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2006年08月22日

エイベ『チェス終盤の手引き』序文

 火曜日はいちおうチェス書書評の日だがやりたいときに割り込むことにして、今回から終盤本、エイベとフーパーの『チェス終盤の手引き』を始める。ソコルスキー本に続いて「十年留保」を活用した比較的新しい初の総合終盤本の翻訳連載となる。
 ソコルスキー本は部分訳で始めたのがHP「チェストランス」への掲載を見送った理由の一つでもあるが、本書はHPに平行掲載する。完訳まで最低2年はかかりそう(汗。


序文

 多くのゲームが大会で指されるようになった今日では、クラブやマッチのゲームが最後まで続けられることが多いので、終盤戦は裁定者に委ねられるよりも、通常のプレーヤーにとってますます重要なものとなりつつある。昔から名人は終盤の棋風が抜きん出ていたので、偉大なチェスの名人が終盤戦の名人でもあるのは偶然ではない。終盤の熟練は、序盤のような記憶力ではなく、組織的な学習に依存するので、負けを勝ちやドローにする技術の習得は難しいことではない。

 コンビネーションや戦術的作戦も起こりうるとはいえ、終盤戦は陣形的(positional)性格が支配的である。理想的な終盤戦には、タイミングや正確さ等、独自の魅力がある。しかし、学ばざるをえなくなるのは何といっても実践的な理由からである。長期戦の後で、終盤の力がなかったばかりに結果が報わ れないのがいかに悔しいことか! 本書の実戦からの例題のうち、60局以上で致命的なミスが、その多くは名人によっても指されている。

 様々な点で、終盤戦の性質は他と異なる。センターポーンの重要性は減少し、キングは活動的になり、ステイルメイトの可能性が生まれ、ポーンはもはやピースを身にまとった骨組みではなく、それ自体が強い戦力となる。ポーンは数が減ると価値が変わるので、1つのピースが1つのポーンより価値が低くなることもある。

 全体を概観するよりも、実戦で最も起こりうる特にルックがらみの終盤を徹底的に調査した。本書は、背景にある考え方を理解して堅実な局面判断ができるように、通して学習するのが最適である。最初は必ずしもすべてのニュアンスが分からなくてもよく、難しく複雑な変化を覚えようとしなくてもよい。もっとも、最初から副変化までよく理解できることもあるだろう。特に後寄りの章にあるいくつかの実例は他のものより難しい。入門者向けを標榜しながらも、難解なスタディや、R+BP(c,fポーン)+RP(a,hポーン) 対 Rや、Q+NP(b,gポーン) 対 Qの分析といった最近発見されたセオリーも含めた。一目では難しい終盤はさらなる学習の契機となる。弱いプレーヤーは決して落胆してはいけない。やがて考え方が明らかになり、論理的パターンが見えてくる。

 ほとんどの実例はポーン形によって分類されており、十数題の比較スタディ、例えば例題223〜225は、この重要性を意図してのことである。大方の慣例には従っている。局面図は白が上に向かって進んでいく。有利なプレーヤー、「優勢軍」はたいてい白である。しかし、疑問符はゲームの勝敗を変えるほどの致命的なミスにのみ使用し、そうでなければ使わない。先に名前を書いてあるプレーヤーが通常白だが、説明を分かりやすくするために色が逆になっている場合がある。(訳注:以下、英米式表記に関することなので省略)

 特に感謝したい文献は、Cheronの3巻の傑作『終盤戦の学習と手引き(Lehr- und Handbuch der Endspiele)』、ベルリン、1955〜57; Maizelisの『ルック対ポーン(Rook against Pawns)』、モスクワ、1956; Maizelis, Averbach, Chekoverの『チェスの終盤−ポーン、ビショップ、ナイト(Chess Endings--Pawns, Bishops, and Knights)』、モスクワ、1956; Gawlikowskiの『チェス終盤集(Koncowa Gra Szachowa)』第2巻、1954、第3巻、1957、ワルシャワ(ピースの終盤の集大成)である。
 根気強く校正をしてくれたF. W. Allen氏、いろいろな方法で分析を手伝ってくれたvan den Berg氏、かけがえのない調査をしてくれたK. Whyld氏たちの寛大な協力にも感謝したい。

M. エイベ博士、アムステルダム
デイヴィッド・フーパー、イングランドのライゲート
1958年9月
A Guide to Chess Endings
0486233324 MacHgielis Euwe

Dover Pubns 1976-08
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posted by 水野優 at 00:50| Comment(0) | Euwe『チェス終盤の手引き』終盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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