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2006年09月27日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム37

ゲーム 37

白:マーシャル 黒:カパブランカ

クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド(第1部参照)

1 d4 d5 2 c4 e6 3 Nc3 Nf6 4 Bg5 Be7 5 e3 Ne4

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図150
rnbqk2r/ppp1bppp/4p3/3p2B1/2PPn3/2N1P3/PP3PPP/R2QKBNR w KQkq - 0 6

 ラスカーはこの手をマーシャルとのマッチで使って成功したが、広く指されるまでには至らなかった。白は、6 Bxe7 Qxe7 7 Qc2 Nxc3 8 Qxc3 または 7 cxd5 Nxc3 8 bxc3 exd5 9 Qb3で優勢にできる。最初のケースでは黒のクイーン側ビショップが働けず、次のケースでは白のbファイルが開くからである。7 Nxe4は良くない。7...dxe4が、白ナイトのf3への自然な展開を邪魔し、黒がキャスリング後に ...f5-f4で攻撃できるからである。

6 Bxe7 Qxe7 7 Bd3

 これも、展開を進める好手。

7... Nxc3 8 bxc3 dxc4

 この場合、センターポーンの放棄は序盤の精神に反しない。黒のクイーン側ビショップが働けるように、そのダイアゴナルを開いたまでのことである。

9 Bxc4 b6 10 Qf3 c6 11 Ne2 Bb7 12 0-0 0-0 13 a4

 この手は、白が例えば Rfb1, a5とクイーン側で仕掛けるつもりなら好手である。しかし、白のクイーンの位置を考慮すれば、別のプランを採らざるをえない。一つには、この場合クイーンがキング側に陣取っているのだから、戦力をそちらへ集結する方が合理的なため。他には、クイーン側の作戦は、黒が ...c5, Nc6で a5を阻止できるので実行できないためである。明白なのは、e4でセンターを支配するプランである。...c5には d5と応じれば、白の両ルックはd1とe1でとても威力を発揮する。本譜では、白がキング側攻撃を続けるので、13 a4は明らかに手損である。

13... c5 14 Qg3 Nc6 15 Nf4 Rac8

 15...e5は魅力的だが、16 Nd5 Qd8 17 dxc5 Na5 18 Rfd1のために良くない。15...Rac8には、...cxd4, Nxd4, Rxc4の狙いがある。

16 Ba2 Rfd8 17 Rfe1 Na5

 ...Bc6で白のaポーンを狙っている。賢明にも白はすぐにこれをあきらめ、まっしぐらな攻撃の好機と考えた。黒の2つのピースはポーン取りで離散し ているのだから。

18 Rad1 Bc6 19 Qg4

 黒はまだaポーンを取れない。Nxe6から Bxe6+とされる。

19... c4 20 d5?

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図151
2rr2k1/p3qppp/1pb1p3/n2P4/P1p2NQ1/2P1P3/B4PPP/3RR1K1 b - - 0 20

 ここまで複雑にする必要はない。ルックのキング側への道を開くために e4とするのが理にかなっている。手順はこうなっただろう。20 e4 Bxa4 21 Nh5 g6 22 e5 Bxd1 23 Rxd1 そして Nf6の強襲、または 21...f6 22 Rd2で、白の攻撃チャンス。20 d5後は、単純に交換すれば 20...exd5 21 Nxd5 Bxd5 22 Rxd5 Rxd5 23 Qxc8+ Rd8 24 Qf5 g6 25 Qc2 Qa3 黒が優勢になる。しかし、黒はaポーンを取ることで深刻な危険を招く。

20... Bxa4 21 Rd2 e5 22 Nh5 g6 23 d6 Qe6 24 Qg5 Kh8

 黒は、f6とh6の弱点がたいへんにやっかいだと気付く。すぐに 24...Rxd6だと、25 Rxd6 Qxd6 26 Qh6!で負け。

25 Nf6 Rxd6 26 Rxd6 Qxd6 27 Bb1

 27 Qh4は 27...Kg7と応じられる。

27... Nc6

 黒は、マイナーピースを防御にもどさねばならない。それが間に合えば、終盤戦はクイーン側で簡単にけりが付く。

28 Bf5 Rd8

 28...gxf5は 29 Qh6とされるのでだめ。

29 h4

 白の攻撃手段は無尽蔵に見える。クイーンを交換すれば、白は以下のようにポーンを取り返せる。29 Bd7 Qf8 (29...Rxd7? 30 Qh6) 30 Bxc6 Bxc6 31 Qxe5 Qd6 32 Nd7+ Qxe5 33 Nxe5 Be8 34 Nxc4. しかし、これでも黒は、自由に進めるパスポーンがあって ...b5後にルックを7段目に突入できるので、終盤戦での優位を保っている。これが、マーシャルがポーンを取りもどさず疑惑の猛攻へ突進した理由であ る。しかし、カパブランカはその後の混戦の中から正着を見つけた末に勝利する。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図152
3r3k/p4p1p/1pnq1Np1/4pBQ1/b1p4P/2P1P3/5PP1/4R1K1 b - h3 0 29

29... Ne7 30 Ne4 Qc7 31 Qf6+ Kg8 32 Be6

 ここでは強制的。白がビショップを退いて手損すれば、黒は ...Nd5から ...Qe7として陣形を立て直す。

32... fxe6

 32...Rf8には、33 Ng5! fxe6 34 Qxf8+...

33 Qxe6+

 33 Ng5よりいい。33...Nd5 34 Qxe6+後、黒のキングはg7で安全だから。

33... Kf8 34 Ng5 Ng8 35 f4

 ルックのためにファイルを開くため。

35... Re8 36 fxe5 Re7 37 Rf1+ Kg7 38 h5 Be8 39 h6+ Kh8

 39...Nxh6は 40 Qf6+でだめ。

40 Qd6

 白はできるかぎりの優位を求めたが、黒が戦力を防御に集中させたため、攻撃は成功しなかった。黒はまだメイトに気を抜いてはいけない。例えば、40...Qxd6? 41 exd6 Rxe3 42 Rf7 または 41...Rd7 42 Rf8.

40... Qc5 41 Qd4

 白は 41 Qxc5から Rf8を試せた。そうすればずっとルックでビショップを取る狙いが続いた。例えば、41 Qxc5 bxc5 42 Rf8 Rxe5 43 Nf3 Re7 44 Ng5... 黒は、勝つためにビショップを捨てて 43...Rh5とすべきように思える。しかしその場合、白にはこのすばらしいゲームの結末にふさわしいドローのチャンスがある。

41... Rxe5 42 Qd7 Re7 0-1


 すごいゲームだ。マーシャルは、トラップがらみの手が多いので書き(読み)間違いかと何度も思うし、カパは解説通りの1ポーンアップ終盤は当然見えていたはずなのに、マーシャルの攻撃を横綱相撲で受けきった。解説で疑問なのは、40...Qxd6? 41 exd6 Rxe3 42 Rf7に 42...Nxh6で白の勝ちが見えない。
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posted by 水野優 at 01:11| Comment(0) | Ed.Lasker『チェス戦略2』実戦(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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