選択しなければなりません。指せそうな 4 Kd1 Qb1+ 5 Bc1 Nd3 6 Qxd6 Nxb2+ 7 Ke2 Qe5+ 8 Be3 Qxe3では、戦力が互角になるのでドローの可能性が濃厚となります。

4 Qe3 Qxg2

 ここから、白の防御の鍵となる重要な作戦が続きます。

5 b3

 5 Qe2だと、黒は 5...Qd5としてクイーン側を意のままにできます。

5... Re8

 5...Qxh2は戦力を互角に保つには不十分です。白は Kd1や b5と応じて、直ちに攻撃を開始できます。

6 Qe2 Qh3

 黒の攻撃が息切れする兆候が見え始めました。クイーンはクイーン側のどこかへ置いた方が良かったでしょう。ただし、6...Qd5は 7 c4でクイーン交換を強いられるのでだめですが。

7 Kd1 Ra8 8 Rf2 Ra2

 黒のピース配置は良好ですが、狙いが何もありません。

9 b5 c5 10 Nxg7 d5 11 Kc1

 白は、速くクライマックスへ向かうためにルックを追い払いにかかります。

11... Qd3

 11...c4は 12 bxc4、11...Nd3+は 12 Kb1と返され、交換の結果は必ず白が有利です。

12 Qxd3 Nxd3 13 Kb1 Rb2+ 14 Ka1 Rxb3 15 Rf3

 そして白が終盤戦で勝ちました。


 後2ページでNo.9が終わるのでそこまで訳すつもりだったが、新ブログ開設も控えているし、読書にも時間を取りたい。更新頻度を下げずに手を抜くには 1回の量を減らすしかない(汗。他の連載はこんな風に切れ目を調整できないが。
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posted by 水野優 at 11:05| Comment(0) | Lasker『チェスの常識』講義(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月29日

ラスカー『チェスの常識』No.9その3

 最近、スパムは別にしても業者から広告載せませんかとか電子出版しませんかというコメントが付くようになった。アクセスが増えてきたからにしても、何が きっかけなのか謎である。いずれにせよ、うちは一般向けの広告塔になれるようなコンテンツではない。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.9 その3

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 c3

 ポンジアニ・オープニングです。この定跡は、早急なcポーンの前進に問題があるのでお薦めできません。

3... d5

 すばらしい応手です。3手目で白がd3マスを弱めたので、黒は、その重要地点を支配するためにdファイルを開こうとします。

4 Qa4 dxe4 5 Nxe5 Qd5 6 Bb5 Ne7 7 f4

7 f4
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r1b1kb1r/ppp1nppp/2n5/1B1qN3/Q3pP2/2P5/PP1P2PP/RNB1K2R b KQkq f3 0 7

 スタントンによる手です。マイナーピースを交換すると完全になくなってしまう攻撃を維持しようとしています。白には Bc4の狙いがあるので、スタントンは黒が 7...exf3と応じると考えました。しかし、一人のリバプールの名手は、この局面を真の棋士の直観で見抜き、このような白が性急に企てた攻撃に対して はきっ と好手を返せるとにらみました。これは、あるマッチで彼が数ある対戦相手の中の一人を倒した方法です。

7... Bd7 8 Nxd7 Kxd7 9 0-0 Nf5

 黒は展開がはるかに優勢で、...Bc5+を狙っています。

10 b4 a5 11 Kh1 axb4 12 Bxc6+ bxc6 13 Qxa8 Bc5 14 Qxh8 Ng3+ 15 hxg3 Qh5#
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白:ブラックバーン 黒:バーン

1 e4 e6 2 d4 d5 3 Nc3 Nf6 4 e5 Nfd7 5 f4 c5 6 dxc5 Bxc5 7 Qg4 0-0 8 Bd3 f5 9 Qh3 Nc6 10 Nf3 Re8

 黒は、明らかにキング側での長い苦闘に備えました。最後の手は見事にその目的にかなっています。ルックは、ナイトに打って付けのマスf8を空けました。ナ イトは、そこからe6やg6に加えて最弱地点のhポーンを守り、常にgファイルを妨害する態勢にいられます。

11 g4 g6 12 a3

 現に全く脅威でもないことを防ごうとする、見た目は無難な手です。こういう過度な防御手が多くのゲームをだめにします。なぜ、すぐに 12 Qg3としてからhポーンを積極的に前進させないのでしょうか?

