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2005年11月07日

Davies『The Trompowsky』

 本田美奈子・が亡くなった。臍帯血移植までしたから完治すると思っていた。ルックスも声質も、何より体力もそれほど恵まれているとは思えなかったが、 それを上回るテクニックがあった。フレーズの最後で吸うように余韻を残す歌唱法は、真似してもできなかったなあ。


 今回の序盤本は 1 d4の番だが、たまには白から形を決めるものを紹介しよう。全日本トッププレーヤー南條さんのレパートリーでもよく知られるトロムポウスキーである。最も 新しいNigel Daviesの"The Trompowsky, 2nd Edition"(144ページ、'05年、Everyman Chess)をRick Kennedyのレビューで概観しよう。


 何か新しい定跡を探しているのなら、学べて楽しい最新の本書を強く薦め る。1 d4 Nf6 2 Bg5は、Hortが"How to Open A Chess Game"(1974)で扱ってから30年間の歴史を持つ。そこでは、めったに出くわさない作戦とはいえ、知らないと実に困ると書かれている。
 以来、徐々に見取り図が描かれる。'80年代にはBellinがトーレ・アタックとともに本を書く。'90年代には、Hodgsonと Gallagherがそれぞれ著書を出し、21世紀に入ると、Gerstner, De la Villa, Wellsという風に研究者は増えてくる。

 トロムポウスキーがこれほど広まったのは、複雑で独創的な局面が攻撃的かつ野心的なプレーヤーに支持されたからである。白は、黒が用意する複雑な獣道か ら正道 を探す必要はない。Hodgsonは、白は悪くならず、おもしろい局面に進んでいくのだと言う。
 著者は白黒双方でトロムポウスキーを指す。過去の書物を調べ、インフォーマントやTWICの最新情報も追いかける。序文でも以下のようにそのバランスの 良さを見せている。

白の攻撃的レパートリー1
白の攻撃的レパートリー2(1より実戦的)
白のポジショナル・レパートリー
黒の攻撃的レパートリー
黒の攻撃的ポジショナル・レパートリー
黒のポジショナル・レパートリー

 「黒がどう指しても10手で粉砕する」的な試みは、黒が互角にすると著者は戒める。例えば、ボビー・フィッシャーがルイ・ロペスの白でも黒でも勝つの は、彼が序盤以外も強いからである。(だから彼はフィッシャーなのだ)
 トロムポウスキーをうまく指すには、攻撃的精神と大枠のプランが必要だが、ポーンとセンターポーン、難解な中盤と微妙な終盤を理解することも欠かせな い。つまりは、チェスのすべてを知っていなければならないのである。以下に典型的な2つの局面を記す。









Golod-Adamson ラスベガス 2004 (1-0, 68手)









Chepukaitis – Klimov サンクト・ペテルスブルク選手権 2004 (1/2-1/2, 59手)









Hodgson – A. Panchenko ベルン 1994 (1-0, 33手)

 最後の局面は、白が1手得のブラックマー・ディーマー・ギャンビットに見える。

目次

参考文献
序文
1.d4 Nf6 2.Bg5
1.                  2…Ne4 3.Bf4 c5 4.f3
2.                  2…Ne4 3.Bf4 c5 4.d5
3.                  2…Ne4 3.Bf4 d5 と 3…その他
4.                  2…Ne4 3.Bh4 c5 と 3…g5
5.                  2…Ne4 3.Bh4 と 3 その他
6.                  2…c5
7.                  2…e6
8.                  2…d5
9.                  その他の黒の2手目
全局引用ゲームの索引

 著者は、実践例(1つを除いて'90年代以降)を詳しく解説し、正しい変化も発見した戦術的誤りも過去の文献から名前を引用する。10手目まででもかな りの新手が生まれている。各ページには2,3個の局面図があり、各章にはメインラインと関連ゲーム、重要な局面とともにまとめがある。

 本書は、もうできあがったトロムポウスキー狂にはもちろんのこと、これから新しい序盤を指してみようというプレーヤーにもお薦めできるすごい本である。 ちょっと気分転換に読むだけでも、トロムポウスキーの神髄に触れることができるだろう。


 いいとこずくめのレビューだが、一つ注意すべきは、黒の 1...Nf6にしか対応していないので完全な 1 d4のレパートリー本ではない。
The Trompowsky
1857443764 Nigel Davies

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posted by 水野優 at 16:18| Comment(0) | チェス(洋書評 序盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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