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2007年05月24日

ファイン『チェス棋士の心理学』3 世界チャンピオン アリョーヒンその2

 1935年、アリョーヒンは精神異常が災いし、オランダ人、マックス・エイベ博士に世界チャンピオンを奪われる。1937年に奪還したとはいえ、当時の若い世代の多くがアリョーヒンと同等かそれ以上のレベルになっていたことは明らかである。

 第二次大戦中、アリョーヒンはナチスの協力者になった。『アーリアン(Aryan: 非ユダヤ系白人)』に執筆した一連の記事で、彼はユダヤ人がチェスをできないことを「証明」し、ゲームの純粋さを汚していると述べている。棋士仲間にはユダヤ人が多かったので、戦後アリョーヒンは閉め出された。ボトビニクは例外で、1946年にマッチを挑み、ロンドンでの開催が予定される。しかし、マッチの直前にアリョーヒンはリスボンで心臓発作のために亡くなってしまう。

 戦時中のアリョーヒンはフランス、ビシーのサナトリウムにしばらく隔離されていたと伝えられているが、その詳細を得ることはできなかった。

 アリョーヒンの女性関係は極めて複雑である。彼は5回結婚している。最後の2人はかなり年上で、年齢差は30歳と20歳である。彼は若い頃に性的不能になったと言われており、最後の妻に対してはあからさまにサディスティックだった。

 後年のアリョーヒンには他の奇行も見られる。重度の酒びたりだった。他人を盤上のポーンのごとく扱う。メキシコで40面の公開同時対局の予定が組まれていたとき、政治的高官が遅れてやってきて41面に追加された。アリョーヒンはその盤をわざとひっくり返したのである。泥酔して公開対局に現れたときには床に小便をし始め、対局は中止となった。1935年のエイベとのマッチのときは、対局前に酔っぱらって草むらで寝そべっているところを発見された。

 カパブランカと違い、アリョーヒンはチェスを愛した。頻繁に対局し、対局しないときは研究に長時間を費やした。彼は、旅行中でも日に4時間はチェス盤に向かうと語っている。

 アリョーヒンの場合にも、男根自己愛的要素が強く見て取れる。彼にとってのチェスは、基本的に攻撃兵器、他の方法では勝てないライバルを打ち負かす手段だった。カパブランカと比べると、2人のわずかな違いが興味を引く。アリョーヒンは母親にチェスを教わり、カパブランカは父親からである。したがって、アリョーヒンはチェスを母親に勝つためのものとして続けた(母親ほどの年の最後の妻とベッドでチェスを指したことまで語っている)。カパブランカは母親から距離を置くものとしてチェスを続けたので、飽きてしまったのである。

 アリョーヒンの棋風は分かりやすい。彼は驚異的な攻撃の名人だった。自身も史上最高の攻撃的棋士と自称することを好んだ。この攻撃精神が表すものは、父親へのサディスティックな衝動の昇華に他ならない。男をいったん見下すと、打ちのめそうとした。カパブランカに対してチェス盤上で象徴的に行ったことを実生活でも試みたのである。

 同時に、とりわけ晩年まで、アリョーヒンは防御技術に顕著な弱点を持っていた。理由は心理的に明白である。彼は対戦相手に自身のサディスティックな衝動を投影したので、負わせようとしていた壊滅を自ら被ることを恐れたのである。


 アリョーヒンがレティを倒した有名なゲームでは、このおっさん何手先まで読んでるんだと驚嘆したものだが、酒飲みの小便垂れだったか(笑。しかし、すかしたカパよりこういう求道的な人の方が好き。真似するとドツボにはまるが(汗。
 次回はエイベ。

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この記事へのコメント
アリョーヒンってそんなに受けが弱かったでしたか。考えてもみなかった。
面白すぎますが、この本、ファインは自分を分析してますか?
Posted by maro_chronicon at 2007年05月24日 22:35
こんにちは。
サイトを拝見しましたよ♪
チェス書のレビューが秀逸ですね。
いろいろ勉強になりますです。

蒲田にチェスのできるカフェがあるので、もし近くにいらっしゃる機会があれば、楽しまれてみて下さい(私もたまに指して、チェスの輪をじみ〜に広めています)。店員さんの半分くらいはチェスができるみたいです。
神戸のチェスクラブの方も、過日見えたようです。
amusement cafe なので、なかなか面白いですよ^^。

ではでは。
Posted by Nipる。 at 2007年05月25日 06:17
maroさん:
 敗局をあまり見てないので何とも(汗。受けきって勝ったのは少なそうですが。
 ファイン自身には触れていないようです。エイベから当時の存命者なので歯切れが悪くなるようでずるいし(笑。

Nipる。さん:
 初めまして。ありがとうございます。
 私は松戸でして、なかなか東京へ出る機会すらありません(汗。JCA会員ではないので気軽にさせるところがあればいいとは思います。もう峠はすっかり過ぎてしまったので。
 機会があれば伺います〜。
Posted by 水野優 at 2007年05月25日 11:58
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