12... a6 13 Bd2 b5 14 gxf5 gxf5 15 0-0-0 Nf8 16 Rhg1+

 大胆で有望なサクリファイスは、ひじょうに対処しがたい猛攻を生み出します。

16... Bxg1 17 Rxg1+ Ng6 18 Ne2 Ra7

 再び見事な防御作戦です。このルックはいくつもの弱点を守り、gファイルが開くのを防ぐ手段として使えます。

19 Ng3 Ree7 20 Nh5 Kh8 21 Nf6 Rg7 22 Qh6 Nf8 23 Ng5

23 Ng5
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
2bq1n1k/r5rp/p1n1pN1Q/1p1pPpN1/5P2/P2B4/1PPB3P/2K3R1 b - - 0 23

 黒は、実質的には危険を脱していますが、まだ慎重に指さねばなりません。ここで、白は 24 Qxg7+ Rxg7 25 Nf7+ Rxf7 26 Rg8#を狙っています。

23... Rg6 24 Qh5 Rag7 25 Rg3 Qe7

 hポーンへのさらなる防御です。白の攻撃は、2つのビショップが参戦する糸口がないために失速します。

26 Be2 Rxf6

 積極的かつ決定的です。

27 exf6 Qxf6 28 Rc3 Bd7 29 Nf3 Kg8

 白は 30 Rxc6から Bc3を狙っていました。

30 Qh3 Ng6 31 Qh6 Qe7 32 Rxc6 Bxc6

 黒の駒得に攻撃で対抗する最後の試みです。

33 Bc3 Rf7 34 Ng5 Nxf4 35 Nxf7 Nxe2+ 36 Kd2 Nxc3

 黒は数手後に勝ちました。


 ポンジアニ・オープニングのゲームで黒を指していたらしいリバプールの名手は誰なのだろう? スタントンに勝ったのなら名前くらい出してもよさそうだ。ChessGames.comでも見つからないし同時対局とも思ったが、「名手が数ある対戦相手の一人としてスタントンを倒した」という記述に矛盾す る。
 私も解釈に自信がないので文字面だけ訳した感じになってしまった。識者の情報に期待する(汗。
posted by 水野優 at 11:43| Comment(4) | Lasker『チェスの常識』講義(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月15日

ラスカー『チェスの常識』No.9その1

 ヤクルトが交流戦で息を吹き返した。'78年の初優勝のときのように豪打で投手をカバーしてくれればいい。あれは初めて落ちこぼれた高一の年だった。以 来、ヤクルト優勝の年は私的に芳しくないのだが、今年こそはお互いにブレークさせるぞう。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.9 その1

 皆さん、今晩の講義のテーマは防御の原則です。

 攻撃が妨害を取り除くプロセスとすれば、防御は、その妨害を強化して自陣を固め、向かってくる一撃をかわす技術と言えます。自陣が敵陣より劣っていない のに、相手が全く準備もおろそかなまま攻撃を仕掛けてきたら、まだ控えている駒を展開させて可能なかぎり少ない防御手で攻撃を阻止し(一撃をその一瞬に目 にも留まらぬ速さでかわす一流のボクサーのように)、即座に反撃を開始しましょう。しかし、残念ながら実際に相手の攻撃目標をやむを得ず抱えた場合は、全 く異 なる対処をする必要があります。

 ここでも常識によれば、対処法がはっきり分かります。どの局面でも、敵の戦力の攻撃にさらされている部分と十分に守られている他の部分があ ります。攻撃はまず弱点に向かってきます。例えば、キャスリング後のhポーンやgポーン、またはf3(f6)のナイトなどです。したがって、弱点を大駒の クイーンやルック、またはナイトやビショップで占めていれば、まずはそこを空けねばなりません。第二に、弱点を補強して容易に敵が近づけないようにしなけ ればな りません。残りの戦力は、敵の控え戦力に対抗するのが最善です。そうすれば、相手が攻撃目標に控え戦力を活用するまでに時間と労力をかけさせることができ ま す。

