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2007年05月11日

メイソン『チェスの技術』第2部コンビネーション:図274〜277

 40回で160題紹介してきた本訳連載は今回で終了です。これらはHPチェストランスでも見ることができます。Mason『The Art Of Chess』の残り、第3章定跡編はすでに訳した定跡書より古いので翻訳予定はありません。巻末のチェスQ&Aのようなものは何かの形で役立てるつもりです。


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図274
6rr/1pp2pk1/pb1p4/3PP2n/4P2q/2PQ1R2/PPB3PP/5R1K b - -

 ブラックバーンがチゴリンに勝ったゲームから。

1... Qxh2+!

 容赦ない驚愕の手。

2 Kxh2 Ng3+ 3 Kxg3 Kf8+ 4 Kf4 Rh4+ 5 g4 Rhxg4+ 6 Kf5 R4g5+

 次手でメイト。
 白は危険に全く気付いていなかったようだ。しかし、開いたファイルからキングに向かって多大な戦力が集結していたことが、何よりの警告だったはずである。予防手を1つ指していれば、(上記の)悲劇は起こりえなかっただろう。

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図275
2r3k1/1rq2ppp/p2p1n2/n1pPp3/1p6/2PP2NP/PPB1QPP1/2R1R1K1 w - -

 ルイ・ロペスから。

1 d4 exd4 2 Nh5! Nd7 3 Qg4 g6 4 Re7 Kf8 5 Rce1 Qd8 6 Qg5 Ne5 7 Qf6 Nac4 8 f4 gxh5 9 fxe5 Nxe5 10 R1xe5

 白勝ち(10...Rxe7 11 Qh8#!)。
 黒は、白のキング側攻撃をそらす意図でクイーン側へ戦力を集中した。白ビショップの利きが邪魔され、黒のセンターが防御されていたから、もっともなプランである。しかし、白は一手で黒が想像していた平穏を消し去り、勝ちを決める美しい攻撃を得る。強制的ゆえに見事である。黒は、1...Re8で敗北を遅らせることができたかもしれない。シュピールマンがカールズバッド大会(1911)で指した名局である。
 2...Nxh5には、3 Qe8+...がある。
 7手目は、7 R1xe5!! dxe5 8 Qf6!!の方が勝ちがさらに早かった。

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図276
2krr3/ppp3pp/2n5/2Bq1b2/Q2P4/5N2/P4PPP/3R1K1R b - -

 状況はかなり白に不利である。事実、白は(ナイトの)速さ(canter)で負けている。

1... Qxf3! 2 gxf3 Bh3+ 3 Kg1 Re6! 4 Qc2 Rxd4! 5 Bxd4 Nxd4 黒勝ち。

 後数手でのメイトが避けられない。d4経由でナイトが跳んで「けりを付ける」。メイソンが勝った。

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図277
r1b1kbnr/pp2q1pp/n3pp2/1N1p4/3B4/4PN2/P1P2PPP/1R1QKB1R w Kkq -

 クイーンポーン・オープニングから。

1 Nxa7 Nc5 2 Nxc8 Rxc8 3 Bb5+ Kf7 4 0-0 Qc7 5 c4 dxc4 6 Bxc4 Ne7 7 Ne5+! fxe5 8 Qf3+ Kg6 9 Bxc5 Qxc5 10 Bxe6 h5 11 Bf7+

 後2手でメイト(11...Kg5 12 h4+ Kxh4 13 Qg3#)。
 本局の特徴は、図277から理解できる。黒は ...c5後に ...Qb6から白のbポーンを取り、クイーンがe7へもどった。黒がクイーンが追われて手損する間に、白は手得して迅速に展開したのである。1ポーンを得るために黒の戦力がほぼ初期位置のままだったので、1 Nxa7後も劣勢な陣形となり、シュレヒター(白)が芸術的な棋風で決着を付けた。


 図276の解説が洒落ているので原文を以下に引用しておこう(太字は私)。
 A situation much against White. In fact, he lost in a canter:-
解答手順
 Mate in very few moves inevitable; the Knight going in through d5 as a "settler." Won by Mason.

 canterは一見してcenterの誤植か(そう解釈してもしっくり来ない)と思うが、元々イギリスの古典チョーサーの『カンタベリー物語』に由来し、馬のtrotより速くgallopより遅い足踏みの意味である。しかし、手順以前の文だけだとその意図が見えない。
 次に、黒のナイトがc6-d4-f3と跳ねる狙いの説明があるので、ナイトの速くも遅くもない適度な前進を巡礼者が馬を駆る様子になぞらえたのだと分かる。settler「決着を付ける」は、元々19世紀に南アフリカの植民地へ移住した人たちのことだから、2つの比喩が呼応している。

2007年04月18日

メイソン『チェスの技術』第2部コンビネーション:図262〜265

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図262
4r1k1/pp4pp/2n1pr2/3p4/8/2q4B/P1P1QPPP/3R1RK1 w - -

 フレンチ・ディフェンスから。
 このゲームは極めて美しい結末を迎えた。マーシャル(黒)は、白がdポーンを取ろうとしていることを分かっていたが、それを無視して衝動的な反撃に出る。それは以下のように、白には悲惨なことだが形勢を逆転した。

1 Rxd5 Nd4! 2 Qh5 Ref8 3 Re5 Rh6 4 Qg5 Rxh3 5 Rc5 Qg3!!! 0-1

 興味深い。6 Qxg3なら、6...Ne2+ 7 Kh1 Nxg3+ 8 Kg1 Ne2+ 9 Kh1 Rc3でピース得。かつて指された手の中で、おそらく最も美しく、確実に最も好評を博したとどめの手である。

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図263
rnbqk1nr/pp3pb1/2pp3p/6p1/2BPPp1P/2N2N2/PPP3P1/R1BQK2R w KQkq -

 キングズ・ギャンビットで、不十分な攻撃が弱い防御のおかげで成功する。

1 hxg5 hxg5 2 Rxh8 Bxh8 3 Ne5? dxe5! 4 Qh5 Qf6 5 dxe5 Qg7 6 e6! Nf6 7 exf7+ Kf8? 8 Bxf4! Ke7 9 Bxg5 Nd7 10 e5! Nxe5 11 Ne4

 白勝勢。
 黒の 7...Kf8?での手損が致命的と思われる。斜めからメイトされる危機に陥った。正着は 7...Ke7!で、続いて ...Bg4, ...Nbd7等としてクイーンを追い払えばピース得だった。
 11...Bg4には 12 Qh2!があり、11...Ng4(または d7)も功を奏さない。白がキャスリングで圧倒的に優位になるからである。たった一つの不正確な手が破滅を招いた。

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図264
r2qkb1r/pp1b1ppp/2pp1nn1/4p3/4P3/1BNP1N1P/PPP2PP1/R1BQ1RK1 w kq -

 ルイ・ロペスで、黒が ...Be7の代わりにcポーンを不必要に進めて手損している。

1 Ng5! d5 2 exd5 h6 3 Nge4 cxd5 4 Nxd5 Nxd5 5 Bxd5 Bxh3? 6 Bxf7+! Kxf7 7 Qf3+ Kg8 8 Qxh3 Kh7? 9 Ng5+!

 そして、次手でメイトかクイーン取り。
 黒のポーン損は避けられないので、取り返そうとする 5...Bxh3はさらに事態を悪化させた。もちろん 8...Kh7が勝敗を決めたポカだが、すでに白の優位は勝勢と言っていいものだった。黒は欠かせない重要な手 ...Be7を指さずに進めた。キャスリングを無視してはいけない。

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図265
3b1rk1/1bq3pp/5pn1/1p2rN2/2p1p3/2P1B2Q/1PB2PPP/R2R2K1 w - -

