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2007年09月07日

Dickins『フェアリーチェス入門』2 フェアリー駒 その3

ヘルプメイト

 リーパー、ライダー、ホッパーたちをその基本的な動きを理解するために吟味した。僧正ライダーホッパー(ALFIL-RIDERHOPPER)や戦車ラ イダーホッパー(DABBABA-RIDERHOPPER)のように、実際に使用されるにしても極めてまれな種類の駒もあったが、ありうるすべての種類の 駒を網羅するためにここに含めた。

 さらなるフェアリー駒を吟味する前に、通常の「白が先手で黒をn手でメイトする」規定とは異なる2つのプロブレムに注目しよう。それは、ヘルプメイト(Helpmate)とシリーズ・ヘルプメイト(Series Helpmate)といい、双方が派生的または副次的に関連したプロブレムである。

 ヘルプメイト
は、1854年にマックス・ランゲによって考案された。

 ヘルプメイトでは、黒が先手で白と協力し合い、黒が白にメイトされる1つの手順を見つける。黒先手の慣習は、1860年にサム・ロイド(Sam Loyd)によって始まったが、1930年代まで続いたかどうかは定かではない。厳密には、手順は1つだけであるべきだが、今日では変化筋のあるものも導入されている。2つ以上の解があるなら、変化筋はテーマ的に関連しているのが望ましい。メイトにする手がポーンのクイーンとルックまたはクイーンとビショップへの昇格のように2通りあるのは、ピラン法典によれば、派生形式と同様、厳密な形式においても許容範囲とされている。ヘルプメイトにはとりわけ「理想メイト(the Ideal Mate)」、つまり1つの「模範メイト(a Model Mate)」が適応する。そこでは、盤上の(白のキングとポーンも含んだ)すべての駒がメイト型に用いられる。白駒が周りを固め、黒駒は味方キングの逃げるマスをふさぐ。図11と12は単純な実例で、11は「理想メイト」で終わり、12はやや見慣れない「模範メイト」となる。

図11 理想メイト
447-1966 E. Albert








8/N7/8/3k1K2/1br5/1PP5/8/8 b - -
2手でヘルプメイト (解2つ)

図12 Evening News 1956年10月 A. S. M. Dickins








8/3Pkn2/8/7b/3P4/8/4P3/3K4 b - -
3手でヘルプメイト

 ヘルプメイトは、ピラン法典においてはヘテロドックス・プロブレムの「基本」種と見なされており、この派生種は、ヘルプ・ステイルメイト(HELP-STALEMATE)、ヘルプ・ダブルステイルメイト(HELP-DOUBLESTALEMATE)、ヘルプ強制メイト(HELP-COMPELMATE)(白先で、黒がずっと白に協力し、最終手では、黒にその気がなくても白が自分をメイトするように黒に強制する)等多岐に渡る。中でも、シリーズ・ヘルプメイト(SERIES HELPMATE)では、黒がn手連続で指し(白は指さない)、次に白が黒をメイトできる局面にする。これは、シリーズ・ムーバー(SERIES MOVER) という種のプロブレムに属し、起源は少なくとも中世にまでさかのぼる(付録AのNo.3参照)。T. R. ドーソンが現代に復活させた。このプロブレムで特徴的なのは、ルック等の白ピースの周りを黒キングが味方のピースを楯にしながら周回することである。これは短手数の問題ではまだ成し遂げられていない。図13と14は、両方とも「エクセルシオール(excelsior)」(初期位置 からのポーンの昇格)を用いた好例である。シリーズというアイデアは、シリーズ・メイト(SERIES MATE)、シリーズ・ステイルメイト(SERIES-STALEMATE)、シリーズ・ヘルプ・ステイルメイト(SERIES-HELP-STALEMATE)等多くの関連プロブレムで用いられている。(シリーズ・メイトは図25参照)

図13 Th. Steudelに献呈
H. M. Lommer 1967 オリジナル








7K/3k3p/8/B1P1R3/3P4/2N5/8/8 b - -
22手でシリーズ・ヘルプメイト

図14 Chr. Jonssonに献呈
H. M. Lommer 「北極星(Stella Polaris)」 1967年6月








8/5pK1/8/3k4/8/8/6p1/2R5 b - -
16手でシリーズ・ヘルプメイト


 1週休んだが用語や構成について結局何も進展しなかった。訳しながら模索するしかあるまい。今回のヘルプメイト等のプロブレム形式にはフェアリー駒ほどの問題はないが、compelはさすがに日本語として通りが悪いので「強制」と訳した。
 the Ideal Mateとa Model Mateは、1つだけの(the)理想概念に対して個々の(a)模範実例という意味だろう。冠詞用法の勉強になる(笑。「模範」はやや訳としては強いが「雛形」としても大差ない。

 ヘルプメイトとその派生物は、初めて『チェスの本』で知ったときに驚いたものだ。相手の勝利のために最悪の指し手を続ける究極のマゾヒズム、それに付き合わされる配下の心情はいかほどのものだろう。この考案者とその経緯こそが精神分析の対象となるべきか(笑。
 原文では括弧内略号で引用文献が多数記されているが、ここで略号だけ記しても無意味だし、毎度完全に記すのもたいへんなので、今後HPでのみ対応する。次回分で発表予定だった問題の解答は当該記事のコメント(ハンドル:解答)で記すことにした。
この記事へのコメント
図11 黒先
1 Rc6 Nb5 2 Bc5 c4#. 1 Bd6 Nc6 2 Rc5 Nb4#.
図12 黒先
1 Ne5 dxe5 2 Be8 e4 3 Ke6 dxe8=Q#.
図13 黒先
1〜5 h5〜1=B 6 Bd5 7 Be6 8 Ke7 9 Kf6 10 Bf5 11 Kg5 12 Kf4 13 Be4 14 Ke3 15 Kxd4 16 Bd5 17 Kxc5 18 Kd6 19 Be6 20 Ke7 21 Kf8 22 Bf7 Bb4#.
図14 黒先
1〜5 f5〜1=N 6 Ng3 7 g1=R 8 Rg2 9 Ra2 10 Ne4 11 Nc5 12 Kc6 13 Kb7 14 Ka8 15 Nb7 16 Ra7 Rc8#.
Posted by 解答 at 2007年09月07日 17:14
以前にDawsonの本についてメールした者です。

「チェスの本」といえば、フェアリーチェスの説明の所に
> 「負けるが勝ち」は戦術の可能性が豊富にあり、
> 正統派のチェスよりも多分すぐれていると思うこと
> があります。
とあるのが少し気になりました。
Posted by K at 2007年09月10日 19:36
 申し訳ありません。メールはいつごろでしょうか。登録アドレス以外はすべてスパム扱いにしている状況で気が付きませんでした。件名に「チェス」を含めていただけるとスパムにならない処理にしておきますので、よろしければ再送くださいませ。近々メルアドも変わる予定ですが。

 『チェスの本』はまた読み直そうと思っていますが、30年後の同著者の訳もあれなので、ニュアンスがおかしいところはほとんど訳のせいとにらんでいます。定跡研究で膠着化した現代チェスの危機としてフィッシャランダムが登場したことは否定できないと思いますが。
Posted by 水野優 at 2007年09月11日 17:33
昨晩メールを再送したのですが、届きましたでしょうか?
Posted by K at 2007年09月12日 20:02
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