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2006年02月17日

水野優の窮境のチェス: GAME13,14

 シーサー障害メンテのために初の一日二重投稿になったが、これが本来の本日分である。『水野優の窮境のチェス』は、国際戦はさすがにワンサイド に一撃が入るゲームが少ないので意外にネタがないことが分かった。何とかフィッシャーのように101問までこぎ着けたい。


『水野優の窮境のチェス--Yu Mizuno's Out-of -the-way Chess Moves』

                                                                2(5段階の難易度)
GAME 13   J. Hasenkopf(East Germany) vs Yu Mizuno
                 1988-89
                 ICCF TT/6/88/6 Prelin.

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
r3k2r/p4ppp/2p5/1p6/1n1bP3/P7/1P3PPP/R1BK1B1R b kq - 0 17

黒番(17手目)

考え方=戦力はほぼ同じですが、黒はマイナーピースが展開している優 位を失いたくないものです。ナイトを退いてもf2への攻撃は残りますが、それでは答えになりませんね。ちなみに、黒はまだどちらへもキャスリングができま す。

答え=17... Rd8!が正解です。問題慣れして くると一目で分かる手ですが、こういう手を思いついてから検証するまでの思考課程を追ってみましょう。ちょっと攻勢で何かいい手がありそうなので、 17...Na6はそれがだめだったときの最終手段と考えればよいのです。あっさりとあきらめてはいけません。
 当然ながら、ナイトは逃げなければ次に取られます。黒にはチェックの手がないのですから。しかし、「脅威は攻撃より強い」という言葉があります。将棋で「王手に妙手なし」と言われるのも同様の意味合いです。次の手ではその脅威をかけ て、ナイトを取られても黒がそれ以上の駒を取り返せればいいのです。
 そんなことができるのはフォークかチェックがらみの両取りですが、この局面ではルックがd8に来てビショップが動けばディスカバード(開き)チェックがかかることが分かります。つまり、17... Rd8 18 axb4なら 18...Bxb2+でナイトの代わりにルックを取れる。肉を切らせて骨を断つわけです。
 実際には、本譜のように白はナイトを取る代わりに 18 Ke2と ポーンを守るのですが、その場合でもナイトは 18...Nd3と勇敢に突進できます。ここで 19 Kxd3だと 19...Bxb2+で元の木阿弥です。いずれにせよ、17...Na6と引き下がっていたのとはずいぶん違います。17...0-0-0も同様の狙いで 正解です。

Two Knights Defense: Fritz Variation
1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. Ng5 d5 5. exd5 b5 6. Bf1 Nd4 7. c3 Nxd5 8. cxd4 Qxg5 9. Qe2 c6 10. Qxe5+ Be7 11. Qxg5 Bxg5 12. Nc3 Nb4 13. Kd1 Bf5 14. d3 Bf6 15. Ne4 Bxe4 16. dxe4 Bxd4 17. a3 Rd8 18. Ke2 Nd3 19. f3 Nf2 20. Rg1 Nxe4 21. Rh1 Nf2 22. Rg1 O-O 23. Be3 Rfe8 0-1


                                                                3(5段階の難易度)
GAME 14   Yu Mizuno vs O. Nevestveit(Norway)
                 1989-91
                 ICCF TT/8/89/2 Prelin.

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
1rb2rk1/1pN2p1p/p2q2p1/2p1n3/3b1B2/5B2/PP4PP/1R1QR2K w - - 0 21

白番(21手目)

考え方=こんな風にピースが絡み合っている局面が嫌いな方は、こうな る前にピースを交換するからどうでもいいやと思われるかもしれません。しかし、複雑さを避けようとする傾向は、チェスの上達が伸び悩む最大の原因の一つで もあります。それだけで、好手を指す可能性を自ら放棄することになるからです。

答え=21 Rxe5!が正解です。複雑な局面を読みほどくことから 始めましょう。白がまず気になるのはc7のナイトです。このままではクイーンに取られてしまいます。逃げるならd5ですが、すでに2ポーン損の局面でそん な防戦一方の手ではじり貧です。e5のナイトのピンを何とか生かせないでしょうか。
 前回「ピンしている駒をすぐ取るのはうまみがない」と言いましたが、この場合はどうでしょう。21 Bxe5 Bxe5 22 Qxd6 Bxd6 23 Ne8 せいぜいこんなところで、やはり駒得はできません。そこで、もう一つのピンに注目する必要があります。それはd4のビショップです。
 黒のクイーンは本来は浮き駒です。ビショップがe5へ避けながら守れるからそう見えないだけです。ほんとうの狙いはd6にあるのです。e5で交換したと きに使わなかったe1のルックを先にe5の交換へ使えばf4のビショップをd6の攻撃に温存できます。トータルでピースを1つ余分に使えるのだから当然で す。
 21 Rxe5 Bxe5 この瞬間に黒クイーンの守りはe5のビショップだけですが、白は2つのピースで攻撃しています。22 Qxd6 Bxd6 23 Bxd6 これでR+2Pに対してB+Nという微妙な駒割になりましたが、配置的な優勢(positional advantage)は明かです。本譜のように勝ちきるのはたいへんですが。

King's Indian Defense: Four Pawns Attack
1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 d6 5. f4 O-O 6. Nf3 c5 7. d5 e6 8. Be2 exd5 9. cxd5 Re8 10. e5 dxe5 11. fxe5 Ng4 12. Bf4 Nxe5 13. O-O Nbd7 14. d6 Rb8 15. Nb5 a6 16. Nc7 Nxf3+ 17. Bxf3 Rf8 18. Rb1 Bd4+ 19. Kh1 Ne5 20. Re1 Qxd6 21. Rxe5 Bxe5 22. Qxd6 Bxd6 23. Bxd6 Bf5 24. Rc1 Rfd8 25. Bf4 Kg7 26. g4 Bd7 27. Nd5 Bc6 28. Be5+ Kf8 29. Bxb8 Rxb8 30. Rxc5 Rd8 31. Kg2 Rd6 32. Kg3 b6 33. Rc2 Bxd5 34. Rd2 Bxf3 35. Rxd6 Be2 36. Rxb6 g5 37. Rb8+ Kg7 38. Rb6 Kf8 39. a4 1-0
posted by 水野優 at 15:37| Comment(2) | 窮境のチェス(次手問題&解説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。郵便の国際戦でこのようなコンビネーションが現れるとはすごい。
前段階でd6でポーンをサクリファイスするとか、そういう「おぜんだて」というのか「攻撃を作る」のがチェスの面白さのひとつなんだろうな、と。
Posted by kathmanz at 2006年02月17日 21:49
 国際戦もピンキリですよ。これはテーマ戦ですがかなりひどい人もいます。
 d6はサクリファイスというより指しすぎなんですよねえ。BCOの14 d6!を信じたのに泣きそうでした。結局は取ってくれて助かったという感じです。
 脅威を限界までためるほど爆発できますが、反撃や見落としが怖くてすぐ発散してしまうんですよねえ。

 私も、さも自分の思考過程を書いているようですが、実際に指せたから冷静に書けるだけのことで、やってるときは、直観としらみつぶしに読むだけです(汗。
Posted by 水野優 at 2006年02月17日 22:44
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