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2007年03月18日

ホーキング等著、佐藤訳『ホーキング、宇宙のすべてを語る』書評

 スティーヴン・ホーキング、レナード・ムロディナウ共著、佐藤勝彦訳 『ホーキング、宇宙のすべてを語る』(252ページ、'05年9月、ランダムハウス講談社)を読んだ。オックスフォード出版の『Cosmology』を読んでから、あまり触れられてなかった最新の「ひも理論」等が気になっ ていたので、翻訳物で新しいのを選んだ。
 ホーキングが日本でもブレークしたのは原著が'88年に出た『ホーキング、宇宙を語る』だが、その原題はA Brief History of Time、本書はBriefがBrieferに変わっただけである。タイトルは全くの意訳だが、内容的には最新の情報を補足しつつも共著の形にして理解しやすくなったらしい。

 以下、目次に短い要約と感想(括弧内)をつけて概観する。


序文
第1章 宇宙について考える
 基本知識の確認と疑問提起。

第2章 進化する宇宙像
 アリストテレス、プトレマイオス〜コペルニクス、ケプラー、ガリレオ、ニュートン。

第3章 科学理論の本質
 一般相対性理論と量子力学の統合理論が本書の目的。統一理論に支配される我々にその理論が見つけられるかという哲学的な問い。

第4章 ニュートンの宇宙
 ニュートンは絶対空間の欠如に悩んだが、彼の理論内では絶対時間は通用した。

第5章 相対性理論
 レーマーの光速測定。マクスウェルの電磁力発見。相対性理論でエーテル理論が不要になる。(時間座標等の説明が難解)

第6章 曲がった空間
 (等価原理が分かりにくい)。重力場は時を遅らす。

第7章 膨張している宇宙
 宇宙が膨張していなければ重力で収縮するはず。アインシュタインが恥じた「宇宙項」。先駆けたフリードマン。背景ノイズの観測。膨張加速で宇宙項の見直し。(最新のニュースで宇宙年齢が200億年以上に延びたようだが大丈夫?)

第8章 ビッグバン、ブラックホール、宇宙の進化
 物質や力の種類は宇宙年齢で変化し、星や生物の進化も支配する。一般相対性理論は、無限を扱う特異点があるために不完全→次章。

第9章 量子重力理論
 ラプラスの決定論。光の量子=光子。ハイゼンベルクの不確定性原理。アインシュタインは「神はサイコロを振らない」と反論。波と粒子の二元性。宇宙は自己完結。

第10章 ワームホールとタイムトラベル
 未来へは行ける。過去へ行く超光速(不可能)以外の方法。歴史仮説理論。

第11章 自然界の力と統一理論
 4つの力の統一へ。くりこみ論。超重力理論。ひも理論→10,26次元。人間原理。pブレーン理論。統一理論が存在し発見したとしても、応用はたいへん。

第12章 結論
 哲学的なまとめ。言語研究に閉じこもる現代哲学者批判。著者の願い。

アルバート・アインシュタイン
ガリレオ・ガリレイ
アイザック・ニュートン
 (ニュートンだけ悪人扱い。ホーキングも同じ英王立協会会員だからなおさら?)

用語集
訳者あとがき(訳者は本文でも言及される物理学者。長男が下訳!)
索引


 原文の良さは、たとえが日常的で分かりやすいこと、訳も専門家にありがちな直訳くささがほとんどなく、かなりこなれている。相対性理論に関しては(もちろん感覚的に)かなり理解したつもりでいたのに、新たな説明に触れるたびに実は分かっていなかったと気付かされる(汗。それでも今回は、閉じた(開いた)宇宙の説明でアハ体験があった。

 ホーキングの哲学者批判(哲学を言語研究としたウィトゲンシュタイン)には全く反論できない、というか最新の物理学と数学に通じていなければ宇宙論や統一理論に太刀打ちできない現状からすれば仕方ないだろう。
 むしろ量子力学以来の不確定要素という限界を認めながらも延命した物理学こそ科学哲学の方法論を取り込んだ新たな哲学という感じがする。もう少し和書にあたってから、最新のひも理論やpブレーンについての洋書に挑戦しよう。
ホーキング、宇宙のすべてを語る
427000097X スティーヴン・ホーキング レナード・ムロディナウ 佐藤 勝彦

ランダムハウス講談社 2005-09-30
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ホーキング 虚時間の宇宙 ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで ホーキング、未来を語る はじめての“超ひも理論”―宇宙・力・時間の謎を解く 「相対性理論」を楽しむ本―よくわかるアインシュタインの不思議な世界
posted by 水野優 at 13:10| Comment(4) | 英語/翻訳/文芸/科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも楽しく読ませていただいてます。
英語の苦手な私にとっては
外国のチェスの専門書の内容を学べるとても素晴らしいHPです。

これからも無理せずマイペースに頑張ってください。
応援してます。
Posted by tm at 2007年03月19日 04:58
 お名前はどこかでお見かけした気がしますが、初めまして。そして応援、おほめ&お気遣い、ありがとうございます。

 入門和書を読んだ後も、「英語が苦手だからチェスを勉強できないとは言わせない」環境を作るのも一つの目的でやっております。
 頻度は下がり気味ですが、今後もよろしくお願いします。
Posted by 水野優 at 2007年03月19日 15:17
ホーキングの文章は明解で読み易いですね。
そう言えば、Hawking-Ellis が書いた重力場の教科書の中の一節が「見事な科学英文の例」として、数学者向けの英語書き方指南書に引用紹介されているのを見たことがあります。
数学の本であえて物理の文章が引用されるのは例外的だと思いますので、余程のことだったのでしょう。
Posted by kshara at 2007年03月19日 17:03
 なるほど。amazonで調べると1万円もする本ですね。
 ksharaさんのノンフィクション系書評ももっとブログで期待しております。
Posted by 水野優 at 2007年03月19日 23:09
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