 ブラックバーンのシュタイニッツ!に対するコンビネーション。白が(ルック、ナイトと引き換えに)クイーンを取るか3手でメイトする。

1 Rd7! Qxd7 2 Nh6+ gxh6 3 Qxd7 白勝ち。

 勝負運である。黒が巧妙にポーン得したばかりだったが、上記のありがたくないコンビネーションは黒の想定外だった。


 この戦術系テーマ枠連載もあと3回で終わりなので次をそろそろ決めねばならない。候補はVukovic"The Art of Attack in Chess", Spielmann"The Art of Sacrifice in Chess", Horowitz & Reinfeld"Chess Traps, Pitfalls & Swindles"の3冊だ。
 理論的・包括的なものを優先してやりたいので、やはり"The Art of Attack in Chess"かなあと思っている。また長丁場になりそう。

2007年03月06日

メイソン『チェスの技術』第2部コンビネーション:図242〜245

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図242
rnbqk2r/ppp2p1p/3b4/3PN2n/2BP1ppP/8/PPP3P1/RNBQK2R w KQkq -

 キェゼリツキー・ギャンビット。ドイツの偉大なマスター、アンデルセン(黒)の勝ち。

1 Bb5+? c6! 2 dxc6 bxc6 3 Nxc6 Nxc6 4 Bxc6+ Kf8 5 Bxa8 Ng3 6 Rh2 Bf5 7 Bd5 Kg7! 8 Nc3 Re8+

 黒は、並はずれた速さで戦力を動員する。

9 Kf2 Qb6 10 Na4 Qa6 11 Nc3 Be5! 12 a4 Qf1+! 13 Qxf1 Bxd4+ 14 Be3 Rxe3!

 次手でメイト。
 白は、ビショップでチェックする代わりにキャスリングすべきだった。1 0-0 Qxh4 2 Qe1! Qxe1 3 Rxe1 0-0 4 Qd3...で、ほぼ互角になっただろう。アンデルセンの最も名高い終盤戦の一つ。

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図243
rn1q2k1/p4ppp/2pb1n2/8/4r1bQ/3P4/PPP1B1PP/RNB1K1NR b KQ -

 カウンター・ギャンビット。

1... Bxe2! 2 dxe4 Bg3+! 3 hxg3 Qd1+ 4 Kf2 Ng4+ 黒勝ち。

 白は、展開を犠牲にして1ポーン得だった。しかし、局面図の直前に黒のルックを攻撃する際に、d3の代わりにクイーン側ナイトを繰り出すべきで、そうすればこの名局は生まれなかった。ところが実際は、黒はクイーンの代償を得られず敗勢となる。白の駒はバラバラである。

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図244
r2q1rk1/pp1n1pp1/2pb1n1p/8/2BP2b1/4BN2/PPQN1PPP/R4RK1 w - -

 ペトロフ・ディフェンスから。

1 Bxh6! Bxf3? 2 Nxf3 gxh6 3 Qg6+ Kh8 4 Qxh6+ Kg8 5 Rae1 Nb6 6 Bd3 Nbd5 7 Ng5 Bf4 8 Re3! Bxe3 9 fxe3 Qa5 10 Bh7+ Kh8 11 Rxf6 白勝ち。

 1...Bxf3が敗着。すぐにビショップを取る方がはるかにいい。例えば、1...gxh6 2 Qg6+ Kh8 3 Qxh6+ Kg8 白がパペチュアルチェックでドローにする気がなければ、...Bf5が強力な防御になる。
 8...Nxe3でも、9 fxe3 Bxe3+ 10 Kh1 Qxd4 11 Bh7+... 同様に黒の負け。
 d6の黒ビショップが守られていない(局面図は黒が ...Nbd7としたところ)ので、白の攻撃が成立している。4...Nh7には 5 Qxd6があるから。

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図245
r3k1nr/ppqb1pb1/3p2p1/2p1p2p/3PP2P/2P1P1PN/PP4BK/1R1Q1RN1 w kq -

 シシリアン・ディフェンスからで、白が以下のように勝った。

1 Ng5 f6 2 dxe5 fxg5 3 exd6 Qb6 4 Qd5 0-0-0 5 b4 Nf6 6 Qxc5+ Qxc5 7 bxc5 gxh4?

 不注意。

8 e5! Ng4+ 9 Kh1 Bc6 10 Bxc6 bxc6 11 Rf7! Rd7 12 Rxd7 Kxd7 13 Rb7+ Ke6 14 Rxg7 Rb8 15 Re7+ Kf5 16 d7! hxg3 17 Re8 Rb2 18 Ne2! g2+ 19 Kg1 Rb1+ 20 Kxg2 Nxe3+ 21 Kf3 白勝ち。

 黒は、ピース得してから少し自信過剰になった。白のサクリファイスはほとんど成立していない。黒のbポーンへの攻撃は 7...Bc6で防ぐべきだった。その後は、もっぱら白の優勢な戦力に勝機が傾いた。

2007年02月19日

メイソン『チェスの技術』第2部コンビネーション:図234〜237

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図234
r1b1kbnr/1ppq1pp1/p1np3p/1B6/Q3P3/2N2N2/PP3PPP/R1B1K2R b KQkq -

 ポーン得の黒は、反撃を期待してエクスチェンジ損を覚悟することに決めた。それに、白のクイーンを閉じこめられるかもしれない。しかし、黒はこの作戦遂行の困難を軽く見ていたようだ。おそらく、4 Nxb5!を見落としていた。そして、このサクリファイスは全く功を奏さないことが明らかになる。

1... axb5 2 Qxa8 Nb4 3 0-0 Na6 4 Nxb5! Nf6 5 e5 Nd5 6 exd6 Nb6 7 Re1+ Kd8 8 dxc7+ Nxc7 9 Qb8! Qxb5? 10 Bf4 Na6 11 Rad1+ Nd7 12 Qxc8+!

 次手でメイト(12...Kxc8 13 Re8#)。
 黒の展開の後れが目立った。スコッチ・ギャンビットからの局面で、ブレドー博士が勝った。
 9...Nxb5 10 Be3 Nd5 11 Rad1 Bd6なら、もっと長く持ちこたえられた。これが黒の最善手順だった。

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図235
r1b2r2/2qn1ppk/2p1n2p/pp2p3/3PP2N/P1P1B2P/BP2Q1P1/3R1RK1 b - -

 ビエナ・ゲームの重大局面、ファルクビア対レーヴェンタール戦(バーミンガム大会、1858)から。黒はポーンが宙ぶらりんなのはもちろん、お荷物のマイナーピースがクイーンやルック、開いたファイルの邪魔をしており、差し迫った Qh5や Nf5を考慮しなければならない。総じて白戦力の優勢は明らかで、キングへの猛攻がたいてい成功する局面といえる。

1... Nf6 2 Bxh6! Kxh6 3 Rxf6+ gxf6 4 Nf5+ Kg6 5 Bxe6! fxe6 6 Qg4+ Kh7

 白の華麗なサクリファイスの結末は、黒のクイーンを仕留めることである。

7 Qh5+ Kg8 8 Qg6+ Kh8 9 Qh6+ Kg8 10 Rd3 白勝ち。

 続きは、10...exd4 11 e5 exf5 12 Rg3+ 黒のクイーンを取って勝負あり。1...Nf6は危険と判明したが、他の手ならもっと粘れるとしても敗北は確実だろう。

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図236
2kr3r/pppb1ppp/2n2q1n/4p3/2B5/B1Q2N2/P4PPP/1R2R1K1 w - -

 エヴァンス・ギャンビットで、黒がキャスリングをしたところ。白(モーフィー)が以下のように勝った。

1 Ba6! Na5? 2 Rec1 Bc6 3 Qxa5 bxa6 4 Qxa6+ Kd7 5 Rxc6! Qf5 6 Rxc7+! Ke8 7 Qc6+ Qd7 8 Rb8! Qxc6 9 Re7+ Kf8 10 Rxd8+

 次手でメイト。
 黒は 1...bxa6とすぐにビショップを取るべきだった。2 Qb3 Bg4ならそれほど悪くない。
 4...Kd7後は、黒のどうしようもない敗勢だが、モーフィーの手法は見事である。相手がこれほど弱いと、名局にならないことが多い。

