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2007年08月21日

エイベ『チェス終盤の手引き』2-11: マイナーピース+2P 対 マイナーピース+P その1

11.マイナーピース+2P 対 マイナーピース+P

 ポーン数が同じ例35〜63のポーン終盤と違い、パスポーンがなくて黒のキングが守っていると通常ドローになる。ビショップとナイトの違いも結果にほとんど影響しない。

 概して、白が勝てるかどうかはパスポーンを持っているかだけにかかっている。パスポーンがもう一つのポーンから3ファイル以上離れているときは、ナイトよりビショップの方が優れている。さらにパスポーンが離れるほど、ビショップの優位が増す。

 ナイトの方が優れたピースになるのは、パスポーンが2ファイルしか離れていないか、敵ポーンの1つか両方がビショップと同色マスに固定されている場合である。後者のケースでは、敵は「不良ビショップ」を持っているか、「弱色コンプレックス(a weak colour complex)」に陥っている。当然ながら、違う色のマスをほとんど支配できないからである。


 140 Taimanov対Spassky(レニングラード、1952)。防御側は、キングでポーンをブロックできないと通常負けるが、本例では巧妙な反撃によってドローにする。

1 Kg6 Nd5 2 Kf7 Kf5
 2...Nxf4 3 Kxf6もドロー。

図140 白番ドロー
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/8/4pp2/7K/4kP2/4n2N/8/8 w - -

3 Ng1 Nxf4 4 Nf3 e5
 4...Ke4には、5 Nd2+ Kd3 6 Nf1 f5 7 Kf6で、Ng3から Nxf5の狙い。キングが後方から、ナイトが本拠地から攻撃するのは、例133,134と全く同じ。
5 Nh4+ Kg5 6 Nf3+ Kf5 7 Nh4+ Kg4
 他に手があるだろうか?
8 Kxf6 e4 9 Nf5.
 ドローが合意された。白のナイトには、センターポーンを周りから防御できる広さが十分ある。


 141 Boleslavsky対Bondarevsky(レニングラード、1941)のボトビニクによる分析。防御側キングが離れすぎているので、白のキングが、ポーンがクイーンになるマスを支配できる。防御側には、白の2ポーンでつけ込める弱色コンプレックスもある。本例では、ナイトがキング側ビショップより強い。

1 Kf5 Ke7 2 Kg6 Kf8 3 Kh7 Kf7 4 g5 Bc3
 4...Bd6 5 h4 Bg3 6 h5 Bf4 7 g6+ Kf6 8 Ne5 狙いは h6.

図141 白番白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/3k2p1/8/4K3/1b4P1/5N1P/8/8 w - -

5 h4 Bb2
 5...g6 (5...Ke6 6 Kg6) 6 Nh2 (7 Ng4から 8 Nh6の狙い) 6...Be1 7 h5.
6 h5 Bc3 7 Nh4 Bd2
 さもないと、白が Nf5から Nxg7.
8 g6+ Kf6 9 Nf5
 マイナーピースの終盤に典型的なサクリファイス。
9...Kxf5 10 Kxg7 Kg5 11 Kh7
 11 h6?には、11...Kh5 12 h7 Bc3+ 13 Kf7 Kh6でブロック。
11...Bc3 12 h6.
 そして白がクイーンを作る。


 「弱色コンプレックス」(a weak colour complex)とは歌のタイトルのようだが、頻出語ではないし、complexの意味が微妙なのでカナにしておいた。しかし、一般的な「コンプレック ス」はまず劣等感を意味するので、自然科学用語の訳よりは分かりやすいだろう。意味は文脈で分かってください(汗。
 141の「白の2ポーン」は原文がWhite's two piecesだが、ピースは1つしかないのでポーンの間違いとしか思えない。内容的にも2つのポーンが黒の弱色コンプレックスをとがめているようだし。
posted by 水野優 at 13:44| Comment(2) | Euwe『チェス終盤の手引き』終盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
残暑お見舞い申し上げます。

「戎棋夷説」で「オイラーといえばナイトツアーじゃないか。」とあった。何年か前に読んだ「オイラーの伝記」(後述)にたしかにオイラーがナイトツアーについて研究した記録が出ていた。「オイラーがゴールドバッハに宛てた書簡で、フィリドールが話題になって」いるのもこの本である。以下紹介する。しっかし「オイラーといえばナイトツアー」は常識なの?

オイラー―その生涯と業績 エーミール・アルフレート フェルマン (著), Emil Alfred Fellmann (原著), 山本 敦之 (翻訳)
Posted by kathmanz at 2007年08月22日 01:54
 例会も暑いんでしょうね。
 数学者に限定すればオイラーということではないでしょうか。棋士にも数学者は多いし、私の訳にもあるメイソンも入門書の中でわざわざナイトツアーに触れていたそうですが(後の改訂でカット)。
 数学への関心もあるので機会があれば読んでみます。
Posted by 水野優 at 2007年08月22日 14:49
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