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2006年01月11日

パンドルフィーニ東訳『ボビー・フィッシャーの究極のチェス』

 テレビドラマに長らく触れてなかったが、フジの火曜21〜23時、前クールの「1リットルの涙」と「鬼嫁日記」は見た。前者は、昼ドラで見たときから出 てくるなと思ってた沢尻エリカと美形ではないが何とも味のある錦戸亮の好演も良かったが、不治の病の話は、なまける自分に活を入れるためにも見た。
 「鬼嫁日記」は、観月ありさの鬼嫁とゴリ(どんな形にせよピンで「紅白歌合戦」紅組出演はうらやましい)の髪型が嘘くさくて今一だった。昨日から始まっ た後番「N'sあおい」は、ありさの見飽きただめナースから一転した石原さとみ演じる凄腕の看護師もので、期待大だ。


 パ ンドルフィーニ東公平訳『ボビー・フィッシャーの究極のチェス』 (120ページ、'95年、河出書房新社)。原著は昔たまたま梅田の紀伊国 屋で見つけて持っていたが翻訳が出たこともあって手放した。といってもこれをわざわざ買ったわけではない。
 出たときは、英語が読めなくても何と か解ける問題集をわざわざ訳すより他にいい本があるだろと思った。パンドルフィーニの初版が'85年で、'92年にフィッシャーがユーゴで復活したのに刺 激されて'93年に再版した。それがなけれ ばこの訳がなかったとすると、フィッシャー復活のおかげだ。"... Goes to War"の訳が出れば、それも最近の事件のおかげか。
 原本も難しい問題は解かずどころか見ずじまいだったが、今回訳本を借りてきてやっと全部目を通すと、自分のブランク前よりよく解けた。しかし、素材が フィッ シャーの旧知の名局ゆえ、記憶で答が分かってしまう点も否定できない。

目次(ページ数さえないので以下に作った)
この本について
1993年版 序文
ボビー・フィッシャーについて
記号表記について
 記号の説明
 ゲームの記録の読み方
GAME 1 Bobby Fischer vs Bent Larsen
(中略)
GAME 101 Jose Agdamus vs Bobby Fischer
フィッシャーの101局 全記録集
訳者あとがき
(著者・訳者略歴)

 装丁もそっくりな『ボビー・フィッシャーのチェス入門』で東さんの翻訳力は分かっていたが、「この本について」を読むとずいぶんぎこちなくて自分の文体 のおもしろさが影を潜めてしまっている。「訳者あとがき」にあるように、英語が分からないところを出版社に助けを求めたくらいだから仕方ないのだろう。
 しかし、Outrageousを「究極」としたのは、出版社の意向もあるだろうが適切だったと思う。各問題の解説文に入ると、「素」の文体とまでは行か ないが、本来の調子が出てくる。各問題について気の付いたことを記す。

6 1手メイト問題もある。もちろんレベルは1(1〜5の5段階)。
17 「エクスチェンジ・サクリファイス(見かけは損な交換)」とあるが、エクスチェンジの意味を説明していない。
36 原文はいざ知らず、ファイルをこじ開けることを「開けゴマ」としているのは、コマにもかけてあるようでおもしろい。
68 目標が駒得でもメイトでもなく、投了時点でポジショナル優位だけという意味で難問。
71 勝つ手はすぐ見えるが、最善手2手メイトを見つける意味でレベル1というのは疑問。
74 実戦的に役立ついい終盤。

GAME 74  Tigran Petrosian vs Bobby Fischer








黒番。解答はいちばん下。

84 初手は何となく分かるが、その後の構想がすごい。
89 なまじっか戦略概念に強いと戦術にマイナスになる例?
92 「世紀のゲーム」。対ドナルド・バーン。13歳のとき!
96 羽生さんに辛口のハンス・リーもいちころ(笑。
99 昔「JCA通信」で出題されたとき、解説がおかしかったような。
100 有名な対レシェフスキー。これでもレベル4なのか。

 「フィッシャーの101局 全記録集」では、各問題局面の現れたゲームが完全に収録されている(解説なし)。その前書きが極端なまでの直訳、これは編集者の仕業と思いたい。パン ドルフィーニの英語は、フィッシャーへの思い入れか、この原文に限ってはずいぶん凝った文体だった記憶があるから大目に見よう。
 「訳者あとがき」で東さんの素の文がやっと出てきてほっとする。「一般の愛好家にはややレベルが高い」のは同感だが、「終盤の知識がないと分かりにく い」も言われるのもなるほどと思う。本書では戦術自体を学べないから仕方ない。
 当たり前の解答がある反面、決め手が数手先にある静かな初手が難しい。目標(駒得やメイト)や戦術テーマが分からないから難しく考えすぎてしまうことも ある。答を見てああなるほどとフィッシャーの妙手を鑑賞するだけでもその価値はあるのだが。

 訳語に関して「将棋用語を使って駒、交換、利き道、投了などとしたが、王手や詰み、キャスリングを入城とするなどは避けた」は、最近の私の好みとも一致 する。チェックやメイトはゲーム中に発声する可能性や認知度からしてカナにすべきだが、投了はわざわざリザインとするほどチェス独自のものとも思えない。
 実際は「プレイ」「アウトサイド」「エクストラ」等を使っており、「努力してみた人名のカタカナ書き」も「ラーセン」と「ラルセン」の不統一が見られ る。記譜間違いはパンドルフィーニの十八番だから原文のせいにしておこう(笑。最後、訳者略歴にわざわざJCA退会まで載せているのは意味深長だ。

74解答。1...Nd4! 2 Kd5 Nf3からhポーンを取る等。
ボビー・フィッシャーの究極のチェス―創造的で、大胆で、驚くべき革命的な珠玉の戦術101
4309262570 ブルース パンドルフィーニ Bruce Pandolfini 東 公平

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posted by 水野優 at 13:22| Comment(0) | チェス(和書評) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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