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図237
r4qr1/1b1n2bk/ppn1p1pp/3pPp2/2pP1PPN/2P1B2P/PPB1N2K/R3Q1R1 w - -

 フレンチ・ディフェンスで、白(モーフィー)が優勢。

1 Nxg6! Kxg6 2 gxf5+ Kf7 3 fxe6+ Kxe6 4 f5+ Ke7 5 Qh4+! Ke8 6 f6 Bxf6 7 exf6 Rxg1 8 Rxg1 Nxf6 9 Bg6+ Kd7 10 Bf5+ Ke8 11 Bxh6 Qh8 12 Rg7 Ng8

 白の3手メイト。
 一時的なピース・サクリファイスが黒の防御を粉砕した。黒の戦力配置が誤っていたのは明白で、クイーン側の3つのピースがキングへの攻撃撃退に役立たなかった。

2006年11月11日

メイソン『チェスの技術』第2部コンビネーション:図178〜181

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図178
3r1rk1/2p2pp1/1n1q2p1/2p1p1Pn/ppP1P1R1/3PB2P/PPB1QP2/2KR4 w - -

 ジオッコ・ピアノから。黒が勝った。

1 f3 Nf4 2 Qf2? b3 3 axb3 axb3 4 Bb1 Nxc4 5 Bxc5? Qxc5! 6 Qxc5 Ne2#!

 ダブったポーンを取ろうとして白の判断ミスが続いた。白は 2 Bxf4で優勢になれた。奇妙な終盤戦。

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図179
1k1r3r/pbq4p/1p2B1p1/4np2/4p3/1QB1P2P/PP4P1/R4RK1 b - -

 変則定跡から。黒の勝ち。

1... Nf3+! 2 Rxf3 exf3 3 Bxh8 Rd2! 4 e4 Rxg2+ 5 Kf1 Rg1+ 6 Kf2 Qg3+ 7 Ke3 f2+ 黒勝ち。

 白は、直前にhポーンを進めたところだった。いずれにせよ、黒の華麗なナイト・サクリファイスがこんな致命傷になるとは思っていなかった。しかし、h3としなくても、主にポーン損のために依然として劣勢だっただろう。...Ng4を防ぐために白はピース交換すべきで、それ以外にいい方法はなかった。2 gxf3なら、2...Qg3+ 3 Kh1 Qxh3+ 4 Kg1 Qg3+ 5 Kh1 exf3...

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図180
r5k1/p1pb1ppp/1bp1r3/8/QP6/2Pq1B2/R2P1PPP/2B2RK1 b - -

 フォー・ナイツ・ゲームから。モーフィー(黒)がルイス・パウルセンに勝った。

1... Rae8! 2 Qa6 Qxf3! 3 gxf3 Rg6+! 4 Kh1 Bh3 5 Rd1 Bg2+ 6 Kg1 Bxf3+ 7 Kf1 Bg2+ 8 Kg1 Bh3+ 9 Kh1 Bxf2 10 Qf1 Bxf1 11 Rxf1 Re2 12 Ra1 Rh6 13 d4 Be3 0-1

 1...Rae8は、2...Qxf1+から 3...Re1#を狙っている。白はこれに対応したが、他の脅威 2...Qxf3!を見逃した。そして白は敗北する。
 5 Qd3なら、5...f5 6 Qc4+ Kf8... 黒勝ち。
 もっと速いメイトが、約20年後のウィーンでシュタイニッツとバウアーによって指摘された。7...Rg2! 8 Qd3 Rxf2+ 9 Kg1 Rg2+ 10 K動く Rg1#. もちろん、8 d4なら 8...Rxh2から次手でメイト。

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図181
r3r1k1/pppb2pp/3p4/2nP2q1/2P1B3/R6P/P2NQRPK/8 b - -

 黒の勝ち。ビショップ・オープニングから。

1... Qe5+ 2 g3! Nxe4 3 Re3 Nxf2! 4 Rxe5 Rxe5 5 Qxf2 Rf8 6 Qd4 Re2+ 7 Kg1 Bxh3 8 a4 Rg2+ 9 Kh1 Rff2 10 Qh4 Rh2+ 11 Kg1 Rfg2+ 12 Kf1 Rh1#.

 2 Kg1(または Kh1)だと、全くのピース損になる。黒が2ルックの見返りにクイーンを捨てることが、事態の解決となった。黒はすぐにナイトを取り返せるか、さらに優勢となるからである。こういう局面では両ルックの協力が最強になる。


 図180の有名なゲームだが、今まで「マスターズ」等でポールセンとしてきたPaulsenは後年アメリカで活躍したとはいえ、ドイツ人だからパウルセンとすることにした。しかし、どう見てもフランス系の名前Louisはルイスなのかルイなのか(汗。

2006年09月22日

メイソン『チェスの技術』第2部コンビネーション:図150〜153

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図150
2q2n1k/2r3p1/2n4p/3Q1p2/2P5/1PB2BP1/7P/4R2K w - -

 シシリアン・ディフェンスから。
 黒が困窮しているのは、パスポーンのためだけではなく、こういう開けた局面での2ビショップに対する2ナイトの無力さのためでもある。

1 Qd6! Kh7 2 Bd5 Ng6 3 Be6 Qb7 4 Bxf5! Ne7+ 5 Be4 Qxb3 6 Qd4! 白勝ち。

 6...Ng8等には 7 Bxg6+で、白が圧倒的に有利である。

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図151
5rk1/p5pp/1pp1r2q/3b1p2/P2P4/2RQP1P1/5N1P/4R1K1 b - -

 黒は、主としてビショップの優れた利きによって強力な攻撃布陣を敷いている。白のe1のルックは無防備である。

1... f4! 2 e4 fxg3 3 Qxg3 Rg6 4 Ng4 Qh5 5 h3 Bxe4! 6 Rxe4 Qf5 7 Qe1 h5 8 Re5 Qf4! 9 Re4 Qf6 10 Ree3 hxg4 11 hxg4 Rh6! 12 Qe2 Qh4 13 Qg2 Rf2! 14 Re8+ Kh7 15 Qe4+ Rg6 16 Rh3 Qxh3 17 Kxf2 Qxg4 黒勝ち。

 1...f4後、白には実践できる適切な防御がない。3 hxg3なら 3...Rxf2で勝ち。一時的にピース・サクリファイスしてから優勢になるのがおもしろい。11...Rxg4+でも勝ち。

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  a b c d e f g h  
図152
2kr2r1/ppp4p/2n2R2/3q4/1P6/P5B1/3p1PPP/R2Q2K1 b - -

 黒の楽勝。

1... Qd4! 2 Rf7 Qxa1! 3 Rxc7+ Kb8 4 Rd7+ Rxg3 5 Rxd8+ Nxd8 6 Qxa1 Rc3!!...

