ホームページは「チェストランス」です。古い記事では図の駒が表示されません。

2006年08月21日

ラスカー『チェスの常識』No.10,11,12その10

 エマヌエル・ラスカーの『チェスの常識』翻訳連載は今回で終了です。ブログの連載は途中からなので、通して読むにはHPチェストランスからのリンクページをお薦めしますが、ブログにはブログにしかない若干の内容も含んでいます。


 以下の局面は、1895年にヘイスティングズで行われたシュレヒター、チゴリン両氏のマッチで生じたものです。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
3r3r/1ppnk3/p3np2/4p1pp/4P3/1PPNBPP1/1P2K2P/R2R4 w - -

 白の手番でゲームは続きました。

1 b4

 はっきりした目的のないポーンを動かす手はとがめられます。ポーンが進んだb4は、ナイトに取っての好位置でした。Nd5の狙いですぐに Nb4として ...c6を強いれば、ビショップの威力も増したのです。しかも、1 b4は黒のナイトにc4の拠点を提供しました。白は、もう一つのbポーンを前進させないとc4を守れません。

1... Rdg8 2 Rg1

 白は、重要なdファイルからルックをそらすべきではありません。2 h3で十分守れます。2...g4には 3 fxg4 hxg4 4 h4、2...h4には 3 g4とできます。

2...g4 3 f4 Nd8 4 f5 Nf7 5 Nf2 Nd6 6 Bc5 Nb6

 6...Nxc5はだめです。7 bxc5 N動く 8 c6とされます。

7 Nd1

 ここでd1は、間違いなくルックが入るべきマスです。例えば、7 Rd1 Rd8 8 Rxd6 Rxd6 9 Rd1でおそらくドローでしょう。

7... Nbc8 8 Ne3 Kf7

 白のeポーンが無防備になりました。

9 Nd5 c6 10 Nc7 Nxe4 11 Rad1 Nxc5 12 bxc5 Rd8 13 Ne6 Rxd1 14 Rxd1 Ke7 15 h4

 これでは、黒にファイルを開かれ、ルックを陣取られてしまいます。15 c4の方がはるかにいい手で、黒のナイト、ルックがともに好位置に行けません。15...h4には、例えば 16 gxh4 Rxh4 17 Rd8 Na7 18 Ra8でピース得になります。

15... gxh3 16 Rh1 Kf7 17 Rxh3 Ne7 18 g4 h4 19 c4 Ng6

 ...Nf8の狙いもあるちょっとうまい手です。

20 fxg6+ Kxe6 21 g7 Rg8 22 Rxh4 Rxg7 23 Ke3 Kf7

 残るはキング側の最後のポーンに交換を強いれば、ラインがすべて開いて優勢が明白になります。

24 b4 Kg6

 24...Kg8は良さそうですが、25 Ke4 Rh7 26 Rxh7 Kxh7 27 Kf5 Kg7 28 g5 fxg5 29 Kxg5で難なくドローにされます。

25 Rh8 f5 26 gxf5+ Kxf5 27 Rh5+

 27 Rf8+には対策があります。27...Ke6 28 Re8+ Kd7 29 Rxe5 Rg3+ 30 K動く Rb3 黒の勝勢となります。

27... Ke6 28 Rh6+ Kd7 29 b5 axb5 30 cxb5 cxb5 31 Ke4 Re7 32 Rb6 Kc7 33 Rxb5 Kc6 34 Ra5 Re8

 このルックの動きで手待ちをして勝負を決しました。白のキングが無理して動けば、黒のeポーンがさらに前進するからです。白は、すべての指し手が強要されています。

35 Ra7 Re6 36 Ra5 Re7 37 Ra1 Kxc5 38 Rc1+ Kd6 39 Rd1+ Kc6 40 Rc1+ Kd7 41 Rc5 Kd6 42 Rc2 b5 43 Rb2 Kc5

 白は、黒に完全にねじ伏せられた戦いを投了しました。

終わり
posted by 水野優 at 00:05| Comment(6) | Lasker『チェスの常識』講義(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すごい、完結しましたね。偉大な棋士のこれほど重要な古典が完訳されて広く公開されたのって、初めてのことではないでしょうか?
Posted by maro_chronicon at 2006年08月21日 02:09
 ありがとうございます。
 今までのメジャー出版で訳が4冊でしょうか。世界チャンプとしてはフィッシャーに次ぐ二人目となりますね。Manual of Chessは同様に概説本なので訳さないと思います。概説でもカパのFundamentalはやっておかねばかなあ。
 ついでにコルチノイの棋風について。BCO1にキングズ・ギャンビットのムジオ・ギャンビット潰しが載ってて-/+となっていたと思いますが、バッツフォード本か何かの丸写しだったのでしょう。BCO2でくつがえってたような。なわけで、私も受けの棋風の印象です。
Posted by 水野優 at 2006年08月21日 19:31
いやあ、やっぱり"Common Sense In Chess"ってのは他の既訳本とは格が違うよなあ、という気がします。"Fundamental"級でしょう。
Posted by maro_chronicon at 2006年08月21日 23:02
はじめまして。毎回更新分を読んでいたので、
御礼を申し上げておかねばと思い、ここに
書き込みさせていただきます。本当にお疲れさま
でした。そして、ありがとうございます。

次はやはり… "My System" でしょうか?
Posted by kshara at 2006年08月22日 00:13
 ksharaさん、ようこそいらっしゃいました。楽しんでいただけて何よりです。
 maroさんのリンクから存じてましたが、ブログも始められたのですね。スマリヤンやポパーなど読む参考になります。Freakonomicsは私も気になってたところです(笑。
 My Systemはいずれドイツ語原文からなどと思っていますが、今は英語訳さえ手元にありません。
 今日から新連載も始めました。今後もよろしくお願いします。
Posted by 水野優 at 2006年08月22日 12:32
 遅ればせながら、戎棋夷説での好評価ありがとうございます>maroさん 振り返ると、始めた2月には月末には終わると豪語してましたが、ブログ連載主導に切り替えたとはいえ、半年もかかりました。訳はやはり概念や理論解説が難しく、今後もHP版ではちょくちょくいじると思います。
Posted by 水野優 at 2006年08月24日 12:18
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。