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2006年07月13日

クイーンズ・ギャンビット:スラブ

A. P. ソコルスキー『現代定跡の理論と実践』
第15章 クイーンズ・ギャンビット 1 d4 d5 2 c4
VI スラブ・ディフェンス

 2... c6

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
rnbqkbnr/pp2pppp/2p5/3p4/2PP4/8/PP2PPPP/RNBQKBNR w KQkq - 0 3

 オーソドックス・ディフェンス(2...e6)と同じく黒はdポーンを守るが、この変化では黒のクイーン側ビショップの展開が妨げられない。スラブ・ ディフェンスの欠点は、オーソドックス・ディフェンスに比べて、...c5による反撃(オーソドックス・ディフェンスでは可能。例えば、白が早期に Bd3や Qc2とした場合)は、できないかできるとしても手損になることである。他方、スラブ・ディフェンスの多くの変化では、黒は ...dxc4後にポーンを取り返させない狙いを使って反撃する。

 3 Nf3

 エクスチェンジ・ヴァリエーション(3 cxd5) は別ゲーム参照。

 3...Nf6 4 Nc3 dxc4

 良くないのは 4... Bf5 5 cxd5 cxd5 6 Qb3! Alekhine-Capablancaニューヨーク1924では、黒は 6...Bc8とした。6...b6?だと黒は困窮するからである。4...e6 5 e3は、メラン・ヴァリエーションになる(別ゲーム参照)。

 5 a4

 古い 5 e3 b5 6 a4 b4 7 Na2 e6 8 Bxc4は、a2のナイトの位置が良くなくて復帰させるのに数手必要なため、現在では弱い変化と考えられている。
 したがって、Reshevsky-Smyslovソ連対アメリカ電信戦1945では、8...Be7 9 0-0 0-0 10 Qe2 Bb7 11 Rd1 a5 12 Bd2 Nbd7 13 Nc1 Qb6 14 Nb3 c5 15 Be1 Rfd8 黒優勢。
 興味深いのはTolushとGellerに端を発するギャンビット変化である。5 e4 b5 6 e5 Nd5 7 a4 e6. 例えば、8 axb5 Nxc3 9 bxc3 cxb5 10 Ng5! Bb7 11 Qh5 g6 12 Qg4 Be7 13 Be2 Bd5 14 Bf3 Nc6 黒には白に劣らないチャンスがある(Shaposhnikov-Sadomsky第4回ソ連郵便選手権1959)。

 5... Bf5

 黒はビショップを繰り出し、白の e4を阻止する。
 Osnos-Bronsteinでは、5...Bg4 6 Ne5 Bh5 7 f3 黒はこれに対抗して 7...Nfd7! 8 Nxc4 e5! 9 Nxe5(9 Ne4の方がいい) 9...Nxe5 10 dxe5 Nd7 11 f4 Bb4 主導権を取った。7 f3の代わりに白は 7 g3とできる。例えば、7...e6 8 Bg2 Bb4 9 Nxc4 0-0(Taimanov-Petrosian第27回ソ連選手権1959)。
 スミスロフは、数ゲームで興味深い作戦を披露した。ナイトをb4へ運ぶ狙いで 5...Na6と指したのである。例えば、6 e4(6 Ne5は弱い。6...Ng4 7 Nxc4 e5! Stahlberg-Smyslov電信戦1961) 6...Bg4 7 Bxc4 e6 8 Be3 Be7 9 0-0 0-0 10 h3 Bh5 11 g4 Bg6 12 Ne5 白がわずかに優勢(Bronstein-Smyslovモスクワ1961)。

 6 e3

 6 Ne5から f3, e5でセンターを支配する作戦は凝りすぎに思える。Tolush-Furmanソ連チーム選手権1952では途方もなく複雑化した。6 Ne5 e6 7 f3 Bb4 8 e4 Bxe4! 9 fxe4 Nxe4 10 Bd2 Qxd4(10...Qh4+ 11 g3 Nxg3 12 hxg3 Qxh1はだめ。13 Qg4!が強烈) 11 Nxe4 Qxe4+ 12 Qe2 Bxd2+ 13 Kxd2 Qd5+ 14 Kc2 Na6 15 Nxc4 0-0-0 16 Qe3 Nc5 黒にはピースの代償が十分ある。

 6... e6 7 Bxc4 Bb4 8 0-0 0-0

 スラブ・ディフェンスの基本局面。ここで当然の手は、e4の前進を準備する 9 Qe2である。

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
rn1q1rk1/pp3ppp/2p1pn2/5b2/PbBP4/2N1PN2/1P3PPP/R1BQ1RK1 w - - 0 9

 いくつかの変化例を記す。
 9 Qe2 Ne4 10 Bd3! Bxc3(10...Nxc3 11 bxc3 Bxc3 12 Rb1. 13 Rxb7と 13 Bxf5 exf5 14 Qc2の狙い) 11 bxc3 Nxc3 12 Qc2 Bxd3 13 Qxd3 Nd5 14 Rb1 b6 15 Ba3 Re8 16 Rfc1 Nf6 17 Ne5 白優勢(Petrosian-Levenfishソ連選手権準決勝1950)。
 9...Nbd7 10 e4 Bg6 11 Bd3 h6 12 h3 Qe7 13 Bf4 白の方が開放的(Petrosian-Rossmanソ連チーム選手権準決勝1964)。

 クイーンポーンの序盤では、1 d4 d5の後で白が c4のギャンビットをしないのは珍しい。
 そういう他の定跡の中で最も使えるのはコーレ・システムである。2 Nf3 Nf6 3 e3 e6(3...Nbd7 4 Bd3 c5 5 c3 Qc7 6 Nbd2 e5!と、センターで優位にするのもいい。3...Nbd7に対しては、白は 4 c4でクイーンズ・ギャンビットに移行する方が明らかに良い) 4 Bd3 c5 5 c3 Nc6 6 Nbd2 Bd6 7 0-0 0-0 8 dxc5 Bxc5 9 e4 Qc7! チャンスはほぼ互角。
 詳細に研究された独自の序盤には、リヒター・ヴェレソフ・アタックがある。1 d4 Nf6 2 Nc3 d5 3 Bg5 白は c4とせずに、e4の準備に専心する(別ゲーム参照)。


 スラブを概説するめぼしい本を以下に上げた。攻撃的な人はあまり 1...d5と指さないと思っていたら、ついにIMノルマ達成の羽生さんがこのスラブ・ディフェンス使いである。後で ...f5としてダッチにできることも考えればQGDってあながち受動的とも言えないのね。
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この記事へのコメント
Kaufman本での、初手d4に対する黒番推奨定跡はセミスラブなんですが、わたくし的にはなにか見通しが悪い感じなので、現在Nf3を模索中です(特にニムゾ)。1 d4 d5で、QGAに出来れば面白いと思うんですが、2手目で2 c4とこないことも多いので、なかなか注文通りにならないんですよね。まあ、それはどういうオープニングでも言えることですが。
Posted by kanedaitsuki at 2006年07月13日 12:23
訂正

Nf3→Nf6
Posted by kanedaitsuki at 2006年07月13日 12:24
 レパートリーブックなら、2 c4以外の場合も対策は書いてありますが、なかなか網羅するのは難しいですね。QG系では他にタラッシュやタルタコーワ推奨を見たことがあります。
 1...Nf6だとニムゾ、グリュンフェルド、KID全部白が幅広いように思えます。といってブダペストやベンコはきついですし、中を取ってベノニはどうでしょう(無責任だなあ。
 ちなみに次回からニムゾなのでご参考にどうぞ。
Posted by 水野優 at 2006年07月13日 17:57
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