 7 Qxc3 d1=Q+なら次手でメイト。
 黒の強烈なパスポーンのために白が当然ながら絶望的とはいえ、結末は実に見事。パスポーンの威力の説得力ある実例である。

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  a b c d e f g h  
図153
3rr1k1/3n2pp/2p5/p2qp3/Pp6/1P1P2QN/2P3PP/4RR1K w - -

 ペトロフ・ディフェンスから生じたこの局面では、黒のポーンがばらけているので、白は終盤戦の利を生かした方がいい。しかし、白は優位を求めすぎたために敗れる。

1 Ng5 Rf8! 2 Qh3 Rxf1+ 3 Rxf1 Nf6 4 Rxf6? gxf6 5 Qxh7+ Kf8 6 Qh8+ Ke7 7 Qg7+ Ke8 8 Qxf6 Rd6 9 Ne4? Qxe4! 10 Qh8+ Kf7 黒勝ち。

 エクスチェンジ損からは、白はドローにするのが精一杯。9 Ne4?は、こういう局面ではよくある単純なポカである。

2006年08月26日

メイソン『チェスの技術』第2部コンビネーション:図134〜137

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図134
r7/3q1k1p/2p2p2/p1Pp2p1/Pp1P2P1/1P2RN1P/5PK1/4R3 w - -

 両ルックとナイトの連合は、クイーンとルック組を凌駕する。フレンチ・ディフェンスから。

1 Nh2 h5? 2 gxh5! Rf8 3 Ng4 Qd8 4 Nh6+ Kg7 5 Nf5+ Kh8 6 Re7 Rg8 7 Ra7

 そして7段目にもう一つのルックが侵入すれば楽勝である。
 黒がナイトをf5に来させまいとする試み 1...h5は功を奏さない。ポーンがh4まで到達できたとしても、ナイトにはe3経由の進入路もあるからである。黒の最大の誤りは、その前に ...g5としてしまったことである。f5にナイトがいるために全く反撃ができず、黒のクイーンとルックは白の戦力に圧倒されている。クイーンの価値は、実質的にはルック並に下がっている。
 7 Ra7後は 7...Re8もかなわない。8 Nd6!で、白が最低でもエクスチェンジ得になるからである。

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  a b c d e f g h  
図135
4R3/1pp2p1n/1p4qk/4QR1p/1P2P1rP/1BP3P1/P2r4/5K2 w - -

 見事なコンビネーション。ジオッコ・ピアノから。

1 Rg8! Qxg8 2 Rxh5+ Kg6 3 Qf5+ Kg7 4 Qxg4+ Kh8 5 Qf4 Qd8 6 Bd5 Rb2 7 Qxf7 白勝ち。

 白は 1 Rh8で 2 Rxh5+や 2 Rxh7+を狙っても勝つことができた。
 黒の連係に欠ける陣形に注目されたし。

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図136
5r1k/1pp3pB/1p2b2p/4q3/8/2P4P/PPQ3P1/3R2K1 b - -

 ヴィエナ・ゲームから。1878年のパリや1883年のロンドン大会で優勝した有名なJ. H. ツカートルト博士が、1877年のライプツィヒで当時のドイツ最高棋士の一人C. ゲーリング教授の餌食になったゲームである。白の半分とらわれのビショップが、黒の発動するきっかけとなる。

1... Bxh3! 2 gxh3 Qg3+ 3 Kh1 Qxh3+ 4 Kg1 Qg4+ 5 Kh1 Qh5+ 6 Kg2 Qg5+ 7 Kh2 Rf4! 8 Rd4 Rf3 9 Qg2 Qe5+ 10 Kg1 Qe1+ 11 Kh2 Rf2 12 Be4 Rxg2+ 13 Kxf2 g5! 14 Kf3 Kg7 15 Rd7+ Kf6 16 Rh7 h5 0-1

 17 Rxh5や 17 Bxb7とするとピースを取られるが、そうしなくても絶望的である。白の最善策は、ポーン損で我慢して最初のチェックを避け、ドローを目指すことでした。 一方、黒は手順のようにルックを効果的に使う前にd8を防御(6...Qg5+) しておく必要があった。

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図137
5rk1/1pr1qnp1/p2p1p1p/2pPpP1Q/4N1PP/1P2P3/1PP3R1/5RK1 w - -

 迫り来るコンビネーションを事前に強く予感させる局面である。白のピースは攻撃に絶好の配置なので、防御ポーンに裂け目さえ作れればいい。ジオッコ・ピアノから。ピルズバリー対ショーウォーターのマッチ、ニューヨーク、1897である。

1 Kh1! c4 2 Rfg1 cxb3 3 cxb3 Rfc8 4 g5! hxg5 5 hxg5 Nxg5 6 Rxg5! fxg5 7 Nxg5 g6 8 Qxg6+ Qg7 9 Qe6+ Kh8 10 Rg3! Rc1+ 11 Kg2 R8c2+ 12 Kf3 Rf1+ 13 Ke4 Rh1 14 Qe8+

 後2手でメイト。
 4 g5!で始まるこじ開けは、致命的でほとんど防ぎようがない。そこで、黒の両ルックは、防御位置から離れて独自の方策を続ける。このような決着になる可能性について、攻撃を無力か大失敗にするような欠点や事故がありえなかったかどうかも含めて、両棋士とも、差し当たって疑問に思わなかった。(訳注:この文の訳自信なし(汗))
 9...Kf8には 10 Qxc8+!があることに注目されたし。
 全体的にピルズバリーの力強く優美でお手本のような手順である。白キングの進軍もおもしろい。


 メイソンの原文は、コンマでフレーズをつなげるだけの前後関係が分かりにくい文が多い。たいていは内容で類推してしのいできたが、今回ちとギブアップした(汗。上記の「訳自信なし」と書いてある文である。原文以下:
 The probability of such a termination was doubtless for some time present to both players, with the question whether some flaw or accident might appear in the process, nullifying the attack or converting it into total failure.
 ちゃんと節で書くより楽だから私もよくこういう書き方はするが、コンマで区切られた3部分のつながりをどう考えてもつじつまのいく内容にならない。上のこじつけた訳でも、「差し当たって疑問に思わなかった」では後に疑問に思ったみたいだからおかしい。doubtlessがdoubtfulの間違いと考えるしかないのか。

 それはともかく、amazonによると"My System"が10月に再版される。残念ながら英訳版(独語原書は独amazonならいつもあるのに)だが21th版とは全然違うデザインと出版社でHardinge Simpoleみたいに高くないから、買い直してしまいそう(汗。
My System
9197600539 Aron Nimzowitsch

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2006年07月23日

メイソン『チェスの技術』第2部コンビネーション:序文

 『水野優の窮境のチェス』のネタ(最後期の棋譜)が紛失したのか見つからないので、とえあえず新連載、メイソンの『チェスの技術』第2部を始める。第1部 終盤はすでにHP「チェス トランス」のみで全訳を発表済みである。第2部はコンビネーション問題と解説160問よりなる。


ジェイムズ・メイソン『チェスの技術』(1898)
第2部 コンビネーション

 たしかに、ほとんどまたはすべてのゲームにおいて、チェス盤上には終盤戦より印象的な経過段階が生じる。その期間は中盤戦と呼ばれる。中盤戦は、終盤戦と序盤戦の間の広大な範囲にあいまいかつケースバイケースで広がっており、通常はここで、メイトを直接狙うか、最終的には同じく負けを意味する駒損にし向けるコンビネーションによって絶対的または実質的に戦いの決着が付くのである。

 中盤戦は終盤戦が複雑に混ざり合ったものなので、中盤戦の技能は、終盤戦技能−すでに第1部で検討したような終盤戦の様々な技法−の論理的かつ当然の結果と見なされる。中盤戦でのコンビネーションがたちまちメイトに終わることは、現実のゲーム−少なくとも分別のあるプレーヤー同士間−では例外的である。続いて起こりうる終盤は、先のコンビネーションを判断するときに予想されていなければならない。つまり、一直線に負けへ向かう多くのコンビ ネーション−あるいはおそらく勝ちへ向かうコンビネーションにしても、不利な終盤の消耗戦と全く無関係−というものは、当然ながらあり得ないのである。展開でのわずかな失敗、後の判断ミス等が、「セメントの中のわずかな亀裂」になるかもしれない。そういう緩やかでも致命的な行動は、明らかに度を超して危険なコンビネーションに対しても、たいてい防御の余地が残されている。頑強な防御手順で長らく抵抗し続けられることも多いが、最終的な敗北を逃れる希望はほとんどない。逆に、積極的でもおそらく理不尽で攻撃的なコンビネーションが戦いの幸運を無謀に勝ち取ろうと仕掛けてきても、さほど不利にはなり得ない。

