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2007年03月29日

ファイン『定跡の背後にある考え方』3 eポーンの定跡 シシリアン・ディフェンスその2

 主戦型は2つあり、黒がキング側ビショップをe7へ進める(通常、スケフェニンヘン・ヴァリエーションになる。この変化が最初に有名になった大会が1923年に開かれたオランダの小さな海浜リゾート地にちなむ)かg7へ進める(ドラゴン・ヴァリエーション)かによる。スケフェニンヘンの方がやや複雑だが活力では劣る。

 スケフェニンヘンは通常、2 Nf3 e6 3 d4 cxd4 4 Nxd4 Nf6 5 Nc3と続く。手順は絶対ではないが、黒は、白の c4を防ぐために先にナイトをc3へ進めさせねばならない。この手順はよく前後が入れ替わるのでまごつくし、混乱さえするが、考え方に慣れ親しんでしまえば霧が晴れるように明らかとなる。

 黒の目標は、お分かりのように展開を完了してナイトを効果的なc4に置くことである。したがって、以下の計画通りに進行する(手順は絶対ではない)。...d6, ...Be7, ...0_0, ...a6, ...b5(可能なら), ...Bd7(できれば...Bb7), ...Qc7, ...Rac8, ...Na5, ...Nc4. この間ずっと白がミスしなくて ...d5が不可能な場合を想定してのことである。白が正道から外れれば、このセンターの一突きで黒は最低でも互角にできる。

 上記の計画に対する白の戦略プランは、クイーン側の危機回避とキング側での攻撃組立てという二重の考え方に基づく。白は f4, g4で攻撃を開始できるし、そうすべきこともすでに分かっているが、タイミングはそれほど明白ではない。経験が示すところでは、白は必ずしも先にクイーン側を守る必要はないが、無傷でそうすることはできる。したがって、白の展開手順は以下のように続く(この場合は順序が重要で遵守すべき)。0-0, Be3, Nb3(必ずしも必要ない), f4, Bf3, Qe2(またはQe1), Rad1, Bc1(必要なら), それから g4とすれば準備は十分である。

図16
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
rnbqkb1r/pp1p1ppp/4pn2/8/3NP3/2N5/PPP2PPP/R1BQKB1R b KQkq - 0 5
シシリアン・ディフェンスの 5 Nc3後の局面(スケフェニンヘン・ヴァリエーションになる)

 上記の双方が描いた作戦に従うと主変化になる。図16から、5...d6 6 Be2 Nc6 7 0-0 Be7 8 Kh1 a6 9 f4 Qc7 10 Be3 0-0 11 Qe1 Bd7 12 Rd1 b5 13 a3 Na5 14 Qg3 Nc4 15 Bxc4 白が有望である。

 この手筋をよく理解するために順を追って少し説明しよう。白の8手目は、キングが同じダイアゴナル上にいるとd4のナイトがチェックやピンで危うくなるのを防ぐためである。黒の8手目は、...b5の準備とクイーン側ナイトのピンを防ぐ二重の目的を果たしている。8...d5とすると、白は 9 Bb5 Bd7 10 exd5と応じて黒の弱い孤立ポーンが残ることに注目しよう。このピンが実行できなくなると、白はナイトをd4からどこかへ動かすか、...d5に e5で対抗する準備をする。白は、10手目でビショップを繰り出してクイーン側の展開を完了する。...b5を防ぐ a4は必ずしも必要ではない。

 この手順が白に有利なため、黒が改善策を発見できるかどうかにかかっている。一つの試みはキャスリングの延期で、例えば、7...a6(7... Be7の代わり)だが、白のBe3, f4等の攻撃が強まるばかりである。もっと知られたパウルセンの手筋では、黒のナイトをc6ではなくd7へ進める。これは、白のeポーンを直接または間接的に攻撃する一方、e5経由でc4へのルートも温存する狙いがある。しかしこの場合でも、黒はひじょうに窮屈な陣形となる。例えば、5...d6 6 Be2 a6(主変化で 6...Nc6の代わり) 7 0-0 Qc7 8 Be3 Be7 9 f4 0-0 10 Bf3 Nbd7 11 Nb3 Rb8 12 a4. 危険な e5をきっぱりと防ぐ 12...e5は、黒の興味深い試みである。黒は最速で危機を回避したが、永続的に弱いdポーンを抱えることになる。

 最初の6手目までに、いくつか他の有望な指し手がある。

 白は、キング側ビショップをe2経由で(Be2-f3)大ダイアゴナルに乗せるくらいなら、すぐフィアンケットする方が簡単だと結論する。しかも、黒の ...d5の妨害にもなる。このような陣形は、特に黒からc4での反撃を奪うクイーン側ビショップのフィアンケットと連係すると極めて強力である。こういう作戦では、キング側ビショップを繰り出す前に ...d5とされる危機を回避することが、主たる戦術的課題となる。白がダブル・フィアンケットをした強力陣形の実例は、6 g3(主変化で 6 Be2の代わり) 6...Nc6 7 Bg2 Be7 8 0-0 0-0 9 b3 Bd7 10 Bb2...

 この手筋では白には他にいい手がないが、主変化の方が有利だから当然である。ときどき c4を準備するためにキング側ビショップをd3へ繰り出すことがあるが、d4のナイトが浮き駒になるのが問題で、...Nc6とされると手損になる。したがって、主変化で 5 Bd3(5 Nc3の代わり)とすると 5...Nc6が通常より強烈で、6 Ne2 d5 または 6 Nxc6 dxc6 7 0-0 e5!と、完全に互角にされる。自然な ...Nc6に対する応手として、Nxc6に続いてe5で優勢にできるときしかビショップをd3へ進めるべきではない。黒は優勢になろうとすることさえある。


 黒のキング側ビショップがどちらへ出るかで二大別するのはかなり大雑把だが、その際の両軍の考え方の違いを概観するには有効だろう。シシリアンの手順前後は複雑を極めるが、特にスケフェニンヘンは、...d6と ...e6の順序を問わないのでどちら「系」にも分類されうる。
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この記事へのコメント
土曜なのに仕事やら会議やら忙しいです。いまは昼休み。
図16から白ナイトがd4に居るままで、黒ナイトc6、黒ビショップd7という流れが例になってるんですね。私はこれなら、黒はNxd4からBc6を狙うもんだ、と思ってました。だから、黒が上記の型に組んだら白はNb3が必要である、と。
でも、ファインの教えによれば黒はNxd4でなくNa5からNc4の方がいいんですね。
Posted by maro at 2007年03月31日 12:50
帰宅して調べたところ、12.Rd1が珍しいですね。たしかに、11.Qe1は12.Qg3のための手であって、Rのためにd1地点を空ける手ではないよなあ。黒もNa5よりもNxd4を考える方が多くて、やっぱりファインの手順に私が違和感を感じても変ではなさそう。
Posted by maro at 2007年03月31日 22:28
 さすがにカスパロフ本と比べると本書も形無しでしょうね(汗。ファインは黒のNc6-a5-c4がシシリアンに普遍的と考えているようで、スケフェニンヘンでもあえてこれを選んだのかもしれません。最初にとりあえず怪しい主変化を立てて、後で改善手順を示す構成の本でもありますし。
 maroさんのエイプリルフールねた期待しております(笑。
Posted by 水野優 at 2007年04月01日 16:25
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