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2006年06月22日

青島広志『作曲家の発想術』

 ヤクルトが交流戦優勝を逃したし、未だに「代打、オレ!」が登場しないので書くことがない。といいながら書いているが、日々少しずつでも仕事、勉強、趣 味をこなしているから、特に書くことがないほど平凡に充実しているのである。


 スターデジオレビュー代わり(?)の音楽書書評は、青島広志の『作曲家の発想術』(274ページ、'04年、講談社現代新書1731)である。モーツァルトやクラシックブームに乗っかったテレビのプチ教養番組で、ピアノを弾きながら早口で解説する芸人のような著者をよく見かけるようになった。
 ところが、その調子を本書にも期待すると肩すかしを食わされる。タイトル通り、意外とハウツーものの内容となっている。テレビでおなじみの楽曲解説も含 まれているが、ユーモアも全体的にもっとクールでブラックだ。

目次
はじめに
第1章 作曲家への階段−わたしの場合、あなたの場合
 作曲家であることの証明……誰もが認める作曲家……クラシック音楽家になるには……経済力と幼児の環境……まずピアノのレッスンを……音楽理論の勉 強……音大入試に向けて……大作曲家への師事……音楽教育にかかる費用……ポピュラー音楽の場合……音大で学べること、学べないこと……オーケストラ体験 で得たもの……デビュー作となった卒業作品……大学院への進学……原作者からの上演停止命令……自ら指揮棒を振る……チケット代金盗難事件……テレビの初 仕事……「ゆかいなコンサート」……一つの仕事にしがみつくな……生徒をめぐるトラブル……マネージャーの功罪……桃太郎伝説のミュージカル……改竄され た作品……名曲への新しいアプローチ

 著者が作曲家になるまでの道のりをたどりつつ、そこから得られた教訓や作曲家になる具体的な方法を提示する。ポピュラーに対して(現代音楽なのに)クラ シックの定義を簡単にしていて、やはり作品を最終的に楽譜で表現するものとしている。
 これは、録音技術のなかった時代の音楽は譜面の解釈に頼るしかないという伝統が続いているからでもあるが、ポピュラーのようにCDになる可能性が乏しい ために、楽譜出版印税や上演等の著作権使用料で食べていかねばならない現実を示してもいる。

 本書を通じて語られるドロドロした業界(音大、演奏家、放送)話も本章に集中している。学生時代ファンだった作曲家と同業者になると急に冷たくされたと か、作曲者の尊重とはほど遠く現場で曲が改変されていくとか。
 金とコネでしか動かない俗物どもとどう渡り合うかというフリーランスの心得は私にも参考になるが、著者は相手にもあくまで同情的である。匿名で非難して も当人には丸わかりだから、自分の立場もわきまえているのだろう。

第2章 名曲はこう作られた?−10の異なる曲種への考察
 1−オーケストラ曲 2−吹奏楽曲
 3−協奏曲・独奏曲 4−室内楽曲
 5−ピアノ曲 6−歌曲 7−合唱曲
 8−オペラ 9−舞曲 10−編曲

 ここでもテレビのお姉系のイメージとは違って辛口だ。世俗的なのが当たり前な吹奏楽曲(行進曲)等を、構成や展開の単調さでばっさり斬っている。そのわ りには、謙遜しつつも自作品の話が各ジャンルで挿入されているのだが(笑。
 ヴェルディのオペラで肺病の少女が歌い出すと急に元気になるこっけいさは、他でも聞いたことがある話だが、著者はオペラを書いている(「火の鳥」指揮体 験談が爆笑)わりにはオペラ嫌いで、オペラを書いてる作曲家がいちばん偉いなどと思ってはいけないという。いちばん共感した部分だ(笑。

第3章 作曲なんてこわくない!−ひとつの旋律からオーケストラ曲ま で
 最も安上がりな趣味……結婚式の歌を依頼されたら……輪唱で切り抜ける……メロディーとイントネーション……さらに曲らしく……童謡作曲の決め手は 詩……調と拍子を決める……歌ってみて違和感があれば……ピアノ伴奏を付ける……和声学上の禁則……前奏・間奏・後奏……二部合唱に編曲……下のパートを 作る……弦楽四重奏に編曲……オーケストラ伴奏は夢か……「キラキラ星」に似せて変奏曲を作る……バロック時代の変奏法……必ず演奏する機会を作ろう…… 音楽会開催の心得……アマチュアからプロへ……コンクールはあてにならない……作曲家の真の姿とは……親が死んでも仕事は休めない……筆者の仕事=生 活……別の世界をのぞく
おわりに

 著者が8小節のメロディーを試作し、オケ伴奏まで付ける実演がじつに啓蒙的。さらにシャコンヌまでやられると、私も久々に作ってみようという気にさせら れる。しかし、'55年生まれとはいえ未だに作曲にコンピュータを使っていないのは、主義としてもいただけない。
 講師の定職があっても、二度と来なくなるから断れない作曲の仕事で忙殺されたのは、そのせいでもあろう。最近のテレビの仕事もギャラは大したことなく、 事態は好転してないらしい。仕事は減っても「作曲家」の看板は下ろしたくないという言葉は、私が「翻訳家」としていただこう(汗。
作曲家の発想術
4061497316 青島 広志

講談社 2004-08-10
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posted by 水野優 at 10:31| Comment(4) | Classical Music | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
かまやつひろしの言葉をふっと思い出しました。
「リフをパクるのは盗作じゃない」
(スパイダーズのバンバンがそうです)

おっと関係ないか・・・・・やばっ
Posted by 鷹野晴信 at 2006年06月24日 12:51
 アリスのチャンピオンの「ライラライ」がS&Gのボクサーのパクリと言われたこともありましたが、メロ自体は似てないしなあ。
 スパイダースは何からぱくったのでしょう。
Posted by 水野優 at 2006年06月24日 18:41
スパイダーズのバンバンは、
英国のグループ、マインドベンダーズのなんかの曲のリフを拝借して作曲した、
とのこと。ちなみに・・・・・
想い出の渚は、シャドウズの
ブルースターのメロを拝借してる。
後に、問題となりましたが・・・
Posted by 鷹野晴信 at 2006年06月25日 05:29
 なるほど。GSサウンドはそもそも少なくともアレンジは外国の借り物だから仕方ないでしょうねえ。
Posted by 水野優 at 2006年06月25日 12:11
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