 以下の中盤戦におけるマスター級のコンビネーションの実例では、最初の局面はどれも、勝敗を決する特定の作戦を許したり誘うようにし向けられている。全く互角で均衡した局面では、両軍ともに勝ち手順を一方的に主張することはできない。そういう局面では、いかなる過激なコンビネーションの主張も理不尽である。互角な局面では対応する適切な防御があるという主張が、当然ながら理にかなっていて疑う余地がない。存在する優位に基づかない攻撃は成功しないのである。

 中盤のコンビネーションを注意深く勉強する価値については、ほとんど何も言う必要がないだろう。「形勢判断」の優れた訓練にもなり、一流の実戦練習の代わりとしても打って付けである。簡単に習得できても難解さ(あるとすればだが)が欠落し、筋悪の棋風で無神経に指す実戦よりはるかに良い。最後に、序盤を賢明に評価するためには、このコンビネーションを熟知することが必要不可欠である。


 問題と解説を今後1回に2問ずつくらいのペースで連載するが、今回の序文ほど訳に手こずることはもうないだろう。19世紀の英語だからか、メイソンの句読法が独特なのか。特に第2段落のせいで昨日アップロードできなかったくらいだ。今後もこの訳はHPでいじりそう(汗。

2006年05月12日

メイソン『チェスの原則』第1部チェスの基礎「キャスリング」

 3日も連続で野球の前置きを書くのは初めてと思うが、パリーグ首位だった西武に3タテとなれば私の気分も晴れ晴れだ。久しぶりに図書館に行ってから買い 物するだけで疲れたが、キャベツがやっと安くなっていてやれやれ。


ジェイムズ・メイソン『チェスの原則』(1894)
第1部 チェスの基礎 「キャスリング」

 一度にキングとどちらかのルックの2つを同時に動かす手をキャスリングと言う。キャスリングでは、キングは、一緒に動かすルックの方へ2マス動かし、 ルックはキングがそのとき通った途中のマスへと移動する。したがって、キング側へのキャスリングでは、キングはg1(g8)、ルックはf1(f8)へ、ク イーン側へのキャスリングでは、キングはc1(c8)、ルックはd1(d8)へ移動する。英米式記譜では「Castles」と表し、どちら側にもキャスリ ングできるときは「Castles QR」のように特定する必要がある。(訳注:現代の代数式記譜法では、キング側キャスリングを「0-0」、クイーン側キャスリングを「0-0-0」と表 す)
 キングがキャスリングできないときは、1.キングとキャスリング するルックのいずれかが、すでに動いている場合。2.キングとキャスリングするルックの間に駒がある場合。3.キングがチェックされている(つまり、相手の駒が利いている)場合。または、キングが 通るマス目のいずれかに相手の駒が利いている場合。要するに、キャスリングをするには、キングとルックが共に初めて動き、その間には駒がなく(キャスリン グで駒を取ることはできない)、キングはチェックされていなくてチェックされに行くのでもなく、途中のマスには敵の駒が利いていてはいけないのである。し かし、キャスリングするルックの動きは、攻撃から逃げても相手の駒が利いているマスを横切ってもかまわない。


 以前も書いたように、3つめのキャスリングできる条件は、「キングが通る3つのマスのいずれにも相手の駒が利いていない」が簡潔でいい。もちろん実例が あるに越したことはない。白の Nxf7に対して黒が ...0-0!と好手を返すゲームを見たことがあるが、白は黒がうっかりキャスリングできないと勘違いしたのかもしれない。
 ↓キャスリングの本があるとはびっくり。
Startling Castling
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2006年05月05日

メイソン『チェスの原則』第1部チェスの基礎「戦力」ポーン

 ブログをジャンルで2つの分けることはずっとしないつもりだったが、変身関連ジャンルは仕事でもあるのでそうもいかなくなってきた。翻訳も仕事と趣味が 混ざっているからそういう理由とばかりも言えない。アポロン的なジャンルとディオニソス的なジャンルの違いだろうか。そう区分しても音楽は両者にまたがる気が する。
 今すぐにでも取りかかりたいが、どこのブログにするか迷っている。シーサーでもう一つ作るのが勝手が分かっていて楽だろうが、何かおもしろくない気もす る。バイリンガルで書くつもりなので見出しの表示とかが英語にできればいいのだが、それだとロレンさんのようなライブドアがいいのかな。


ジェイムズ・メイソン『チェスの原則』(1894)
第1部 チェスの基礎 「戦力」ポーン

ポーンは、すべての駒の中で最も弱 いが、だからといって最もつまらない駒ではない。動く方向は前進のみで、ファイルに沿って一度に1マスずつだが、最初の位置から進むときは1マスか2マス かを選択できる。しかし、2マス進んで隣のファイルにいる相手のポーンの利いているマスを素通りした場合は、その相手のポーンによって素通りしたマスで取 られる可能性がある(アンパッサンという捕獲)。まだ説明していないポーンの駒の取り方に関しては、後の機会に述べる。ポーンが駒を取る手−つまり利きの 範囲−は平均2マスもないが、総合的な戦力は、ナイトやビショップのほぼ3分の1である。
 どのファイルにあるポーンも、8段目のマスに到達すると、自軍のピース、クイーン、ルック、ビショップ、ナイトのいずれかに成らねばならない。ポーンに 置き換わったピースは、開始局面からあるピースがそのマスに到達したがごとく、すべての点においてたちまちそのピースと同様に行動する。したがって、3つ 以上の同じ色のクイーン、ルック、ビショップ、ナイトが、同時に存在しうるが、各軍の駒の総数は、開始時の16を上回ることはない。究極的にピース−たい ていクイーン−になれる能力ないし威力により、ポーンの価値は高まり、動きにはひじょうに注意を払うことになる。優れたプレー ヤーかどうかは、ポーンの扱いが賢明かどうかですぐに分かる。


 かなり意訳しているのにこうも回りくどい表現だと、翻訳にこだわる意義がだんだん薄らいでくる。このメイソンの2冊目(書かれたのは本書が先)に取りか かったのは失敗だった。とにかくルールと記譜説明までは続けてからその先どうするか考えよう(汗。

 ポーンに関する本は、キングとポーンだけの終盤本と、ポーンの動かし方を定跡やポーン形と関連して解説する本に大別される。後者も優れた本が多いが、↓ は7つの形(孤立/ハンギング/パス/ダブル/出遅れ)ポーン、ポーンの(鎖/島)について実戦解説内で焦点を当てている。
Understanding Pawn Play in Chess
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starすっげ!!
star部分的なポーンの形について体系的に学べる本

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2006年04月28日

メイソン『チェスの原則』第1部チェスの基礎「戦力」マイナーピース

 昨日の深夜NHKで「その時歴史が動いた」ガリレオ真実公表への闘いを再放送でやっと見た。ろくでもない裏番組を優先的に見てきたからだが(汗、ちょう ど洋書でもガリレオのことを読んだところなのでタイムリーでもあった。
 天文少年だった私は、正しい地動説を主張したガリレオがカトリックから迫害されたためにキリスト教というか宗教自体が嫌いになってしまったが、当時の世 相では仕方なかった面もある。日本の教科書には、内容を詰め込むよりそういう掘り下げた記述をもっとしてほしい。私がこれを図鑑等で学んだのがおそらく早 過ぎたのだけど。


