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2006年02月13日

フレンチ・ディフェンス:ウィナウアー

 先日どこかの掲示板で日本のチェッカー・プレーヤーのことに触れていたが、チェスと同じ盤を使う伝統ゲームのわりには全く交流がないようで、実情も分か らな い。日本語の入門書も知るかぎりでは出ていない。エドワード・ラスカーがチェスと一緒に書いた入門書をいずれ訳しておくべきかと思っている。


A. P. ソコルスキー『現代定跡の理論と実践』
第10章 フレンチ・ディフェンス 1 e4 e6 2 d4 d5
III:ウィナウアー・ヴァリエーション

    3 Nc3

 最強と見なされている手で、白はセンターの緊張を維持しながらピースを繰り出す。

    3...     Bb4

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
rnbqk1nr/ppp2ppp/4p3/3p4/1b1PP3/2N5/PPP2PPP/R1BQKBNR w KQkq - 0 4

 ...c5で反撃するために、黒は白のe5への誘発する必要がある。3...c5は良くない。4 exd5 exd5 5 dxc5 Bxc5 6 Qxd5.
 3...dxe4でセンターを放棄するのは白に好都合だが、黒には複雑化するいくつかの方法がある。4 Nxe4 Nf6 5 Nxf6+の後、黒は 5...gxf6でgファイルを反撃に使うこともできる。

    4 e5

 Larsen-Portischインターゾーン大会1964では、4 exd5 exd5 5 Qf3!? Nc6 6 Bb5 Ne7 7 Bf4 ここで黒は 7...0-0ではなく 7...Bf5!とすれば好ゲームになった。
 4 Ne2に対する最善は 4...dxe4 5 a3 Be7 6 Nxe4 Nf6 例えば、7 N2g3 0-0 8 Bc4 Nbd7 9 0-0 Nxe4 10 Nxe4 Nf6 11 Ng3 b6 黒に不足なし(Rotstein-N. Levinウクライナ選手権1964)。
 ポーン・サクリファイス含みの興味深い変化をKondratievが提案した。4 Bd3 c5! 5 exd5 Qxd5 6 Bd2 Bxc3 7 Bxc3 cxd4 8 Bxd4 Qxg2 9 Qf3 Qxf3 10 Nxf3 f6 11 Rg1 Kf7 12 0-0-0 白が展開で圧倒しているが、黒はセンターの拠点を使って防御できる。例えば、12...Nc6 13 Bc5 Nge7 14 Nd2 Nf5 15 Nc4 g5(Baranov-Sokolskyモスクワ1953)。
 ちなみに、黒が複雑さを避けたいならこうできる。4...dxe4 5 Bxe4 Nf6 6 Bf3 Nbd7 7 Ne2 e5! 8 0-0 0-0 9 Bg5 Bd6 10 Ne4 h6 11 Bxf6 Nxf6 12 Nxd6 Qxd6 チャンスは互角(Gipslis-Sokolskyミンスク1957)。
 以下の変化は鋭い戦いになる。4 Bd2 dxe4 5 Qg4 Qxd4 6 0-0-0 黒の選択肢が分かれる。6...Nf6 7 Qxg7 Rg8 8 Qh6 Bf8 9 Qh4 Rg4 10 Qh3 Qxf2 11 Be2 Rh4 12 Qxh4! Qxh4 13 g3 e3! 14 gxh4 exd2+ 15 Kb1 黒にはエクスチェンジ損の十分な代償がある。または 6...h5 7 Qg3 Bd6 8 Bf4 h4! 白にはクイーンの居場所がない。
 4 Bd2 dxe4 5 Qg4 Qxd4後に白が 6 Nf3だと、黒は 6...h5 7 Qxe6+ Bxe6 8 Nxd4 Bd7で互角にする。
 最後に、4 a3 Bxc3+ 5 bxc3 dxe4後は黒にチャンスがある。例えば 6 Qg4 Nf6 7 Qxg7 Rg8 8 Qh6 Nbd7 9 Bb2 Nb6 10 c4 Na4 11 0-0-0 Bd7 12 f3 Qe7(Fogelman-Byrneブエノスアイレス1964)。

    4...     Ne7

 この手順で、黒は c5による反撃と ...b6から ...Ba6によるビショップ交換の変化との選択肢を維持している。
 以下の変化も興味深い。4...Qd7 5 Qg4 f5 6 Qg3 b6 上記の作戦で、例えば 7 Bd2 Ba6 8 Bxa6 Nxa6 9 Nge2 Bf8 10 h4 Nb4! 11 0-0-0 0-0-0(Tringov-Bronsteinインターゾーン大会1964)。
 4...c5 5 a3 Bxc3+ 6 bxc3 Ne7は主変化へ移行する。

    5 a3

 5 Qg4も可能である。例えば 5...Nf5 6 Nf3 h5 7 Qf4 Nc6 8 h4 Be7 9 Bd2(Pietszch-Uhlmannバート・リーベンシュタイン1963)。または 5...c5 6 dxc5(6 Qxg7?は良くない。6...Rg8 7 Qxh7 cxd4 8 a3 Qa5! そして 9 Rb1?なら 9...dxc3 10 axb4 Qa2でルックが死ぬ) 6...Bxc3+ 7 bxc3 Ng6 8 Nf3 Nd7 9 Bb5 0-0 10 Bxd7 Bxd7 ほぼ互角(Dueckstein-Uhlmannウィーン1959)。

