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2006年06月02日

木村敏『異常の構造』

 昨日は、整形した釈由美子がいっそうかわいいテレビ朝日「7人の女弁護士」で荒川静香が女優デビューした。クールな検事役なので、元々の表情なのか緊張してこわばっているのかよく分からない。受け口のせいでサ行やラ行が聞き取りにくい滑舌の方が問題だが、浅田姉妹よりはずっとましだった (笑。


 統合失調症(精神分裂病)関係の本、今回はやや古典を読んだ。木村敏異 常の構造』(182ページ、'73年、講談社現代新書0331)である。著者は1931年生まれで京大医学部卒。和辻哲郎の業績を独自に発 展させた「あいだ」論が特に有名。
 目次に沿って簡単に触れていく。

1−現代と異常
 異常への関心/異常への不安/自然の合理性という虚構/合理性の虚構と不安

 科学進歩への反発のように「異常への関心」(怖い物見たさ)が生じてきた。自然(宇宙)は存在自体からして不合理なものなのに、人間が合理性の殻を被せ た。この合理性の虚構は、「異常への不安」を解決するため必要と説く。

2−異常の意味
 量的な異常/質的な異常/精神の異常/狂気という異常/常識の欠落
3−常識の意味
 常識の語義/共通感覚/共通感覚から常識へ/常識の規範化

 身長や体重の平均との差は「量的な異常」、美醜は「質的な異常」で、あくまで多数者正常の原則が働く。「精神の異常」は、量や質では表せない常識外れの 異常と見なされる。
 常識の語源をcommon senseからアリストテレスまでさかのぼる。また「共通感覚」が出てきたので、これはいよいよmaroさんにも指摘された中村雄二郎の『共通感覚論』を 読まねば(汗。

4−常識の病理としての精神分裂病
 精神分裂病とは/症例
5−ブランケンブルグの症例アンネ
 母親からの話/アンネ自身の追想/入院時の所見/面接記録とその後の経過
6−妄想における常識の解体
 他覚的症状としての常識欠落/症例/世界の二重構造

 4から実際の症例も出てくる。分裂病患者の出てくる家庭は、ある意味すでに家族が分裂病と言うべきと主張する。6で、自己の未確立が恋愛対象と自分自身 との区別さえ曖昧にするとの症例解釈が出てくるが、これは一般的に広まりつつあるコスプレ等の変身願望にも通じる気がする。

7−常識的日常世界の「世界公式」
 常識の構造/個物の個別性/個物の同一性/世界の単一性/日常世界の世界公式/1=1でない世界
8−精神分裂病者の論理構造
 常識と合理性/症例/1=0

 分裂病では、7のサブタイトル「個物の個別性」「個物の同一性」「世界の単一性」等が自明性を喪失する。8では、アリエッティの指摘がおもしろい。「未 開人」に見られる「あのインディアンは速く走る」「牡鹿は速く走る」「したがってあのインディアンは牡鹿である」という思考様式が分裂病者に類似している というのである。
 この強引な三段論法もメタファーならば(例えば「韋駄天」もそう)許容範囲だ。考えてみれば、常識人には身に染みついている慣用句も、こういう言語レベ ルでつまずく分裂病者に対しては常識が傲慢な猛威を振るっていることになる。

 妄想的自己再生が性同一性混乱を引き起こす症例に触れているが、これがかつて性同一性障害が精神病と見なされてきた根拠なのだろう。また、このために今 でも、 性同一性障害が真性かどうかは、慎重な診断手順を要する。
 症例の解釈でいちばん興味深いのは、自分が多数いる妄想を抱く患者は、世界も多数にすることでつじつまを合わせようとしている。つまり、そこから患者は 患者なりに合理化を図ろうとしているのが読み取れるということである。

9−合理性の根拠
 近代精神医学の欺瞞/非合理排除の論理/現実性と生への遺志/異常者排除の社会的「正当性」
10−異常の根源
 社会的存在概念としての「全」と「一」/家庭環境の問題/分散型家族と密着型家族/個別化の不成立/分裂病治療の意味
あとがき

 正常人こそ無能力であり、常識を解体することでしか異常を真に理解できないと論じてきた著者は、「あとがき」で、その反精神医学的立場が究極的には反生 命に落ち着くしかない(常識の否定=人間の共存否定)と悲観的に締めくくっている。


 本書は、分裂病の症例までを扱いつつも一貫して「異常」を論じている点で極めて異例である。弟のために読み始めた分裂病関連の書物だが、哲学や言語学と 科学との間に位置する点でとても興味深くなってきた。私自身も偽自己を確立しただけの擬似分裂病の気がしている。
異常の構造
4061157310 木村 敏

講談社 1973-09
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おすすめ平均star
star「異常」の構造を通して「正常」の構造を解き明かす
star正常と異常のあいだ
star内容覚えてないけどおもしろくなかった

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posted by 水野優 at 12:16| Comment(4) | 英語/翻訳/文芸/科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
読むと面白そうな本ですね。
水野様の解説がなければ、スルーですな。

昨日の10chのドラマ観ました。
釈さん整形されていたんですね?知らんかったです。
荒川サンの演技、少々硬いかな?
観ていて、一寸イチローと比べてしまいました。
Posted by 鷹野晴信 at 2006年06月02日 16:34
 症例の羅列はもう食傷気味なので、今後は本書のような哲学指向の本を読んで紹介するつもりです。
 古畑のイチローは私も見ました。台詞が硬くて一本調子は仕方ないとしても、あれほどのアスリートが演劇をすると体の動きまで不自然になるのですね。台詞を話す人物が替わるたびにそちらを向くのは顔だけでいいのに、イチローは腰から上が全部回ってました(笑。
Posted by 水野優 at 2006年06月03日 13:25
釈ちゃんはデビューしたときからオシてました。
整形については気にしていません。

それよりも、デビュー以来、
天然と天才に磨きをかけ続けて、
今でも女優さんと万年英語学生として
活躍している姿はステキです!
私の見る目は間違ってなかった!
Posted by りんりん at 2006年06月03日 21:01
 しばらくぶりです。
 NHK「英語でしゃべらナイト」、私も毎週楽しみです。パックン英検の解答ではよく彼女に先を越されます(汗。
 女優としてはまたアクションや非現実的な役柄もしてほしいです。かわいければ何でもいいのですが。
Posted by 水野優 at 2006年06月03日 23:42
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