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2007年05月26日

小川義男編著『あらすじで読む世界の名著No.1〜3』書評

 小川義男編著『あらすじで読む世界の名著 No.1〜3 世界文学の名作が2時間でわかる!』である。著者は狭山市の高校校長で、NTV『世界一受けたい授業』に本書をネタに出たのを見たことがある。『〜日本の名著』No.1〜3の好評を受けて出たシリーズである。
 amazonレビューでは、後から出た類似書には明らかに質の悪いものもあるらしいが、本シリーズは同校の主に国語と英語教諭が担当(印税は学校へ?)しているせいか、大きな欠点は見られない。それでも親族に「君」と呼びかける等の滑稽さは残っているのは、元にした翻訳(巻末に記載)が概ね古いからだろう。

 私のフィクション嫌いは改めて繰り返さないが、そもそも下記ほどしか読んだことがない私には、こういう企画はありがたい(汗。こんな形で読んでも文学の神髄には触れられないという指摘はあるだろうし、そういう思想こそがこういう企画の実現を妨げてきたようにも思う。
 編者が述べるように、これをきっかけに気に入った作品を全訳原書へとチャレンジして行けばいいのであり、本書でしか触れずじまいになったとしても粗筋さえ知らずに終わるよりは有意義な人生を過ごせるだろう。

目次(括弧内は私が過去に触れた程度。◎=訳したい)
No.1
『誰がために鐘は鳴る』ヘミングウェー
『動物農場』オーウェル
『風と共に去りぬ』ミッチェル
『怒りの葡萄』スタインベック
『阿Q正伝』魯迅
『車輪の下』ヘッセ◎
『ジャン・クリストフ』ロマン・ロラン
『桜の園』チェーホフ
『ドリアン・グレイの肖像』ワイルド(抄訳)◎
『女の一生』モーパッサン
『アンナ・カレーニナ』トルストイ
『罪と罰』ドストエフスキー
『レ・ミゼラブル』ユゴー(映画)
『はつ恋』ツルゲーネフ
『嵐が丘』E・ブロンテ◎
『アッシャー家の崩壊』ポー
『若きウェルテルの悩み』ゲーテ(粗筋)
『リヤ王』シェークスピア(粗筋、原書(シェイクスピア物語))
『ドン・キホーテ』セルバンテス(粗筋)
『ガリア戦記』カエサル

 1作品につき5〜7ページのペースは厳守されており、『風と共に去りぬ』では登場人物を把握しきれないうちに終わってしまう(笑。特にロシア文学は似た ような長い名前が混乱してなじめないが、粗筋で読む場合はこの欠点をかえって助長するかもしれない。

No.2
『異邦人』カミュ
『武器よさらば』ヘミングウェー
『魔の山』トーマス・マン
『デミアン』ヘッセ
『変身』カフカ(冒頭)
『狭き門』ジード
『どん底』ゴーリキー
『居酒屋』ゾラ
『戦争と平和』トルストイ
『アンクル・トムの小屋』ストー夫人(抄訳)◎
『緋文字』ホーソーン
『ジェーン・エア』C・ブロンテ◎
『三銃士』デュマ(抄訳)
『検察官』ゴーゴリ
『ゴリオ爺さん』バルザック
『赤と黒』スタンダール
『ファウスト』ゲーテ(粗筋)
『失楽園』ミルトン
『神曲』ダンテ
『水滸伝』施耐庵
『マクベス』シェークスピア(歌劇、粗筋)
『三国志演義』羅貫中

 p.53『どん底』内で(おそらく)チェスを指すシーンが出てくるので以下に引用する。
「帽子屋と巡査のメドヴェージェフは将棋を指している」
 1902年の作品だが、ロシア革命前でも貧民層が指すほどチェスは盛んだったのだろうか。粗筋で削られなかったくらいだから、原文(全訳)にはもう少し具体的な描写があるかもしれない。

No.3
『赤い子馬』スタインベック
『飛ぶ教室』ケストナー◎
『森は生きている』マルシャーク
『O・ヘンリ短編集』O・ヘンリ(一部訳)◎
『イワンのばか』トルストイ
『にんじん』ルナール
『小公女』バーネット◎
『十五少年漂流記』ヴェルヌ(抄訳)
『幸福な王子』ワイルド(演劇、原書)◎
『クオレ』アミーチス
『宝島』スティーブンソン(訳)
『人形の家』イプセン
『家なき子』マロ(改作TVドラマ)
『トム・ソーヤーの冒険』マーク・トウェイン(アニメ)
『若草物語』オールコット(粗筋)◎
『白鯨』メルヴィル(映画)
『不思議の国のアリス』キャロル(原書、映画)
『クリスマス・カロル』ディケンズ(映画)
『モンテ・クリスト伯』デュマ
『青い花』ノヴァーリス
『ガリヴァー旅行記』スウィフト(粗筋)
『ヴェニスの商人』シェークスピア(抄訳、原書(シェイクスピア物語))

 O・ヘンリーが粗筋で読むとだめだった。元々短編だから、さらにはしょることでどんでん返しの味わいが損なわれるのだろう。

 特に引かれたのは、ドイツ文学に顕著な自らの信念に人生を捧げる作品と、フランス風メロドラマとはちと違うイギリスのブロンテ姉妹の幻想的なラブロマンスである。ロマン・ロランは期待ほどではなかった。今後どれだけ訳せるかな。

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posted by 水野優 at 14:12| Comment(2) | 英語/翻訳/文芸/科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
学校ぐるみか(ぉ)
全本編を山に籠もって読みたいものです。
Posted by 片瀬理奈 at 2007年05月26日 21:05
 着ぐるみか(べた。
 読むなら訳す、読まないなら粗筋だけ(両極端。
Posted by 水野優 at 2007年05月26日 23:26
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