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2007年03月27日

ファイン『チェス棋士の心理学』3 世界チャンピオン シュタイニッツその2

 チェス棋士になる前から、シュタイニッツが議論のための議論を好んでいたことは極めて明らかである。バッハマンはヨゼフ・ポパーの自叙伝からも以下の逸話を引用している(1)。フロイトも同じくこのポパー=リュンコイスに言及している。

 私の友人にチェスの名人ヴィルヘルム・シュタイニッツがいたが、彼は生涯で出会った最高の天才でもある。その頃すでに、このとりわけ感受性豊かな若者はモーツァルトの音楽の熱狂的な崇拝者だった。つまりは私と同意見だったのだが、突然賞賛し始めた−ワーグナーを。毎晩のように我々は、ワーグナーの音楽がひじょうに美しく、メロディーがいいからモーツァルトの音楽に比肩しうるかどうかについて何時間も議論した。私の懸命な努力も空しく、ワーグナーの音楽はとりわけ美しく中でも「ローエングリン」は傑作だからモーツァルトの音楽の方が劣っているという意見にも、シュタイニッツは動じなかった。

 シュタイニッツにおいても、知的攻撃性が他のどの資質よりも抜きん出ている。チェス盤上で戦い、チェスのコラムで戦い、友人と果てしなく論争した。論敵たちにシュタイニッツが反ユダヤ主義者と思われていた(実証する要素もある)ので、あるときユダヤ人のチェスに関する本を書き始めた。本人が言うには、その疑いに反論するためだった。

 当然ながら、これほどの攻撃性には多大な心配性が付きものである。シュタイニッツの場合も実際にあてはまる。彼は一種の男性ヒステリーと見なせる。30年間頻発する「神経性」発作を患い、主な症状は過敏症、神経質、不眠症だった。これらの症状を克服するために、彼は「クナイプ」式水浴療法に頼った。これは冷水浴を利用するらしい水治療法の一種で、当時はニューヨークにクナイプ協会(Kneip Society)があったほどで、この治療法には多くの信者がいた。

 チェスの王者でいる満足感によって、シュタイニッツは徐々に救世主コンプレックスなるものに陥っていった。彼はほぼ文字通りに、敗北して途方に暮れたチェス棋士から救済を懇願されているように感じていた。これに関連する初期の逸話がある。ウィーンのあるチェスクラブで、シュタイニッツはエピシュタインという名の男とよく指していた。彼は、当時のウィーン証券取引所での大立者である。二人の間でひとたび論争が起こると、エピシュタインは言う。「そんなことがよく言えるね? 私が誰だか知らないのかね?」 シュタイニッツが答える。「もちろん。君は証券取引所のエピシュタインだが、ここではがエピシュタインだ」注10

 注10:同様な話がレシェフスキーによって語られている。彼は、第一次世界大戦でドイツ軍に侵攻されたときにポーランドですでに神童として名をはせていた。ドイツ軍の司令官は、この天才(当時7歳くらい)を呼び寄せて自分と対局しろと命令した。レシェフスキーはひるまず勝利し、司令官にイディッシュ語で 言った。「あなたがするのは戦争、僕がするのはチェスです」



 モーツァルトとワーグナーの話はつじつまが合わない気もするが、ヨゼフ・ポパー=リュンコイスについてもあまり調べが付かず、これ以上分からなかった。シュタイニッツは口先だけポパーのワーグナーひいきに合わせたという意味だろうか(汗。
 最後のシュタイニッツと注のレシェフスキーの皮肉もそのまま日本語にするとピンと来ないかもしれないが、説明台詞にするのもまずいので何とかニュアンスをくみ取ってください(汗。
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この記事へのコメント
はじめまして^^

私のポーランドブログで
こちらの記事を紹介させて頂きましたので
ご連絡させて頂きました。

紹介記事は
http://polandlife.blog81.fc2.com/blog-entry-132.html
です。

これからもよろしくお願いいたします^^
Posted by ポーランドライフ at 2007年03月27日 17:55
 初めまして。
 最近こういう紹介システムがはやってるようですね。
Posted by 水野優 at 2007年03月28日 14:16
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