 一般的に言うと、相手の攻撃目標は、こちらの駒の配置を強制的にある程度変化させることです。やむを得ない理由のとき以外は自分からそうしてはいけませ ん。これは、ほとんどのチェスプレーヤーが陥ることです。例を挙げると、白のナイトやビショップがg5に来られないように黒はhポーンをh6へ進 めますが、これは手損になる以外にも、原則として連なったポーンの防御力強化という目的に反します。f5に居座る白のナイトを追い払うために、黒が gポーンをg6へ進めることもあります。f5がいかに好位置でも、...g6はその倍以上危険な手と言えるでしょう。逆に、追い払われるかもしれない からという理由でピースを退けることもあります。これらの指し手は、相手が駒の置き換え等に手数を費やす−つまり、手中にある「戦力」を共同させる−ま で指すのを控えるべきです。

 もちろん、他の防御手では、敵の攻撃目標にされている地点を助けねばなりません。したがって、攻撃の原則に立ち返り、自陣の防御戦のあまり近くに拠点 を作られないようにします。以下に続く実例にはそのすべてが含まれています。

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 d4 exd4 4 Nxd4 Nf6 5 Nxc6 bxc6 6 Bd3 d5 7 e5

 黒はここまで、展開の原則に従ってきました。白に攻撃目標を作らせず、どのピースも弱点になっていません。したがって、白の攻撃は時期尚早です。

7... Ng4 8 0-0 Bc5 9 h3

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r1bqk2r/p1p2ppp/2p5/2bpP3/6n1/3B3P/PPP2PP1/RNBQ1RK1 b kq - 0 9

 巧みな一撃が続き、白の手順が全く理にかなっていなかったことが分かります。

9... Nxe5 10 Re1 Qf6 11 Qe2 0-0 12 Qxe5 Qxf2+ 13 Kh1 Bxh3 14 gxh3 Qf3+ 15 Kh2 Bd6

 黒の勝ちです。


 本書のタイトルにも含まれる「常識」(common sense)は、maroさんにも指摘された通り翻訳が難しい言葉である。common senseは「チェスプレーヤーが知っておくべき最低限の原則」を表しているので、常識ではややニュアンスが狭い感じがする。moralがいわゆる「道 徳」よ り幅広い意味を持つような感じだろうか。
 精神医学界には、common senseを文字通り「共通感覚」と解釈する考え方があり、この欠如があらゆる精神病の原因と考える。チェスに関しても「常識」よりこの方が近いか もしれない。本書の訳が終わるまでに結論が出せるだろうか(汗。
Secrets of Chess Defence
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posted by 水野優 at 12:27| Comment(2) | Lasker『チェスの常識』講義(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月01日

ラスカー『チェスの常識』No.7&8その8

 普段から仕事と休日の区別がない私にはGWなど関係ない。旅行の趣味があってもわざわざこんな込んでて割高のときには行かないだろう。それにしても今日 はいきなり真夏日の暑さ。冬が寒かったから、夏も冷夏ならいいのにな(笑。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.7 & 8 その8

白:ノア博士 黒:タラッシュ博士

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bb5 Nf6 4 0-0 Nxe4 5 Re1 Nd6 6 Ba4 Be7 7 Nxe5 Nxe5 8 Rxe5 0-0

 黒は見事に展開し、ポーンの形にも攻められるところはありません。

9 d4 Nc4 10 Re1 d5 11 c3

11 c3
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r1bq1rk1/ppp1bppp/8/3p4/B1nP4/2P5/PP3PPP/RNBQR1K1 b - - 0 11

 白にはこんな手を指している時間はありません。11 Bb3 Na5 12 Nc3 Nxb3 13 axb3 Bd6 14 Qf3 c6 15 Bf4が、もっと堅実な変化です。

11... Bf5

 すぐに白の弱点 d3, c2ににらみを利かせます。

12 Nd2 Nxd2 13 Bxd2 Bd6 14 Qh5 Bg6 15 Qh3

 クイーンの進軍にはあまり狙いがありません。14 Bc2の方が目的にかなっていました。

15... c6

 ここから最後まで、黒の棋風は実に簡素です。黒が、白クイーンの危うい位置、やや遊んで働いていない白ビショップの弱さ、自軍の強力に居座るクイーン側 ビショップを利用し、白のbポーンを極めて論理的に攻撃してうまく優位に立つ様に注目しましょう。

