ホームページは「チェストランス」です。古い記事では図の駒が表示されません。

2005年10月26日

Alburt&Krogius『Just the Facts!: Winning Endgame Knowledge in One Volume』〜extraの訳

 一昨日のNTV「ニュースプラス1」でエスカレーターの危険性を扱っていた。歩くあるいは走る人に引っかけられて転倒する事故等が起こっているからだ。 エスカレーターを管理する会社や業界代表に話を聞くと、エスカレーター上で歩くことは推奨していないという。たしかに最近は歩くなというアナウンスをよく 聞く。
 いつから歩くようになったのかとVTRで検証すると、意外と最近の10年前くらいからだと判明した。大阪万博のときに海外の「マナー」が導入されたとい う話を以前聞いたことがあった。だから大阪は国際式に左側を空けるが、東京はなぜか右側を空けるようになったのだと。
 それは間違いではないようだが、一般に広がるきっかけになったのは、関西の私鉄会社が混雑時用の措置として、左側を急ぐ人のために空けるようにアナウン スしたからだという。それが、同じエスカレーターだということで百貨店とかでも半ば強制されているような状況になってしまったのだ。

 今頃になって歩くなとアナウンスをされても、元来気ぜわしい日本人が元にもどるとは思えない。海外も歩行禁止へ向かっているというが、全くよけいなこと をしてくれたものだ。私は歩いてもゆっくりだし、猛烈に込んだ駅だとエスカレーターまで扇形に並ぶのがうっとうしいので急いでなくても階段を使う。
 引っかけられる可能性はむしろエスカレーターが空いているときだろう。そんなときに真ん中気味に立っている年寄りが危ない。私は幅の1/3に収まるよう に立っていても腕に当てられたことがある。広いと気を抜いた相手になめられないように、体は1/3に収めても1/2くらいまでは荷物とかを張り出しておく べきだ(笑。


 昨日のクロギウスつながりでちょうどいい終盤本を紹介する。アルバート +クロギウスの"Just the Facts: Winning Endgame Knowledge in One Volume"である。S. Evan Kreiderのパンドルフィーニ本との比較レビューが的を射ているので、以下に抄訳のみ記す。


 アルバートとクロギウスの『終盤で勝つ知識だけを一巻で』は、一冊でアマチュアに必要な終盤の知識を提供する点においては『パンドルフィーニの終盤コー ス』と似ているが、その内容と教授法、書き方にはかなりの違いがある。
 アルバート本は、K+Q v. K or K+R v. K等の初歩的メイトを省いている。オポジションや回り込みを使う基本的なK+P v. K終盤も省いている。その代わりになぜか「有名な終盤プレーヤー」なる内容にかなりのページを割いている。

 パンドルフィーニ本にないものは、Q v. R+マイナーピースのポーン付きや2ビショップが有利な終盤、そして特に重要なR v. マイナーピース+Pである。これらはアマチュアのゲームでも見られるし、こういった「まぜこぜの」終盤を学ぶことは重要だ。
 違いを強調したが、両者には重なる部分も多い。しかし、同じテーマを扱うにしてもその切り口が違う。パンドルフィーニが百科辞典的に簡潔なのに対して、 アルバートは実際のレッスンに近い散文的スタイルである。これはどっちがいいとは言えず、好きずきの問題だろう。

 パンドルフィーニは、本質まで煮詰めて「単純な」終盤に還元しようとする。初心者から中級者には最善の方法である。逆にアルバートは、実際に起こるピー スとポーンが混在したもっと複雑な終盤を披露する。もっと経験を積んだ中級者やパンドルフィーニ本をマスターした者に向いている。
 それに関連して、アルバートは、複雑な終盤から単純な終盤へ、さらには中盤から終盤への移行をも多くのページを使って示している。これもまた経験を積ん だ中級者と、単純だがある意味これより作為的なパンドルフィーニ本の局面をマスターした者に最適と言えよう。

 パンドルフィーニ本は初めて終盤を学ぶ者か意欲的な中級者に最適であり、アルバート本は、もっと上達した中級者かパンドルフィーニ本をマスターした者に 向いている。アルバート本は他の同種の本に比べて高いので、価格だけが問題という人は他を度外視してパンドルフィーニ本を選ぶことになるだろう。


 mikageさんのamazonカスタマーレビューも参考にされたし。
Just the Facts!: Winning Endgame Knowledge in One Volume (Comprehensive Chess Course Series, the)
1889323063 Lev Alburt Nikolay Krogius

Newmarket Pr 1999-12-01
売り上げランキング : 126,176

おすすめ平均star
star大変読みやすく理解しやすい

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


 また翻訳で気付いた話をしよう。レビューの丸訳よりはこういう一般論をする方がおもしろい。「チェス翻訳の話」が記事の締めくくりで復活である。「近況 報告〜主文〜締めの話」の構成は、一般的なメルマガに似てきたかもしれない。

 extra pawnを皆さんはどう訳すだろうか。用語的には「余分のポーン」とする場合が大半だろう。しかし、この言葉は聞くたびにひっかかる。「余分な話」のよう なマイナスの意味を感じてしまうからだ。実際、この言葉はそういう意味に使われる方がはるかに多い。
 局面の説明を含めてなら「駒得のポーン」とすることもできるが、局面が既知の場合は冗長になる。それに、ポーンの終盤で相手と比べてあるファイルにだけ ポーンが余分にあるなどというときは、他の言葉ではニュアンスが出しにくい。

 類語辞典を引くと、硬いがニュアンスがより平明な「余剰」しかないと判断して、今ラスカー訳等で使っている。「余分ポーン」と言えるほど用語としての結 びつきが強ければ、ニュアンスは度外視して使うが、それほどの言葉とは思えない。
 ロケ撮影の「エキストラ」じゃあるまいし、「エキストラ」としなければならないほど特殊な概念とも思えない。余分「な」ポーンという風に形容動詞にする とマイナスイメージ全開になるから、使う場合は余分「の」に限定すべきことだけは言える。
posted by 水野優 at 00:01| Comment(2) | チェス(洋書評 終盤) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 レビューを読んで意外だったので一言。

 Lev Alburtの『Just the Facts!』ですが、僕も読みました。以前読んだエンドゲームの本は639 Essential Endgame Positionsという本でしたがページ数は変わらないけれどJust the Facts!よりも複雑な局面を扱っているという印象でした。

 ですので、Just the Facts!は比較的単純な局面しか扱っていない本なのだと思っていたのですが、エンドゲームの本全体からみるとそうでもないのでしょうか?
Posted by enju at 2005年10月26日 14:19
 客観的なレビューと思って引用しましたが、あくまでパンドルフィーニ本との比較だからでしょうかねえ。
 いずれにせよ、JustとかEssentialというタイトルは全くあてにならないようです。
Posted by 水野優 at 2005年10月27日 13:47
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。