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2007年07月02日

ファイン『定跡の背後にある考え方』4 dポーンの定跡 クイーンズ・ギャンビットその8

 白の4手目の変化手(1 d4 d5 2 c4 e6 3 Nc3 Nf6後の 4 Bg5に代わる)の中で特に取り上げる必要があるのは 4 Nf3だけである。4 Bf4や 4 e3等の他の手に対しては、黒は普通に ...c5とすれば序盤の問題は何もなくなる。

図27
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
クイーンズ・ギャンビット・ディクラインドの 4 Nf3後の局面

 そこで図27となる。もちろん、他の変化へ移行するのは極めてたやすいが、黒が望めばいくつかの魅惑的な独自の変化へ引き込める。

 最も分かり切った応手は 4...c5である。これがタラッシュ・ディフェンスだという誤解が広まっている。たしかにタラッシュに移行できるが、この場合、黒は孤立ポーンに抱え込まなくてもいいという重要な違いがある。5 e3 (4...c5後に) 等のありきたりな応手では、5...Nc6によって完全な対称形にされ、早々とドロー気味になってしまう。代わりに、白には優位を目指せる2つの方法がある。5 cxd5でセンターでの優位を目指すか、5 Bg5でセンターの緊張を維持しつつ、できれば黒に不都合になる明確化を強制するかである。

 5 cxd5 Nxd5! (5...exd5 6 g3はルービンシュタインがとがめたタラッシュ・ディフェンスの変化になる) 後は、6 e4が指摘されている。強制手の連続(黒陣の方が窮屈だったので、交換できるのはありがたい)が続く。6...Nxc3 7 bxc3 cxd4 8 cxd4 Bb4+ 9 Bd2 Bxd2+ 10 Qxd2 0-0. 白のセンターポーンは良好だが、交換によって黒陣も十分に解放された。ポーン形がこの後のプランを物語る。より開放的な陣形の白は、キング側を攻撃するだろう。クイーン側でポーン数が多い黒は、終盤戦を目指すだろうが、キング側にひそむ危険を忘れてはいけない。典型的な手順は、11 Bc4 Nc6 12 0-0 b6 13 Rfd1 Bb7 14 Qf4 Rc8 (14...Qf6!) 15 d5 exd5 16 Bxd5 Qe7 17 Ng5! Ne5! 18 Bxb7 Ng6 ほぼ互角。白には、黒のクイーン側を弱めるためにビショップをb5へ繰り出す興味深い作戦がある。これは、黒が誤ってキング側ビショップをすぐに交換しなかった場合や、黒からの ...a6, Ba4 ...b5, Bc2に対して早期に a4と応じた場合に限ればきわめて強力だが、黒が普通に ...b6等と続けると功を奏さない。他には、黒陣を窮屈なままにする e5!が有効な作戦となることが多い。センターのd5マスを黒に譲る代わりに、強力な攻撃となりうる。例えば、上記の続きで、11 e5 (11 Bc4の代わり) 11...Nd7? (11...Nc6 12 Bd3 Qa5で互角にするのが正着) 12 Bd3 Nb6 13 0-0 Nd5 14 Ng5 g6 15 Ne4 黒がおそらく抵抗できない強い圧力。

 白の他の候補は、さらなる圧力をかける (4...c5後の) 5 Bg5である。5...cxd4が強制的なので、6 Nxd4なら、黒は優れたセンターポーンが残るが展開で劣る(極めて複雑な変化もある)。6 Qxd4なら、白のセンターポーンは良くなるが、黒陣を全く自由にさせてしまう。模範的な手順は、6 Qxd4 Be7 (6...Nc6 7 Bxf6!は白優勢) 7 cxd4 exd5 8 e3 Nc6 9 Bb5! 0-0 10 Qa4 Bd7 ほぼ互角。

 図27からの黒のもう一つの冒険は、4...Bb4 ラゴズィン・ヴァリエーションで、マンハッタン・ヴァリエーションの主たる欠点をなくした反撃である。つまり、普通に展開する手なので、白の有利につながらない。5 e3 c5なら、ニムツォインディアン・ディフェンスの黒が有利な変化へ移行する。6 Bd3 dxc4! 7 Bxc4 0-0 8 0-0 Nc6 黒には十分すぎる(ニムツォインディアン・ディフェンス参照)。5 cxd5 exd5でも白は好転しない。6 Bg5 h6 7 Bxf6 Qxf6... 黒のクイーン側ビショップが自由に動ける場合は、エクスチェンジ・ヴァリエーションの威力がほとんど失われることを思い起こそう。黒が、白の強力なキング側ビショップと交換できるからである。したがって、4...Bb4を白がとがめる独自の試みは、5 Qa4+ Nc6 6 e3 (6 Ne5 Bd7) 6...0-0 7 Bd2. 興味深い異例の局面になった。黒は、...e5で状況を明確にするためにセンターをあきらめる。7...a6! 8 Qc2 dxc4 9 Bxc4 Bd6! 10 a3 e5! 十分な反撃。

 黒の他の候補手には、これといった新たな考え方はほとんどない。4...Nbd7に は、5 cxd5 exd5 6 Bf4!から e3, Bd3, 0-0, h3, Ne5, Bh2, f4で白が攻撃する狙いがあり、やや風変わりで黒はあまり良くない。4...Ne4は、ダッチ・ディフェンスやストーンウォールに似た局面になる。

 ここまでの10〜15ページ(訳注:クイーンズ・ギャンビット・ディクラインドの大部分)では、手順前後による定跡移行の可能性がひんぱんにあることに気付かれたと思う。考え方と基本ポーン形に集中すれば、そういう不測の事態もより良く切り抜けられ、たやすく習熟できるようになるだろう。


 つい「明確化」などとしてしまうclarificationも用語に準じるくらい訳に気を遣う言葉である。単純化とも違い、一見形勢不明の状況を評価しやすい局面にし向けるくらいの意味だろう。「明確化」が残っているのは、うまく訳せなかった証拠だ(汗。

 昨日「ETV特集」で音楽評論家吉田秀和の特集があった。未だ健在で、グールドについても触れてくれた。吉田が原稿を手書き、楽譜もコピーせず筆写するのは分かるが、インタビュアーの若手芥川作家も原稿を手書きするのに驚いた。携帯小説よりは書きやすいと思うが(笑。

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