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2006年05月16日

エドワード・ラスカー『チェス戦略』第2部ゲーム18

エドワード・ラスカー『チェス戦略』(1915)第2部
(ゲーム9まではHP「チェストランス」参照)

ゲーム 18

白:エマヌエル・ラスカー 黒:カパブランカ

ルイ・ロペス(第1部参照)

1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bb5 a6 4 Bxc6 dxc6 5 d4 exd4

 要検討は、5...Bg4 6 dxe5 Qxd1+ 7 Kxd1 0-0-0+ 8 Ke2 Re8 9 h3 Bxf3+ 10 Kxf3 f6 黒十分。この定跡では、交換が黒のクイーン側ビショップのダイアゴナルを開いて展開を助長してくれるので、黒に主導権があると考えて間違いない。そうせず におとなしく防戦一方では、白のキング側ポーンの数的優位のために好機を失ってしまう。

6 Qxd4 Qxd4

 強制的。6...Be6だと 7 Bf4でc7を攻撃される。7...Bd6は弱い。ビショップ交換によって黒のdポーンが「出遅れ」になり、開いたファイル上で取られることが避けられな い。

7 Nxd4 Bd6 8 Nc3 Ne7

 黒はキング側キャスリングを準備する。クイーン側キャスリングの方が、キングがcポーンを守れるので良く指されるし、おそらく強力である。本局の場合 は、黒のキング側ビショップが交換されるとcポーンが弱くなる。

9 0-0 0-0 10 f4 Re8

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図126
r1b1r1k1/1pp1nppp/p1pb4/8/3NPP2/2N5/PPP3PP/R1B2RK1 w - - 0 11

 黒は、白にキング側での自由を許しすぎた。f5とされるとクイーン側ビショップの邪魔になるので、10...f5で阻止するべきだった。11 e5後に 11...Bc5, Bxd4, Be6として互角にできる。

 その場合は、色違いビショップが残るので実戦的にドローが確実視される。黒は、白が f5でeポーンを弱める危険までは冒さないと考えていたのだろう。しかし、その見過ごされたラスカーの読みは、機動性が大いに勝るピースを活用して、弱い eポーンへの反撃を許す前に攻撃を成功させるというものだった。

11 Nb3 f6

 ここでも 11..f5が、ビショップの進むマスを奪うといえども強制的。12 e5 Bb4 13 Ne2(Na4) Nd5ならビショップも 安全だった。

12 f5!!

 この手には二重の目的がある。ビショップを封じることと、Bf4としてビショップを交換することである。

12... b6

 a8〜h1ダイアゴナルが、封じられたビショップの活動に唯一期待できる。しかし、ビショップが今いるダイアゴナルを放棄したとたんに、白のナイトが e6に居座って黒の両ルックのひじょうな妨げになる。

13 Bf4 Bb7

 黒は、ビショップを交換すべきだった。これでd6に弱いポーンを抱えることになる。...Bb7の前に ...c5として Nd4-e6を阻止すべき。

14 Bxd6 cxd6 15 Nd4 Rad8 16 Ne6 Rd7 17 Rad1 Nc8 18 Rf2 b5 19 Rfd2

 この手は、黒のナイトをc8に釘付けにする。白の次の手は、ビショップを解放する ...c5を阻止する。すべての黒ピースから機動力を奪った後で、白は、黒キングへの決然たる攻撃に転じる。

19... Rde7 20 b4 Kf7 21 a3 Ba8 22 Kf2 Ra7 23 g4 h6 24 Rd3 a5 25 h4 axb4 26 axb4 Rae7

 aファイルに見込みがないので、黒はピースが相互に守り合うように身を固めた。黒は、白のキング側からの侵攻を阻止できない。

27 Kf3 Rg8 28 Kf4 g6 29 Rg3 g5+ 30 Kf3

 黒は、ポーンを取ると、白に Rh3から直ちに取り返され、h6のポーンも失う。

30... Nb6 31 hxg5 hxg5 32 Rh3 Rd7 33 Kg3

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
図127
b5r1/3r1k2/1nppNp2/1p3Pp1/1P2P1P1/2N3KR/2P5/3R4 b - - 0 33

 白のキングがビショップのダイアゴナルを離れた。黒を数手で葬ろうとするコンビネーションを ...c5が邪魔するからである。

33... Ke8 34 Rdh1 Bb7 35 e5!!

 見事なとどめの一撃。

35... dxe5 36 Ne4!! Nd5 37 N6c5 Bc8

 Nxb7から Nd6+があるために、黒はあえてルックを逃がさない。

38 Nxd7 Bxd7 39 Rh7 Rf8 40 Ra1 Kd8 41 Ra8+ Bc8 42 Nc5 1-0

 2手メイトが狙われている。黒の絶対手は 42...Ne7だが、その後も打つ手がなく、白が意のままにポーンを一つずつ取っていく(Rc7, Rf7等)。本局では白の見事な手腕が光ったので、ラスカーがたぐいまれに局面を把握した実例をさらに続けよう。
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posted by 水野優 at 11:39| Comment(0) | Ed.Lasker『チェス戦略2』実戦(完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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