ジェイムズ・メイソン『チェスの原則』(1894)
第1部 チェスの基礎 「戦力」マイナーピース

ビショップは、戦力的にルックより劣る。ダイアゴナルに沿った斜めの動きに限ら れ、言い換えれば、クイーンの動きからランクとファイルに沿った、つまりルックの動きを除いたものと同じである。センターのマスからは13マスに利くが、 縁のマス上ではどこにいても7つしか動けるマスがない。動ける方向は盤上の両側−左右側か白黒側−に分かれるが、動けるマスの数は平均9個である。
 当然ながら、ビショップの動ける範囲は、最初にいたマスと同じ色のマス、盤上のちょうど半数のマスに限られる。したがって、味方同士のビショップは、互いに独立し た別々のダイアゴナル網上を動き、いかなる局面においても、互いに干渉したり邪魔したりすることはない。

ナイトは、平均的な動ける範囲はか なり狭いが、実戦的にはビショップとほぼ互角の力を持っている。盤上の半分のマスにしか行けないビショップと違い、ナイトは盤上のすべてのマスへ行けるか らである。ナイトは、その動きの方向と距離のせいで、抵抗力の弱い駒でもある。動く距離は2マスに限られ、その方向は、ルックが2マス動いた先とビショッ プが2マス動いた先の間のマスとなる。どのマスからでも、元のマスとは違う色のマ スへ跳ぶことになる。

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 d4に置くと、e2, f3, f5, e6, c6, b5, b3, c2の8マスに利く。この8マスは、ナイトがいるd4を中心とする直径5マスの円周が通り、d4を通るランク、ファイル、ダイアゴナルを除くマス目であ る。この8マスの内側にある8マス、つまりd4からキングが動ける8マスには、ナイトは影響を及ぼさないし、及ぼされもしない。この8マスに駒があろうと なかろうと関係なく、ナイトはこれを跳び越せる。
 開始局面(図1)では、ナイトは唯一の動けるピース(ポーンはピースではないので)である。他のピースはすべて、味方に「ブロック」か邪魔されて無力で ある。この局面では、それぞれのナイトに2つの指し手がある。キング側ナイトは Nf3(Nf6)か Nh3(Nh6)、クイーン側ナイトは Nc3(Nc6)か Na3(Na6)である。ポーンを無視して跳び越えることは、他のピースにはできない。ナイトの威力は、縁へ近づくほど減少し、隅のマスで最低になる。セ ンターでの8マスと比べると、四隅のマスからは2マスにしか動けない。動けるマスの平均数は、5個強に過ぎない。このため常に、盤上での実際のナイトの威 力は、ビショップより弱いとしてもそれはわずかである。ナイトの動きは、数学的に、6つのマス目 から成る長方形の対角線と考えれば、他の駒と同様規則的と言える。


 相変わらず不親切な局面図で申し訳ないが、HPに載せる頃には空のマスに○とか表示できるようにしたい。ビショップとナイトも、ルックほどでないにして も終盤の本が多い。↓は今回貼るのに持ってこいだが品切れくさい。ビショップ対ナイトは、もちろん局面によるがチェス永遠のテーマだ。
Bishop V. Knight
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starだいたい良い

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2006年04月21日

メイソン『チェスの原則』第1部チェスの基礎「戦力」メジャーピース

 このamazonアソシエイトからお買いあげの皆様、いつもありがとうございます。
 翻訳連載が増えて書評が減っており、XMLのテストページもさっぱりほったらかし。そこまで手が回らないのが正直なところ。そろそろこの連載もHPに加 えようかな。


ジェイムズ・メイソン『チェスの原則』(1894)
第1部 チェスの基礎 「戦力」メジャーピース

最も強力な駒クイーンは八方へ動けるが、キングのように1マスずつしか動けないのと違い、 盤上の端まで進むことができる。駒損なく、相手のクイーンと交換されないかぎり、この威力は比肩し得ないほど大きい。進めるマスの数は、センターの4マス にいるときにいちばん多く、縁のマスにいるときにいちばん少なくなる。

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d4にいると、動けるマスの数は27となる(邪魔がない場合)。4ランクに沿って7マス、dファイルに沿って7マス、2つのダイアゴナルに沿って7マスと 6マスである。d4からクイーンをこれら27マスのいずれかへ置き換える動きが、クイーンの1手となる。ランク、ファイル、ダイアゴナル上で動ける極限の マスは、a4, h4, d1, d8, a1, h8, g1, a7である。これらの8マスからだと、クイーンは21マスにしか動くことができない。センターに1つ寄ったマスからだと23マス、もう1つ寄ると25マス となり、平均値は約23マスとなる。一見したところ、隅のマスからの方が、隅以外の縁のマスからより動けるマスの数 が少ない気がする。しかし、実際は違う。ビショップの場合と同じく、クイーンがダイアゴナル上で動けるマスの総数は、どの縁のマスからでも常に7つであ る。

ルックは、クイーンに次ぐ強力な駒 である。ランクとファイルに沿った四方へ盤上の端まで進める。クイーンからダイアゴナル上の動きを除いたものと言ってもいい。ルックは、邪魔がなければ常 に14マスに利くので (ビショップナイトの平均に匹敵)、縁のマスにいても他の駒のよ うに威力が衰えない。盤上の途中までしか動かない手の割合は7分の5である。


 最後の部分の原文は、He carries five-sevenths of his range with him into any half of the field to which he may be played. ちょっと分かりにくいが、ルックの14手のうち、縁まで動く手4つを除いた割合は(14-4)/14=10/14=5/7という意味である。これが何の役 に立つのか分からないが(笑。

 クイーンの本は以前紹介したので、今回はルックの本。となると終盤戦の優劣はこれで決まるといっても過言ではないルック・エンディングの本が筆頭に上げ られる。昔か らいい本が多いジャンルだが、あまりボリュームが多いものから手を付けると挫折する(私のこと?)。↓は新しくて量も手頃。
Starting Out: Rook Endgames (Starting Out)
1857443748 Chris Ward

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2006年04月14日

メイソン『チェスの原則』第1部チェスの基礎「戦力」キング

 壊れたデスクライト(ランプを替えて本体の故障を確認したわけではないが)を買い直す気がせず、ルームライトの傘下側を覆うアルミホイルを1年ぶりに強 化し、小さいホワイトボードにミラーフィルムを貼って作ったレフ板も使って、何とかデスク上を明るくしている。これでカーテンも白かったらいいのだが。
 『完全チェス読本』で引用されているNorman Knightの"King, Queen and Knight"と"Chess Pieces"は、やはり買えなかった。amazonの3〜5週間発送本はあればもうけ物くらいに思っているが、今まで届いた試しがない(汗。


ジェイムズ・メイソン『チェスの原則』(1894)
第1部 チェスの基礎 「戦力」キング

 チェスのゲームでは、両軍が交互に一度に一つの駒を動かす。例外は、後に説明するキャスリングで、2つのピース、キングとルックを共同して動かす
 すべての駒の動きには、最低2つの要素、方向と距離が含まれる。

キングは1マスしか動けないが、ど の方向にも進める。キングだけを盤上のd5に置くと、動ける8つのマス、e4, e5, e6, d4, d6, c4, c5, c6が見て取れる。今いるd5マスから進めるすべてのマスである。当然ながら、e1のような盤の縁にいると、キングが動けるマスは8ではなく5マスだけに なる。四隅のマスからだと、さらに3マスにまで減少する。自軍の他の駒に関すると、キングは、そのとき自軍の駒がいるどのマスにも進めない。駒がなくて も、相手の駒が利いているマスには進めない。相手の駒がいるマスには、駒を取ってそのマスへ進むことができる。d5にいる白のキングに加えて、白のポーン がe6、黒のキングがe7にいるとする。

