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2005年10月21日

マスターズ第3回:ブルドネ、マクドネル

 月末までは野暮用(本業)で忙しくてラスカー訳まで手が回らない。何とかブログの毎日更新は続けよう。暇があるときに書きだめしたいところだが、実際は コンスタントに毎日一つずつ書いている。下書きするエディターのファイルを上書きしているので何個もたまるとややこしいという単純な理由だったりする。
 近所の買い物のときに新しくできた米屋を見つけて安かったから入った。小売店に厳しい私だが、とても感じのいい夫婦でやっている店で、私が電子レンジで 炊飯している話をしたら興味深く聞いてくれた。開店セールの米5kg980円は買いだめしておきたい。激安スーパーでも990円が最安値だ。


 フランス一のプレーヤーをデシャペルから引き継いだのがブルドネである。裕福な家庭に生まれたが、カフェ・レジャースですぐにチェスのとりこになる。決まったテーブルで、毎日真昼から夜 中まで、そこそこの賭け金で指したいという者とは誰とでも指した。
 例によって、ジョージ・ウォーカーはこう記している。「体格はがっしりとした大柄で、計算能力が発達した額は骨相学的な好例である。巨 大で中身の詰まった様は、まさにナポレオンの額そのものだ。眼光は、暗闇でもよく見えるがごとく盤面を貫いた」

 ブルドネはひじょうに早指しだった。ウォーカーによると、「相手が これから触る駒の半分くらいまで手を近づけたときに、ブルドネは応手を指そうと待ちかまえている。すぐに指し返されるから相手が手を休めている暇がない。 これにはイギリス人が悩まされた」
 当時のイギリスでは強豪が育ちつつあり、筆頭はアイルランド出身のアレクサンダー・マ クドネルだった。彼はロンドンのウエストミンスター・ チェス・クラブのメンバーで、目隠しチェスの名手でもあった。1823年に腕試しにパリへ来る。

 マクドネルは、真昼から夕方までブルドネに負け続けて退散する。一方のブルドネは、その後も夜中まで他の者と合わせて40局も指し、翌日の再戦に備えて数時間眠るために帰宅した。2年後には、ブルドネがイギリスへ渡って有名になる。1825,1830年に続 いて渡英した1834年には、マクドネルとのマッチが組まれた。
 これは近代チェス史上で最初の重要なマッチだが、当時のマッチは非公式な方法に基づいていた。さほど高額でもない賞金は両者の支援者が出費し、決められた日と場所に両者は自腹でやってくる。クロックも時間設定もないから、プレーヤーは一手に何時間かけてもいい。

 対戦場所のウエストミンスター・チェス・クラブは、騒がしくて見物人との仕切りもなく、カフェでの騒音には慣れっことはいえ、集中できるのがおかしいほどの場所だった。それをさ ほど気にしないブルドネと違ってマクドネルは困惑した。
 ゲームのクライマックスに一人の不作法者が乱入する。両者に握手を 求め、盤上に身を乗り出し、局面を事細かに説明し、ついには盤の空いているところに両手を付く。その後もプレーヤーに局面に関する質問を投げかけ たりする。今日の非公式戦でも見られないようなことが起こっていた。

 熱い戦いの主役は対照的だった。ブルドネは英語を話さず、マクドネ ルはフランス語を話さない。マクドネルは陰気にゆっくり指し、短気な ブルドネは陽気に速く指す。ときどきブルドネが、マクドネルのスロー ペースにかんしゃくを起こして負けることもあった。
 5つの連続マッチで84局が戦われ、ブルドネが44勝27敗13分で勝利した。再戦の計画はマクドネルがブライト病で1835 年になくなるまで続いた が、実現しても逆転するのは難しかっただろう。以下のゲームは、14手目からのマクドネルの無理攻めを諫めるブルドネが冴える16局目であ る。

ブルドネ−マクドネル

1. d4 d5 2. c4 dxc4 3. e3 e5 4. Bxc4 exd4 5. exd4 Nf6 6. Nc3 Be7 7. Nf3 O-O 8. Be3 c6 9. h3 Nbd7 10. Bb3 Nb6 11. O-O Nfd5 12. a4 a5 13. Ne5 Be6 14. Bc2 f5 15. Qe2 f4 16. Bd2 Qe8 17. Rae1 Bf7 18. Qe4 g6 19. Bxf4 Nxf4 20. Qxf4 Bc4 21. Qh6 Bxf1










22. Bxg6 hxg6 23. Nxg6 Nc8 24. Qh8+ Kf7 25. Qh7+ Kf6 26. Nf4 Bd3 27. Re6+ Kg5 28. Qh6+ Kf5 29. g4# 1-0

 第4回に続く。
De La Bourdonnais Versus Mcdonnell, 1834: The Eighty-five Games Of Their Six Chess Matches, With Excerpts From Additional Games Against Other Opponents
0786421142 Cary Utterberg

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posted by 水野優 at 00:01| Comment(2) | マスターズ(チェス近代史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
順調に訳がすすんでいますねえ。
それに面白い。
やっはり、本も喜んでいますよ。

と、ほめたところで、

フィッシャーはまだか! 後ろから訳して!
うそうそ(笑)

続きを楽しみにしております。

ぼちぼち、が一番です。

Posted by middle-mountain at 2005年10月23日 20:57
 ウォーカー本を直接引用する振りをしても、やっぱり元持ち主にはばれてますねえ(笑>訳
 しかし、抄訳って直訳の呪縛から逃れられるし、まとめる力も付くし、自分の文章力も問われるしでなかなかためになります。欲を言えばもっと付け足したいけど、いずれログでまとめるときにやりましょう。
 週一だからフィッシャーまで1年くらいかなあ。気長に行きま〜す。
Posted by 水野優 at 2005年10月23日 21:25
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