先週の続きで、大昔のメモを元に書評する。『ピアノ奏法の基礎』ジョセフ・レヴィーン著、中村菊子訳、550円(当時)である。65ページの薄 い本なので当時図書館から借りて気楽に読んだ。中村紘子の序文があり、彼女がレヴィーン夫妻の世話になったことが分かる。
内容は、アメリカの音楽雑誌『エチュード』の連載をまとめたもので、ロシアからアメリカへ持ち込まれたジュリアード・スタイルは当時驚きを持って迎えら れた。ラフマニノフからホロヴィッツへと続く19世紀ロマン派スタイルと言えば分かりやすいだろうか。
休符、リズム、タッチ、響き、正確さ、スタカート、レガート、暗譜、ペダル等、基礎的な技術論ばかりで、楽曲に即した演奏論等はないが、はっとさせられ る話もある。チャイコフスキーのピアノ協奏曲を酷評したことで有名な(後に和解したが)アントン・ルービンシュタインがよく引き合いに出される。
役立ちそうな話は、初見が利くように各調のスケールを「どの音」からでも弾けるようにすること(できない)。柔らかいタッチのためには指の肉付きが良く ないとだめ(肉付き悪し)。レヴィーンは絶対音感の持ち主で、調律がずれたピアノを弾くときは苦労したらしい。
中村紘子が自らの著書でも口を酸っぱくして言うタッチの柔らかさは、レヴィーン譲りの技術論である。手の平で鶏卵をつかめるくらいに常に指を立てるチェ ルニー式(日本的)弾き方では、ショパンの柔らかい音色は出せないという理屈だ。
とはいえ、非力な子供の頃は指を立てないとキーが重くて叩けないし、19歳から始めた私にも高度すぎて無用な話だった。ピアノなんて猫が鍵盤の 上を歩いても出る音は同じという意見もある。今の電子ピアノの自動演奏データはどうだか知らないが、音量や音色はキーを叩く速度の他に影響する要因 があるのだろうか。
しかし、ジュリアード・スタイルの弾き方だと老年になると急速にテクニックが落ちるという話も聞く。代表例はホロヴィッツで、空前絶後のお騒 がせ来日公演はひどかった。やはり指を寝かせた形にこだわると、衰えた筋力ではキーを押し損ねて音が歯抜けになるのだろう。
当然ながら、古典派のソナタのように一音一音を明瞭に弾かねばならない曲の場合は、指を立てた方がいいし、音階的な速いパッセージも指を伸ばしたままで は親指をうまく使えない。結局、引き出しは多い方がいいという話である。
現在の私に関係あるのはPCのキーボードを速く快適に打つことだけだが、ウィンドウズ95で使っていたVAIOノートのキーボードは当然ストロークが浅 いので猛烈に速く打てて気に入っていた。今のデスクトップでもキーボードだけノート型に替えようと探していたが、あれほどのものは見つからない。
ストロークの深さと重さのせいでノート型の7割くらいの速度でしか打てないが、ずっとノート型で打ってたらホロヴィッツのように年取ってから困るような 気もする (笑。ピアノの前にギターをやってたせいで、利き手の右手が硬く、左手の方が指が速く回るので、音楽より文字キーボード向きなのだろう(汗。
ピアノ奏法の基礎 | |
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(クラリネットも指寝かしたら駄目。バスクラの
私は指寝かしてたんで、キイ押さえるとき、
パタパタと押さえる音がして、揉めた事ある。
手小さいんで寝かさないと吹けない。)
キーごとの 音階練習 必要だ!
(管楽器も必要でしたな。私にバスクラを
丁寧に教授して下さった一つ上の先輩にも
言われた事ある。その方、出来ました。)
キーの音って構造的に鳴りにくくしてほしいですね。ギターの弦と指がこすれる音の方が気になるなあ。
ピアノの場合は運指がからんでくるので「ドの音」からだけでなく「どの音」からも弾けないとだめなのです。