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2007年06月21日

ファイン『チェス棋士の心理学』3 世界チャンピオン まとめ2

 理論的分析が示したこれら4人の極端なまでに露呈された攻撃性と自己愛の人格特性は、対局によって容易にもたらされたものだろう。その根底では、4人ともが自らを全能だと空想していた。ある程度、自らをチェス盤上のキングと文字通り同一視していたのである。シュタイニッツは、ラスカーに敗北してからさらなる全能空想状態のために退行した。他の3人は、連勝街道の後で退行が起きている。

 4人とも、自らの業績を成し遂げるためには懸命な努力を必要とした。この壮大な野心は、単なる白昼夢ごときによっては達成され得ない。彼らの成功は、長期に渡る慎重な準備期間があって初めて実現したのである。このためには強靱な自我が必要とされるので、再び理論的分析が適合する。4人の中でシュタイニッツとカパブランカは、慣例基準から考えてまだまともな部類に思われる。さらなる洗練した分析によらねば、彼らを悩ませた精神的葛藤を明らかにはできないだろう。

 4人とも、あまり使う気がなかったチェス以外の才能にも恵まれた。特に顕著なのは語学の才能である。アリョーヒン、カパブランカ、モーフィーは、皆流ちょうに数か国語を話し、シュタイニッツは、プラハ生まれにもかかわらず英詩に精通した。

 彼らの人生でチェスが果たした役割は極めて明らかである。チェスは、彼らの全能空想を満足させるための媒体(vehicle)の役割を果たした。時が経つにつれ、元々自我の支配下にあったこの空想は、徐々に本能に支配されるようになり、人格の大部分を満たすようになったのである。

 もう一つのグループであるノンヒーロー組は、ほぼすべての点で全く逆の傾向を示す。彼らには、神話が−作ろうとすれば簡単にできただろうに−生まれなかった。スタントンとアンデルセンは、世界チャンピオンの称号を主張できたが、他の業績に満足していたためにそうしなかった。ラスカーの存命中に、彼への批評でお決まりだったのは、ラスカーの勝利は運が良かったからとか、対戦相手の目にタバコの煙を吹きかけたからというものだった。ラスカーは、こういうおとぎ話をわざわざ相手にしなかった。

 アンデルセンを除くノンヒーロー組は、チェス以外の分野でも名声に値する業績を残した。ラスカー、エイベ、ボトビニクは、アメリカの大学教授と同等の地位まで上り詰めたし、スタントンの文学的名声はすでに言及した。

 ノンヒーロー組にとって−またヒーロー組と対照的に−チェスは、彼らが様々な度合いで能力を発揮し合う知的活動の一つに過ぎない。表面的な見方を越えられれば、スタントンとラスカーの中で、チェスが−とりわけ攻撃性の−本能的はけ口になっていることを理解できるだろう。それは他の知的活動領域では見られないことである。

 第三の疑問、人格と棋風の間にある関連についてだが、あらゆるケースで人生経験と盤上行為の間にはある種明白な関連性が見られうる。しかし、その関連性を直ちに定式に還元することはできない。ある棋士にとってチェスの棋風は人格の直接的表現(攻撃的人格者の攻撃的棋風)でも、他のある棋士にとっては全く逆(攻撃的人格者の防御的棋風)の場合もあるからである。それ以外のはるかに複雑な関連性を持った棋士もいる。


 今回で長い第3章は終わり。第4章はおそらく2回分になるが、世界チャンピオン以外の棋士の精神病との関連に触れる。

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