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2007年07月28日

Holzhey『Giorgio De Chirico』書評

 初めて画集を紹介しよう。Magdalena Holzhey(解説)の『Giorgio De Chirico』(96ページ、 '05年、Taschen)である。タッシェンの翻訳版画家別シリーズとは別のラインアップかもしれない。少なくとも本書に関しては翻訳版は出ていないようだ。
 ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)である。磯野貴理子(現貴理)や玖保キリコの方が有名かもしれないが、私もそれほど詳しくは知らなかった。ギリシャ生まれでイタリアへ移住した長命な画家。シュルレアリスムの先駆的存在で、その作風は「形而上絵画」とも呼ばれる。

目次
アルゴ船の出帆
現代人の孤独
日常物の形而上学
「Pictor classicus sum」(意味深で訳せない(汗))
「彫像、家具、諸々」
「私は常に描きたいように描いてきた」
年表
文献選集

 久し振りに対訳しよう。「アルゴ船の出帆」の冒頭から第3段落(p.7):
 De Chiroco paints recognizable objects, but he combines them in such a way that familiar and everyday things - a girl bowling a hoop, an open carriage, a train, a glove, a tower - become strange, secretive, apparently meaningless objects. In an early text he wrote: "To become truly immortal, a work of art must escape all human limits: logic and common sense will only interfere. But once these barriers are broken, it will enter the regions of childhood vision and dream." De Chirico was the first artist of the modern era to recognize and translate the ambiguity of the visible world. With his Pittura Metafisica he created what the Surrealist writer André Breton would later call the "modern myth": pictures of a new melancholy, which lend pictorial expression to the loss of meaning and sense of alienation experienced by modern man.
 デ・キリコの描くもの自体は見分けがつくが、輪を転がす少女、無害客車、列車、手袋、塔といった見慣れた日常物が、その組合せ方によって、秘めやかで不 思議な一見無意味なものになる。初期の彼は述べている。「真に不滅たるには、芸術作品は人間の限界を超えねばならぬ。論理や常識は邪魔になるだけである。しかし、ひとたびこの障壁が取り壊されれば、子供の頃の視野と夢の領域へと入り込める」。デ・キリコは、視覚世界の曖昧さを認識し描き出した最初の現代画家である。彼の生み出した〈形而上絵画〉を、シュルレアリスム作家アンドレ・ブルトンは後に「現代の神話」と呼んでいる。それは、新たな憂鬱の絵画、意味の喪失と現代人の疎外体験感覚を絵画的に表現したものである。

 前半はシュルレアリスムの基本定義に等しいが、彼の素材は日常的といってもその舞台設定にギリシャ的な神話性を感じる。荒涼とした時間の止まった空間は、まさに現代のパルテノン神殿を連想させる。
 表紙のおそらく最も有名な作品「街の神秘と憂鬱」は、たしかルパン三世の映画「ルパンVS複製人間」でルパンと銭形が追いかけっこをする背景に使われたはずだ。たびたび出てくるノッペラ坊のイメージも、プロレス漫画の 怪人〜全身タイツのプロタイプではないか?(笑。

Giorgio De Chirico: 1888-1978: the Modern Myth (Taschen Basic Art Series)
Magdalena Holzhey
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posted by 水野優 at 13:18| Comment(2) | 英語/翻訳/文芸/科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
キリコキュービィー・・・。こんばんわ、郷田ほずみです
(これはわからんだろうなぁ)
一部のオモロイモノを除いてはシュルリアリスムと言うのは
難解ですわ。
Posted by Rina Katase at 2007年07月30日 01:10
 分かりませんなあ。怪物ランドのことを聞いたのもスネークマンショーの話のときだったような気がするけど。

 私も音楽に比べると美術はミーハー寄りでして、それでもただきれいな絵とかは全然興味がなく、シュルレアリスムでもダリのような主張の強すぎるのもだめで、いわゆる癒し系ですかねえ。
 人間が生まれて言語(シニフィアン)の世界へ身を投じて以来、真の自己や世界をありのままに見ることを希求し続ける。そういうところで芸術家と科学者の探求は一致しているような気がします。
Posted by 水野優 at 2007年07月30日 15:21
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