16 Re2 Qb6 17 Bb3 a5

 すばらしい! クイーン側ルックを働かせながら、bポーンを守る邪魔を追い払おうとします。

18 Be3 a4 19 Bd1 Rfe8 20 Rc1 f5

 お見事! 黒は、白にgかfポーンの前進を強要します。fポーンを突くとe4マスが黒の強力な拠点になり、gポーンを突くとクイーンの邪魔になってポー ン 形が弱くなります。

21 f4 Re7 22 Rcc2 Rae8 23 Bc1 Qb5

 Qd3を阻止し、再び白陣の中央の弱点を押さえます。

24 Qf3 Qc4 25 a3 Re4 26 g3 c5

 温存中の戦力であるキング側ビショップを働かせるためです。

27 Rxe4 fxe4 28 Qe3 Qd3 29 Qxd3 exd3 30 Rf2 b5 31 Bd2 Be7 32 f5 Bf7 33 Rf1 cxd4 34 cxd4 Bf6 35 Bc3 Re4 36 Bf3 Bxd4+ 37 Kg2

37 Kg2
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
6k1/5bpp/8/1p1p1P2/p2br3/P1Bp1BP1/1P4KP/5R2 b - - 0 37

 誤りです。37 Bxd4 Rxd4 38 Rd1の方がはるかにいい方策でした。

37... Bxc3

 精力的かつ決定的ですが、先を読むのはさほど難しくありません。

38 Bxe4 dxe4 39 bxc3 Bb3

 白投了です。40 Kf2 d2 41 Ke2 Bc4+で、白はルックを失うからです。


 ↓上記黒番ジークベルト・タラッシュ博士の指南書。今となってはたしかに前世紀の遺物。私が、手放さなくても翻訳候補には入れられなかっただろう(汗。
The Game of Chess
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2006年04月24日

ラスカー『チェスの常識』No.7&8その7

 この頃また古い雑誌とかを読んで処分するというろくでもない作業に時間を取られている(汗。また引っ越しするだろうからいずれやらねばならないが、過去 の清算はいろいろな意味で面倒だ。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.7 & 8 その7

白:シュタイニッツ 黒:ツカートルト

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 d4 exd4 4 Nxd4 Nf6

 我々の原則によれば最強の応手に違いありません。たしかに、あらゆる要求にかなった手です。

5 Nc3 Bb4 6 Nxc6 bxc6 7 Bd3 d5 8 exd5 cxd5 9 0-0 0-0 10 Bg5 c6 11 Ne2 Bd6 12 Ng3

 白のナイトが、ビショップのために空けておいた方がいいマスを占めました。したがって、12 Nd4の方が良かったでしょう。

12... h6 13 Bd2

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r1bq1rk1/p4pp1/2pb1n1p/3p4/8/3B2N1/PPPB1PPP/R2Q1RK1 b - - 0 13

13... Ng4

 見事! 黒は ...Qh4を狙っています。白が 14 h3と応じれば、14...Nxf2 15 Kxf2 Qh4 16 Qf3 f5で、黒勝ちです。

14 Be2 Qh4 15 Bxg4 Bxg4 16 Qc1 Be2

 この手の狙いはあまり明確ではありません。黒は、白がルックの展開で出遅れているうちに、以下のように厳しく攻めるべきでした。16...f5 17 Bf4 Bc5 18 Re1 g5 19 Be3 Bxe3 20 fxe3 f4で申し分ない攻撃です。16...Bd7でも、対処しがたい持続的な攻撃となります。

