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2006年10月31日

エイベ『チェス終盤の手引き』1-5: K+2P 対 K+P その4

 37 黒のポーンが2段目にある他の5種類の局面では、オポジショ ンを持っているかどうかにかかわらず白が勝てる。

 この特例のケースでは、白のポーンがc7よりc5にある方が好都合なのである。

 1 Ke5
 1 c6+?は良くない。1...bxc6+? 2 Kc5 Kd8 3 Kd6 Kc8 4 Kxc6なら白の勝ち。これ以外の4種類のポーン形ではこの作戦で勝てるが、この局面では 1...Kc8 2 c7 Kd7 例24(ドロー)にな る。白はcポーンを進める前に、キングをd7かd8に侵入させねばならない。

図37 白勝ち
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/1p1k4/1P6/2PK4/8/8/8/8 w - -

 1... Kc6
 1...Ke7は、2 c6 Kd8 3 cxb7で負ける。黒は、白のポーン が前進しすぎるとオポジションを保てなくなる。

 2 Kd4 Kd7 3 Kd5 Kc8 4 Kd6 Kd8 5 Ke6 Kc8
 5...Ke8 6 c6 Kd8 7 cxb7.

 6 Ke7 Kb8 7 Kd7 Ka8.
 白の5手メイト。8 c6 bxc6 9 Kc7...


 黒のポーンが3〜5段目にある21種類の局面の結果は、両キングがほぼ通常の位置にあるとするなら、オポジションを持っているかどうかによる。

 基本的なポーン形に従うと2つの主要パターンに分けられる。白がcかd(fかe)ファイルに出遅れポーンを持つ12種類の局面と、白に不都合なaかb (hかg)ファイルに出遅れポーンを持つ9種類の局面とである。

 38 この局面のすべての駒を左に1マスか右へ1,2マス動かす、 上か下に1マス動かす、それと動かさないのも含めて左右4種類、上下3種類の位置の総組合せが、上記の最初のパターンの12種類となる。

図38 白番ドロー 黒番黒負け
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
黒番:8/8/8/2p1k3/2P5/3PK3/8/8 b - -
白番:8/8/8/2p1k3/2P5/3PK3/8/8 w - -

 白は、出遅れポーンの横で垂直の直接オポジションを持っていると、以下の2つの狙いがあるので勝てる。回り込み。1...Kd6 2 Kf4 Ke6 3 Ke4 Kd6 4 Kf5 やがて黒のポーンを取る。または、ポーンの交換。1...Kf5 2 d4 cxd4+ 3 Kxd4 Ke6 4 Kc5(例10) 4...Kd7 5 Kb6 Kc8 そしてオポジションを取る。6 Kc6.

 オポジションなしでは、白はわなにかけようとすることしかできない。

 1 Kf2
 1 Kf3 Kf5 2 Kg3 Ke5.

 1... Kf6
 垂直のオポジションを維持するのが単純な方法で、ブロックし合うセンターポーンの場合(例5)では唯一の方法である。しかし、この場合は 1...Ke6でもドローにできる。2 Ke2(遠隔オポジションは功を奏さない。ブロックし合うc(f)やb(g)ポーンでは、反対側へ回り込む余地がないから) 2...Kf6 3 Kd2 (3 Kf2 Ke6 4 Kg3 Ke5) 3...Ke6 4 Kc2 Kd6 5 Kb3 Kc6 6 Ka4 Kb6.
 他の応手ではオポジションを失う。1...Kf5? 2 Kf3. 1...Kd4? 2 Ke2 Ke5 3 Ke3. 1...Kf4? 2 Ke2 Kg5 3 Ke3.

