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2010年06月09日

金原瑞人『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』書評

 最近は各国語の発音を調べるために図書館でいろいろ借り始めているが、分館で見つけてついでに借りた本に触れておこう。気楽なエッセイ集で後半はあまり 翻訳の話でもなくなっている。著者はあの金原ひとみの父親で法政大教授、ヤングアダルト、マイノリティ文学の翻訳が多く300冊を超える。
 翻訳家、特に古い人はひょんなことで初仕事が舞い込んだ場合が多い。著者は中学で大して勉強しなくても得意だった英語が高校で落ちこぼれ、医学部をあき らめて入った英文学科でまた開眼したという。私と似ている。

 大きく流れを追うと、「ぼくの翻訳事始め」では、ハーレクインロマンスの訳のときは男名ではまずいらしく「鏡美香」というペンネームにしたという話が笑 える。 「翻訳は悩ましい」、これは翻訳家の誰もが同意する部分。横書き小説があってもいいという革新派でもある。文体が時代を経て古くなることに関しては、翻 訳家は若い頃に出会って感動した文体に終生こだわるからいう。その時点から時代より遅れた文体を使っているわけだ。
 翻訳学校などでも新しい表現に通じた教師は少ないし、まだ辞書にも載らず一般に認められていない表現など使うなと言われる。しかし、少しでも長く読まれ たいなら古い文体は使わない方がいい。もちろんすぐ廃れる新しい表現もよけいに古さを感じさせるから良くない。私も文体にこだわりがないことを長所にすべ きと思った。
 そして「翻訳家に未来はあるか」「本をめぐる出会い、旅、人」「あとがき」それに「対談」と「鼎談」が1つずつはさまれている。

 著者は時給千円にもならない仕事でもたくさんこなすことで翻訳を生業としてきた(大学の仕事は別として)。本書でもこれから目指す人のために可能な二足 のわら じパターンを提案している。しかし、今後は電子出版によって版権のアドバンス(前払い)も見直されて個人の高額印税翻訳出版の道が開けていくのではないか と思う。
 私は個人出版の方はまず版権を取らなくてもいいものから始めるから自分の著書のように出せる。図書コードの取得は数年前と比べてたやすくなったし、取次 流通もamazonにある程度入ってくれるから後は実績しだいだろう。
 しかし、先立つものは印刷製本代で、それも薄いものからしか出せそうにないので、まずはアヴェルバッハの『チェス 終盤の基礎知識』を9月に予定している。この利益をフィッシャー『思い出の60局』の印刷製本に回すことになる。それまでに『ボビー・フィッシャーを探し て』が出て いるのやら。

翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった (ポプラ文庫)
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posted by 水野優 at 15:32| Comment(0) | 英語/翻訳/文芸/科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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