17 Re1 Ba6 18 Bc3 f5 19 Re6 Rad8 20 Qd2

 白は、Qd4や開いたファイルにルックを重ねることを狙っています。しかし、黒がすべてを手際よく阻止する様に注目しましょう。

20... d4 21 Ba5

 もちろん、白はポーンを取るとピース損になります。

21... Rd7 22 Rxd6 Rxd6 23 Bb4 Qf6 24 Rd1 Rd5 25 Bxf8 Qxf8 26 Nh5 Qe8 27 Nf4 Re5

 黒は、まず開いたファイルを支配できます−大きな優位。白は、26手目でそれを許すべきではありませんでした。

28 h4 c5 29 h5

 ナイトを難攻不落にしようとするhポーンの前進は、場違いです。hポーン自身が、ビショップの攻撃にさらされるにすぎません。

29... Re4 30 c3

 不必要な前進は、続く結末を早める主要要因となります。ここから最後までの黒の指し手は、ひじょうに堅実かつ強力です。

30... Qb8 31 g3 Qe5 32 Ng6 Qd6 33 Nf4 d3 34 b3

 34 Nxd3 Bxd3 35 Qxd3 Re1+では、ルックかクイーンが取られます。

34... c4 35 Rb1 Kh7 36 Kh2 Qb6

 一級品。黒は ...Re2を狙っています。

37 Kg1 Bb7 38 Rb2 Qc6 39 f3 Qc5+ 40 Qf2 Re1+ 41 Kh2

 41 Kg2なら 41...Re3.

41... Qxf2+ 42 Rxf2 Bxf3

 決定的。dポーンで勝てます。

43 g4 Be2

 数手後に黒が勝ちました。

 本局を注意深く通観すると、2つの原則を確認できます。
 (i) 自軍ピースの働きや勢力範囲等の確かな優勢を確保するまでは、攻撃してはいけない。
 結論: もしそうすると、重大な局面で反動が生じ、不可避の反撃を受けて混乱をきたすことになる。

 (ii) 最初の攻撃目標は、敵陣にできるだけ近い拠点を作ってピースで占拠し、そこから大きな行動範囲を得ることである。
 結論: 攻撃している側で相手ポーンの前進を強要してみよう。

↓かなり発売は先ですが。
 
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2006年04月10日

ラスカー『チェスの常識』No.7&8その5

 昨日読書中に突然デスクライトが消灯した。タッチスイッチの調子が悪かったのでそのせいと思ったが、二度と点く気配がないし焦げ臭い。どうやら本体がい かれたらしい。まめに消すから過負担ではないし、原因が分からないがこんなことがあるのか。掃除機買って届いたばかりというのに(汗。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.7 & 8 その5

 モーフィーのニューヨーク・トーナメントでのポールセンとの有名なゲームは、以下のように進みました。

白:ポールセン 黒:モーフィー

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Nc3 Nf6 4 Bb5 Bc5 5 0-0 0-0 6 Nxe5 Re8 7 Nxc6

 この交換は黒を展開させるだけです。7 Nf3と退いて 7...Nxe4には 8 d4と続けた方が良かったのです。

7... dxc6 8 Bc4 b5 9 Be2

 当然ながら、黒がポーンをこのように進めても防御力は増しませんが、展開でかなり上回っているので、白はこの弱点につけ込むことができないのです。

9... Nxe4 10 Nxe4 Rxe4 11 Bf3

 ここでは一見 11 c3が強そうですが、その場合、黒は、現状hとgポーンにしか守られていない白のキングを襲撃します。以下ように続くでしょう。11...Qh4 12 g3 Qh3 13 Bf3 Rh4 14 gxh4 Bd6 または 12 d4 Bd6 13 g3 Qh3 14 f4 Bd7 15 Bf3 Re7 黒はeファイルにルックを重ね、多くの攻撃チャンスを秘めた十分な陣形となります。

11... Re6 12 c3

 目的が単純なわりには少々凝りすぎた手順です。先に 12 d3とするのが正着でした。

12... Qd3

 クイーンのようなメジャーピースが妨害目的にうまく利用される珍しいケースです。このクイーンは敵のどの駒にも攻撃されないどころか、黒をかなり抑制し ており、Qc2, Be2等を阻止しています。

13 b4 Bb6 14 a4 bxa4 15 Qxa4 Bd7 16 Ra2

 Qc2を可能にする手です。dポーンを敵のクイーンにブロッケードされた白は、明らかに制約を被っていると感じ始めています。しかし、白のプランは、す でに決定打を放とうとする黒をいらつかせるものです。16 Qa6なら、黒の最善の応手は 16...Qf5 17 d4 Rae8 18 Be3 c5 19 bxc5 Bxc5 20 Qa5? Rg6で勝勢です。21 Kh1 Qxf3 22 gxf3 Bc6で白に打つ手がないからです。したがって、白の最善は 20 Qe2 Bb6 21 Bg4 Rxe3 22 Bxf5 Rxe2 23 Bxd7で互角の終盤になります。

