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2010年06月22日

Richard Peyton編『Sinister Gambits』レビュー

 Richard Peyton編『Sinister Gambits(不吉なギャンビット』1991 Souvenir Press p.318. チェスの出てくる古今の短編小説を集めたアンソロジーで、目次のように3つのテーマで分けられている。4月の帰省中に短 い作品から順に斜め読みして以下にまとめた(粗筋は読んだものだけ)。


序文

I: グランドマスターの悪夢

「アルバート・モアランドの夢」フリッツ・ライバー(1910-92 米)
 1939年の秋のことを振り返ると私は戦争とモアランドを思い出す。彼は賭けチェスで稼いでいたが本当はかなりの強豪だった。彼は毎夜、宇宙空間でグロ テスクな駒を使った独自のチェスをさせられるという夢に悩まされていると告白した。そのせいで現実の夢を負け始めた。私は妄想だと助言して彼も納得したか に見えたが、私は彼の部屋で彼から聞かされていたグロテスクな駒を見て…。
 同じ作者の別作品が『モーフィー時計の午前零時』にあり。

「スリー・セーラーズ・ギャンビット」ロード・ダンセイニ(1878-1957 アイルランド)
 古い酒場で3人の水兵が相談をしながらスタフロクラツとチェスを指した。3人は相手が元世界チャンピオンと知らずに指し、スリー・セーラーズ・ギャン ビットという定跡で彼に勝ってしまった。見ていた私は3人がチェスをろくに知らないことを見抜いたが、スタフロクラツは次の対局も負けた。私は3人の中で いちばん強そうなビルと対戦して勝った。彼らが3人で指さないと勝てないことには秘密があり、私はそれを聞き出すことができた…。
 既訳で、数年前に消えたHPで和訳を上げていた方もいた。

「チェス盤にいたずらする悪魔」ジェラルド・カーシュ(1911-68 英)
 私はぼろアパートに3か月以上住んでいた。隣にはシャクマトコがいる。彼はポルターガイストに恐れていた。悪魔は彼の本や写真を破り、最後に残ったチェ スセットを壊したがっている。これは彼が世界チャンピオンになり損ねたときから始まり、引っ越しても付きまとわれているという。私は彼と部屋を入れ替わっ て彼の代わりにチェスセットを見守ることにしたが、そこに現れたのは…。  (ベタな落ち)

「ポーンをキングの四へ」スティーヴン・リーコック(1869-1944 カナダ)
 私は友人を訪ねて初めてチェスクラブで対局する。対局中(フィリドール・ディフェンス、チェスの理論にも触れる)友人はこの静かですてきなクラブに関す る変な話をする。今晩ここに指名手配中のメンバーがやってくるというのだ。その予定の時間頃に私の局面はメイト寸前になり…。

「ロイヤル・ゲーム」 シュテファン・ツヴァイク(1881-1942 オーストリア)
 中編だが三大チェス小説の一つと言われる。特に棋士の心理描写が優れている。

「エンド=ゲーム」 J・G・バラード
 ニューウェーブSF作家の「奇妙なチェス短編集」からの一編。

II: 奇妙なチェスの駒(未読)

「チェスの赤いクイーンの駒」 Lucretia P・ヘイル(1820-1900 米)

「チェスのゲーム」 Robert Barr(1850-1912)

「一揃いのチェスの駒」 リチャード・マーシュ(1857-1915 米)

「呪われたチェスの駒」 アーネスト・R・パンション(1872-1956 英)

「ビショップス・ギャンビット」 オーガスト・ダーレス(1909-1971 米)

「不朽のゲーム」 ポール・アンダーソン(1926-)

III: 血に飢えたチェス

「チェス・プロブレム」 アガサ・クリスティー(1890-1976 英)
 強豪同士のマッチで一人が心不全で亡くなった。他殺の疑いを持つ警部がポワロに熱弁して興味をあおる。亡くなったアメリカ人棋士を調べてから相手のロシ ア人棋士を訪ねた。その姪は本当はおじが狙われたのだと言う。その後、棋士とも話したポワロには真犯人と殺害方法が分かった。しかし、それは間違いだっ た…。

「チェックメイト」 アルフレッド・ノイズ(1880-1958 英)
 作家のマーティンは、妻と娘が出かけてから仕事じゃない読書やチェスのゲームを並べるのを楽しみにしていた。大学の頃の強豪を思い出して並べ始めると、 相手の駒が勝手に動きだした。単純化を目指したがパスポーンを作られる。そしてチェックメイトされる寸前に女から電話がかかってきた。妻と娘が今会ってい る娘の恋人が二人の目の前で自殺したのだという。電話の女はその母親だった。その父親というのは…。
 作家は有名なイギリスの詩人で本作は傑作サスペンス。

「パウナル教授の見逃し」 H・ラッセル・ウェイクフィールド(1888-1964 英)
 私は学生時代からのライバル、モリソンをイギリス選手権中に殺害した。それまでずっと彼の二番手に甘んじてきたのだ。そして国代表として臨んだ国際大会 で新手を披露して相手を苦戦させるが、モリソンの亡霊が相手の手を動かして逆転させる…。

「シャム猫」 フレデリック・ブラウン(1906-72 米)
 『モーフィー時計の午前零時』で既訳。

「フールズ・メイト」 スタンリー・エリン(1916- 米)

「チェスの勝者」 ケネス・ゲイヴレル
 『ミステリマガジン444号』で既訳。


 短編は既訳かどうかが調べにくいが、思ったより有名作家が多くて「残念ながら」既 訳の可能性が高い。しかし、1960年までに作者が亡くなっているか1970年 までに書かれてそれから10年以内に訳されていないと(これが分かりにくい)勝手に訳せるので、いずれ『モーフィー時計の午前零時』のような編訳をしよ う。
 版権取りは『ボビー・フィッシャーを探して』で懲りたので(エー ジェントに頼んでもこんなに時間がかかるってどういうことだ? タトル・モリとかのちゃんとしたところに頼んでくれ)べつに新しいものにはこだわらない。

Sinister Gambits
Richard Peyton
Sinister Gambits
Quarry Pr 1993-11
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posted by 水野優 at 12:26| Comment(0) | チェス(洋書評 その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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