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2007年04月13日

ホーキング著/佐藤訳『ホーキング、未来を語る』

 スティーヴン・ホーキング著、佐藤勝彦訳『ホーキング、未来を語る Stephen Hawking  The Universe in a Nutshell』(239ページ、'01年12月、アーティストハウス/角川書店)を読んだ。ホーキング本は2冊目で、新しいものから順にたどっている。
 各章には以下のように長い副題が付いている。著者によると第1,2章がその後の根幹となるので、3章以降は好きなところから読んでもいい。だから1,2章の凝縮した説明がちんぷんかんぷんなら、『ホーキング、宇宙のすべてを語る』を先に読む必要がある。


目次(括弧内は私の補足、用語等)

序文

第1章 相対論について
 アインシュタインはいかに二十世紀物理学の二本の柱である相対論と量子論の基礎を造ったのでしょうか?
 (アインシュタインは量子論にも貢献しながら、その不確定性を認めなかった)

第2章 時間の形
 アインシュタインの一般相対論は時間に対して深遠な概念をあたえています。相対論と量子論はどのように調和させることができるのでしょうか?
 (虚時間(!)が難しい)

第3章 クルミの殻の中の宇宙
 宇宙にはいくつもの歴史があり、そのひとつひとつがごく小さなクルミにより決まっているのです。
 (やはり虚時間が難解。人間原理)

第4章 未来を予測する
 ブラックホール内で情報が失われると、私たちの未来を予測する能力はどのように弱められるのでしょうか?
 (事象の地平面。ホーキングが「スタートレック Next Generation」に出演した話)

第5章 過去を守る
 時間旅行は可能なのでしょうか? 高度な文明では、過去に戻って歴史を変えることができるのでしょうか?
 (宇宙ひも。時間ループ。時間旅行の希望を残すユーモアで締めくくる)

第6章 私たちの未来は?
 私たちの未来は《スタートレック》に描かれているようになるのでしょうか? 生物学的生命や電子的声明は、今後どのようにその複雑性を発達させていくのでしょう?
 (また「スタートレック」出演話。DNA等の話にそれる。易しい章)

第7章 ブレーン新世界
 私たちはブレーンの中に住んでいるのでしょうか、それともただのホログラムにすぎないのでしょうか?

用語集
推薦文献
訳者あとがき


 本書の原題を直訳すると「クルミの中の宇宙」だが、これは『ハムレット』 の台詞に由来し、「井の中の蛙大海を知らず」のように我々の住む宇宙をちっぽけなクルミの中にたとえている。7章の最後では同じくシェイクスピアの『テンペスト』からbraveにbraneをかけて見事に締めくくる。
 「訳者あとがき」によると、下訳はまた長男だが、シェイクスピアの部分は最新の小田島訳を参考にしたそうで、ここがいちばん訳すのがおもしろかったそうだから、たまに親父ギャグの入るホーキングの語り口をもってしても物理学の翻訳は制約が大きいらしい。

 ホーキングの主要三作は古い順に『ホーキング、宇宙を語る(A Brief History of Time)』、本書、『ホーキング、宇宙のすべてを語る(A Briefer History of Time)』だが、最初のは未読(内容も古くなったし読まないだろう)とはいえ、徐々に内容は易しくなるようだ。
 本書は、読者の要望や著者の反省によってカラー図や写真が多く入れられた。しかし、文章に関しては訳者も新しい本ほどうまくなっているので、この時点では著者、訳者、読者(私)の誰のせいか不明だが、分かりにくい部分が散見される。

 『〜宇宙のすべてを語る』にはない第6章DNAの話は印象的だ。人間は文化的進歩で生物的進化をはるかに追い抜き、今やDNAの直接操作で進化を加速しかけているというくだりが興味深い。虚時間とブレーンという時空に関するそれぞれの概念が難しいので、もう少し他の和書を読んでみよう。
ホーキング、未来を語る
479733634X スティーヴン・ホーキング 佐藤 勝彦

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おすすめ平均star
star文系にはちとむずかしい
star宇宙ひもの解説が特に良い
starホーキング博士の約5年前(2001年)の予言を今楽しんでみましょう

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posted by 水野優 at 15:23| Comment(3) | 英語/翻訳/文芸/科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
予備知識不足で消化不良気味ですがホーキングを初めて読みました。インスパイアされる要素は大きいですね。本人は好きなようですがスタトレのようにはならないだろうという冷めた視点もいいです。
Posted by 片瀬理奈 at 2007年04月14日 11:24
 ここではお初です(笑。
 やはり『〜宇宙のすべてを語る』から読む方が良いようです。ホーキング自身も徐々に神に言及したりと変わってきています。
 世界一流の学者が一般向けの本に時間を割いてくれるのはありがたいですが、存命中に量子重力統一理論を見つけるのに専念してほしい気もします。
Posted by 水野優 at 2007年04月14日 17:17
要は石っころ同志が衝突してビッグバンが起こって全てがあるのです(え) >統一量子論
Posted by 片瀬理奈 at 2007年04月15日 18:23
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