16... Rae8

 展開と同時に攻撃でも最強の手です。黒は ...Qxf1+を狙っています。

17 Qa6

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
4r1k1/p1pb1ppp/Qbp1r3/8/1P6/2Pq1B2/R2P1PPP/2B2RK1 b - - 0 17

17... Qxf3

 印象的で美しい、驚くべき一撃です。

18 gxf3 Rg6+ 19 Kh1 Bh3

 黒は ...Bg2+から ...Bxf3#を狙っています。20 Rg1は防御になりません。ルック交換後にもう一つのルックにチェックメイトされるからです。20 Qd3も事態を改善しません。黒は 20...f5と応じて 21 Qc4+なら 21...Kf8とします。

20 Rd1 Bg2+ 21 Kg1 Bxf3+ 22 Kf1 Bg2+

 黒は22...Rg2とすれば、...Rxf2+以下と ...Rxh2の二重の狙いでけりをつけることができました。

23 Kg1 Bh3+ 24 Kh1 Bxf2 25 Qf1

 白の唯一の手だてです。

25... Bxf1 26 Rxf1 Re2

 再び、白のdポーンを釘付けにします。

27 Ra1 Rh6 28 d4

 やっと!

28... Be3 0-1

 29 Bxe3 Rhxh2+ 30 Kg1 Reg2#.


 ↓またamazon24時間以内発送本。初出は'78だが246ページ384図というドーバーならではのお得感。攻撃やポジショナルプレーの基本から終 盤の取り組み方まで解説、形勢判断のプロセスから指し手の選択までを深く吟味し、難局やタイムトラブルの対処法にも及ぶ。初級よりは中級向けだろう。
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2006年04月03日

ラスカー『チェスの常識』No.7&8その4

 昨日は阪神に大敗したが、負けるときは大敗しても接戦で勝っていけばいい。去年セリーグ最少得点なのに4位になったのはその戦略(?)のおかげだ。しか し序盤で決定打が出てれば流れが変わっていただろうという試合が多すぎる。采配以前のメンタル面の問題でもあるのだろう。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.7 & 8 その4

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r4rk1/1b2bppp/ppq1pn2/2ppB3/5P2/1P1BP1N1/P1PPQ1PP/R4RK1 w - -

 ゲーム(アムステルダムでの国際大会)はこう続きました。

1 Nh5 Nxh5 2 Bxh7+ Kxh7 3 Qxh5+ Kg8 4 Bxg7 Kxg7 5 Qg4+ Kh7 6 Rf3 e5 7 Rh3+ Qh6 8 Rxh6+ Kxh6 9 Qd7 Bf6 10 Qxb7 Kg7 11 Rf1 Rab8 12 Qd7 Rfd8 13 Qg4+ Kf8 14 fxe5 Bg7 15 e6 Rb7 16 Qg6 f6 17 Rxf6+ Bxf6 18 Qxf6+ Ke8 19 Qh8+ Ke7 20 Qg7+.

 そして白の勝ちです。

 優勢を明確にできないときは、普通のペースの攻撃でよしとすべきです。拠点へと前進し、相手の防御ラインの近くに新たな拠点を順に作り上げていきます。 その際は、プランがすべてで、時間は二の次です(これらの講義の第3,4,5,6ゲームと比較されたし)。一般的に、攻撃の「ペース」が遅いからといっ て、あまり顕著でない優勢が緩和されてしまうことはありません。名人は乱暴で短期的な攻撃をほとんどしません。そういう駒の動かし方はたいてい評価が低い からです。

 モーフィーのゲームをいくつか見ていきましょう。

1 e4 e5 2 f4 exf4 3 Bc4 d5 4 exd5 Bd6 5 Nc3 Nf6 6 d4 0-0 7 Nge2 f3

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
rnbq1rk1/ppp2ppp/3b1n2/3P4/2BP4/2N2p2/PPP1N1PP/R1BQK2R w KQ - 0 8

 白のキングがeファイルで阻害されているので、モーフィーは、キングが安全にキャスリングできないようにポーンをサクリファイスしました。注目すべき は、サクリファイスの後で、白のhとfポーンがひじょうに弱くなってどちらも孤立することです。

