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2006年12月18日

ファイン『定跡の背後にある考え方』2 eポーンの定跡 要約 その1

 要約:多くの定跡を駆け足で見てきたので、一休みして学んだ内容を振り返ろう。

 大きく違う場合もあるとはいえ、1 e4 e5で始まるすべての定跡は密接に関連している。名前がすべて違うのは、たまたま歴史的にそうなっただけのことである。一方、クイーンポーン・ゲームとクイーンズ・ギャンビット・ディクラインドにも明かな関連性がある。それらが、大元の定跡から枝分かれする変化(variation)と呼ばれる定跡だからである。センター・ゲームとポンジアニ・オープニングには、タラッシュ・ディフェンスとマンハッタン・ヴァリエーションほどの違いはない。

 類似性を強調してきたが、それは参照しやすいように再分類するのに役立つ。同様に相違点は、共通の出発点から枝分かれした変化が類似した目的へ向かっていく様として理解するのが最善である。

 最初に分かったのは、白が優位を確保する唯一無二の方法が d4とすることだった。しかし、すぐにそうするのは分が悪い。矛盾のようだが、これは多く の定跡に当てはまる。

 ギャンビットはさておくと、白が独自の方針を採る定跡には、ビエナ・ゲームとビショップ・オープニングの2つがある。どちらの目的も素速く好都合な f4とすることだが、その後 d4ともするだろう。黒は ...d5とするべく応対する。この手が指せれば、白の優勢への望みがすべて粉砕される。

 センター・ゲームでは、白は d4という基本的な狙いを直ちに実行する。そして、クイーンが時間ロスの原因となって失敗する。

 白が優位を模索する中で、この最も直接的な方策はおおむね失敗に終わることが分かった。攻撃を強化するためには、白は何かに狙いを付けねばならない。そこで、2 Nf3が最強の手順として浮かび上がってくる。

 しかし、2 Nf3によって白は d4とする狙いをあきらめたのではない。好機が来るまで先延ばしにしただけである。黒は、いずれ指される d4にどう対処するかを常に考えねばならない。そして、それは比較的早いと思っていたほうがいい。

 d4と指されたら、黒はそれを取るか自らのe5ポーンを保持するかの選択を迫られる。取れば、黒は白のeポーンへ何らかの行動を起こさねばならない。さ もないと、ポーン形は図1が示すように白に理想的なものとなる。選択がこの反撃と拠点法と呼ばれる手法に限られるのは、こういう理由による。他に互角にする方法はないのである。

図1(再掲)
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
1 e4 e5で始まるすべての定跡で白にとって理想のポーン形

 一般的に、反撃の方が自由度は高いがポーンの形がばらける。拠点を保持すれば、ポーン形は崩れないがピースが窮屈になる。黒の課題はこの適正なバランスを取ることである。

 黒が2手目に反撃する多くの定跡の中では、ペトロフ・ディフェンス(2...Nf6)が最善で、互角にできるとされている。グレコ・カウンター・ギャンビット(2...f5)とクイーンポーン・カウンター・ギャンビット(2...d5)は、どちらも乱暴すぎて、最善の応手に対しては成立しない。黒からの攻撃は常に、白から攻撃を仕掛けるより危険である。ましてや、いきなりの反撃は黒にとって一利もないが、この考え方は欠かせないもので、適用すればいい結果をもたらす局面も多い。

 拠点システムも数の上では同数ほど存在するが、まともなのは一つだけである。直ちに拠点を保持するフィリドール・ディフェンス(2...d6)は、決し て最善とはいえない。3 d4後、黒はすでにピースを自由に配置できない。特にキング側ビショップは永続的な悩みの種となる。ほとんどの拠点法防御において、黒のキング側ビショップの展開が主要な問題である。


 変化、手順、手筋等の使い分けについては「チェス翻訳の話」でもしたことがあるが、variationやlineにはできるだけ「変化」を使うようにしている(「手順」は一般的過ぎ、「手筋」はコンビネーション等寄り)。定跡との関連では、主か副かという相対性が重要なので、第2段落のようにlineを定跡と訳すこともある。
この記事へのコメント
「line」は「戦型」と訳せる場合もあると思います。
Posted by Yamagishi at 2006年12月18日 20:51
 具体例がないとピンと来ないのですが、変化の行き着く先の局面による分類という感じでしょうか。
 ファイル、ランク、ダイアゴナルの総称としてのlineはラインとしますが、Yamagishiさんならもちろん「筋」ですね。
Posted by 水野優 at 2006年12月18日 23:40
「戦型」は将棋で使われる用語です。はっきりと定義することはちょっと難しいのですが大体「定跡」で置き換えることができます。しかしその逆はあまりないです。「何々定跡」と言うことはできても「何々戦型」とは言いません。定跡手順の中で形に着目するような時や枝分かれするそれぞれに対して使われるようです。

本書から例を捜すと172ページの右側の一番上に「In the main line, both sides first develop their knights:」とありますがこれは「主戦型において...」というように使うことができます。ここで「主定跡」とか「主変化」とするのはちょっとおかしいと思います。

それから同じ箇所の一番下に「These lines are worth more attention.」とありますがこれは「これらの戦型は...」となります。

104ページの左側の一番下の段落が「II. 3Nf3 is by far the most important line in the Slav ...」とありますがこれは「II. スラブの中で 3Nf3 が最も重要な戦型で...」となります。

ところでここの「要約その1」は原書の何ページに当たりますか?対応するページが見つかりませんでした。私の持っているのは1989年第3版の Algebraic Edition です。
Posted by Yamagishi at 2006年12月22日 17:02
 詳しい説明ありがとうございます。原本は私も'89年版です。「要約その1」はビエナ・ゲームの後ろにくっついているので分かりにくいでしょうが、40 ページ左下寄りからです。初版も見たことがありますが、本文は全く変わってないようで、代数式への変換は間違いだらけだし、少しは見やすくしろよという感じですね。

 将棋は小駒が多くてチェスに比べて開戦が遅めだから、手順前後の同陣形が多くて「戦型」という概念が発達したのでしょうね。陣形とほぼ同義にも思えるのですが、陣形は一般的すぎるのでしょう。タイプを表すのは形ではなく型ですし。
 ただ、話の成り行きでそうなったのでしょうが、lineと戦型をことさら結びつける必要もないように思います。これらの実例でmain lineがmain variationとなっていれば、variation=戦型だったのでしょう。結局は、手順と局面のどちらに力点があるかだから「lineを戦型と訳せるときがある」ということですね。

 該当箇所等を訳すときまでに私なりに考えてみます。勉強になりました。
Posted by 水野優 at 2006年12月24日 11:25
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