ホームページは「チェストランス」です。古い記事では図の駒が表示されません。

2011年09月16日

遠藤周作『深い河』書評

 図書館に本を返す日に、予約していた本の到着が間に合わなかったので借りた。最寄りといってもそんなに近くない図書館は小さな分館だし、所蔵の本はほとんどがメジャーな小 説なのでスルーしていたが、10年ほど前に深田恭子が いいと言ってはまっていた本書がハードカバーであったので借りてきた。
 遠藤の本は、若い頃に読んだ軽い大衆小説の イメージが強かった。だから、自身のクリスチャンと しての体験等が色濃く出た本書のような作品は初めて読んだ。最初は、晩年になって今風の読みやすい文体になったとか、シンクロニシティの技法を使っているななどと 冷ややかに分析していたのだが、50ページを過ぎた頃から圧倒された。こんなに引き込まれて読んだ小説は久しぶりだった(単に小説をあまり読まないからで もあるが)。

 神を信じることの空しさを通して日本人にとっての神、キ リスト教とは何かを問いかけるテーマは、信者でない私にはピンとこないが、大津が言う「どの宗教の神も結局同じ」という 考え方には同意する。人が生の支えとし、死と向かう合うために神が必要なら、宗教の違いはどうでもよさそうだ。主要登場人物5人のうち、この大津と美 津子の対照的な人生が軸になって進んでいくのだが、美津子の根本的に人を愛せない性格にも妙に共感を覚えた。
 無口な日本人夫の典型として描かれる磯辺に しても、日本人にとってはそれが当たり前なわけで、美津子が演技と思わなければボランティア活動をできないことも、むしろうなずける。西洋人のほうこそ、 「愛してる」と言い合う習慣がマンネリで形骸化しているとは言えないか。口に出して言ってればその気になってくるということもあるだろうが。宗教の違いも こんな文化の違いに還元して しまいたくなる。

深い河 (講談社文庫)
遠藤 周作 佐伯 彰一
深い河 (講談社文庫)
沈黙 (新潮文庫) イエスの生涯 (新潮文庫) 侍 (新潮文庫) 白い人・黄色い人 (新潮文庫) 海と毒薬 (新潮文庫)
posted by 水野優 at 20:13| Comment(0) | 英語/翻訳/文芸/科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。