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2007年08月22日

Vukovic『チェスの攻撃技術』序論 メイトのマスと焦点

メイトのマスと焦点

 メイトのマス(mating square)は、メイトされるときのキングがいるマスであり、メイトの焦点(mating focal-point)とは、至近距離からキングをメイトにし向けている(キング、ナイト、ポーン以外の)ピースがいるマスである。したがって、図3では、1...Ne2後の焦点はe6で、その間近からクイーンがメイトできる。同様に、1...gxf5 2 Bg7 Ke4後は、クイーンがd4からメイトできるのでd4マスが焦点となる。しかし、黒番で 1...Bc3に対する 2 Bg7#等は、ビショップの攻撃が距離を置いていると見なし、「焦点」という用語は使わない。

図3(再掲)
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/1K1Q4/6pB/4kB2/3b1n1P/5p2/8/8 b - -

 メイトにする攻撃を成功させるためには、可能なメイト型を探し、それに見合うメイトの包囲網を準備し、焦点へ戦力を集中させることが必ず必要である。これと関連して多くのケースでは、焦点のクリア(clear the focal-point)が重要となる。これは、焦点になりそうなマスへの相手ピースからの利きをさえぎることである。図4でその一例を示す。

図4
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/p5K1/1p2p3/4kp2/1Q6/2PpbP2/1R2n1B1/q7 w - -

 手番の白は、d4に黒のナイトとビショップが利いてなければ、クイーンがそこでメイトできるのでこのマスが焦点だと正しく判断する。そこで、白は以下のように焦点d4をクリアする。

 1 Rxe2 (ナイトを消す) 1...dxe2 (1...Kd5 2 f4#, 1...Qc1 2 Qd4#, 1...f4 2 Qd4+ Kf5 3 Qf6#) 2 f4+ (黒ビショップのd4への利きをそらせる) 2...Bxf4 3 Qd4#.
 多くの読者は、このようなメイトの攻撃形は見えすいた陳腐なもので扱う必要すらないと言うかもしれない。しかし、私はこの種の単純な知識の強化が有益と考える。現に、この点で多くの誤りが生じているからである。メイト型に関する誤りの例をいくつか挙げる。

 1.攻撃側が、相手のキングをメイトの包囲網から出ることもそれに入ることも阻止できないことに気付かず、それでもメイトにこだわる。こういう攻撃は当然ながら無益で、パペチュアル・チェックにはなってもメイトにはできない。

 2.攻撃側が典型的なメイト型にこだわるあまり、「非典型的」メイトの可能性がある手順を見逃す。

 3.焦点に基づく可能なメイト型はすべて見えているが、キングが動くとすべてが無効になることに気付いていないので、その場合のいかなる新たなメイト型に対しても準備がなされていない。

 4.ある焦点に基づいた攻撃を決心するが、焦点に戦力を利かせることも焦点から相手ピースの利きをクリアすることさえ実現できない。焦点の選択ミスは、後に解説するマスターの対局ですら見られる。

 したがって、メイトの一般的な形や構成を知ることは有益である。とりわけ未熟なプレーヤーには、特定のゲームを吟味して、メイト型に関してミスがあればそれはどこかを指摘することを推奨する。


 focal-pointは、光が集中するように、2個以上の駒の利きが重なる部分である。訳語はそのまま「焦点」とするしかないだろう。clearは迷ったが、下手な訳語よりそのまま「クリア」とする方が、電卓のCボタンを押すようなニュアンスで分かりやすいと判断した。
posted by 水野優 at 14:43| Comment(2) | Vukovic『チェスの攻撃技術』戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後の「誤りの例」箇条書きの1番の訳が何を言っているのか分かり難いと思います。多分、neither...nor が "stop" と "drive" を並列していることが露に訳されていないからだと思います。
つまり、
「Kが逃げる(Kを動かす)のを止めることも、(Kを)mating net に追い込むことも出来ないことに気付かず、攻撃者がそれでもメイトを狙う」と言う感じにすると明解に伝わると思います。
Posted by kshara at 2007年08月22日 18:28
 後で直そうと思って忘れていました(汗。
 さすがに夏休みモードのksharaさんでなくとも気付かれるところですね。HPで対応しておきます。
 数式にたとえると、英語だと(a+b)xのところを日本語だとax+bxと展開しなければならないという感じでしょうか(笑。私はこういうとき、はしょるくせがあるようです。

 今日は朝からPCの調子が悪く、フェアリーの用語訳に難航し、更新できそうにありません(汗。
Posted by 水野優 at 2007年08月23日 15:52
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