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2006年02月26日

マスターズ第20回:最も有名なゲーム

 昨日はJPCA作業の合間になんとか翻訳をアップしたが、ウェブよりまだ紙会報にこだわったように、やはり翻訳や著作はいずれ紙で出したい。利益を出せ ることもだが、ウェブでは分かりにくい需要に関しても明白な答が出るように思う。


 スタントンが自分と指す気がないと分かると、モーフィーは、パリのカフェ・レジャンスへ向かった。そこでプロとして生計を立てていたハルヴィッツとのマッチが早速組まれたが、モーフィーは最初の2ゲームをいきな り落としてしまう。エッジによると、パリの夜を遊びすぎたせいらしい。
 しかし、モーフィーの予告通りハルヴィッツはそこまでだった。ホテルで休んだモーフィーは、翌日から1ドローをはさんで5連勝し、ハルヴィッツは延期を匂わせながらマッチを棄権した。モーフィーは、 賞金をパリへの旅費にあててくれとアンデルセンに送った。

 ちょうどその頃1858年10月、スタントンからマッチの可能性を 完全に否定する手紙が届いた。シェイクスピア研究で忙しく、長らく実 戦を離れているために公平な勝負にならないとの一点張りながら、いつかまた会えたら形式張らずに何局か指そうとも書いてあった。
 アンデルセンを待つ間、モーフィーはレジャンスで8人相手に目隠しチェ スを披露した。10時間もかかったが、モーフィーは水も飲まずに肘掛け椅子に座り続けて賞賛を浴びる。翌朝7時に、モーフィーはエッジを起こして全ゲーム の手順を暗唱した。友人に止められなければ、20人までは同時に目隠 しチェスができたという。

 モーフィーは一躍パリで名士となった。最高の食事をし、目隠しチェスの相手をしたレケンは彼の胸像彫刻を製作する。オペラをにもよく出かけた音楽好きのモーフィーは、そこでも記憶力を発揮し、一 度聴いたメロディーは忘れなかった。
 ロッシーニの「セビリアの理髪師」を鑑賞しながら指したゲームが彼 の最も有名なゲームとして残っている。貴賓席に招待したのは、ブラウンシュヴァイク州 公爵とイーズワール伯爵だった。半分は音楽に心を奪わ れる状況で、モーフィーはチェスの全歴史の中でもとびきりの名局を作り上げた!

モーフィー 対 公爵と伯爵

1. e4 e5 2. Nf3 d6 3. d4 Bg4 4. dxe5 Bxf3 5. Qxf3 dxe5 6. Bc4 Nf6 7. Qb3 Qe7 8. Nc3 c6 9. Bg5 b5 10. Nxb5 cxb5 11. Bxb5+ Nbd7 12. O-O-O Rd8

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
3rkb1r/p2nqppp/5n2/1B2p1B1/4P3/1Q6/PPP2PPP/2KR3R w k - 0 13

13. Rxd7 Rxd7 14. Rd1 Qe6 15. Bxd7+ Nxd7 16. Qb8+ Nxb8 17. Rd8#
Exploits and Triumphs of Paul Morphy the Chess Champion
0486228827 Frederick M. Edge

Dover Publications 1973-09
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posted by 水野優 at 13:18| Comment(5) | マスターズ(チェス近代史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
JPCAの仕事、応援しています。「THE PAWN」誌の「プロブレムラリー」は復活するのでしょうか。

ピノー氏は3冊の著作すべてでこの局を取り上げています。「ダイナミックチェス入門」では少年時代何度も並べて感動したと紹介しています。

後の「クレイジーチェス」ではこの局を「チェス語を学ぶ」と称して棋譜記号の説明に使い、読者の生まれて初めて並べるゲームをぜひこの局にさせようという狙いを感じさせます。

さらに「チェスの花火」ではゲームの解説と同時並行で[そのときオペラ座で演じられていたという「フィガロの結婚」のイタリア語の歌詞]まで織り交ぜてしまうほどの思い入れようです。

注:オペラの演目についてはピノー氏の著作では「フィガロの結婚」となっていますが、「セビリアの理髪師」が正しいんでしょう?
Posted by kathmanz at 2006年02月26日 19:32
今検索して確かめました。このブログの2005年11月22日でmaro氏と水野氏が結論を下してますね。
Posted by kathmanz at 2006年02月26日 20:06
どもです。今日はこの記事とHP用翻訳(1ゲーム分解説)、The Pawn記事1ページ書きました。ほんとにこのエネルギーが仕事に向いてくれればどれだけ楽でしょう(笑。
 プロブレムは早川さんが独自に力を入れていた分野ですが、それが好きで会員を続けている方が多いでしょうから、残す方向で考えています。

ピノーさんこれ好きですよねえ。こういうゲームを初めて見て、こういうゲームを一局もできずに一生を終えるなら、ちょっと悲しい気もします。
 モーツァルトがほとんど忘れられていた頃でもあるのでセビリア〜と思いますが、これもピノーさんの好みなんですかねえ。
Posted by 水野優 at 2006年02月26日 20:22
昨年の議論を紹介してくださってありがとうございます。いま、確認しましたが、読みにくい文章で恐縮です。
私は白番で「7. Qb3 Qe7」まで同一手順を指したことがあります。ぶるぶる震えてしまい、「8.Qxb7」と指してしまいました。痛恨の思い出です。今でもあの時の心理が理解できません。
ところで、私の記憶では、「オペラ座の局」は幕間のちょっとした時間を利用して指された一局ですよね。違いましたっけ(最近は記憶力に自信が無くて、、、)。
Posted by maro_chronicon at 2006年02月27日 00:04
 うわ〜、それは惜しかったですねえ。8 Nc3でも 9...b5まで行けたかどうかは難しかったでしょうが。
 私はサージェントの本を読んでないですからねえ。またamazonで買えるようになったみたいですが。
Posted by 水野優 at 2006年02月27日 13:35
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