 2 Ke2 Ke6.
 黒は、常にオポジションを保持できる。


 39 端ポーンがブロックし合う場合(例38が2マス左へ動いた) で は、ポーン交換の効力がない。1...Kd5 2 b4 axb4 3 Kxb4で は、白には役立たずの端ポーンしか残らないからである。

図39 ドロー
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
8/8/8/p1k5/P7/1PK5/8/8 b - -

 しかし、ブロックし合う黒のポーンが3〜5段目にある3種類の基本局面では、白は、キングがもう1ランク前(白のブロックし合うポーンの横)でオポジ ションを取れば勝てる。この局面でなら、1...Kb6? 2 Kd4(2 Kc4? Kc6はドロー) 2...Kc6 3 Kc4 そして単純に回り込む。3...Kb6 4 Kd5 Kb7 5 Kc5.


 40 残りの6種類の局面、白が出遅れのa(h)かb(g)ポーン を持っていて、図40のすべての駒を左へ1マス動かすか、上か下へ1マス動かすかの組合せである。

 白には、出遅れポーンのある側へ回り込む余地はない。

 黒番:

 1... Kf5 2 Kd3
 2 Kf3 Ke5 3 Kg4 Kd4.

 2... Ke5 3 Kc3 Kd6 4 Kc2 Ke6 5 Kb2 Kd7 6 Ka3 Kc6 7 Ka4 Kb6.

図40 ドロー
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
黒番:8/8/8/2p1k3/2P5/1P2K3/8/8 b - -
白番:8/8/8/2p1k3/2P5/1P2K3/8/8 w - -

 白番:

 1 Kd3 Kd6
 1...Kf6?は、白にbポーンの前進を許す。2 Kc3 Ke6 3 b4 cxb4+ 4 Kxb4 Kd6 5 Kb5 例11。
 この変化では、3...Kd6 4 b5でも白の勝ちだが、黒のポーンが5段目にあれば例7,28と同じく、これは功を奏さない。
 白は、キングが先頭の(ブロックし合った)ポーンの横でオポジションを取っていれば勝てる。1...Ke6?なら、2 Ke4から回り込む。2...Kd6 3 Kf5 Kd7 4 Ke5 Kc6 5 Ke6.

 2 Ke4 Ke6 3 Kf4 Kf6.
 オポジションなしでは、白は前進できない。4 Kg4 Ke5.


 白が出遅れポーンを持つ場合の残りである。単純化して以前の例題へ言及する場合が多いのは、ブログ連載泣かせだ。徐々にhave an oppositionという表現が増えてきた。今までできるだけ「オポジションを取る(獲得する)」と書いてきたが、英語では抽象的なものに対しても表現 が豊かである。日本語に対応する概念がないのだからこのへんは直訳気味でかまわないだろう。
posted by 水野優 at 00:13| Comment(2) | Euwe『チェス終盤の手引き』終盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
故松本康司氏はoppositionを「見合い」と訳していました。元々は囲碁の用語ですがoppositionの訳語としても適切だと思います。
Posted by Yamagishi at 2006年10月31日 08:21
 私も初出のときに(見合い)と補足していますが、囲碁起源とは知りませんでした。oppositionについてはもう「チェス翻訳の話」記事で書いたと思っていたのですが勘違いのようで…。
 Yamagishiさんは対応概念として適切と言われてるのでしょうし、私も最近日本語優先には傾いています。しかし、ポーンの終盤くらいという狭い適用範囲と、チェスの独自性、現JCAもオポジションを使用等の理由で、十数年前にBCEのポーン部分を訳したときからオポジションを使っています。
 動詞連用形が名詞化した「見合い」は、「見合いを取る」を「見合いの位置を取る」にしないと締まりが悪く、どっちみち最初に説明するなら一見して分かりにくいオポジションの方が専門性が際立っていいように思うのです。実践的にも難しい概念ですし。
 このへんは好きずきの問題だと思います。mating threatに相当する将棋の「詰めろ」を私はチェスを通じて知って、この動詞の命令形の用語化(王手のように発話するならまだしも)には未だに違和感を感じるくらいですから。
 とにかく今後も悩み続ける問題ですね(汗。
Posted by 水野優 at 2006年10月31日 16:49
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