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2007年01月30日

エイベ『チェス終盤の手引き』1-6: 多数P戦力的優勢 その2

 74 キングとポーンの終盤では、出遅れ(backward)ポーンは、他の終盤に比べれば総じてそれほど欠点にはならない。通常敵のキングはこれをずっとブロックし続けられないし、出遅れポーンをサクリファイスできる可能性もあるからである。

 白がオポジションを得ていれば楽勝である。1...Kb6 (1...Ka5 2 c4) 2 Kb4 Kc6 (さもないと白が回り込む。2...Kc7 3 Kc5 または 2...Kb7 3 Kb5) 3 c4 (3 Ka5? Kc7 4 Kb4 Kb6 5 Kb3では、黒が遠隔オポジションを取ってドローにする。5...Kb7 6 Ka3には 6...Kc7) 3...dxc4 4 Kxc4 例5. 白は、黒がc6へ下がったときにポーン交換を仕掛ける。

 オポジションがなければ、白はコンビネーションを使う。出遅れポーンのサクリファイスは、ポーンの終盤ではよく見られる。キングは動きが遅いので、新たに作られたパスポーンを止めにもどることができないからである。

図74 白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
黒番:8/8/4p3/1k1pP3/3P4/1KP5/8/8 b - -
白番:8/8/4p3/1k1pP3/3P4/1KP5/8/8 w - -

 1 Ka3 Ka5
 1...Kc4 2 Kb2 黒はブロックし続けられないし、オポジションを失う。2...Kb5 3 Kb3 または 2...Kd3 3 Kb3 (3...Ke3 4 Kc2 Ke2 5 c4).
 1...Kc6 2 Ka4 Kc7 3 Ka5 Kc6 4 Ka6 Kc7 5 Ka7 Kc6 6 Kb8 Kb5 7 Kc7 Kc4 8 Kd6...

 2 c4 dxc4 3 d5 exd5 4 e6
 ニムツォヴィッチは書いている。出遅れポーンは本来拡張する欲望を持っているので、この種のサクリファイスによって実際に突破することは決して珍しくない。

 1 c4+ dxc4+ 2 Kc3だと、2...Kb6 3 Kxc4 白はポーンを取り返すがオポジションを失う。3...Kc6 例5. しかし、図74が1マス上にずれていれば、交換の結果例37になるのでこの作戦でも勝てる。
 両者に端ポーンがある同様の局面は、交換の結果例35, 36, 39等に移行してたいていドローになる。ポーンが盤の白側に寄っている場合も、サクリファイスが功を奏さないので白は直接オポジションでしか勝てない。


 75 Persitz対Paffley戦(サウセンド、 1955). 白の出遅れポーンは進行上何の役割も果たさないが、最終的に勝利を決定づける。

 1... Kd7
 水平のオポジションをめぐる争いがあり、他には 1...a5 2 Kb3 Kd7 (2...d4 3 Kc4 Ke5 4 Kb5 Kd5 5 c6) 3 Ka4 Kc6 4 Kxa5 Kxc5 5 Ka6 (5 c3? Kc4は黒勝ち) 5...d4 (5...Kc6 6 c3) 6 Kb7 Kd6 7 Kb6 (7 Kc8? Kc6だと、黒が垂直のオポジションを保つ).

図75 白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/8/p3k3/2Pp2p1/6P1/2K4P/2P5/8 b - -

 2 Kb4 Kc6 3 Ka5 Kxc5
 3...Kb7 4 c3 (4 c6+? Kxc6 5 Kxa6 d4は、黒がオポジションを保つ) 4...Kc7 5 Kxa6 Kc6 6 Ka7 Kc7 7 c6 Kxc6 8 Ka6 (8 Kb8? Kb6) 8...Kc5 9 Kb7.

 4 Kxa6 Kc6
 4...d4 5 Kb7 または 4...Kc4 5 Kb6 Kc3 6 Kc5.

 5 c3
 オポジションを保つ手待ち。

 5... Kc5 6 Kb7 d4
 6...Kd6 7 Kb6 良くないのは 7 Kc8? Kc6.

 7 cxd4+ Kxd4 8 Kc6 Ke5 9 Kd7 Kf6 10 Kd6.
 良くないのは 10 Ke8? Ke6. 本譜後、白はgポーンを取る。10...Kf7 11 Ke5 Kg6 12 Ke6 Kg7 13 Kf5 Kh6 14 Kf6 Kh7 15 Kxg5 2ポーンで勝ち。


 76 学童(Boys')選手権(ヘイスティングズ、1949)のあるゲームを解説したG. A Thomasによると、黒はダブルポーンを持っていても勝つ。

 1... e4+ 2 fxe4+ Kc5
 2...Ke5? 3 Ke3だと、白がオポジションを得る。

 3 Kc3 e5

図76 黒勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
黒番:8/8/4p3/3kp1p1/6P1/3K1P2/8/8 b - -
白番:8/8/4p3/3kp1p1/6P1/3K1P2/8/8 w - -

 オポジションを得て、白陣に回り込む。

 4 Kd3 Kb4 5 Ke2 Kc4 6 Ke3 Kc3 7 Kf2 Kd4 8 Kf3 Kd3.

 白番でも白は好転しない。1 Ke3 e4 2 f4 (2 fxe4+ Ke5 黒がオポジションを取る) 2...gxf4 3 Kxf4 Kd4 4 g5 e3 5 g6 e2 6 g7 e1=Q 7 g8=Q Qf2+ 8 Kg5 Qg3+.
posted by 水野優 at 14:32| Comment(2) | Euwe『チェス終盤の手引き』終盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「出遅れポーン」、いただきます!
Posted by maro_chronicon at 2007年01月30日 23:55
 どうぞ!(笑
 といっても私もどこかで見て名訳と思って以来使っています。誰かは忘れてしまいましたが、ググると上に来るのはうちと西村氏くらいのようです。
Posted by 水野優 at 2007年01月31日 17:43
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