8 gxf3 Nh5 9 h4

 9 Be3といった展開する手で防御した方がましでした。そうすれば以下のように続いたかもしれません。9...Re8 10 Qd2 Qe7 11 Ne4 Bf5 12 Bd3.

9... Re8 10 Ne4

 fポーンかクイーン側ビショップでしか攻撃できない白の拠点の一つを占めるゆえに見事な遮断です。

10... Bg3+ 11 Kd2 Bd6 12 Kc3

 白は、不必要に新たな危険に身をさらしました。c3とすればキングを安全に退却させられました。

12... b5

 白のキングが避難場所に選んだ側へのラインを即座にすべて開きます。

13 Bxb5 c6

 黒の ...Qa5+の狙いが、結果的にe4で好位置のナイトを白に断念させます。

14 Nxd6 Qxd6 15 Ba4 Ba6 16 Re1 Nd7 17 b3 Nb6 18 Bxc6 Rac8

 6手のエネルギッシュな攻撃手順の結果、すべての黒ピースに開いた長いラインができました。

19 Kd2

 黒には、ナイトかクイーンでポーンを取ってピース得する狙いがあります。19 Kb2はすぐに負けます。19...Bxe2 20 Rxe2 Rxe2 21 Qxe2 Na4+ 次の手でクイーン取りかチェックメイトです。

19... Rxc6 20 dxc6 Bxe2 21 Rxe2 Qxd4+ 22 Ke1 Qg1+ 23 Kd2 Rd8+ 24 Kc3 Qc5+ 25 Kb2 Na4+

 白投了。26 bxa4なら 26...Qb4#. 26 Kb1なら 26...Nc3+でまずクイーン取られ、次にルックを取られる。


 気になる新刊だが、分かりにくいタイトルだ。世界チャンプを最も長く保持したエマヌエル・ラスカー、未だ研究され尽くしたとはいえない彼の才 能を、GMソルティスが100以上のゲーム解説を通して洞察するという実戦集である。上記のバード・オープニングの名局も入っているかな。
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2006年03月27日

ラスカー『チェスの常識』No.7&8その3

 久々にボウリングの話をしよう。一昨日のスカイAの「パーフェクト・ボウリング」がまたアメリカのプロトーナメント放送になった。BSが入らないので去 年のジャパンカップさえ見てなかったが、その優勝者トミー・ジョーンズがトーナメントでなんと14連勝を続けているというのを聞いて驚いた。
 若いわりにハゲに近い短髪で体躯もそれほど良くないという印象しかなかった彼だが、ショートオイル気味のレンコンとはいえ、エッジいっぱいまで出した フックボールで豪快なストライクの山を築いていた。決勝ではあわやパーフェクトの289で優勝を決める。これが14連勝目なのだろうか。
 アメリカも日本も、プロになっても1勝もできずに終わる選手はごまんといる。同じトーナメント制プロのゴルフを想像すれば分かりやすい。だから14連勝 がいかにすごい記録かが分かる。プロになるのもたいへんだが、ほんとうにたいへんなのはそれからという世界。久しぶりにいいものを見た。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.7 & 8 その3

 このため、我々が課題に取り組む前に、開始局面は一方が他方に勝てるたぐいの局面とは区別されてきたという前提から始めねばなりません。これを当然と見 なせば、問題は以下のように言い換えられます。局面や戦力の均衡というものは、最低でも少しは崩れているので、劣勢側のキングをチェックメイトすることが 可能になるのだと。

 ほぼ互角の局面で一方が他方に強制的に勝てるかどうかという問題は、通常双方の微妙な相違点によります。それぞれ個別のケースで、知性を応用によらずに 一定の規則や数式等で答を求めようとしても無駄です。こういう複雑な性質の問題を解決する唯一の方法は、盤を分割し、部分的な問題を経験的な手法で分析 し、最後にすべての答をまとめて結論を引き出すことです。

 今、あるチェスの局面で、ある側(例えば、キング側)では優勢だが、他の側(クイーン側かセンター)では劣勢で、全体としては自軍が優勢の場合、どうい う方法でこの優勢に乗じればいいのでしょうか? 当然ながら、答は局面の分析しだいです。しかし、組織だった分析にはかなりの明晰さや鋭敏さが必要なの で、精神的負担は最小限まで抑えねばなりません。