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 白のキングの利きは隣接するすべてのマスに及んでいるが、進めるマスは、先ほどの8つとは違いそのうちの6つだけである。e6には自軍のポーンがいるた めに進めないし、盤上に黒のキングしかなければその進めるマスであるからである。白のキングはd6にも行けない。そこも、黒のキングしかい ない場合にその進める8つのマスの一つ、動ける範囲内のマスだからである。e6とd6は、2つのキングの利きがいわば重なり合う領域で、その結果、チェス の原則として両軍ともに不可侵の中立地帯のマスとなっている。キングは互いの動け る範囲に入れず、常に最低1マス離れている。
 キングは最も重要な駒なので、すべてのチェスの手は、直接にせよ間接にせよ、キングに関連して指される。各軍の目的は相手のキングを捕らえることであ り、その場合にゲームが終了する。しかし、実戦でキングが他の駒のように盤外へ取り除かれることはな く、戦いは、後に見られる「メイト」という状況へ収束したときに終了と見なされる。


 というわけだが、キングだけを扱った本はあまりない。終盤で、キングはマイナーピースとルックの間くらいの機動力と評価されるほど活躍するが、本書では 序中盤のキングの使い方も当然扱う。長らく待ち望まれた代数(国際)式記譜の改訂版。384ページだから、ランダムハウスもけっこう割安でお得。
King Power In Chess
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2006年04月07日

メイソン『チェスの原則』第1部チェスの基礎「チェス盤」その3

 自転車の交通違反取り締まりが厳しくなると聞いてうれしい。名目だけで終わらないようにしてほしい。前々回の引っ越し理由の半分がこれだった。私 自身は過去20年間で2回(どちらも不動産屋で物件を見るために借りた)しか乗っていなく、車が不要の生活を指向しているから今後も買わないつもり。
 amazonの「月に5千円以上本やCDを買ったらギフト券還元」が、4月から5%→10%になっている。そこで今月も買ってしまいそうだが、ほんと うに必要なのはホーム&キッチン関係だったりする。掃除機をかける気になるために、スティック型&コードレス&サイクロン式を狙っている。空気清浄機 はうるさいから思案中。


ジェイムズ・メイソン『チェスの原則』(1894)
第1部 チェスの基礎 「チェス盤」その3

 すべての駒−ナイトだけは除いて−の動くラインをチェス盤に書き足すとなると、少々大袈裟である。動きを表す線が込み入るので、別に記述した方がいいだ ろう。各マスは中央の点に還元される。

省略(訳注:64マスすべてに×印がマス目いっぱいに描かれている)
図3

 すべての動きのラインは、例外なくマスの中心からマスの中心を結ぶ直線である。ランクとファイルの関係と同じく、ダイアゴナル同士も垂直に交わる。マス は、中心の点を囲んでこの直交する動きに沿った正多角形であればいい。したがって、それ自体が正方形をしたマスで盤が構成されれば数学的にもピッタリであ る。
 盤上のファイルにピースにちなんだ名前があるように、ポーンも、同じファイルにあるピースの名前を付けて呼ばれる。開始局面(図1)では、すべてのピー ス の前にポーンがある。したがって、キングポーン=KP(eポーン)、キングビショップポーン=KBP(fポーン)、キングナイトポーン=KKtP(gポー ン)、キングルックポーン=KRP(hポーン)、クイーン側は、クイーンポーン=QP(dポーン)、クイーンビショップポーン=QBP(cポーン)、ク イーンナイトポーン=QKtP(bポーン)、クイーンルックポーン=QRP(aポーン)となる。しかし、ポーンがゲーム中に別のファイルに移動すると呼び 名も変わる。そのファイルにいる間だけファイルのピース名に準じると常に見なされるからである。この例外は、ポーンがポーンであることをやめて自身がピー スになる場合である。


 あまりに1回分の量を減らしたためにかえって分かりにくくなってしまった。次回からやっと駒の動きに入る。日本一分かりにくいルール説明が終わる頃には 夏になっていそうだ(汗。

 ↓は最近値下がりしたし売れている。タイトルでは分からない内容は、中盤の戦略テーマを数個にしぼった解説である。176ページのわりには安く、ドー バーにしては珍しく(?)記譜法も代数(国際)式に改まっている。amazonチェス書で24時間以内発送というのもわりと限られている。
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2006年03月31日

メイソン『チェスの原則』第1部チェスの基礎「チェス盤」その2

 グールドの洋書2冊キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! しばらくは、ブログ以外のの翻訳は完全に止まりそう。これが和訳になると値段が倍以上になる。わざわざ市場の小さい言葉へ訳す効率の悪さよ。『完全チェス 読本』でも引用されているエドワード・ラスカーの"Chess for Fun & Chess for Blood"も届いた。これは出版翻訳候補。


ジェイムズ・メイソン『チェスの原則』(1894)
第1部 チェスの基礎 「チェス盤」その2

 開始局面(図1)と図2を比べると、白側から黒側へとながめた場合、右側がキング側、左側がクイーン側になる。これはファイルの2分割である。同様に白 の戦力を含む側を白側、黒の戦力を含む側を黒側と分けられる。これはランクの2分割である。
 さらに、キングとクイーンの初期位置にちなんで、キング側のピースとポーンをキング側ピースおよびポーン、クイーン側のピースとポーンをクイーン側ピー スおよびポーンと呼ぶ。これは各戦力の2分割であり、上記の白側と黒側の大分割とは異なる。略号もある。キング=K、キング側ビショップ=KB、キング側 ナイト=KKt、キング側ルック=KR、クイーン=Q、クイーン側ビショップ=QB、クイーン側ナイト=QKt、クイーン側ルック=QR(訳注:現在では 通常ナイトはNと表記する)。これらの略号にランク番号を付けると一般に用いられる記譜法となり、チェス盤上での様々な駒の動きを表すのに最適である。
 局面図(図1と2)を振り返ると、キングとクイーンがセンターにいる−クイーンは自分と同じ色のマスにいる−ことに気付く。それぞれの隣にビショップ、 次にナイト、最後の隅のマスにルック−キャスルと呼ばれることもある−が置かれる。キングのいるマスは、キングマス=K1と言い、その属するマスはキング ファイルである。クイーンのいるマスは、クイーンマス=Q1と言い、その属するマスはクイーンファイルである。KB1等他も同様で、すべてのピースには対 応するマスとファイルがある。(訳注:代数(国際)式表記では、e1、eファイル等と表し、白と黒ではランク番号が異なる)
 自軍のピースがいるのは第1ランクで、ポーンが並ぶのは第2ランク。駒がない中央の4ランクは、第3、第4、第5、第6ランク。敵のポーンがいるのが第 7ランクで、第8ランクは相手の第1ランクである。すべてのマスには2通りの呼び方(図2)があるので、しっかり覚えることを強く推奨する。


 ↓はとてもチェス書の表紙とは思えないし、「雌ブタ」という意味にも取られかねないbitchという言葉を女性プレーヤーの著者自らが使っているところ が何とも自虐的である。興味ある方はmaro_chroniconさんの畏友さんのすばらしいレ ビューの一読をお薦めする。
 表紙とは裏腹に内容は骨太、女性チェスプレーヤーの歴史を通観し、女性特有の問題、メディアの扱い、フェミニズム等がからんでくる。女性へ性転換した (といっても半陰陽だが)アンジェラの章が気になるのでそのうち読まねば(汗。
Chess Bitch: Women In The Ultimate Intellectual Sport
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2006年03月24日

メイソン『チェスの原則』第1部チェスの基礎「チェス盤」その1

 昨日NHK「クローズアップ現代」で新書ブームを扱っていた。岩波や講談社現代のような老舗に代わって、テーマ、タイトル、タイムリーの3Tを打ち出す 新潮新書(「バカの壁」、「国家の品格」)等である。私は、人文から自然科学まで幅広い講談社現代新書がいちばん好きだ。
 一般のサラリーマンが自分に縁のないフリーターやニートを社会現象として理解するのにこの手の本は有用かもしれないが、「年収300万円時代〜」どころ か100万円で文化的にはホリエもん以上の生活を自負する私から見ればバカバカしい。私はすでに、小学生の頃から今のような生活を予想していた気がする。


