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2006年10月30日

ファイン『定跡の背後にある考え方』2 eポーンの定跡 ルイ・ロペスその4

 8手目以前を改善する余地は白黒ともに残されていない。例えば、主変化で 8 a4(8 dxe5の代わり)は 8...Rb8 9 axb5 axb5となれば開いたaファイルが作れて強力だが、8...Nxd4! 9 Nxd4 exd4 10 axb5 Bc5! 11 c3 0-0 12 cxd4 Bb6ととがめられると互角になる。

 一つ覚えておくといいのは、白がdとcのポーンを適時に突かなければ、必ずキング側ビショップの交換によって優勢への望みが絶たれるということであ る。例えば、(図7から 5...Nxe4以降) 6 Re1 Nc5 7 Bxc6 dxc6 8 d4 Ne6 9 Nxe5 Be7等は完全に互角となる。

図7(再掲)
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
ルイ・ロペスに対する黒の最善防御。5 0-0後の局面。
r1bqkb1r/1ppp1ppp/p1n2n2/4p3/B3P3/5N2/PPPP1PPP/RNBQ1RK1 b kq - 0 5

 図7で黒の唯一他の5手目はビショップを直ちにc5へ繰り出す試みだが、白に強力すぎるセンターを作られる。5...Bc5 6 c3 Ba7 7 d4 Nxe4 8 Re1! f5 9 Nbd2 0-0 10 Nxe4 fxe4 11 Bg5 Qe8 12 Rxe4 白の勝勢。

 白が5手目以前に他の弱い手を指すと、たいてい黒にキング側ビショップを早く繰り出される。周知のように、白の手が消極的なのはセンターを脅かしていないからである。黒は存分に駒を繰り出してセンターを強化できるので、セオリー的な困難は消え去る。一例を挙げれば十分だろう。5 d3 b5 6 Bb3 Bc5 7 Be3 d6 8 Nbd2 Be6 すでに互角になる。

 もちろん、黒の弱い手順も、白に強力なポーン形や周到な攻撃を許すことになる。すでに多くの実例を見た。しかし、特定のミスに対する「特有の」反駁とでも言うべきものも見られる。例えば、ウォラル・アタックで、a4に対して黒がキャスリング前に ...b4と応じると、Qc4!が破壊的な手となる。一方、黒がキャスリングの後に ...b4とすると、a5!で黒のクイーン側ポーンはバラバラになる。

 そこでようやく、拠点法のもう一つの変化、シュタイニッツ・ディフェンス・ディファード、3...a6 4 Ba4 d6(図10)である。

 この防御の背景にあるセオリー的考察は比較的単純である。

 1.黒は、拠点e5を保持するがクイーン側を前進させない。そのため、クイーン側の弱体化は免れるが、クイーン側でのいかなる反撃も放棄することになる。

 2.白は、様々な方策から幅広いプランを立てることができる。一般的には、センターを固定してから相手のつながったポーン(pawn chain)の土台の前までポーンを進める。(黒のポーンがd6, e5、白のポーンがd5, e4にあるとき、黒の土台はd6、白のはe4となる)

 3.黒はセンターを固定したい。そうすれば ...f5で反撃できる(これもつながったポーンの土台への攻撃)。関連してキング側ビショップのフィアンケット(...g6から ...Bg7)も多用される。gポーンがfポーンのサポートになり、ひいてはセンターを強固にするからである。

図10
  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
シュタイニッツ・ディフェンス・ディファード
r1bqkbnr/1pp2ppp/p1np4/4p3/B3P3/5N2/PPPP1PPP/RNBQK2R w KQkq - 0 5

 通常の変化は図10から、5 c3 Bd7 6 d4 Nf6 7 Qe2 Be7 8 0-0 0-0 9 d5 Nb8 10 Bc2 a5 11 c4 Na6 12 Nc3 Nc5 13 Be3 白がわずかにいいが、黒のチャンスも決して過小評価できない。この種の局面での考え方は、dポーン定跡のインディアン・ディフェンスと関連づけるともっとはっきりする。あえて言うなら、白はクイーン側の前進(a3, b4, いずれ c5)を続け、黒はキング側(...g6, ...f5)から仕掛けるべきである。(上記3.も参照)

 黒が消極的すぎてキング側の反撃をする気がなければ、ほぼ絶望的である。悲惨な実例は、1895年ヘイスティングズでの有名なラスカー対シュタイニッツ戦で、5 c3 Bd7 6 0-0 Nge7 7 d4 Ng6 8 Re1 Be7 9 Nbd2 0-0 10 Nf1 Qe8 11 Bc2 Kh8 12 Ng3 Bg4 13 d5 Nb8 14 h3.... 惨めなシュタイニッツは窒息寸前である。

 すでに見た他のルイ・ロペス変化と同じく、双方ともに改善の余地がある。

 黒にまず思い浮かぶのは、...Nge7とセットのキング側フィアンケットである。この場合、センターの固定は時期尚早となる。黒の反撃がいきなり始ま る一方で、白は軌道に乗るまでに最低5,6手必要だからである。例えば、5 c3 Bd7 6 0-0 g6 7 d4 Bg7 8 Be3 Nge7 9 d5 Nb8 10 Bc2 0-0 11 c4 f5は黒がいい。

 しかし問題は、白はセンターを固定することを強制されてはいないことである。

 望むなら、白は長期間センターを動けるままにしておけるし、そうなると黒の反撃はポーンが固定されていないために危険を伴う。また、白は dxe5と交換して黒のキング側ビショップを封じ込み、いずれ来る ...f5を骨抜きにすることもできる。exf5と応じれば黒のe, fポーンはかなりの弱点になるからである。

 白がセンターを固定しない例は、5 c3 Bd7 6 d4 g6 7 0-0 Bg7 8 Be3 Nge7 9 c4! ここで黒には以下よりいい手順がない。9...exd4 10 Nxd4 0-0 11 Nc3 Nxd4 12 Bxd4 白のポーン形がよく、有利な終盤になる。

 白が dxe5とする例は、5 c3 Bd7 6 d4 g6 7 0-0 Bg7 8 dxe5 dxe5(8...Nxe5 9 Nxe5 dxe5 10 c4!だと白の攻めが強力) 9 Bg5 Nge7 10 Qd3 h6 11 Be3 Bg4 12 Qe2 0-0 13 Bc5 黒は厳しい。

 ここでも、主要な定跡の数ある他の変化と同様に、双方とも満足できない。黒は完全に互角にしていないし、白はたいてい壊れゆく優位を確保しようと切望する。


 HPでリンクしている「Literary Chess Agora」のjuwatti2002さんに愛読されていると知ってうれしい。しかも昔これを訳されていたとは! 私は十数年前のひどい翻訳でも平気で当時の大阪のサークル誌に投稿していました(汗。チェスがまともに扱われた名作フィクションの翻訳とかできればいいですね。
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