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2005年11月03日

Snape『Chess Endings Made Simple』〜メイトを強制?

 例の著作権切れアーカイブサイト、プロジェクト・グーテンベルクには、スタウントン、バード、そしてCaxtonという著者の1474年(!)に書かれ たチェス書があるのも見つけた。バードのはいくぶん読み物っぽいので、当時のチェス界を知るのにおもしろそうというくらいか。
 それよりはpontaさんに頂いた本にJames Masonの2冊があって19世紀末に書かれたものだから、ラスカー訳の後釜にと考えている。そういう古いネタは困らないのだが、何とかもう少し新しめの 本を紙で 出すことも考えねばならない。本業が軌道に乗ってからか。軌道に乗るとそれどころではなくなったりして(笑。


 終盤本も終盤全般を扱ったものはめぼしいものがなくなってきたが、もう少し続ける。今回は、Ian snapeの"Chess Endings Made Simple"(144ページ、'03年、ギャンビット社)である。以下に、Carl Tillotsonのレビューを要約して見ていこう。


 チェス出版界では比較的新顔の著者は、終盤の知識をかなり限られた紙数 の中で網羅している。本書は、記憶や長たらしい読みよりも、パターンや概念の提示に重点が置かれている。読者が向上する可能性がいちばん高い領域に焦点を 合わせていると言えるだろう。
 本書は2部構成になっている。第1部は「セオリー」を重点的に扱い、第2部は100問の練習問題となっている。問題はすべて実戦から採られたもので、作 図ではない。多くの他書と同様に、豊富な練習問題を解くことで概念が実証されるという利点がある。

第1部の構成は以下の通りである。
 1.ポーンのない終盤
 2.キングとポーンの終盤
 3.ルックとポーンの終盤
 4.ルックと1つのポーンの終盤
 5.ナイトの終盤
 6.ビショップの終盤
 7.ビショップ対ナイトの終盤
 8.クイーンの終盤

 頻出するルックとポーンの終盤は2つの章で扱っている。「ルセナ」や「フィリドール」といった古くからある局面だけでなく、並のプレーヤーにはあまりな じみのない「ヴァンキュラ(Vancura)」ポジションも出てくる。以下がそれである。










 防御側が持ち込むべき局面である。黒のキングとルックが、白がルックを横に振る狙いを封じる場所にいる。各章では多くのテーマが解説され、章末では実 戦例によって再び考察される。実例はGMや著者自身のゲームから取材されている。

 第2部の練習問題では、最高のプレーヤーでさえ実戦でミスを犯すことが示される。例えば、以下のドローにできる局面で、黒番のシロフは敗着 ...Rc6を指した。正着を知りたい人は本書を読まれたし。










 決して初心者向けではなく、中級以上のプレーヤーがさらなる上達を目指す本である。難点は価格だが、高くても気にしないという人なら「買い」だ。


 force a mateの訳なのだろうが、「メイトを強制する」という変な訳を見かけることがある。forced mateが「強制メイト」だからそのまま動詞化してい るとも考えられる。かく言う私も昔そう書いていた反省でもあるのだが、これは単純に「メ イトにする」や 「メイトできる」でいいだろう。
 文脈にもよるが、「メイトできる」というのは、相手のいかなる応手に対してもメイトできるという前提がすでにあるわけで、そうで なければ「メイトできる」とは言わない。英語の表現は逐語訳すると、とかく大袈裟で冗長になりがちなのだ。
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posted by 水野優 at 13:37| Comment(0) | チェス(洋書評 終盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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