ジェイムズ・メイソン(1849-1905)『チェスの原則』(1894)
第1部 チェスの基礎 「チェス盤」その1

 チェス盤には、駒が最初に配置されている列がある。それに平行する横方向のマスのラインをランク(列、段)と呼ぶ。開始局面では、中央の4ランクが 空いている。白から黒へのマスのライン、つまりランクと垂直なラインをファイル(行、筋)と呼ぶ。ランクには1〜8の数字があてられ、ファイルには開始局 面で端にいるピースの名前が付けられる。マスの斜めのライン、つまり角だけで接する列は、ダイアゴナルと呼ぶ。ダイアゴナル上のマスは色が等しく、長 さは2から8マスまで様々である。さらに、チェス盤上のすべてのマスは、ピースの初期位置の名前とランク数で呼ばれる。これは、両軍それぞれの基地から数 える。最終的に、すべてのマス−とすべての駒−の命名は、キング(側)とクイーン(側)に関連する。盤上の命名を完全に理解することは何よりも先決で、そ れなしでは努力すべきチェスの進歩は望めない。この点で、年少のプレーヤーは最初から誤りがちである。多かれ少なかれ正確な知識を付け損なえば、 チェス盤を真っ先に合理的に扱うべき権利や事実を二の次にしてしまう。記譜という目的のために盤表示の拡張方法が考えられたため、身近 な関心事となった。















ファイル
クイーン側    キング側

QR1
QR8
QKt1
QKt8
QB1
QB8
Q1
Q8
K1
K8
KB1
KB8
KKt1
KKt8
KR1
KR8
QR2
QR7
QKt2
QKt7
QB2
QB7
Q2
Q7
K2
K7
KB2
KB7
KKt2
KKt7
KR2
KR7
QR3
QR6
QKt3
QKt6
QB3
QB6
Q3
Q6
K3
K6
KB3
KB6
KKt3
KKt6
KR3
KR6
QR4
QR5
QKt4
QKt5
QB4
QB5
Q4
Q5
K4
K5
KB4
KB5
KKt4
KKt5
KR4
KR5
QR5
QR4
QKt5
QKt4
QB5
QB4
Q5
Q4
K5
K4
KB5
KB4
KKt5
KKt4
KR5
KR4
QR6
QR3
QKt6
QKt3
QB6
QB3
Q6
Q3
K6
K3
KB6
KB3
KKt6
KKt3
KR6
KR3
QR7
QR2
QKt7
QKt2
QB7
QB2
Q7
Q2
K7
K2
KB7
KB2
KKt7
KKt2
KR7
KR2
QR8
QR1
QKt8
QKt1
QB8
QB1
Q8
Q1
K8
K1
KB8
KB1
KKt8
KKt1
KR8
KR1

クイーン側    キング側
ファイル
図2
(訳注:原文ではマスの上側(太字)は、黒側から見た呼び方なので上下反対に印刷されている)
















 うちのブログとHPともに記譜法に触れるのは初めてで、しかも今ではほとんど用いられない英米式である。古いチェス書の多くは、再版時に変換されないか ぎり依然この方式で棋譜が書かれているので、ディープなファンはいずれ知る必要に迫られる。
 ファイルをQとK側で左右対称に表すのが、a〜hの代数(国際)式との最大の違いで、両端ファイルをRファイルと指示できる等のメリットがある。ランク は、各プレーヤー側から数えるので誤解が生じやすいが、両軍とも手前から何段目と数えればいいのは単純で理にかなっているかもしれない。
 1は省略されることがあるが、これは単にそのピースが元いた位置だからでもあろう。古いチェス書ではQ1がQIと書かれていることがあり、 Queen's Indian Defense?と思ったりするが、旧式で数字の1がないタイプライターは、iの大文字で代用したからである(笑。

 というわけで、売れている藤原雅彦の『国家の品格』を貼っておこう。タイムリーさ優先のために書き下ろしている暇がなく、著者の講演内容を加筆修正した らし い。日本人の古き良き精神についてなら新渡戸稲造の『武士道』とかを読めば良さそうだが。
国家の品格
4106101416 藤原 正彦

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2006年03月11日

メイソン『チェスの原則』1

 4月から、PSEマークが付いていないと家電製品の多くが販売できなくなるので、リサイクル業者等が困っている。そういうものの回収車の騒音が うっとうしいからざまあ見ろという気もするが、そういえば知人がCDプレーヤーの一号機を最近買ったのはそういう駆け込み需要だったのだろう。
 思えばアナログ・オーディオ時代は、私も少ない小遣いからレコードプレーヤーのカートリッジをグレードアップしたりしたものだ。CDになってからその気 が失せたとはいえ、今のPCをアンプとスピーカーに使う環境はひどすぎる。これでクラシック音楽のレビューを書くのがそもそも無謀だ(汗。

 ブログ→HPの新体制についていろいろ考えたが、週一のクラシック音楽レビューは残すとして、それ以外は週一の縛りをなくして基本的にHPでの翻訳や連 載、レビューのみを先にブログで紹介することにした。HPのみのコンテンツをなくすことで、それを紙出版のみの翻訳作業時間に回せる。「マスターズ」はそ ちら へ回すかもしれないのでとりあえず休載する。
 先日カテゴリーの整理をしたところ(1年さかのぼってカテゴリーを付け直す奴は普通いない)なのにまた増えそうだが、細分化される分には問題ないだろ う。連載が増えるので各連載ごとの進行が遅くなるのは仕方ない。そこで今回は、チェスのルールから始まるメイソンの『チェスの原則』を始める。


ジェイムズ・メイソン(1849-1905)『チェスの原則』
第1部 チェスの基礎(序文)

 チェスは、ゲームの原則や規則に従い、その制限内で思考するプロセスと言える。思考の判断は、以下に示される様々な戦力のチェス盤上での動きによって確 認され、視覚的に表現される。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図1

 2つの敵対する部隊があり、交互に動かしていく。どちらもまだ手を指していない状態では、図1のように、駒、つまり戦力は出撃に備えて整列されている。
 各軍の戦力、つまり駒は16個あり、1つのキング、1つのクイーン、2つのビショップ、2つのナイト、2つのルック、8つのポーンから成る。これらは2 つの軍隊のようにすべての点で等しく、プレーヤーはその司令官である。ゲームはプレーヤー同士の戦いであり、通常は技量が上回る方が勝利する。駒は、敵味 方が色で区別でき、大きさや形で種類が区別できる。それらは、盤上のどのマスにいるかで、威力や動きが様々に異なる、というよりむしろ本来の力が制限され る。図1のように、キングとクイーンは戦場のど真ん中のライン上に位置し、ビショップ、ナイト、ルックが左右に続いて並んでいる。用語的に、これらの駒を ピースと言い、ポーンと区別する。ポーンは、見ての通りその前の列に並んでいて、中央の戦場との境界となっている。盤は、常に各プレーヤーから見て右手前 角が白マスになるように配置し、それぞれのクイーンは自分と同じ色のマスにいる。


 なにぶん大昔の本なので、この後に続く数行は割愛する。右手前のマスが白とクイーンが同色のマスにいることは、恣意的な取り決めなので絶対そうしなけれ ばならないのではないと続く! これは現行のルールに反する。つまりは、キングとクイーン同士が同じファイルにいさえすればいいというのだ。
 しかし、当時のプレーヤーにしても左右が鏡像状態で指したら混乱しないだろう か。シシリアンが見かけ上ダッチになるのだ。白黒のマスが逆になるだけでも気持ち悪いというのに。英米式の記譜法ならそれでも同じ結果になる。棋譜だけで は実際にどう駒が配置されたのかが分からないとは…。

 原著の購入は絶対お薦めしないが(笑、とりあえず貼っておく。3か月ほど待ったスタントンの『ハンドブック』は結局手に入らなかった(泣。
Principles of Chess
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