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2007年07月13日

ファイン『チェス棋士の心理学』5 要約:チェスの理論

5 要約:チェスの理論

 チェスは二人の男による競技なので、チェス自体がとりわけ攻撃性を取り巻く葛藤に取って代わられやすい。他の本能的衝動は、主として肛門男根的成長段階期に関係している。通常、それは思春期前か思春期に学習され、成熟を目指す自我の一部を形成する。

 チェスの記号化は、これらの葛藤を説明するのに打って付けである。その中心はキングという駒であり、極めて重要でありながら駒としては弱い二面性から以下の3つの意味が派生する。キングが表象するものは、男根期の少年のペニス、男性の自己イメージ、少年サイズに切り詰められた父親である。キングは、駒の機能的にも心理学的にも特異で、チェスに独特の風味を醸し出している。

 チェス棋士の自我は、様々な知的防御を行使する。それは、思考が行動に取って代わるといった単純なものというより、思考と行動間の関係変化である。知的能力自体はスキル獲得のために必要とされるが、自我はこの知的能力を十分に活用できねばならない。攻撃性は深く抑制される。個人的な戦闘状況とキングの象徴化を通して、かなりの自己愛的満足感を得ることができる。

 多くの点で、チェス棋士の自我は明白な同性愛者のそれとは正反対である。チェス棋士は不安に対する忍耐力が顕著で、原始的目標への欲求から自己を解き放し、自己が真の実現へ向かうように衝動エネルギーを無力化できる。自我の弱さは、主として自己愛要因の増大に原因がある。

 したがって、チェスは本能と自我の双方に喜びをもたらす。この度合いは様々で、これがチェス棋士に型にはまった「タイプ」がない理由である。

 旧世紀からの9人の世界チャンピオンの考察から、2つの人格グループ、「ヒーロー」と「ノンヒーロー」の存在が明らかとなった。ヒーローたちはチェスを自己の全能空想を満足させるために利用し、やがて程度の差こそあれ退行の症状を示す。しかし、実際の精神病の診断によれば、退行は極端なものではない。

 ノンヒーローたちは、チェスを多くの知的作業の一つと見なしている。チェス棋士は、様々な経歴を持つとはいえ、主に知的分野に従事している場合が多い。全体的に、ノンヒーローのチェスマスターたちは、別のジャンルでも同様に高い業績を修めている。彼らは心理学的にきわめて健全で、ヒーロー組のような精神障害の症状を呈さない。

 平均的なプレーヤーも、人格においてはチャンピオンたちと同様と考えられる。彼らは、主として科学的分野に従事するのだろう。チェスが壮大な空想を満足させるために利用されている場合や、単に知的興味のはけ口の一つになっている場合もあるだろう。それらの違いは、チェスによって平均的な知的活動よりも本能的な満足感を得られるかどうかによる。


 まとめが「チェスの理論」というのも変だが、あくまで精神分析的理論である。この第2段落はもう2年ほども前に原書のレビューをしたときに紹介している。あまりおかしな訳でなくてほっとした。最初からちゃんと読まずに本章だけ訳すことに比べれば、徐々にここまでたどりついたのはいい勉強になったと思う。
 次回はいよいよ最終回。↓画像が復活してる。

Psychology of the Chess Player
Reuben Fine
Psychology of the Chess Player
Dover Publications Inc. 1956-12
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