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2006年02月18日

マスターズ第19回:逃げるスタントン

 ラスカーの『チェスの常識』は快調に訳してきたが、4割を過ぎて中盤編へ入ると文字ばっかりになって滅入ってしまった(汗。元来読み応えのある文章を訳 したいとは思っているが、いずこも同じ戦争の比喩ばかりだ。まだ悲惨な第一次大戦前だからかもしれない。HPは、しばらく序盤資料作 成に専念する。


 ロンドンのホテルに着くやいなや、モーフィーはセントジョージ・ チェス・クラブへ向かい、ついにスタントンと面会した。モーフィーの 指しぶりを見たスタントンは、モーフィーが時間の都合は合わせると言うにもかかわらず、シェイクスピア研究で多忙等の理由で対局を拒否する。
 するとイギリスに渡っていたモーフィーの旧敵レーヴェンタールが現 れた。彼は1851年ロンドン大会は振るわず、ハルヴィッツとのマッチにも敗れたが、1857年のマンチェスター大会ではアンデルセンを抑えて優勝していた。そこで、モーフィー に100ポンドを賭けたマッチを挑んだ。

 モーフィーが9勝3敗2分で勝ち、楽勝ぶりに加えてその指し手の速さがイギリスで注目された。難しいコンビネーションを繰り出すときでも2分と 長考せず、一目で最善手を見つけるが、相手に気を遣い、読みを確認するために間をおいたという。
 スタントンはマッチから逃げ続けた。実戦から離れて半分引退状態で 準備時間も取れないと言えば、モーフィーも納得したかもしれない。しかし、スタントンのプライドがそうさせなかった。彼は、マッチをする可能性までは否定 しなかった。

 スタントンは手紙やチェス誌のコラムでマッチの約束をちらつかせ続 けた。モーフィーは、バーミンガム大会までスタントンを空しく追いか けて約束を果たすよう求めたが、事態は変わらなかった。モーフィーの世話役だったフレデリック・エッジは述べている。「スタントンの弱点は、モーフィーは私より強いと言う勇気がないことだ」。
 ロンドンにもどったモーフィーが指したゲームの中には、ヘンリー・バードとの名局がある。堪えきれず攻め急ぐバードに対して、ポジショナルに指すモー フィーが、敵陣の弱点めがけて目の覚めるコンビネーションを繰り出す。

バード 対 モーフィー

1. e4 e5 2. Nf3 d6 3. d4 f5 4. Nc3 fxe4 5. Nxe4 d5 6. Ng3 e4 7. Ne5 Nf6 8. Bg5 Bd6 9. Nh5 O-O 10. Qd2 Qe8 11. g4 Nxg4 12. Nxg4 Qxh5 13. Ne5 Nc6 14. Be2 Qh3 15. Nxc6 bxc6 16. Be3 Rb8 17. O-O-O

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
1rb2rk1/p1p3pp/2pb4/3p4/3Pp3/4B2q/PPPQBP1P/2KR3R b - - 0 17

17... Rxf2 18. Bxf2 Qa3 19. c3 Qxa2 20. b4 Qa1+ 21. Kc2 Qa4+ 22. Kb2 Bxb4 23. cxb4 Rxb4+ 24. Qxb4 Qxb4+ 25. Kc2 e3 26. Bxe3 Bf5+ 27. Rd3 Qc4+ 28. Kd2 Qa2+ 29. Kd1 Qb1+ 0-1

 「妙手は、最初見たときは印刷のミスと思う」と誰かが言ったが、この黒の 18...Qa3こそ、英米式だと Q-R6なのでもう14手目に 14...Qh3と指してるのにおかしいなと思う実例である。

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posted by 水野優 at 18:02| Comment(3) | マスターズ(チェス近代史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大昔の定跡手順だけ訳してお仕舞いというのはもったなかったですね。
Posted by maro_chronicon at 2006年02月20日 01:45
そういえば、KarpovがMiniatures from the World Championsで、バード対モーフィーを10ページもかけて論じてますよね。マロッツィの22.Kc1に対し22...a5ならどうか、という研究です。Kasparovの本では数行ふれられてるだけの変化ですが。
Posted by maro_chronicon at 2006年02月20日 03:02
 『チェスの常識』いずれ完訳しますが、なかなか一冊だけを最後まで行けないものです。かといって、日替わりでいろいろやると頭の中で文体が切り替わりません。やはり仕事の翻訳向きではない私です(汗。
 このゲーム初めて知ったばかりで、ただ感心しているだけという拍子抜けのレスしかできないのですが、なるほど。
 カーリングの話は松戸掲示板にまで話題が広がりましたね(笑。
Posted by 水野優 at 2006年02月20日 15:40
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