 チェスの指し手は、以下の3種類に分けられます。
  (a) 展開、つまり、新たな戦力の投入。
  (b) 攻撃、つまり、ピースで敵の駒を威嚇。チェック、チェックメイトの狙い等。換言すると、ピースに何かをさせる、または働かせること。
  (c) 防御目的利用、つまり、弱点の保護、重要ラインの妨害等。換言すると、敵駒の働きの無力化。

 どの種類の指し手が求められているかは、局面の必要性によって決まります。敵が、キングやクイーンの不都合な配置等の重大な弱点を抱えている領域で、自 軍の戦力が優勢なら、迅速に攻撃すべきです。すべての指し手は、それに寄与しなければなりません。予備の戦力は、できるかぎり手得をしながら−例えば、そ の道中で弱点を攻撃しながら−攻撃に加勢し、相手の予備戦力は、可能なら利き筋に駒を置いて邪魔すべきです(この目的のためにモーフィーがポーン・サクリ ファイスしたことを思い起こしましょう)。手段は多様ですが、防御側の指し手の多くが強制的となるため変化手は通常少なくなり、突っ込んだ分析が可能な局 面となります。こういう攻撃を「ペース」が速いと言います。

 引用したすべてのゲーム(特に前講義のフレンチ・ディフェンス)は速いペースの攻撃を含んでいます。次のゲームもそうです。


 一口書評(汗。チェルネフ晩年の傑作↓は、かつて私のチェス翻訳に刺激された知人から全訳のコピーをいただいたことがあってそれしか見たことがないが、 ページごとに実戦や作局から選んだ1問ずつが整然とならんでいる。パンドルフィーニ本のような内容分類はされていないが、楽しみながら上達するというツボ は押さえて あって気軽に取り組める。Doverには珍しく、代数(国際)式記譜法に改訂されている。
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2006年03月12日

ラスカー『チェスの常識』No.7&8その1

 帰省前だし、今日は記事をもう一丁(メンテのせいを除けば初)。すでにHPに翻訳を上げながら休止していたエマヌエル・ラスカーの『チェスの常識』であ る。No.6までは今後もブログには置かないのでHPで読まれたし。


エマヌエル・ラスカー『チェスの常識』(1917)
No.7 & 8 その1

 皆さん。これまでに検討したのは、チェスゲームの最初の部分、いわゆる序盤で、通常十手余りを含みます。展開の目的は、すでに見たように、ピースを活動 的にし、好ライン上に置くことによってそれを「働か」せたいときにいつでも使えるようにすることです。ピースを(どんな形であれ)何かに役立てる過程には 特別な名前があります。それを攻撃と呼びます。攻撃とは、妨害を取り除く手段とな る過程である。戦争、剣を使った戦い、殴り合い等、あらゆる戦いに、この定義は必ずあてはまります。

 チェスのゲームを他の戦い、例えば戦争と比較してみましょう。二つの相対する軍隊は、互いに破壊しようとするか、少なくとも威嚇するでしょう。二つの軍 隊は、人数と陣形に関するかぎりほぼ互角なら、それぞれが一定の地域においては相手を寄せ付けないばかりか追い払うほどに優位に立つでしょう。3つの要因 によって、攻撃をすべきか、するならどういう方法にすべきかが決まります。第一に、直接対峙する攻撃戦力の数的比率、第二に、環境的特徴、第三に、軍隊の 残余戦力との関連です。

 第三の要因は、攻撃遂行に必要な時間、迅速か(あらゆる状況で控 え 戦力の加勢が望めない場合)着実かに影響するでしょう。言い換えれば、目標を意のままにできる時間と戦力のいずれによって経済化を図るべきかの決 定要因です。

 環境要因によって、対戦相手の防御力が増したり、その防御力が剥奪されたりします。環境的特徴によって敵戦力のどの部分が自軍の威力にさらされ、どの部 分が守られているかが決まります。自軍が前進しても比較的安全な場所と素速く渡らないといけない所、つまり攻撃できる弱点は、言い換えると前進先となる自 軍の拠点です。最初に検討すべきことは、目前の障害を組織的に取り除いた後で有利な局面になるか、敵戦力を破壊するか追い払うことができるか、攻撃目標を 得た場合サクリファイスしても十分な代償が得られるかどうかです。どのような種類の戦いにおいても、攻撃の原則は定められます。上述した3つの検討事項を 研究すべきです。
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