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2007年09月20日

Vukovic『チェスの攻撃技術』第1章 キャスリングしていないキングへの攻撃 eファイル上の攻撃 その3

 以下の局面(Ravinsky-Panov、モスクワ、1943)からの手順は、eファイル上での攻撃の好例である。(訳注:ここまでの手順 は、1. e4 c5 2. Nf3 e6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 d6 6. g3 Nc6 7. Bg2 Bd7 8. O-O a6 9. Be3 Rc8 10. Qe2 b5 11. a3 Ne5 12. Rad1 Nc4 13. Bc1 Nxa3 14. e5 dxe5 15. Nc6 Qc7 16. Nxe5 Nc4 17. Nxd7 Nxd7 18. Nd5 Qa7 19. Nf4 Nce5)

図9
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
2r1kb1r/q2n1ppp/p3p3/1p2n3/5N2/6P1/1PP1QPBP/2BR1RK1 w k - 0 20

 20 Rxd7! Nxd7 21 Nxe6 fxe6 22 Qxe6+ Be7
 22...Kd8だと、23 Bg5+ Kc7 24 Qc6+ Kb8 25 Bf4+ Rc7 26 Bxc7+ Qxc7 27 Qa8#.

 23 Re1 Qc5 24 b4! Nf8?
 24...Qxb4 25 Bg5 Qxe1+ 26 Qxe1 Nf6の方が、黒に十分なドローのチャンスがあっていい。本譜後はどの変化でも黒が負ける。

 25 Qg4!
 交換を避けつつc8をにらみ続ける。

 25...Qc3 26 Rxe7+!
 勝負を決する新たなサクリファイス。

 26... Kxe7 27 Bg5+ Kd6 28 Qd1+ Kc7 29 Bf4+ Kb6 30 Qd6+ Ka7 31 Qe7+ Rc7 32 Bxc7
 もちろん、もっと単純なのは、32 Be3+ Kb8 33 Qd8+ Rc8 34 Qb6#.

 32... Qa1+ 33 Bf1 Ng6 34 Qc5+ Kb7 35 Ba5 Rf8
 35...Rc8には、36 Qb6+ Ka8 37 Qxa6+ Kb8 38 Bc7から 39 Qxa1.

 36 Qb6+ 1-0. 36...Ka8なら、37 Qc6+ Kb8 38 Bc7+から数手でメイト。


 以下のシュタイニッツの名局では、一貫してeファイルから圧力をかけ続けた白が、ついにそこを突破して勝利をもぎ取る。

Steinitz-von Bardeleben
ジオッコ・ピアノ
ヘイスティングズ、1895

 1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bc4 Bc5 4 c3 Nf6 5 d4 exd4 6 cxd4 Bb4+ 7 Nc3 d5
 今日では、より良い 7...Ne4が指され る。

 8 exd5 Nxd5 9 0-0 Be6 10 Bg5 Be7? 11 Bxd5
 白が連続交換を仕掛けてeファイル上の圧力を維持し、黒のキャスリングを阻止する。

 11...Bxd5 12 Nxd5 Qxd5 13 Bxe7 Nxe7 14 Re1 f6
 黒は、うまくキャスリングできないことに気付いた。14...Qd7に は、白が 15 Qe2でe7への圧力を増す。14...f6は、黒が ...Kf7から Re8, Kg8によって「人工キャスリング」する意図を示しており、白のナイトの動きも制限する。しかし、これらは、10手目の疑問手のせいですでに劣勢になった黒陣の取り繕いに過ぎない。

 15 Qe2 Qd7 16 Rac1 c6?
 16...Kd8の方が良かった。16...c6は白の d5を阻止できない。それは、白がナイトのためにd4マスを空けるためだから。

 17 d5! cxd5 18 Nd4 Kf7 19 Ne6 Rhc8 20 Qg4 g6 21 Ng5+!
 見事な、19世紀チェスで最上のコンビネーションが始まった。黒のキングは、危険なeファイルへの帰還を余儀なくされる。

 21... Ke8

図10
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r1r1k3/pp1qn2p/5pp1/3p2N1/6Q1/8/PP3PPP/2R1R1K1 w - - 0 22

 22 Rxe7+! Kf8
 白のe7でのサクリファイスが、eファイルでの攻撃の総仕上げとなった。eファイルの弱体化のせいで、黒は他の弱点まで抱え込んだ。基本的な欠点がいったん生じるとこうなることは珍しくない。22...Kxe7としても、23 Re1+ Kd6 24 Qb4+ Kc7 (24...Rc5 25 Re6+) 25 Ne6+ Kb8 26 Qf4+で白勝ち。したがって、黒はサクリファイスに応じず、自身もc1でのメイトを狙い続けるいわゆる「宙ぶらりん」陣形で戦うことにした。

 23 Rf7+ Kg8
 23...Qxf7は、もちろん 24 Rxc8+と応じられる。

 24 Rg7+!
 黒は、このずうずうしいルックを取れない。24...Kxg7な ら 25 Qxd7+24...Qxg7には 25 Rxc8+とされる。

 24... Kh8 25 Rxh7+
 ここで、シュタイニッツの相手は大会会場を後にして二度と現れなかった。彼は、これらの攻撃手段によってシュタイニッツから「死なないピース」を奪うつもりだったが、注釈によると、白の意図も全く同じだったことが分かる。
 25...Kg8 26 Rg7+ Kh8 27 Qh4+ Kxg7 28 Qh7+ Kf8 29 Qh8+ Ke7 30 Qg7+ Ke8 31 Qg8+ Ke7 32 Qf7+ Kd8 33 Qf8+ Qe8 34 Nf7+ Kd7 35 Qd6#.


 最後のシュタイニッツのコンビネーションは、初めて並べた頃は白がルックばかり動かす手が奇妙に思えてよく理解できなかった。その原因は、黒のc1でのメイトの狙いがあるので、白が連続チェックで攻めないといけないからである。メイトまで途切れないチェックが気持ちいい。

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posted by 水野優 at 15:54| Comment(0) | Vukovic『チェスの攻撃技術』戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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