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2007年06月29日

ファイン『チェス棋士の心理学』4 チェス棋士の精神病 その1

4 チェス棋士の精神病

 本章では、今までに伝えられて興味を引くチェス棋士の精神病の多くのケースを振り返り、それらが、通常は抑圧されている葛藤を明らかにするかどうかを検討しよう。

 モーフィーのケースは考察した。シュタイニッツの無害な妄想についてもすでに触れた。

 何年も前に私は、自身が名人の息子でもあるチェスプレーヤーが早期に発狂するのを見たことがある。彼は22歳の職業画家志望だったが、家族は絵を描くことに強く反対し、自活を強要していた。私が会った1週間は、ずっと猫の顔ばかり描いていた。

 そういういざこざの間に、彼は商船の海員として旅に出ることを決意する。そして、帰還した土曜日に友人とレストランへ行った。彼は突然友人の手をつかんで言う。「私は神だ」。この感覚が翌日まで続き、その後は、もっぱらチェスに関する深刻な不安感覚とといくつかの妄想的な考えに取って代わられた。数日後に(1947年のこと)彼は以下の話をした。

 「アメリカとロシアは戦争に向かっています。ロシアのほんとうの支配者は、スターリンではなくボトビニクです。ボトビニクは技師で私の兄も技師です(彼には実際に技師で8歳年長の兄がいた。−著者)。私はボトビニクを倒しにロシアへ行きます。そうして、アメリカのために世界を征服するのです。私は、父の黒番定跡を完成させました。この定跡を黒で指すかぎり、ボトビニクは私に勝てません。白番では、私は難なく勝てるでしょう」

 チェスに関するこの妄想のメカニズムはとても分かりやすい。自分を神とする妄想としてまず幼稚な全能主義が現れ、それがチェス盤上へと移行する。チェスは、幼稚な欲望を満足させるための道具にされたのである。ボトビニクは、チェスマスターと技師の両面で、「父−兄」葛藤の対象には打って付けだった。ボトビニクを倒すことは、「父−兄」というライバルの殺人を意味する。彼が描き続けた猫の顔は、おそらく母親の象徴だろう。

 この若者は、独特の方法で駒から性的満足を得てもいる。「キングとクイーンが盤上で並んでいられるのは、2つのビショップ(僧正)がその両脇にいて二人の婚姻を公式に認可しているからに過ぎない」と彼は言う。しかし、その公式認可があっても、キングとクイーンは互いに寄り添っているわけにはいかず、序盤からできるだけ早期に離れねばならない。

 この強烈な発病後、若者は帰郷し、しばらくは体調を維持した。


 この若者の父親が気になるが、an expertとしか書かれていないので名のある人ではないのだろう。チェスで食っているレベルなら息子に画家になるなとは言いづらいはずだ(笑。次回は後半、トーレ、ニムツォヴィッチ、ルービンシュタイン登場。

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