    5...       Bxc3+
    6 bxc3  c5

 もう一つの考え方 6...b6は白マス ビショップの交換作戦である。Neustadt-Sokolsky第6回ソ連郵便戦選手権では 7 Qg4 Ng6 8 h4 h5 9 Qg3 Ba6 10 Ne2(10 Bd3の方がいい) 10...Qc8 11 Nf4 Nxf4 12 Bxf4 Kf8 13 Bd3 Bxd3 14 cxd3 c5 15 dxc5 Qxc5 16 0-0 Nc6 黒の方が活動的。
 この変化では 9 Qf3!?が要検討である。A. Zaitzev-Sokolsky第7回ソ連郵便戦選手権1965では、9...Ba6(または 9...Nxh4 10 Qh3 Nf5 11 g4) 10 Bg5 Qc8 11 Ne2 c5 鋭い戦いになる。

    7 a4

 7 Nf3より正しい手である。7 Nf3に対しては、7...Qa5 8 Bd2(8 Qd2 Qa5は黒が悪くない) 8...c4 9 a4 Nd2 10 Be2 Ng6 黒が反撃する(Tolush-Botvinnik第14回ソ連選手権1945)。
 7 Qg4には、黒は 7...Qc7で十分である。例えば 8 Qxg7 Rg8 9 Qxh7 cxd4 10 Ne2! Nbc6 11 f4 Bd7 12 Qd3 dxc3 13 Rb1 Nf5 14 g3 d4 15 Bg2 0-0-0 双方にチャンスあり。
 Tal-Bronstein第32回ソ連選手権1965では、7...cxd4 8 Bd3 Qa5! 9 Ne2 Ng6 10 h4 Nc6 11 h5 Ncxe5と黒が反撃した。

    7...      Nbc6

 7...Qa5には、8 Bd2 c4 9 Ne2 0-0 10 Nf4!でキング側へ進撃する。

    8 Nf3   Qa5
    9 Bd2

 9 Qd2 Bd7 10 Bd3 f6 11 0-0 fxe5 12 dxe5 0-0 13 Re1 h6 14 Ba3 Be8 チャンスはほぼ互角(Smyslov-Uhlmannハバナ1964)。

    9...      Bd7
    10 Be2

 10 Bd3は弱い。10...c4で得難い手得となる。

    10...     c4
    11 0-0  0-0-0

  a b c d e f g h  
 8   8 
 7   7 
 6   6 
 5   5 
 4   4 
 3   3 
 2   2 
 1   1 
  a b c d e f g h  
2kr3r/pp1bnppp/2n1p3/q2pP3/P1pP4/2P2N2/2PBBPPP/R2Q1RK1 w - - 0 12

 この局面の評価は好みの問題である。Suetin-Khasin第33回ソ連選手権1965はこう続いた。12 Re1 f5 13 exf6 gxf6 14 Bf1 Nf5 15 g3 Nce7 16 Qb1 Nd6.


 こういう訳では変化の局面評価がうんざりするほどある。あまり単調になってもいけないから表現を工夫するが、もちろん客観性が重要だ。しかし、序盤は少 し白がいいのが当たり前という前提があるので、good for Black等は少し割り引く必要がある。たいてい黒優勢とまではいかない。せいぜい互角だろう。「黒悪くない」くらいにぼかす手もある(汗。
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この記事へのコメント
>good for Black等は少し割り引く必要がある。たいてい黒優勢とまではいかない。せいぜい互角だろう

フレンチの本とかは黒で勝ちたい人(黒番の作戦を考えている人)向けなのでそうなるのかな?。「Winning With Najdorf」「Winning With Spanish」はそういう視点で書かれてたっけ。
Posted by kathmanz at 2006年02月13日 19:15
 そういう考え方もありますが、私の意味することは違います。
 初期局面の評価は=となっているようですが、私は=と+/=の中間くらいと考えています。もし前者なら、白黒が最善手を応酬した結果の評価はほとんど=に終わるはずですが、実際はNCOとかを見ると+/=も同じくらいたくさんあるからです。
 たしかに先手の利を数値的に表すのは難しいし、次は必ずどちらかが先に指す局面に全く=と言えるものがあるとは思えません(終盤を除く)。しかし、=になったら改善策があるはずと変化を打ち切るのが白の考え方でもあります。
 白が副変化の緩手を指した結果=になって、後手の黒としては十分、つまり開始局面よりわずかに良くなったという意味のgood for Blackが実際にけっこうあると思います。明らかに=/+以上に黒有利なんてのは例外と言ってもいいくらいです。
 結局ブロンシュタインがいちばん難しいと言うように(実際に長考する)開始局面は、評価も最も難しいのかもしれませんね。指す前(黒の0手目後)は=だけど、白が1手指すと+/==とか。書いてて意味不明だ(笑。
Posted by 水野優 at 2006年02月13日 23:02
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